国立大学法人岐阜大学の平成21年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 岐阜大学は、人と情報が集まり知を交流させる場、体系的な知と先進的な知を統合する場、学問的・人間的発展を可能にする場、それらの成果を世界に発信し、人材を社会に送り出す場となることによって、学術・文化の向上と豊かで安全な社会の発展を推進し、「知の伝承と創造」を追求している。
 業務運営については、学長裁量に係る政策経費を増額し、戦略的・重点的な取組の推進や施設・設備の老朽化・陳腐化に対応する教育基盤環境整備に活用している。また、障害者雇用の促進を図るため、岐阜県及び岐阜市との包括協定に基づき、特別支援学校と連携し、法定雇用率を上回っている。
 財務内容については、岐阜大学基金を創設し、卒業生や地元企業から1,065件の寄附金を受け入れている。
 その他業務運営については、既存施設において、同種機能の集約及び弾力的・流動的な利用を促進するために確保された共用スペースの中から、プロジェクト的研究や組織の枠を超えた共同研究に対応するためのオープンラボを確保している。
 教育研究等の質の向上については、発展途上国が直面する水質・水資源・農業灌漑用水・生態等の流域水環境分野の問題を多角的な視野で理解し、戦略的な解決策と発生防止策を設計・施行する環境リーダーを育成する「流域水環境リーダー育成拠点形成」事業を実施している。また、国際共同研究・教育、学生交流事業を促進するため、上海オフィス(中国)、ダッカオフィス(バングラデシュ)を開設している。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 学長裁量に係る政策経費に13億1,785万円(対前年度比5億9,770万円増)を配分し、戦略的・重点的な取組の推進や施設・設備の老朽化・陳腐化に対応する教育基盤環境整備に活用している。

○ 国際化に向けた戦略体制を強化し、総合政策の企画機能を一元的に行う中核組織として国際戦略本部を設置している。

○ 障害者雇用の促進を図るため、岐阜県及び岐阜市との包括協定に基づき、特別支援学校と連携し、特別支援学校卒業生2名を雇用し、法定雇用率を上回る33名(雇用率2.46 %)の障害者を雇用している。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載45事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 岐阜大学基金を創設し、卒業生や地元企業から1,065件の寄附金を受け入れている。

○ 事務連絡文書や会議資料等のオンライン化(ペーパーレス化)等に伴い、紙の購入量は対前年度比15.7%減、管理的経費削減額は165万円となっている。

○ 資金運用額の確保を図り、運用益を政策経費に充て、戦略的・重点的な取組の推進や教育基盤環境整備に活用している。

○ 附属病院においては、広範な診療データを統合管理できるデータウェアハウスの構築を行うことにより、損益や収支の迅速な状況把握が可能となり、病院経営改善に向けた支援体制を強化している。

○ 中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

○ 平成20年度評価において評価委員会が課題として指摘した、同窓会連合会の設立までには至っていなかったことについては、平成21年6月1日に、6つの学部等同窓会を正会員とする「岐阜大学同窓会連合会」を設立しており、指摘に対する取組が行われている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載14事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 各部局で作成する「年度計画達成状況点検ワークシート(自己点検評価書)」について、データベースシステムを導入し、中期目標・計画の進捗管理や自己点検・評価業務の改善を図っている。

○ 環境について考えるキャンパスミーティングを開催し、環境に配慮した特色ある活動を継続的に展開し、地域社会に貢献し、地域とともにありつづける大学として「環境ユニバーシティ」を宣言している。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載10事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 柳戸団地本部地区のキャンパスマスタープランの見直しに着手し、社会のニーズ、教育研究の変化に対応した大学キャンパスであるために問題点の洗い出しを行っている。

○ 既存施設において、同種機能の集約及び弾力的・流動的な利用を促進するために確保された共用スペースの中から、プロジェクト的研究や組織の枠を超えた共同研究に対応するためのオープンラボを2,845m2確保している。

○ 環境負荷低減による経費節減及び職員の環境意識向上のため、大学本部及び図書館について、環境マネジメントシステム(ISO14001)の認証を取得している。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載17事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成21年度の外形的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

