国立大学法人東京工業大学の平成21年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 東京工業大学は、世界最高の理工系総合大学を目指すことを長期目標に掲げ、目標達成に向け、平成20年度に、長期目標を具体化する指針として、今後約10年を見据えた将来構想を「東工大ビジョン2009」として取りまとめ、さらなる進化を目指して、学長主導の戦略的マネジメント体制を強化しつつ、積極的な活動を展開している。
 業務運営については、学長主導の戦略的マネジメント体制の企画立案組織の整備・充実のため、大学マネジメントセンター及び総合プロジェクト支援センターを設置し、マネジメント体制の強化を図っている。
 財務内容については、電気使用量削減を図るため「空調機集中管理システム」を導入し、より一層の省エネルギーの推進に寄与している。また、平成20年度の評価委員会の評価結果を踏まえ、随意契約見直しの計画的な実施については、計画通り実施できなかった10件すべてを一般競争入札へ移行している。
 自己点検・評価及び情報提供については、携帯電話用のウェブサイトの運用を開始し、高校生・受験生への情報発信の強化を行っている。
 その他業務運営については、キャンパス構想に基づき、大岡山キャンパスのグラウンドの人工芝化、段差のないフラットな歩道等の環境整備を実施している。また、平成20年度の評価委員会の評価結果を踏まえ、遠隔講義システムの整備を進め、OCWコンテンツに関して国際的に共通のライセンスであるクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)の契約フォーマットを採用し、著作権に係るCC(Creative Commons)セミナーの開催と学内の啓発を行っている。
 教育研究等の質の向上については、環境・エネルギー等の学際性の高い異分野間の融合を効果的に進めるため、学内に散在している研究者を集約し、環境エネルギー機構を設置している。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 学長主導の戦略的マネジメント体制の企画立案組織の整備・充実のため、大学マネジメントセンター及び総合プロジェクト支援センターを設置し、マネジメント体制の強化を図っている。

○ 教育研究等への支援強化等を目的として、21世紀の個性輝く東京工業大学検討委員会の下に、部局事務改革検討ワーキンググループを設置し、改革に係る基本方針を策定している。

○ 学内の各種委員等の管理運営業務等を免じ、研究に専念することができる非常勤教員(特定有期雇用教授)のポストへの異動を可能とする制度を整備している。

○ 女性教員を積極的に採用するとともに、女性教員の准教授への昇任や課長・事務長公募による女性の課長登用等、女性の採用・登用の促進に向けた取組が行われている。

○ 事務支援センターを設置し、各課等の非常勤職員を集中管理するとともに、忙しい部署への一時派遣を行うなど非常勤職員の有効利活用を実施している。

○ 経営協議会の審議内容は、大学のウェブサイトに議事録を掲載することにより社会に広く公開している。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載29事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 建物各室の空調機の運転を監視・制御する「空調機集中管理システム」を導入し、電気使用量削減を図ることにより、省エネルギーの推進に寄与している。

○ 水道使用料金の削減を図るため、井戸水を水道水基準値内に浄化して利用するシステムの導入を決定している。

○ 社団法人蔵前工業会及び東京工業大学基金支援会と連携して、一般個人及び民間企業等に対して、東京工業大学基金の募集活動を推進している。

○ 平成20年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、随意契約見直しの計画的な実施については、平成20年度までに計画通り実施できなかった10件については、すべて平成21年度中に一般競争入札へ移行し、随意契約見直し計画はすべて実施しており、指摘に対する取組が行われている。

○ 中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載15事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 代表的な研究成果を取りまとめ、「1分で感じる東工大の研究成果」としてウェブサイトで公開している。

○ 携帯電話用のウェブサイトの運用を開始し、高校生・受験生への情報発信の強化を行い、アクセス件数を毎月確認すると同時に、学内に向けてウェブサイトへの積極的な掲載を促している。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載7事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ キャンパス構想に基づき、大岡山キャンパスのグラウンドの人工芝化、段差のないフラットな歩道等の環境整備を実施している。

