国立大学法人帯広畜産大学の平成21年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価 

 帯広畜産大学は、「実践的教育の充実」、「世界をリードする研究者の養成」、「地域社会並びに国際社会との連携」を理念とする世界最高水準の獣医・農畜産系大学を目指しており、十勝圏内の各研究施設等との連携を深めながら、「食の生産向上と安全性」を基本とする農畜産物生産から食品衛生及び環境保全に至る一連の研究教育を通じ、人類の健康と福祉に貢献することを目指している。
 業務運営については、附属家畜病院を動物医療センターに改組し、これに伴い設置目的を改め、また、本センターの運営委員会は、学内外の関係者から広く意見を取り入れられる構成としている。
 財務内容については、地域共同研究センターを中核に共同研究の質の充実と技術移転の可能性追求に重点を置いた連携の充実に努め、コーディネーターの積極的な活動による研究シーズとニーズのマッチング等により、外部資金の獲得に努めている。また、科学研究費補助金の申請率、申請希望者の拡大についても、学長裁量経費の教育研究改革プロジェクトの募集に際し、科学研究費補助金の申請を条件とするなどの措置により、申請率が上昇している。
 自己点検評価及び情報提供については、大学情報及び大学評価システムの平成22年度導入に向け、教員評価における多元的業績評価の評価項目及びファクター改正に係る検討を行っている。
 教育研究等の質の向上については、平成21年度獣医師国家試験を受験した獣医学課程学生40名が全員合格を果たすなど、教員によるきめ細やかな指導及び少人数グループによる積極的な学習の取組等が実を結んでいる。また、大学独自の「食品安全認証」を視野に入れた総合的な「食品の安全保障システム」構築に向けての研究を進めている。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 産学連携により生じる利益相反について大学として主体的にマネジメントするため、学外有識者1名を含む8名の委員で構成する利益相反審査委員会を設置し、利益相反セミナーを開催したほか、「利益相反の取り扱い」を作成し、全教職員に配布し、周知を図っている。

○ 教育研究改善プロジェクト経費の経費区分を見直し、平成21年度から新任教員の教育研究活動の開始を支援するための「教育研究スタートアッププロジェクト」を新設している。

○ 附属家畜病院を動物医療センターに改組し、設置目的を「動物医療を通して獣医学及び畜産学に関する教育研究を行うとともに、地域動物医療の進展に寄与すること」と改め、また、管理及び運営の基本方針等について審議する本センターの運営委員会の委員を増員し、学内外の関係者から広く意見を取り入れられる構成としている。

○ 地域貢献推進機能を学務課から地域共同研究センターへ移管し、産学連携業務と生涯学習に係る地域サービス業務の一元化を図り、地域に対する窓口を一本化することによるワンストップサービスを実施している。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載33事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 地域共同研究センターを中核に共同研究の質の充実と技術移転の可能性追求に重点を置いた連携の充実に努め、コーディネーターの積極的な活動による研究シーズとニーズのマッチング等により、外部資金比率は15.5%(対前年度比0.4%増)となっている。

○ 「北海道地区国立大学法人の資金の共同運用に係る協定(Jファンド)」を締結し、資金の共同運用を開始し、独自の地元金融機関向けの資金運用と併せて運用益を上げるとともに、学長裁量のプロジェクト経費等、幅広く教育研究経費の財源の一部に活用している。

○ 財団法人横浜企業経営支援財団と地域産業の振興と地域社会の発展に寄与することを目的として、産学連携に関する協定を締結し、この協定に基づき、商談会を開催し、研究成果の他、十勝の企業5社の参加により十勝の特徴的な食品を首都圏の企業等に紹介し、共同研究や技術移転につなげる取組を推進している。

○ 畜大牛乳の付加価値を高めるために、製造工程を北海道HACCP方式とし、平成22年度中に認証を得る予定となっている。

○ 平成20年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、科学研究費補助金の申請率、申請希望者の拡大については、2度説明会を開催したほか、学長裁量経費の教育研究改革プロジェクトの募集に際し、科学研究費補助金の申請を条件とするなどの措置により、申請率が86.9%から92.8%に上昇しており、指摘に対する取組が行われている。

