国立大学法人旭川医科大学の平成21年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 旭川医科大学は、医療の質の向上、地域医療への貢献を推進するため、高い生命倫理観を有し高度な実践的能力を有する医療職者を育成するとともに、生命科学に関する先端的な研究を推進し、高度な研究能力を持つ研究者を育成することを目指している。そのために、「スピード」、「先取り」、「共有」をキーワードに大学改革の方向性を示し、学長のリーダーシップの下で改革を進めている。
 業務運営については、卒前から卒後の地域医療に関する一貫教育、地域医療医のキャリア支援、関連教育病院との間で地域医療教育実践のための企画や運営、地域医療及び地域医療教育の研究等を担い、北海道の地域医療に貢献する良医の育成を継続的に行っていくことを目的として、「地域医療教育学講座」を設置している。
 財務内容の改善については、診療材料等の期限切れ防止対策の一環として、各手術室の在庫量及び術式別材料セットの構成内容を見直し、外来・病棟・中央診療部門では、在庫品目数の見直しの他、各部署の在庫保管場所を集約化し、在庫管理の効率化と在庫量の節減を図るとともに、SPD(Supply Processing and Distribution)の配送サイクルを「翌日配送」から「当日配送」に短縮することで、在庫量を削減している。
 その他業務運営については、外国人研究者や留学生の受入体制を整備するため、職員宿舎の一部を改修し、単身用居室、家族用居室及び談話室を設けた国際交流センターを設置するとともに、看護師宿舎の1階部分を改修し、病後児保育施設として活用している。
 教育研究等の質の向上については、遠隔医療センターにおいて、遠隔医療システムを用いて道内を中心に国内外51の医療機関とネットワークを形成し、手術指導や診断支援を通して、地域間の医療格差の是正、医療過疎の解消に努めるとともに、さらなる高質化及び利用促進に向け、住民の医療情報や健康情報を住民自身が管理できるウェブサイトシステム「ウェルネットリンク」を開発し、インターネット上でのサービス運用を開始している。 

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 卒前から卒後の地域医療に関する一貫教育、地域医療医のキャリア支援、関連教育病院との間で地域医療教育実践のための企画や運営、地域医療及び地域医療教育の研究等を担い、北海道の地域医療に貢献する良医の育成を継続的に行っていくことを目的として、「地域医療教育学講座」を設置している。

○ 地域の医療機関並びに各自治体等で組織する「道北ドクターヘリ運航調整研究会」の要請を受け、道北ドクターヘリ事業の協力基幹病院として、1.格納庫及び給油施設の用地提供、2.ヘリポートの整備、3.医師・看護師の養成及び派遣等により、基地病院である旭川赤十字病院との連携の下に運航を開始している。

○ 「旭川医科大学教育改革のグランドデザイン」に沿った教育改革の一つである「臨床実習改革」の一環として、これまでのスキルズ・ラボラトリーを「臨床シミュレーションセンター」として改組するとともに、当該センターの持つシミュレーション教育資源の共同利用を推進するため、学内共同利用施設として格上げし、専任のインストラクター等を配置している。

○ 高齢社会に対応した運動機能障害及び高次脳機能障害克服の教育・研究拠点として脳機能医工学研究センターを設置している。

○ 復職・子育て・介護支援センター(略称:二輪草センター)において、病気回復期の子どもを預かる病後児保育室を新たに設置し、教職員・学生のための病後児保育を実施している。

○ 経営協議会の審議内容は、大学のウェブサイトに議事録を掲載することにより社会に広く公表している。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載10事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 診療材料等の期限切れ防止対策の一環として、各手術室の在庫量及び術式別材料セットの構成内容を見直し、外来・病棟・中央診療部門では、在庫品目数の見直しの他、各部署の在庫保管場所を3~4か所に集約化し、在庫管理の効率化と在庫量の節減を図るとともに、SPDの配送サイクルを「翌日配送」から「当日配送」に短縮することで、在庫量を1.5 日相当分から0.5日相当分に削減している。

○ 病院長のリーダーシップの下、病院長が各診療科長と打合せを行い、診療科ごとに目標値(診療報酬請求額、患者数、診療単価、手術件数等)を設定するとともに、当該目標値の達成に向けて協力要請を行っている。

○ 中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

○ 平成20年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、文部科学省科学研究費補助金の申請を各教員1件以上行われていないことについては、平成21年度においては、合理的理由のある者を除いて各教員1件以上の申請が行われており、指摘に対する取組が行われている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載6事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 役員会、経営協議会、教育研究評議会、教授会及び病院運営委員会等主要会議における審議及び報告事項の概要を一覧にし、当該会議における発言メモ及び配付資料のPDFファイルをリンクさせて一元的に管理することで、評価業務の効率化を図っている。