○ 省エネルギー推進のため、東工大蔵前会館(Tokyo Tech Front)には年間28,000kwh程度の発電が見込まれる太陽光パネルを設置し、生命理工学研究科棟等には照明器具をインバーター方式の安定器を使用した器具に交換している。

○ 平成22年度から学際大規模情報基盤共同利用・共同研究拠点(8大学の情報基盤センター)が発足することに伴い、共同研究の試行を行い、スーパーコンピューター(TSUBAME)のみを利用する4件の課題と、TSUBAMEを含んだ複数センターの計算機を利用する2件の課題を実施している。

○ 平成20年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、遠隔講義システムの整備については、システム機器を調達し、ビデオ会議端末からネットワーク経由で講義や会議の映像の保存・蓄積が可能となり、また、機器の動作検証と通信確認を行い学内利用者用操作マニュアルを作成し、窓口等の運用面での体制も整えており、指摘に対する取組が行われている。

○ 平成20年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、OCWコンテンツに関する契約フォーマットの策定については、契約フォーマットとして、国際的に共通のライセンスであるクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)が採用され、公開コンテンツについて「表示-非営利-継承」の条件により、複製、頒布、展示、実演、二次的著作物の作成を可能としており、指摘に対する取組が行われている。

○ 平成20年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、著作権等に係るCC(Creative Commons)セミナーの開催と学内の啓発については、CC Japanより理事2名を招きGSIC Seminar 2009 No.1「Open Resources とCC(Creative Commons)Japan」と題した講演会を開催し、また、講演の模様を収めた動画を学術国際情報センターのウェブサイトに公開しており、指摘に対する取組が行われている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載42事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成21年度の外形的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

○ 大学院教育改革の推進として、「大学院博士一貫教育プログラム」を実施し、31名の学生を海外研修やインターンシップに派遣している。

○ 教育関係部署と国際関係部署が連携して、「留学先での取得単位の認定ガイドライン」を策定し、学生が留学した際の単位取得の幅広い選択を可能としている。

○ 教務Webシステムの運用を開始し、学生側では、学習申告や成績の閲覧、教員側では、成績報告や期末試験調査等の連絡を行っている。

○ インターンシップ企画マネージャーを置き、学部、大学院での実施状況のアンケートを行い、全学的な調査、分析を行っている。

○ 環境・エネルギー等の学際性の高い異分野間の融合を効果的に進めるため、グローバルCOE拠点「エネルギー学理の多元的学術融合」が設置した多元学術融合エネルギー研究センターにおける研究教育システムを全学的に発展させ、学内に散在している研究者を集約して、環境エネルギー機構を設置している。

○ 附置研究所を軸に全学の強みと総合力を発揮し、新たな分野へ戦略的に展開できる研究組織を構築することで、大学全体の研究、教育及び社会貢献の推進に資するために、新統合研究院を設置することとしている。

○ 「若手研究者の自立的研究環境整備促進」に採択され、テニュア・トラック制に基づき若手研究者に競争的環境の中で自立と活躍の機会を与える仕組みの導入を進めている。

○ 「産学官連携戦略展開事業(戦略展開プログラム)国際的な産学官連携の推進」に採択されたことを受けて、米国の非営利研究機関のバテル記念研究所と連携を進める一方、国際的共同研究及び国際受託研究の創出に尽力し、それぞれ13件(約9,200万円)及び1件(約400万円)の実績を上げている。

○ アジア地域における理工系トップ大学の連携体制の構築を図ることを目的として、大学が提唱する「アジア理工系大学トップリーグ(仮称)」に関して、香港科学技術大学、韓国科学技術院、南洋理工大学(シンガポール)、清華大学(中国)との間でコンソーシアム設立に関する基本的枠組みを合意している。

全国共同利用関係

○ 全国共同利用の附置研究所である応用セラミックス研究所では、研究者コミュニティに開かれた運営体制を整備し、大学の枠を越えた全国共同利用を実施している。研究所では、研究所として取組むべき重点研究について5件を特定研究課題として提示し、組織的な共同利用研究を推進している。特に、若手研究者に向けて、3大学3研究所連携プロジェクトに関係する公募研究を推進している。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成23年12月 --