国立大学法人富山大学の平成21年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 富山大学は、「地域と世界に向かって開かれた大学として、生命科学、自然科学と人文社会科学を総合した特色ある国際水準の教育及び研究を行い、人間尊重の精神を基本に高い使命感と創造力のある人材を育成し、地域と国際社会に貢献するとともに、科学、芸術文化、人間社会と自然環境との調和的発展に寄与する」ことを基本理念とし、その実現に向け、再編統合した3大学のそれぞれの特徴を活かしつつ、さらなる発展を目指し活動を展開している。
 業務運営については、事務系職員について、人事評価を本格実施し、評価結果を勤勉手当及び昇格に反映しており、評価できる。
 一方、大学院博士課程について、平成21年度において一定の学生収容定員の充足率を満たさなかったことから、今後、速やかに、定員の充足に向け、入学定員の適正化に努めることや、入学者の学力水準に留意しつつ充足に努めることが求められる。
 財務内容については、水道光熱費において、施設担当から使用電力抑制の協力及び電力値の超過を回避するための警報通知による冷暖房機器の適切な温度設定や一時停止等の取組により、一般管理費における水道光熱費は22.2%減となっている。
 自己点検・評価及び情報提供については、ウェブサイトのナビゲーションバーに「キャリア・就職支援」及び「国際交流・留学」の項目を追加して就職情報や留学関係情報へのアクセスの利便性を向上させるとともに、「男女共同参画」のバナーを新設して男女共同参画に関する取組を積極的に情報公開している。
 一方、年度計画に掲げている教員情報総合データベース(仮称)の構築については、データベースの構築までには至っていないことから、着実な取組が求められる。
 教育研究等の質の向上については、伝統技能、デザイン、マーチャンダイジング(商品化計画)の融合による付加価値の高い製品開発を促進するとともに、伝統技能の科学技術に基づくデータベース化等により、技能に埋もれた知財の発掘・活用、技能の伝承を促進することを目的として事業を推進している。また、受講対象者を知的障害者に限定した公開講座「学ぶって楽しい!ぼくらの課外授業」を実施している。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 事務系職員について、人事評価制度に基づく人事評価を本格実施し、評価結果を平成21年12月の勤勉手当及び平成22年1月の昇格に反映しており、評価できる。

○ 学長裁量経費として3億5,000万円確保し、戦略的経費、若手研究者・女性研究者支援経費を含む教育研究活性化等経費として1億円、学生支援経費として4,000万円、設備マスタープラン等対応経費として1億円、学長判断に基づく経費として6,000万円、研究用機器等の整備及び研究支援経費として5,000万円配分している。

○ 経営協議会学外委員の意見を医学部定員増や臨床研修医の増加に向けた取組等、大学運営に反映させている。

○ 内部監査において、研究費不正使用防止にポイントをおいた監査のほか、内部統制の中で重要な「情報管理」の実施状況について監査を行っている。

平成21年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。

○ 大学院博士課程について、学生収容定員の充足率が90%を満たさなかったことから、今後、速やかに、定員の充足に向け、入学定員の適正化に努めることや、入学者の学力水準に留意しつつ充足に努めることが求められる。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載28事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められるほか、大学院博士課程において学生収容定員の充足率が90%を満たさなかったが、事務系職員の人事評価を実施し、その評価結果を処遇に反映させている取組が行われていること等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 科学研究費補助金獲得に向けた学内説明会の開催、申請相談窓口開設などを行った結果、科学研究費補助金の採択件数は314件(対前年度比19件増)、採択金額は7億6,335万円(対前年度比2,192万円増)となっている。

○ 受託研究、共同研究及び寄附金による外部資金の獲得に努め、受入件数は1,177(対前年度比115件増)、受入金額は15億4,669万円(対前年度比1億4,015万円増)となっている。

○ 水道光熱費において、施設担当から使用電力抑制の協力及び電力値の超過を回避するための警報通知による冷暖房機器の適切な温度設定や一時停止等の取組により、一般管理費における水道光熱費は5,477万円(対前年度比1,559万円減、22.2%減)となっている。

○ 中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載13事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ ウェブサイトのナビゲーションバーに「キャリア・就職支援」及び「国際交流・留学」の項目を追加して就職情報や留学関係情報へのアクセスの利便性を向上させるとともに、「男女共同参画」のバナーを新設して男女共同参画に関する取組を積極的に情報公開している。

○ 大学広報誌の配布先として、県民会館ロビーや附属病院外来待合室を追加し、また大学の各種イベント開催時にも配布するなど広報誌の一層の普及と積極的な情報発信を行っている。

平成21年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。

(法人による自己評価と評価委員会の評価が異なる事項)

○ 「教員の教育、研究、社会貢献に関する活動状況を総合的に把握するために有用な教員情報総合データベース(仮称)の構築を図る」(実績報告書44頁・年度計画【176-1】)について、システムの設計に向けてシステム仕様書等の策定に取り組んでいるものの、データベースの構築までには至っていないことから、年度計画を十分には実施していないものと認められる。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けておおむね順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載4事項中3事項が「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、1事項について「年度計画を十分には実施していない」と認められるが、大学ウェブサイトへの新着情報掲載やプレスリリースの件数が増加するなど積極的な情報提供が行われていること等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理、3.環境配慮、4.北陸地区の国立大学連合

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 既存福利厚生施設の有効活用について検討し、施設を改修整備して外来者等の宿泊施設として平成22年度から利用開始することとしている。

