国立大学法人一橋大学の平成21年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 一橋大学は、21世紀に求められる先端的社会科学の研究教育を積極的に推進し、日本、アジア及び世界に共通する重点課題を理論的、実践的に解決することを目指す基本的目標の達成に向けて、「一橋大学の長期研究戦略:21世紀の経済・社会への挑戦-世界水準の社会科学の創造と総合をめざして-」を策定し、大学全体として組織的な研究活動の推進を図っている。
 業務運営については、世界水準の海外大学との連携強化及び学生の質の向上と人材育成を目的として、国際化推進体制をより強固にするため、従来の留学生センターを「国際教育センター」に改組・拡充している。
 財務内容については、科学研究費補助金説明会において採択実績保有教員による研究計画調書作成上の具体的アドバイスを行う等の支援を行っており、高い採択率を維持している。
 自己点検・評価及び情報提供については、近代経済重要資料等の附属図書館所蔵資料のデジタル化・マイクロ化(61,400コマ)を行い、機関リポジトリ(HERMES-IR)及びウェブサイトでデジタルアーカイブ事業を公開するとともに、市民向けシンポジウムである関西アカデミアやオープンキャンパスの様子等をウェブサイト上で公開し、情報発信を行っている。
 その他業務運営については、研究室の拡充及び海外の研究者を招へいする際の宿泊施設として、第3研究館及び国立国際ゲストハウスを新設整備するとともに、新設した第3研究館に全学共同利用スペース424m2を確保している。
 教育研究等の質の向上については、世界最高水準のEU高度教育研究共同大学院の設置を先端的事業とする大学連携を目指して、「一橋大学と慶應義塾大学との連携、協力に関する協定書」に基づき、EU高度教育研究共同大学院設置に向けての準備を進めている。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 世界水準の海外大学との連携強化及び学生の質の向上と人材育成を目的として、国際化推進体制をより強固にするため、従来の留学生センターを「国際教育センター」に改組・拡充している。

○ 研究カウンシルを開催し、今後の研究の在り方、研究体制について議論を深め、「一橋大学研究機構(仮称)」については、組織の具体的な内容、情報発信機能としての「一橋政策フォーラム」(機構のもとに設置運営予定)の在り方の具体案について検討している。

○ 東アジア政策研究プロジェクトにおいて開催した国際コンファレンスや、Hitotsubashi International Fellow Program(17件)により海外から著名研究者等を招へいするなど、グローバルな人的ネットワークの構築に努めている。

○ 全学の情報化推進体制の確立のため、総合情報処理センター、学術・図書部情報推進課及びCIO室を改組し、情報化統括本部及び情報基盤センターを設置し、情報化推進体制を整備するとともに、事務処理の効率化、迅速化及びペーパーレス化のため、電子決済機能を有した旅費システムの運用を開始し、事務各部署の共有ファイルサーバを統合するため、電子データ蓄積システムを導入している。

○ 経営協議会の審議内容は、大学のウェブサイトに議事録を掲載することにより社会に広く公表している。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載24事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 科学研究費補助金説明会において採択実績保有教員による研究計画調書作成上の具体的アドバイスを行う等の支援を行っており、平成21年度新規採択率が55%と5年連続全国1位となっている。

○ 公募型研究費への応募につながる学内助成制度を実施するとともに、新任・若手教員の応募推奨として採択実績のある教員による研究計画調書作成勉強会を実施している。

○ 事務処理の効率化、迅速化及びペーパーレス化のため、教職員グループウェアと連動した電子決済機能を有した旅費システムの運用を開始している。

○ 中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載6事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 近代経済重要資料等の附属図書館所蔵資料のデジタル化・マイクロ化(61,400コマ)を行い、機関リポジトリ(HERMES-IR)及びウェブサイトでデジタルアーカイブ事業を公開するとともに、市民向けシンポジウムである関西アカデミアやオープンキャンパスの様子等をウェブサイト上で公開し、情報発信を行っている。

○ 広報体制を強化するため、企画及び広報を主業務とする部署を学長直轄に設け、機動的な広報業務を行うための準備を行うとともに、大学ウェブサイトの充実及び迅速な更新に努め、特に新型インフルエンザ情報について、学生及び教職員に向けて迅速な情報発信に努めている。

○ 学生による授業評価の結果の取扱いについては、現在検討中とのことであり、今後、授業改善への取組が期待される。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載5事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 研究室の拡充及び海外の研究者を招へいする際の宿泊施設として、第3研究館及び国立国際ゲストハウスを新設整備するとともに、新設した第3研究館に全学共同利用スペース424m2を確保している。

○ 緑地基本計画に基づき、環境美化や緑地保全として、学内予算や年14回の植樹会作業で、枝の剪定や草刈り等を実施するとともに、防犯対策・環境美化のために、西キャンパスの敷地境界フェンスを改修している。

○ 新型インフルエンザ対応ガイドラインを作成し、ガイドラインに沿った行動計画の検討を行うとともに、「インフルエンザ対応ハンドブック」日本語版、英語版を作成し、学生及び教職員に配布するとともに、ウェブサイトに掲載し広く周知を図っている。

○ 薬物、アルコールの危険から身を守るため、ハンドブックを作成するとともに、「一橋大学学生の飲酒に関する基本原則」の策定や、防犯のための施設セキュリティのリスク調査を行うなど、各種危機管理対策を進めている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載10事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成21年度の外形的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

○ 世界最高水準のEU高度教育研究共同大学院の設置を先端的事業とする大学連携を目指して、「一橋大学と慶應義塾大学との連携、協力に関する協定書」に基づき、EU高度教育研究共同大学院設置に向けての準備を進めている。

○ 企業内部データを長期蓄積する実証研究プロジェクトに大学院生及び若手研究者を多数参加させ、実践的な研究者育成を行うとともに、実証研究を複数実施した結果、プロジェクトを通じた大学院生・若手研究者の育成を加速化している。

○ 「導入ゼミナール」「前期ゼミナール」を充実させるとともに「学生生活の技法」といった科目を新規開講し、学部1、2年次における双方向教育化・少人数教育化を促進するとともに、大学院においては研究発信能力を高めるための科目(発信英語力、プレゼンテーション技法、ウェブコンテンツ管理入門等)を開講し、研究調査能力を開発するための工夫を行っている。

○ 「学士課程GPA(グレード・ポイント・アベレージ)制度に関する要項」の決定、GPAの低い学生に対する支援体制の在り方の基本方針の設定、上書き再履修制度の設計等、GPA制度の本格導入に向けた諸準備を完了している。

○ 日本企業の競争力の向上及び業務の効率性を超えた企業独自の戦略を基盤に優れたパフォーマンスを上げている企業の研究、研究成果が金融実務で利用されるための実際の金融・財務データを用いた計量的分析の研究、企業関係法部門における学術と実務の両面を重視した研究を進めている。

○ 中央省庁に加え、地方公共団体、特殊法人、独立行政法人等に各種委員として参画し、政策提言活動、対外的な助言活動を活発に行い、研究成果を通じた社会貢献を行っている。

○ 多摩地域における次世代ビジネスリーダーの育成を目指し、金融機関と協力して、「TAMA NEXT リーダープログラム2009」を企画し、主として次世代の企業後継者たちを対象としたセミナーを行い、参加者から高い評価を受けている。

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高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成23年12月 --