国立大学法人福島大学の平成21年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 福島大学は、地域に根ざした教育と研究を進め、教育重視の人材育成大学を目指すべく、学群学類制への教育組織の転換、学系制の導入による研究組織の再編・整備、自然と人間との共生の在り方を地域から探求する個性あるプロジェクトの推進、教育研究のグローバルな展開に努めている。
 業務運営については、採用後3年までの職員を対象とした入学アドバイザー制度を開始し、延べ37人が高校生を対象とした個別相談会・大学訪問において補助業務を行っている。
 財務内容については、景気の低迷により、民間企業からの外部資金獲得が難しい状況である中、受託研究・共同研究の推進支援や産学官連携活動の強化等を図るため、平成20年度から引続き産学官連携コーディネーターを配置するとともに、県内各地で企業経営者・金融機関・商工会・市議会等から地域のニーズを聞き取る地域ニーズ調査を実施するなど、外部資金確保につなげるための取組を行っている。
 自己点検・評価及び情報提供については、学生向け広報誌「FUN」について、平成20年度に続き編集委員として学生を参画させ、意見・提案を取り入れて活用しやすい広報誌として作成している。
 その他業務運営については、非効率施設の有効活用策を「資産有効活用プロジェクト企画室」において検討し、報告を受けた「資産有効活用検討ワーキンググループ」では、研修施設について近隣の福島県立美術館との連携による利活用を図るなど、施設活用提案を盛り込んだ最終報告書をまとめ、役員会へ報告している。
 教育研究等の質の向上については、「大学教育充実のための戦略的大学連携支援プログラム」を基に、代表校として県内全ての高等教育機関を結集した「アカデミア・コンソーシアムふくしま」を設立するとともに、高大連携や地域連携に関わる事業を含め、合計12の個別事業に取り組んでいる。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 採用後3年までの職員を対象とした入学アドバイザー制度を開始し、延べ37人が高校生を対象とした個別相談会・大学訪問において補助業務を行っている。

○ 人材養成プロジェクト企画室会議を年間10回開催し、事務系職員のあるべき姿「All For Students!」を定め、5つの行動指針とその具体的方策について、参事会議に報告し、事務職員への意識の浸透を図っている。

○ 事務職員の自主的・積極的な業務改善案を管理運営や経営に反映させ、大学の活性化及び業務の効率化を図るため、ミドルアップダウン型で意思決定を行う新たな試みとして、事務局長の下に5つのプロジェクト企画室を設置している。

○ 経営協議会の審議内容は、大学のウェブサイトに議事録を掲載することにより社会に広く公表している。

○ 平成20年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、経営協議会の審議の適正化については、適切に審議が行われており、指摘に対する取組が行われている。

○ 平成20年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、大学院修士課程における学生収容定員の充足率が90%を満たさなかったことについては、専任職員の配置や、広報活動強化の取組により100%となっており、指摘に対する取組が行われている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載18事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 景気の低迷により、民間企業からの外部資金獲得が難しい状況である中、受託研究・共同研究の推進支援や産学官連携活動の強化等を図るため、平成20年度から引続き産学官連携コーディネーターを配置するとともに、県内各地で企業経営者・金融機関・商工会・市議会等から地域のニーズを聞き取る地域ニーズ調査を実施するなど、外部資金確保につなげるための取組を行っている。

○ 財務分析状況について学内向け(「財務情報の分析」)と学外向け(「財務レポート2009」)の2種類の報告書を作成し、今後の財務改善の取組及び資源配分の効率的・効果的な実行に結びつけていくこととしている。

○ 外部資金比率が3.0%(対前年度比1.2%減)となっていることから、外部資金獲得に向けさらなる取組が期待される。

○ 中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

○ 平成20年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、科学研究費補助金の申請者数と受入額の大幅な増加を図ることについては、受入額は過去最高(1億979万円(平成20年度:8,063万円))となり増加していること等から、指摘に対する取組が行われている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載10事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 学生向け広報誌「FUN」について、平成20年度に続き編集委員として学生を参画させ、意見・提案を取り入れて活用しやすい広報誌として作成している。