○ 中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載12事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 評価情報データベース構築に向け、教員評価における多元的業績評価の評価項目及びファクター改正に係る検討を行い、その評価項目を包含した教育評価システムを導入し、平成22年度に本格稼働させること等により、ITを活用した中期目標・年度計画の進捗状況管理及び自己点検評価作業が可能となり、評価作業の効率化が促進されている。

○ 広報室において、従来の体制を見直し、新たに広報戦略の企画立案のために事務職員(課長職、係長職)を委員に加え、体制の充実を図っている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載8事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 施設環境マネジメントオフィスにおいて、各事業(学生寄宿舎改修、(仮称)コミュニケーションプラザ整備、正門改修等)の整備計画の際に学内の意見を聴取し、整備計画に反映し実施している。

○ 総合研究棟2号館の改修事業に伴い、施設利用状況の調査とスペース使用の再編を検討し、流動的スペース(レンタルスペース1室49m2、マルチルーム4室107m2)を整備している。

○ 省エネルギー対策、温室効果ガス排出削減等への取組として、引き続き、学内ウェブサイト、掲示等により、各種会議での空調の制限、昼休みや未使用スペースの消灯等を周知し、学生、教職員への環境保全に対する意識向上を促している。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載18事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

評価委員会が平成21年度の外形的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

○ 平成21年度獣医師国家試験を受験した獣医学課程学生40名が全員合格を果たし、教員によるきめ細やかな指導及び少人数グループによる積極的な学習の取組等が実を結んでいる。

○ 国際的人材育成を目指して学生、教員等の実践的な英語能力の向上を図るため、英語教育に関する教材開発、授業改善等に関する支援を行うとともに、大学の管理運営上必要となる支援を行うため、イングリッシュ・リソース・センター(ERC)を設置し、学生スタッフを配置して、学生の英語教育の充実を図っている。

○ 図書・資料検索に係る情報リテラシー教育として、学部等の新入生に対し、授業と連携した、ティーチング・アシスタント(TA)を活用した情報検索ガイダンスを行っている。

○ 情報処理センターの統合認証基盤の仕組みを業務システムに活用すべく、教務システム及び学納金システムに対応させ、高度なセキュリティを確保した業務システムの構築を行っている。

○ 大動物特殊疾病研究センターを中心に、大学独自の「食品安全認証」を視野に入れた総合的な「食品の安全保障システム」構築に向け、検査・診断法の検証・開発、食中毒発生のメカニズムの解明、畜産農場における疾病予防対策の確立等についての研究を進めている。

○ 独立行政法人家畜改良センター十勝牧場の「スクラム十勝」加入、民間企業との包括連携協定締結、行政、金融、民間企業、有識者等で構成する「十勝版事業化評価委員会」への参加によって産学連携を強化している。

○ 産学官連携戦略展開事業(戦略展開プログラム)により、産学官連携研究員(コーディネーター)1名の雇用や、弘前大学、岩手大学及び山形大学を含めた4大学で構成している「北東ライフサイエンス部門(NLU)」のコーディネーター会議の開催による情報収集等により、ライフサイエンス分野の技術移転体制の強化を図っている。

○ 帯広市図書館の図書を市民文庫として、2か月ごとに一般図書を200冊借用して利用に供し、利用拡大を図るとともに、利用手続きの簡略化により、貸出冊数の増大を図っている。さらに、市民文庫へのリクエストの受付を実施するとともに、貸出期間を1週間から2週間へ延長している。

○ 独立行政法人国際協力機構(JICA)及びユネスコ国際教育計画研究所(IIEP)との連携融合事業の推進に加え、財団法人日本国際協力センター(JICE)との連携協力協定締結し、JICEが有する人材や国内外の多様なネットワークと連携することにより、人材育成を図っている。

全国共同利用関係

○ 全国共同利用の研究施設である原虫病研究センターは、研究者コミュニティに開かれた運営体制を整備し、大学の枠を越えた全国共同利用を実施している。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成23年12月 --