国立大学法人群馬大学の平成21年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 群馬大学は、人類の繁栄と生存の根幹に関わる諸問題を意欲的・創造的に取り組む人材の育成、最先端の学術研究の世界的水準での推進、地域社会への貢献を基本理念に掲げ、教育、研究、社会貢献、国際貢献、大学運営に関する目標を設定し、特色ある教育、研究、社会貢献活動を推進するとともに、教育研究体制、環境の整備、組織運営体制の改善、財務内容の改善・充実等に努めている。
 業務運営については、重粒子線医学に係る研究、教育、治療等の進展及び円滑な運営に資することを目的に重粒子線医学研究センターと重粒子線医学センターから組織する「重粒子線医学推進機構」を設置している。
 財務内容については、群馬大学TLOを中心に新技術説明会を開催するとともに、特許をベースとした企業との共同研究を奨励した結果、特許に基づく共同研究収入が増加している。
 一方、年度計画に掲げている学内諸施設をベンチャー企業に開放して自己収入の増加を図ることについては、平成20年度から平成21年度にかけて収入が減少していることから、着実な取組が求められる。
 その他業務運営については、昭和地区において、PFI方式を準用した公共施設等の整備方針により附属病院アメニティモールの整備に着手している。
 教育研究等の質の向上については、多様な文化をもつ外国籍住民と地域住民との共生に資する専門的職業人の養成を行うため、地域協働ネットワークを活用した全学的・総合的教育カリキュラムを43科目開講し、うち28科目では現場での見学・体験等を含む内容・方法を取り入れている。また、将来を担う人材の若い芽を育むことを目的に、小・中学生を主な対象とした「群馬ちびっこ大学」を開催し、五感で学問の面白さ、奥深さを実感できる体験的学習を実施している。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 学長裁量人員枠として12名(対前年度比10名増)を重点プロジェクト推進のために配置している。

○ 重粒子線治療に関する説明について、治療開始と今後の計画に関する報道発表や大学ウェブサイトへの治療の特徴や適応疾患等の掲載を行うなど、経営協議会学外委員からの意見を大学運営に反映させている。

○ 監事監査(監事及び監事直属の監査室)に加え、通常業務全体にわたる個別点検・改善を行うため、内部監査室を設置し、相互に情報共有を図りつつ緊密な連携がとれるよう監査体制を整備している。

○ 重粒子線医学に係る研究、教育、治療等の進展及び円滑な運営に資することを目的に重粒子線医学研究センターと重粒子線医学センターから組織する「重粒子線医学推進機構」を設置している。

○ 平成20年度評価において評価委員会が課題として指摘した、職員(事務系、技術系、医療系及び看護系職員)評価を実施したが、その結果を給与制度等に活用するまでに至っていなかったことについては、各職域ごとの「人事評価結果の活用」に基づき、平成21年6月の勤勉手当及び平成22年1月の昇給から活用しており、指摘に対する取組が行われている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載16事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 群馬大学TLOを中心に新技術説明会を開催するとともに、特許をベースとした企業との共同研究を奨励した結果、特許に基づく共同研究等収入は、2億3,932万円(対前年度比1億4,327万円増)となっている。

○ 短期運用を充実させた資金運用により、5,057万円(対前年度比312万円増)の運用益を確保し、学長裁量経費として教育研究施設・設備整備のための予算の一部に活用している。

○ 中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

平成21年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。

(法人による自己評価と評価委員会の評価が異なる事項)

○ 「共同研究イノベーションセンターその他の学内諸施設をベンチャー企業に開放し、新産業の創出とともに、自己収入の増加を図る」(実績報告書27頁・年度計画【223】)について、共同研究イノベーションセンターによる起業塾開催等の取組を行っているものの、平成20年度から平成21年度にかけて機器分析センターに係る収入が大幅に減少していることから、年度計画を十分には実施していないものと認められる。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けておおむね順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載16事項中15事項が「年度計画を十分に実施している」と認められるが、1事項について「年度計画を十分には実施していない」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 学生の自主性を尊重した授業評価(教養教育科目、専門教育科目、大学院科目延べ1,644科目)を実施し、評価結果を担当教員にフィードバックするとともに、授業改善に反映させている。また、授業評価結果等に基づき、全学的なベストティーチャー表彰を実施し、表彰者に教育研究資金の配分を行っている。