○ 医学部では、「地域体験実習(医学科1年次必修)」において、地域住民の協力を得て、基本的コミュニケーション能力向上とライフサイクルや地域・家庭医療の関心を高めることを目的に、地域の医療機関や保育所等で患者や入所者、その家族との継続的体験実習を2か月にわたり行っている。

○ 鳥取大学、京都産業大学との3大学間で「獣医・動物医科学系教育コンソーシアムによる社会の安全・安心に貢献する人材の育成」プログラムの連携教育を開始している。

○ 教養教育推進センターでは、高校とは違う大学の勉強の鉄則とルール及び教員からのヒントを掲載した教養ブックレット「大学で勉強する方法」を刊行し、学部1年次生を中心に配付している。

○ 専門外の知識を増やすこと、他学部・他学科の教員の研究活動を知ることを目的に、人と情報が集まり知を交流させる場として、学生及び教職員を対象に「ランチタイムセミナー」を開催している。

○ 発展途上国が直面する水質・水資源・農業灌漑用水・生態などの流域水環境分野の問題を多角的な視野で理解し、戦略的な解決策と発生防止策を設計・施行する環境リーダー(国内リーダーと国外リーダー)を育成する「流域水環境リーダー育成拠点形成」事業を実施している。

○ 大学祭期間中に「岐阜大学フェア2009」を開催し、教育・研究活動事例や研究シーズ等の情報を広く社会に発信している。

○ 健康長寿・創薬に関する創造的・先端的な研究を一体的に推進し、産業振興及び人材育成に貢献することを目的に、岐阜薬科大学との間で「岐阜健康長寿・創薬推進機構」を設置し、研究者交流及び連携研究の推進を図っている。

○ 米国ノースカロライナでのシーズ発表において、2件の技術シーズについて海外の企業関係者や研究機関にプレゼンテーションを行うとともに、ポスター展示にも参加するなど海外に向けての技術移転の推進を図っている。

○ 国際共同研究・教育、学生交流事業を促進するため、上海オフィス(中国)、ダッカオフィス(バングラデシュ)を開設している。

○ 附属学校の研究発表会を活用し、午前中に授業参観と分科会、午後に学部教員が授業解析等の講義を行う学部・附属学校連携の免許状更新講習(附属学校実践演習、小学校12 講座、中学校12講座)を開講している。

附属病院関係

○ 診療科別ヒアリングから、大学病院の特色につながる分野に対して、高度先進医療開発経費等の配分措置を継続するなど、先端医療の導入を進める支援体制を充実させている。診療では、心疾患や脳血管疾患治療に積極的に取り組み、埋込型除細動器移植術や経皮的血管形成術等が増加するなど、地域中核病院としての役割を担っている。
 今後、新生児集中治療室(NICU)を設置するために「NICU設置準備室」を設置していることから、社会からの要請も強い、周産期医療の充実に向けたさらなる取組が期待される。

(教育・研究面)

○ 学長裁量経費等により、内視鏡外科手術トレーニングセンターを開設しており、今後増加が見込まれる内視鏡手術の外科技術向上を目指す体制を整備している。

○ 「大学病院連携型高度医療人養成推進事業(東海若手医師キャリア支援プログラム)」に参画し、若手医師に対して支援プログラムの明示化を図った結果、23名の登録者を得るなど、専門医養成システムを推進している。

(診療面)

○ 診療スケジュール(クリニカルパス)の提供率の向上を図り、平成20年度は45%であった提供率が、平成21年度は約52%に上昇するなど、患者に対して標準化された医療の提供に努めている。

○ 新型インフルエンザ発生時においては、地域医療医学センターを中心に、岐阜県、岐阜市、地域医療機関と連携してその対応に当たっており、地域医療の貢献に取り組んでいる。

○ がん患者及びその家族の立場に立った親身な相談体制を充実させるために、がん履歴のある患者を相談員として雇用し、がん患者サロンを開設するなど、医療サービスの向上を図っている。(がん相談1,909件のうち、がん患者サロン239件)

(運営面)

○ 育児をしながらでも働けるように就業規則を改正(短時間勤務の医師雇用を可能とする規則)しており、15名が制度活用するなど、適切な就労環境の整備に取り組んでいる。

○ 新たに、待機手当、分娩手当及び資格手当を支給し、産科医、助産師の処遇改善を行っている。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成23年12月 --