国立大学法人東京海洋大学の平成21年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 東京海洋大学は、人類の共有財産である海をグローバルな視点でとらえ、自然との共生のもと、海洋の活用・保全に関する科学技術の向上に資することを目標として掲げ、海洋を利活用した教育、研究、社会貢献に積極的に取り組んでいる。
 業務運営については、産学・地域連携推進機構を設置し、社会的ニーズや研究シーズ等の把握・分析するための調査やオンライン等による相談受付等を実施している。
 財務内容については、平成20年度の評価委員会の評価結果を踏まえ、契約内容とその妥当性の見直しを行い、一般競争入札、公募型企画競争を実施している。
 自己点検・評価及び情報提供については、大学の教育研究の特色を生かした事業として、「天皇陛下の魚類学ご研究」、「珪藻展ガラスの奇箱の百物語」、「さかなの透明標本」等を開催している。
 教育研究等の質の向上については、水工連携イノベーション構想を構築により、新たな産業の創出を目指すとともに、海洋分野におけるトップレベルの研究を維持し、重点的に取り組むべきプロジェクト型研究として「東京湾・島嶼域の環境保全および生物多様化に関する研究」等を行っている。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 産学・地域連携推進機構を設置し、社会的ニーズや研究シーズ等を把握・分析するため、「水産海洋系研究者の産学官連係活動などに関する現状把握」調査やオンライン等による「海の相談室」における相談受付等を実施している。

○ 職員が長期にわたって休業する際に、業務の円滑な推進及び職員の負荷をできるだけ軽減するため、任期付常勤職員を配置する「代替職員就業制度」の導入等、仕事と育児等の両立を支援する取組が行われている。

○ 経営協議会から出された法人運営に関する意見(役員、経営協議会委員会(学外委員)及び経営者(卒業生)等による特別講演)について、その取組事例をウェブサイトで公表している。

○ 経営協議会の審議内容は、大学のウェブサイトに議事要録を掲載することにより社会に広く公表している。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載16事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ キャンパス間の移動の利便性向上、環境負荷低減を図るため、電気自動車によるカーシェアリング実証実験を開始し、さらに、テレビ会議システムによる会議等の利用回数が大幅に増加(対前年度比240%増)し、教職員の両キャンパス間の移動時間の縮減に貢献している。

○ 外部資金獲得に向けた取組をしているものの、外部資金額は8億7,267万円(対前年度比2億918万円減)、外部資金比率は9.5%(対前年度比2.9%減)となっており、外部資金額の増加に向けた取組が期待される。

○ 中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

○ 平成20年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、随意契約見直しの計画的な実施については、契約内容とその妥当性の見直しを行い、2件の事業を一般競争入札とし、1件についてはマニュアルを策定し、それに基づき公募型企画競争を実施しており、指摘に対する取組が行われている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載5事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 大学の教育研究の特色を生かした事業として、「天皇陛下の魚類学ご研究」、「珪藻展ガラスの奇箱の百物語」、「さかなの透明標本」等を開催している。

○ 附属図書館及び産業界の多様なニーズを結ぶワンストップ窓口である「東京海洋大学水産海洋プラットフォーム」からそれぞれメールマガジンを配信し、広報活動の推進に努めている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載3事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 施設の共有スペースを弾力的に教育研究に利用するため、全学でスペース利用状況調査を実施し、調査結果をまとめている。

○ 船舶管理体制に対する品質マネジメントシステム(ISO9001)を取得している。

○ 教職員及び学生の危害の未然防止、被害を最小限とするため全学的・総合的な危機管理体制を確立し、危機管理基本マニュアル(2010)を作成している。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載7事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成21年度の外形的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

○ 新たに留学生就職スタートセミナーを実施し、36名の留学生に対して就職支援を行っている。

○ 社会人の大学院教育需要に応えるために設置した、大学院博士前期課程「食品流通安全管理専攻」に対応する大学院博士後期課程への設置を検討し、平成22年4月から両専攻を横断する「食品サプライチェーン安全管理コース」を開講することを決定している。

○ 練習船の運航及び観測支援の効率化を図る観点から、船舶運航センター及び海洋観測支援センターを立ち上げ、教育研究の活性化を図っている。

○ 水工連携イノベーション構想により、新たな産業の創出を目指すとともに、海洋分野におけるトップレベルの研究を維持し、重点的に取り組むべきプロジェクト型研究として「東京湾・島嶼域の環境保全および生物多様化に関する研究」等について、重点的予算配分を行っている。

○ 産学官連携戦略展開事業(戦略展開プログラム)について、1.ポータルサイトの開設等による水産海洋プラットフォームの基盤整備、2.モデル連携地域連携事業の推進、3.地域の抱える問題点・水産海洋関連研究者の実態把握を行い、また、事業の成果発表等の観点から、水産海洋プラットフォームフォーラムを開催している。

○ 電子図書館機能の充実を図るため、学位論文の登録、貴重書の電子化、許諾済の紀要論文・雑誌論文(「日本水産学会誌」)の電子化を実施し、また、図書館利用者向けオリエンテーション、授業、個別ガイダンス等を実施したほか、地域社会との連携のため、夏休み期間中の中学生・高校生への図書館開放、中学生・高校生の職場体験受入れ及び江東区立図書館との相互貸借を開始している。

○ 水圏科学フィールド教育研究センター館山ステーションにおいて、研究成果を実習を含め分かりやすく紹介する「ひらめき☆ときめきサイエンス」及び研究内容の紹介と特別講演を実施した第1回先端研フェアを開催し、小学生から社会人までの参加を得ている。

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高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成23年12月 --