○ 全学共用スペースについて、理学部に分散していた共用スペースを多目的セミナー棟へ集約化し、共同利用棟としてさらなるスペースの有効活用を図っている。

○ 営繕業務・劣化防止について施設点検を行い、「キャンパス修繕マップ」を作成して所要額を算定し、計画的に改修事業を行っている。

○ 附属病院では中央機械室冷熱源設備改修により、CO2換算で2,271t-CO2のエネルギー削減がなされている。

○ 学生や教職員の安全意識向上を図るため、「安全ノート」を作成・配布するとともに、講習会を各キャンパスで実施している。

○ 危機管理ガイドラインに基づき「新型インフルエンザ基本計画」を策定している。

○ 防災マニュアルに沿って、五福キャンパスでは地震災害を想定した防災訓練、杉谷キャンパスでは火災を想定した消防自衛訓練、高岡キャンパスでは火災を想定した消防・避難訓練をそれぞれ実施するとともに、リスクマネジメントに関する全学的な研修会を開催して危機管理意識向上に努めている。

○ 「研究費不正使用防止対策としてのモニタリング調査実施要綱」に基づき、ヒアリングやモニタリングチェックシートを使用したモニタリング調査を実施している。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載18事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成21年度の外形的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

○ 薬学部6年制教育における臨床薬剤師教育のためのカリキュラムを整備し、コンピュータ試験(CBT)及び客観的臨床能力試験(OSCE)の全国共用試験を実施している。

○ 工学部では、企業における製品開発のプロセス、コストの考え方、生産を考慮した設計、信頼性の考え方、デザインや使い易さ、安定性、社会や環境への配慮の重要性等をテーマとした製品開発セミナーを企業技術者を講師として実施している。

○ 学長裁量経費により、学生教育支援のための図書館内学習・閲覧環境整備経費を措置し、視聴覚機器等による資料の有効利用と学習・閲覧スペースの拡充を図り、医薬学図書館多目的室の環境を整備している。

○ 総合情報基盤センターを中心に、無線LANの増設、工学部での新潟大学及び長崎大学との高速回線利用による教育や講義収録システムの整備等の情報基盤整備を進めている。

○ 伝統技能、デザイン、マーチャンダイジング(商品化計画)の融合による付加価値の高い製品開発を促進するとともに、伝統技能の科学技術に基づくデータベース化等により、技能に埋もれた知財の発掘・活用、技能の伝承を促進することを目的として事業を推進している。

○ 受講対象者を知的障害者に限定した公開講座「学ぶって楽しい!ぼくらの課外授業」を実施している。

○ 「脳科学と疫学の連携によるこころの教育・研究拠点」や「異分野の視点から見た和漢薬研究の独創的体系構築」を課題として、共同研究、国際シンポジウム・セミナーを実施している。

○ 小学校・中学校に人間発達科学研究実践総合センターの教員を招聘し、小学校では心理検査(QUテスト)に関するコンサルテーションを、中学校では心理検査と健康づくりノートを基に「人間関係」と「生活習慣」の関連について分析を行い、生徒指導や今後の健康教育に役立てている。

○ 特別支援学校高等部の進路に関して、ジョブコーチ経験者を講師として、年間を通して進路に関わる授業を計画的に行い、進路学習の充実を図っている。また、通常の作業学習のほか春・秋に就業体験を行い、専門的立場からの生徒への指導実践を参観・研修することにより、作業学習の指導や進路指導の向上を図っている。

附属病院関係

○ 卒後臨床研修プログラムにおいては、専門医を目指す「専門コース」や医師不足とされている「小児科・産婦人科研修プログラム」等、研修医の目標やニーズに応えるために新しい研修プログラムの整備に取り組んでいる。診療では、外来化学療法センター治療ベッドの増床(6床から9床)、化学療法治療計画(レジメン)を電子カルテシステムに登録、地域連携パスの作成等、医療提供体制の整備・運用改善の推進に取り組んでいる。
 今後、周産母子センターでは専任医師を配置する計画があることから、関連診療科と連携のもと、地域の中核病院として、専門性の高い新生児・小児医療の提供を推進するさらなる取組が期待される。

(教育・研究面)

○ 女性医師支援室を設置するなど、女性医師の勤務をサポートする体制を整備している。

○ 専門医養成支援センターが中心となり、臨床研究セミナー等の実施により、和漢診療や臨床研究、大学院から臨床へのトランスレーショナルリサーチ(橋渡し研究)、高度に専門化した医療とプライマリーケアの統合(統合型専門医の育成)等の充実を図っている。

(診療面)

○ 小児循環器外科、産科婦人科、小児科等の連携により、新生児集中治療室(NICU)を中心とする新生児心臓外科治療を充実させており、北陸地方における小児循環器治療の拠点病院として先天性心臓病の手術実績が向上するなど、診療の成果を上げている。

○ 地域医療連携室、看護相談室及び栄養相談室の各種医療相談窓口を一元化し、「医療福祉サポートセンター」を設置、多様な相談にスムーズに応じるとともに、地域医療機関との連携の充実を推進している。

(運営面)

○ 医師不足の地域医療現場を支援するため、富山県南砺市の「地域医療再生マイスター養成プロジェクト」に協力し、地域医療再生マイスター養成講座や小児医療・地域医療・保健に関するセミナーを実施し、地域住民の医療知識を高めるための活動に取り組んでいる。

○ 手術部で行っていた洗浄・滅菌業務を中央材料部へ一元化し、稼働手術室を増室させた結果、手術件数が5,448件(対前年度比702件増)、処置・手術請求額が31億2,068万円(対前年度比3億1,234万円増)となるなど、病院経営の改善に努めている。

○ 外部評価では、財団法人日本医療機能評価機構による病院機能評価Ver5.0に認定されている。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成23年12月 --