国立大学法人総合研究大学院大学の平成21年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 総合研究大学院大学は、大学共同利用機関法人等(基盤機関)が持つ人的・物的資源を活用し、高度な専門性や広い視野を有する人材を育成するとともに、大学院における教育・研究を通じて各基盤機関を有機的に結びつけ、先導的な研究を推進する核となることを目指している。
 業務運営については、予算委員会を毎月定例に開催することを決め、概算要求項目の検討、資金運用、各部門の予算要求・ヒアリング・予算の査定の過程を明確にし、基盤機関からのプロジェクト分及び施設・設備要求の掘り起こしにより、基盤機関と葉山本部との一体感が高まり、相互連携を強化している。
 財務内容については、学長裁量経費によって全学を結ぶテレビ会議システムを整備し、分散したキャンパスを結合して全学の会議が行えるだけでなく、授業の一部をテレビ配信することによって質疑応答も可能になり、経費を抑制しつつ、遠隔教育にも効果的であることを実証している。
 自己点検・評価及び情報提供については、大学を構成している18の基盤機関にいる教員・学生に対する広報を充実させる必要があるため、大学の主要な会議、経営協議会、教育研究評議会、役員会、運営会議等の議事概要を、「主要会議情報」として、それぞれの会議が終了次第、速やかに大学のウェブサイトを通じて公開している。
 教育研究等の質の向上については、専門化する「科学知」の総合化を教育の特色の一つとしており、先導科学研究科では生命系の学生には科学・社会系の、科学・社会系の学生には生命系の論文を課す副論文制度、様々な研究分野に触れさせることを目的とした研究室ローテーション制度、国内外の教育研究機関への学生派遣等のプログラムを通じて、高度の専門性、総合性や国際的通用性の涵養のための取組を実施している。
 また、学生セミナー、総研大レクチャー、海外総研大レクチャー、国際シンポジウム等の事業を通して研究科・専攻の枠を超えた学生間の交流を図るとともに、これらの交流がきっかけとなり、学生が共同で企画研究を行う「総研大ワークショップ」、「大学院生のライフデザインを考える」等を企画・開催している。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 予算委員会を毎月定例に開催することを決め、概算要求項目の検討、資金運用、各部門の予算要求・ヒアリング・予算の査定の過程を明確にし、基盤機関からのプロジェクト分及び施設・設備要求の掘り起こしにより、基盤機関と葉山本部との一体感が高まり、相互連携を強化している。

○ 葉山高等研究センターにおいて、「人間生命科学」、「物理を基盤とする生命科学」、「人間と科学」、「新領域」の4つのプロジェクト研究を実施し、最終年度となる本プロジェクトの集大成として全体報告会を開催している。

○ 葉山高等研究センターを平成22年度から学融合推進センターへ改組することとし、学融合教育事業、学融合研究事業、学術交流事業、基盤整備事業の4つの事業を一元的に統合し、新たにセンター運営委員会を設けて自立的運営を可能とする体制を構築している。

○ 経営協議会の審議内容は、大学のウェブサイトに議事録を掲載することにより社会に広く公表している。

○ 教員に対する教育業績評価について、今後、大学として一体的な評価システムの確立が期待される。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載27事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 学長裁量経費によって全学を結ぶテレビ会議システムを整備し、分散したキャンパスを結合して全学の会議が行えるだけでなく、授業の一部をテレビ配信することによって質疑応答も可能になり、経費を抑制しつつ、遠隔教育にも効果的であることを実証している。

○ 役員会直轄の予算委員会において、各予算部局単位で月次単位の予算計画・執行計画を正確に把握・精査を行い、これにより補正予算の策定、四半期単位においては予算流用を行い、計画的・効果的に決算見込額を把握し、予算管理に適切に反映させている。

○ 個別冷暖房への切替、太陽光発電設備の拡充、一般競争入札の徹底等、経費削減の取組により、一般管理費比率は6.1%(対前年度比2.6%減)となっている。

○ 中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

○ 平成20年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、随意契約見直し計画の実施については、企画競争等契約に関する事務取扱要領を制定し、企画競争等の実施に向け業務の見直しに着手するなど、指摘に対する取組が行われている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載6事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 大学を構成している18の基盤機関にいる教員・学生に対する広報を充実させる必要があるため、大学の主要な会議、経営協議会、教育研究評議会、役員会、運営会議等の議事概要を、「主要会議情報」として、それぞれの会議が終了次第、速やかに大学のウェブサイトを通じて公開している。