○ 図書館ウェブサイトについて、利用者アンケートの結果を踏まえてリニューアルし、操作性の向上及びコンテンツの充実を図るとともに、英語版を作成し、留学生等の利用促進を図っている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載5事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用、2.安全管理

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 外国人研究者や留学生の受入体制を整備するため、職員宿舎の一部を改修し、単身用居室(6室)、家族用居室(1室)及び談話室を設けた国際交流センターを設置するとともに、看護師宿舎の1階部分を改修し、病後児保育施設として活用している。

○ 総合研究棟(基礎臨床研究棟)改修2期工事に伴い、プロジェクト型の研究や競争的資金等による研究のためのスペースを確保している。

○ 平成16年度に策定したキャンパスマスタープランを見直し、「キャンパスマスタープラン2009」を作成し、公表している。

○ 平成20年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、検体の目的外使用に関する再発防止に向けた体制整備等の取組については、臨床研究に関する倫理指針に基づく研究者の業務手順書について作成の上配付するなど、指摘に対する取組が行われている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載9事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

評価委員会が平成21年度の外形的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

○ 臨床実習開始前のシミュレーション実習の重要性に鑑みて、従来のスキルズ・ラボラトリーを「臨床シミュレーションセンター」に改組し、専任のインストラクターを配置し、学内共同利用を促進している。

○ 学生自身が書店で選書するブックハンティングを継続的に実施して、学生の読書ニーズに沿った図書を200冊以上提供し、利用の促進を図るとともに、旭川市図書館との連携協力を進め、学生が送料を負担することなく旭川市図書館の図書を取り寄せて借りることを可能とすることで、一般教養図書の提供に役立てている。

○ 遠隔医療センターにおいて、遠隔医療システムを用いて道内を中心に国内外51の医療機関とネットワークを形成し、手術指導や診断支援を通して、地域間の医療格差の是正、医療過疎の解消に努めるとともに、さらなる高質化及び利用促進に向け、住民の医療情報や健康情報を住民自身が管理できるウェブサイトシステム「ウェルネットリンク」を開発し、インターネット上でのサービス運用を開始している。

○ 複合領域研究により機能再建医療の確立を目指す脳機能医工学研究センターについて、相当程度の規模のセンターをすべて大学の資金で設置しており、積極的に取り組んでいる。

○ リエゾンオフィスの知的財産マネージャーを中心に、遠隔医療及びエキノコックス症に係る研究成果を取りまとめ、「産学官連携推進会議」及び「イノベーションジャパン2009 大学見本市」に出展し、産学連携活動の活性化を図っている。

○ 入学試験に北海道枠を設け、北海道枠での合格者を増加させるとともに、受験者全体においても北海道出身者の比率を高めている。

附属病院関係

○ 初期研修医の確保に向けて、柔軟かつ密度の濃い研修が受けられる新プログラム作成や医師不足が懸念される分野の臨床研修体制の充実を図り、初期研修医の受入数も増加している。診療では、地域からの強い要請等も踏まえて、救急病床を20床に増床、救命救急センター設置(平成22年度)に向けての準備委員会の立ち上げ、道北ドクターヘリ事業の協力基幹病院として、ヘリポートの整備等、救急医療体制の強化を図っている。
 今後、遠隔医療システムを活用した地域医療機関との連携を推進するとともに、喫緊の社会的課題に対して、積極的に高度先端医療を提供するためのさらなる取組が期待される。

(教育・研究面)

○ 初期臨床研修プログラムの作成に当たり、臨床研修病院群を見直し、協力型臨床研修病院を16病院から33病院に増加して、地域医療機関との連携体制を強化している。

(診療面)

○ 緩和ケア診療部、栄養管理部、入退院センターを設置して、診療の質の向上を図るとともに、チーム医療の推進を図っている。

○ 地域がん診療連携拠点病院の指定を受け、臓器別診療体制による病診連携のネットワークを活用し、地域のがん診療ネットワークの中心的役割を担っている。

(運営面)

○ 遠隔医療のさらなる高質化及び利用促進に向け、住民の医療情報や健康情報を住民自身が管理できる「ウェルネットリンク」を開発し、インターネット上でのサービス運用を開始している。

○ 診断群分類包括評価(DPC)分析ツールを導入して、DPCと出来高換算差額分析をはじめ、診断群分類別の治療パターン分析、他医療機関とのベンチマーク等を実施、病院長との打合せ資料として配付するなど、経営改善に向けた取組を行っている。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成23年12月 --