○ 機関リポジトリの登録コンテンツ及び電子ジャーナルの拡充を図り、群馬大学学術情報リポジトリ(GAIR)の登録件数は458件増加し、延べ3,900件となっている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載7事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 工学部1号館に共用研究スペースを119m2確保し使用者を公募するなどの取組により、競争的部分を除く共用研究スペースは6,063m2となっている。

○ 昭和地区において、PFI方式を準用した公共施設等の整備方針により附属病院アメニティモールの整備に着手している。

○ 競争的資金等の研究費の使用に当たり、事務処理手続の理解不足から生じる研究費の不正使用を防止する観点から、会計ルール及び競争的資金等の使用を分かりやすく解説した「研究費使用ハンドブック」を作成し、科学研究費補助金説明会において配付・説明を行うとともに、ウェブサイトに掲載して教職員への周知徹底を図っている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載26事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

評価委員会が平成21年度の外形的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

○ 教養教育科目及び分野別科目の計62科目に対して授業評価を実施し、その結果を担当教員にフィードバックするとともに、アンケート用紙の自由記述欄の意見を項目別に分類して組織的検証を実施している。

○ 多様な文化をもつ外国籍住民と地域住民との共生に資する専門的職業人の養成を行うため、地域協働ネットワークを活用した全学的・総合的教育カリキュラムを43科目開講し、うち28科目では現場での見学・体験等を含む内容・方法を取り入れている。

○ 学生の自己学習促進のため、「学生が選ぶ1000冊の本」等の取組を行い、学生用図書の充実を図っている。

○ 総合情報メディアセンターと各部局が連携して電子ジャーナル、各種データベースの講習会や文献検索演習の講演会を実施し、情報リテラシー教育の充実を図るとともに、情報倫理e-ラーニング教材(日本語版と英語版)を作成し、公開している。

○ 出産や育児後のサポート体制の構築等女性医師の支援を目的とした「女性医師等教育・支援部門」を医学部附属病院医療人能力開発センターに設置している。

○ 将来を担う人材の若い芽を育むことを目的に、小・中学生を主な対象とした「群馬ちびっこ大学」を群馬県、群馬県教育委員会等の協力・連携の下に開催し、五感で学問の面白さ、奥深さを実感できる体験的学習を実施している。

○ 国際協力事業及び国際共同研究の拠点となる機関として、海南大学(中国)、インド工科大学デリー校と協定を締結している。

附属病院関係

○ 北関東医療圏の計画的な医師育成を行うため、「関東・信州広域循環型専門医養成プログラム」に基づいて、5大学病院とその関連病院を循環しながら幅広く研修を行い、専門医資格の取得を目指す「医師キャリア形成システム」を構築している。診療では、救急医療の充実、災害時医療、人材養成等に必要な体制を構築する目的から、救急部と総合診療部を中心とした診療体制の一本化を図り、「救命・総合医療センター」を設置するなど、初期診療体制の強化に取り組んでいる。
 今後、診療科を統合させたメリットを生かして、総合診療・全人的な医療を担う医師の養成に取り組むとともに、先端研究推進のためのさらなる取組が期待される。

(教育・研究面)

○ 各種シミュレータ・トレーニング機器を整備した「スキルラボセンター」を開設し、医師、コメディカル、医学生等延べ2,385名が研修を実施するなど、教職員の医療技術習得を推進している。

○ 大学院教育という確立した水準の学問的内容と附属病院臨床試験部におけるOn the Job Training(OJT)をカリキュラム上融合させ、大学院修士課程学生を中心に、専門的な臨床研究コーディネーターや製薬企業における臨床開発担当者を養成するOJTプログラムを実施している。

(診療面)

○ 新型インフルエンザを始めとする、感染症患者の診察をより安全に行うことを目的に、感染症診察室を設置し、感染症対策の強化を図っている。

○ 都道府県がん診療連携拠点病院として、がん相談支援センターを設置、また、患者や家族が気軽に集って話し合える場所として、患者が主体運営する「なごみサロン」を開設するなど、患者サービス支援体制の強化に取り組んでいる。

(運営面)

○ 国立大学病院管理会計システム(HOMAS)の活用により、各種分析資料を病院運営会議や臨床主任会議において報告し、経営に対する職員の意識向上に引き続き努めている。

○ 外部機関に医用材料等契約支援業務及び関連コンサルティング業務を委託し、約2億9,000万円の経費削減を図っている。

○ 外部評価では、財団法人日本医療機能評価機構による病院機能評価Ver5.0に認定されている。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成23年12月 --