○ 「大学案内」では、特に各学類のページにおいて、専攻ごとにキーワード、学びの目的及び主な進路を一覧表にしたほか、紹介する研究室の数を増やすことにより、学類・専攻の情報を充実し、分かりやすいものとしている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載10事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 非効率施設の有効活用策を「資産有効活用プロジェクト企画室」において検討し、報告を受けた「資産有効活用検討ワーキンググループ」では、研修施設について近隣の福島県立美術館との連携による利活用を図るなど、施設活用提案を盛り込んだ最終報告書をまとめ、役員会へ報告している。

○ 金谷川キャンパスは多数の絶滅危惧生物や希少生物の生息・生育地となっており、これらの保護・保存を目指し、第一種・第二種保全地域の指定をした施設整備計画図を作成し、キャンパスマスタープランに盛り込んでいる。

○ 職員掲示板やポスター掲示による、「クールビズ」・「ウォームビズ」への取組や、電気・ガス・水道使用量の対前年同月比の公表を継続することで、省エネルギー意識の向上や光熱水使用料金の節減を図ることにより、エネルギー消費原単位で前年度比0.3%の削減となっている。

○ 効率的なエネルギー対策を推進するために、老朽化が著しいボイラー設備の設備更新を行うとともに、特別支援学校の照明器具をHfインバータタイプに更新して省エネルギーを図っている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載5事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

評価委員会が平成21年度の外形的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

○ 「教職専門性向上コースワーク」は、平成21年度に改組された人間発達文化研究科において、質の高いバランスのとれた教員を養成するために設置されており、「福島の教員スタンダード」に基づき授業メニューを設定しており、大学での講義だけでなく、附属学校園等学校現場での実践研究も実施している。

○ 1年次の教養演習をはじめ、ゼミ等4年間を通じた少人数教育やフィールドワーク、実習等の双方向型授業を重視し、問題発見、課題探求、プレゼンテーション、コミュニケーション能力等の育成に努めている。

○ 福島大学版学習ガイドブック「学びのナビ」について、平成20年度に教養演習等で活用した際の問題点や学生の意見等を踏まえ、項目を追加し、二色刷・持ち運びやすいB5判にするなど改善を図り、新入生全員に配布している。

○ 学生の保護者等に対し、大学の就職状況、就職支援体制並びにキャリア教育への理解を深めるために、「親のための就職セミナー」を大学祭の一般公開日に合わせて実施し、220名の保護者の参加があり、厳しい環境下での就職状況に対する関心に応えている。

○ 福島大学教職員有志で組織している留学生後援会で、留学生住宅総合補償加入金の補助やアパート入居時の礼金補助、生活資金5万円の貸与等の経済的支援を行っている。

○ 大学の特色ある集団的・組織的な研究を推進するため、社会的ニーズの大きい分野の2つの研究所として、発達障害児早期支援研究所及び小規模自治体研究所を新たに立ち上げ、講演会を開催するなど研究成果を社会に還元している。

○ 知的財産管理委員会を発展的に解消し、知的財産管理室を新設すると同時に、発明審査委員会の審査機能を同室に移管し、発明審査から特許出願までの一連の審議を包括的に行う体制を構築するとともに、研究推進機構本部直轄の事業化プロジェクトチームの機能と権限を強化し、専門家集団の下、効率的な意志決定(リーダーシップの推進)に基づき、よりスピーディーに対応できる体制に再編している。

○ 「大学教育充実のための戦略的大学連携支援プログラム」を基に、代表校として県内全ての高等教育機関を結集した「アカデミア・コンソーシアムふくしま」を設立するとともに、高大連携や地域連携に関わる事業を含め、合計12の個別事業に取り組んでいる。

○ 大学図書館と福島県立図書館において、相互に連携を図り、利用者等の学習・教育・研究活動の推進に資することを目的とした、「図書館利用の相互協力に関する協定」を締結し、両図書館の間を毎週1回配送車が往復することにより、従来有料だった送料をなくし、利用者の負担軽減を図っている。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成23年12月 --