○ 各基盤機関の広報担当者等により構成される情報交換のネットワーク(広報連絡会)を活用し、各機関間で一般公開に関する情報、特色ある研究・教育事業やその成果を積極的に情報交換することによって情報発信の充実を図っている。

○ バージョンアップが完了したデータベース・システムを利用して、評価関連データベースの一つとして「研究業績データベース」の作成を予定しており、プラットフォームとして「機関リポジトリ」の開発に取り組んでいる。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載8事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 国内の大学及び大学共同利用機関が湘南国際村で実施するセミナー、シンポジウム、研究会の開催に必要な会場、宿泊施設等の利用について便宜を図るため情報提供を行い、必要な会場、宿泊施設の貸与を行っている。

○ 入学式の際に新入生に対するメンタルヘルスに関する講演会を実施するとともに、基本的に毎月、各基盤機関においてメンタルヘルスカウンセリングを実施し、心のケアにも配慮している。

○ 平成17年度に作成したキャンパスマスタープラン(施設・設備整備計画)について、長期的な視点に立ち、施設・設備計画を見直すべく施設マスタープラン、設備マスタープランの見直しに着手している。

○ 暖・冷房については、温度センサーによる省エネルギーモードを徹底させるとともに、熱源としてガス吸引式冷温水機を使用するなど、省エネルギー、温室効果ガス排出削減を引き続き実施している。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載5事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成21年度の外形的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

○ 専門化する「科学知」の総合化を教育の特色の一つとしており、先導科学研究科では生命系の学生には科学・社会系の、科学・社会系の学生には生命系の論文を課す副論文制度、様々な研究分野に触れさせることを目的とした研究室ローテーション制度、国内外の教育研究機関への学生派遣等のプログラムを通じて、高度の専門性、総合性や国際的通用性の涵養のための取組を実施している。

○ 各地に分散して立地する大学共同利用機関における専門的かつ総合的な教育研究を展開するために、「広い視野を有する博士育成のためのテーラーメイド教育事業」を実施し、ネット・コモンズを配信システムとして導入し、学生の利用登録の受付を開始している。

○ 学生セミナー、総研大レクチャー、海外総研大レクチャー、国際シンポジウム等の事業を通して研究科・専攻の枠を超えた学生間の交流を図るとともに、これらの交流がきっかけとなり、学生が共同で企画研究を行う「総研大ワークショップ」、「大学院生のライフデザインを考える」等を企画・開催している。

○ 各専攻及び大学本部において、学生の研究成果の公表に当たっての英語によるプレゼンテーション能力を養うための実践的な指導、学会等における発表に当たっての事前指導を実施するなど、学生の積極的な研究成果発表のための奨励・支援を行っている。

○ 全専攻の学生を対象とした英語プレゼンテーションの短期集中型の講義及びサマープログラムのフェローとともに、ポスタープレゼンテーションに参加するレクチャーを開催し、実践の場での英語によるプレゼンテーション能力の向上を図っている。

○ 新たに学長賞を設け、大学の教育理念である「高い専門性と広い視野」を達成できると期待される学生の研究を奨励し、表彰している。

○ 大学共同利用機関法人等との間で締結した「総合研究大学院大学の教育研究業務に従事する機構等法人職員に関する覚書」及び「総合研究大学院大学における教育研究業務及び運営に関する覚書」に基づき、基盤機関教員を大学の担当教員として配置するとともに、大学の事務処理を、大学事務局と基盤機関との相互協力により行っている。

○ 諸外国の大学等で教授として教育研究をリードする自大学の修了生を対象にした「総研大海外連携教授」の称号を新たに設け、平成21年度は4名に授与している。

○ 教育事業コンテンツの著作権管理について、知的財産室検討会を開催し、審議を行うとともに、知的財産室の運用に当たって、構成員を追加するなど関係規程の改正を行っている。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成23年12月 --