国立大学法人小樽商科大学の平成21年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 小樽商科大学は、実学重視の伝統と商科系単科大学としての特徴に基づいて、経済社会の発展と地域社会の活性化に貢献し、文化・人類の発展に寄与し得る研究の実施及び人材の育成を進めている。
 業務運営については、経営協議会の審議状況、学外委員からの意見と大学運営への活用状況を分かりやすく学外に発信するため、経営協議会の議事要旨に加え、過去3年間における経営協議会の学外委員からの意見を、提言、質問ごとに整理し、大学の対応、回答を集約してウェブサイトに掲載している。
 財務内容については、四半期ごとの予算執行状況調査の検証等に加え、事業進捗・予算執行状況に応じて「予算の吸い上げ・再配分」を適宜行い、大学全体の視点で効果的な予算執行を行っている。
 自己点検・評価及び情報提供については、より地域に密着した広報を展開するため、広報に特化した市民モニター制度を導入するとともに、公募に当たって応募者から収集した意見を、今後の広報活動の参考としている。
 その他業務運営については、環境と調和及び環境負荷の低減についての全学的な取組として、「環境マネジメントマニュアル」を作成し、ウェブサイトに掲載している。
 教育研究等の質の向上については、大学が掲げる「実学の精神」に基づき、地域と密着してキャリア教育を行う「地域連携キャリア開発」等の実践型講義の新規開講、学生による課外活動成果の自治体・企業への提案等、正課及び課外活動の展開と成果の還元を通じて、地域連携・貢献に取り組んでいる。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 経営協議会の審議状況、学外委員からの意見と大学運営への活用状況を分かりやすく学外に発信するため、経営協議会の議事要旨に加え、過去3年間における経営協議会の学外委員からの意見を、提言、質問ごとに整理し、大学の対応、回答を集約してウェブサイトに掲載している。

○ 「学長補佐」の任命対象を事務職員まで広げ、特定の渉外業務を担当する「学長特任補佐」制度を整備し、創立百周年記念事業推進室に学長特任補佐として事務職員を配置するなど、学長補佐体制の充実を図っている。

○ 道内国立大学の共同事務処理の一環として平成20年度に締結した「北海道地区国立大学法人資金共同運用(Jファンド)」により、資金の効率的な運用を図るとともに、物品等の共同調達に関する協定書を取り交わし、今後の物品・サービス等の一括調達において、大学間連携を推進することとしている。

○ 研究環境の整備や意識改革等を進め、女性教員が研究と出産・育児等を両立し、その能力を十分に発揮しつつ研究活動を行える仕組みの導入を進めている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載17事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 四半期ごとの予算執行状況調査を実施し、結果の分析と検証により、必要に応じてヒアリングや是正勧告等を行い、適正な予算執行に努めるとともに、事業進捗・予算執行状況に応じて「予算の吸い上げ・再配分」を適宜行い、大学全体の視点で効果的な予算執行を行っている。

○ 入試のデータ入力業務に係る仕様書を一新し、これまで職員が担当していた入試願書受付業務と合わせてアウトソーシングした結果、職員の負担が大幅に軽減されたのみならず、全体の費用も従来以下の金額となり、業務の効率化と費用の削減を実現している。

○ 一般管理費比率が6.8%(対前年度比1.6%増)となっていることから、削減に向けさらなる取組が期待される。

○ 中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載21事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 大学の公式ブログ「商大くんがいく!」の運営チーム及び大学広報誌の編集委員に学生を加え、情報のさらなる充実を図るとともに、学生による創立百周年記念小冊子の編集・発行等、学生目線による情報発信を推進している。

○ 大学情報をわかりやすく積極的に公開・提供するため、学内広報誌の作成・編集作業に学生を参加させたり、学生・教職員共同チームでブログを運営したりするなど、大学運営において積極的に学生を活用している。

○ より地域に密着した広報を展開するため、広報に特化した市民モニター制度を導入し、公募の結果10名の市民モニターを選定するとともに、公募に当たって応募者から収集した意見を、今後の広報活動の参考としている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載4事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用、2.安全管理

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 環境と調和及び環境負荷の低減についての全学的な取組として、「環境マネジメントマニュアル」を作成し、ウェブサイトに掲載している。

○ 大学院自習室を一般開放できる史料展示室とし、教員談話室を地域研究会の共同研究スペースとするなど、施設の効率的な活用を図っている。

○ 施設設備管理システム及び機関設備更新計画に基づき、暖房設備、機関給水設備、中央監視設備、電話交換機及び変圧器の更新を行っている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載11事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成21年度の外形的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

○ 大学が掲げる「実学の精神」に基づき、地域と密着してキャリア教育を行う「地域連携キャリア開発」等の実践型講義の新規開講、学生による課外活動成果の自治体・企業への提案等、正課及び課外活動の展開と成果の還元を通じて、地域連携・貢献に取り組んでいる。

○ 「社会人基礎力育成・評価システム構築事業」の成果として、「地域連携キャリア開発」を正式科目として開講し、「小樽の観光について商大生が本気で考えるプロジェクト」をテーマに、課題探求型の実践的なキャリア教育を展開している。

○ 教職員による新入生オリエンテーションの他、学生団体が主体となって「行列のできる商大説明所」、「よろず家(新入生歓迎会)」を開催し、学生生活の説明や履修相談を行うなど、教職員と学生の連携の基に、新入生の学生生活スタートアップ支援を多角的に実施している。

○ 履修登録、定期試験、学科所属等の年間スケジュール及び大学生活に係る情報を盛り込んだ「スケジュール帳」や、教職員及び学生から寄せられた推薦図書を掲載した「図書館を10倍楽しく利用できる本」等の大学オリジナル冊子を事務職員及び学生有志により編集・作成し、新入生全員及び在学生に配布するなど、教職員と学生の連携による大学生活支援のための取組を展開している。

○ 「学生と教職員の交流会」を開催し、各団体の活動内容の発表・報告を通じて、学生同士のネットワーク作り、学生・教職員間の連携強化を図っている。

○ 「グローバリズムと地域経済-北海道再生のための提言-」というテーマの下に、小樽商科大学地域研究会(教員34名参加)を設置し、学術研究員3名を新たに採用するとともに、地域研究部門、グローバル経済部門の2部門を設け、これをさらに9つの研究分野に分けて教員を配置し、組織的な研究を推進するための学内体制を整備するとともに、共同研究スペースを確保している。

○ 地域活性化を担う人材として、連携協定先の小樽市から職員を「地域連携推進コーディネーター」として受け入れ、学生の社会人基礎力向上を目指したプロジェクトを軌道に乗せ、産学官における人的ネットワーク形成に貢献している。

○ 大学の同窓会である社団法人「緑丘会」及び学生の就職支援団体「キャリア・デザイン・プロジェクト」と連携して、就職相談、就職支援融資、各種資格講座の開講等の就職支援事業を行っており、特に「緑丘東京企業等セミナー」は、大学の強固な同窓会ネットワークを活かした独自の就職支援セミナーとして、学生の就職支援に貢献している。

○ 社団法人緑丘会と提携して、地域における学生の活動を支援する公募型の財政支援制度「グリーンヒル・プロジェクト」を運用するとともに、学生の留学支援のための財政的支援を受けている。

○ 大学が所有する貴重図書を広く一般市民に公開する「貴重図書展示会」を開催している。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成23年12月 --