国立大学法人北海道教育大学の平成21年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 北海道教育大学は、義務教育諸学校の教員をはじめ、豊かな人間性を備え創造的に問題解決に取り組み、地域社会で意欲的に活躍できる人材の育成を目指している。平成18年度より「大学再編」を開始し、5キャンパスすべてで教員養成課程といわゆる新課程が並存する体制から、キャンパスごとの機能分担システムに転換するべく、学長のリーダーシップの下、「北海道教育大学アクションプラン2009-2011」を策定し、独自の改革に鋭意努力してきている。
 業務運営については、教員免許状更新講習の実施に当たり、新たに学長室として教員免許状更新講習推進室を設置するとともに、学務部教務課に教員免許更新講習グループを設置して、一体的な業務運営を図っている。
 一方、大学院専門職学位課程(教職大学院)について、平成21年度において一定の学生収容定員の充足率を満たさなかったことから、今後、速やかに、定員の充足に向け、入学定員の適正化に努めることや、入学者の学力水準に留意しつつ充足に努めることが求められる。
 財務内容については、テレビ会議システム利用の促進を行い、利用率をアップさせるとともに、経費の抑制を図っている。
 自己点検・評価及び情報提供については、元高等学校教員の「入試アドバイザー」が、高等学校を訪問して、入試制度への要望や高大連携等の調査を実施し、その調査報告書を基に入試・広報制度の課題を明らかにしている。
 教育研究等の質の向上については、現代的課題・子供理解等をキーワードに教養教育を見直すとともに、教員としての創造性や表現力の育成を図るため、新たに「演劇」の科目を開設することを決定している。また、民間企業・団体等と連携し、「金融教育公開研究会」、「稲作・酪農体験塾」等の地域貢献活動を進めている。 

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 学長室の1つである教育改革室、大学教育開発センター及び教育研究委員会が連携し、『「カリキュラム開発チーム」による教員養成課程の「学士力」を保証するカリキュラム開発プロジェクト』の一環として、「教員採用試験模擬試験」を教員養成課程等の3年生465名に受験させ、教職および各教科等の授業効果等についての調査を実施している。

○ 経営協議会の運営状況を検証し、協議題や報告事項とは別に、新たに「懇談事項」を加え、学生の地域貢献活動等について、委員から活発な意見が出されている。

○ 教員免許状更新講習の実施に当たり、新たに学長室として教員免許状更新講習推進室を設置するとともに、学務部教務課に教員免許更新講習グループを設置し、一体的な業務運営を図っている。

○ 監査室の機能強化を図るため、監査室長を専任とし、専任職員を2名へ増員し、監査対象部局からの独立性を確保するとともに、法人全体の業務執行の合理性のチェック、改善への提言を主な役割とするなど、機能面の見直しを行っている。

○ 平成20年度に実施した、教育評価、研究評価、社会貢献評価、管理運営評価の4部門からなる教員人事評価システムによる評価結果を基に、昇給等に反映させている。

○ 第1期中期目標期間における「女性教員採用推進策、教員応募者数及び採用者数の推移」を取りまとめ、男女共同参画推進会議において第2期の課題を確認するとともに、新規採用女性教員割合が35%を超えるなど、女性教員の採用の促進に向けた積極的な取組を行っている。

○ 「教職協働」の大学運営を支える事務職員の意識・業務改善等について、「事務系職員人事・業務改善等について(指針)(素案)」を作成し、全事務職員に配布・周知している。

○ 経営協議会から出された法人運営に関する意見(フエ大学(ベトナム)との教育研究交流に関する協定)について、その取組事例をウェブサイトで公表している。

○ 経営協議会の審議内容は、大学のウェブサイトに議事録を掲載することにより社会に広く公表している。

平成21年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。

○ 大学院専門職学位課程(教職大学院)について、学生収容定員の充足率が90%を満たさなかったことから、今後、速やかに、定員の充足に向け、入学定員の適正化に努めることや、入学者の学力水準に留意しつつ充足に努めることが求められる。 

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けておおむね順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載16事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められるが、大学院専門職学位課程(教職大学院)において学生収容定員の充足率が90%を満たさなかったこと等を総合的に勘案したことによる。 

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 学内会議旅費について、テレビ会議システム利用の促進を行い、テレビ会議の利用率を対前年度比4.6ポイントアップさせるとともに、旅費に換算して約1,700万円の経費の抑制を図っている。

○ 中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載6事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進、3.その他

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 大学情報の積極的な発信、社会的ニーズの的確な把握と多様な分野の新たなネットワークの構築のため、民間企業から広報アドバイザーを招へいし、大学における全学的広報活動の研究開発、内部コミュニケーション手法・情報発信全般に関する総合的なアドバイスを受けている。

○ 現行の大学評価システムを点検した結果、法人評価等の基本情報である資料やデータを、全学的に日常的に収集するシステムの必要性が明らかとなり、新たに全部局・教職員がアクセス可能なサーバーを備えた大学情報集積システム(Team File)を導入している。

○ 元高等学校教員の「入試アドバイザー」が、入試制度への要望や高大連携等の訪問調査を延べ171校で行い、その調査報告書を基に、入試・広報制度の課題を明らかにしている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載5事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ キャンパスマスタープランの見直しや、今後の耐震・老朽化施設の整備方法等について、施設マネジメント委員会において審議している。

○ 函館校7号館の多目的講義室に、直接外部からのアプローチを確保する改修を行い、地域連携事業が容易となるよう配慮している。また、平成20年度策定の施設維持管理マニュアルに沿って施設点検の取組等を適切に行っており、それに基づき予算確保も含め計画的維持管理を円滑に推進する手法となっている。

○ 各校においてキャンパス環境保全推進会議等を設けた新体制とし、平成20年度策定した「地球温暖対策に関する温暖化対策に関する実施計画」のフォローアップを重点課題として取り組んでいる。

○ 元大学長・弁護士等6名の学外委員による「北海道教育大学における倫理・人権教育の在り方等に関する有識者会議」を設置し、提言書「北海道教育大学における不祥事防止策について-快適なキャンパスライフの中にも凜とした雰囲気づくりを-」を受け、倫理・人権教育の在り方等に関する施策を講じることを決定している。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載8事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。 

2.教育研究等の質の向上の状況

評価委員会が平成21年度の外形的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

○ 現代的課題・子供理解等をキーワードに教養教育を見直すとともに、教員としての創造性や表現力の育成を図るため、「富良野Group(富良野塾)」と提携して、新たに「演劇」の科目を開設することを決定している。

○ 金融関係者、小中学校の教員、大学の教員からなるプロジェクトチームを結成し、金融人材育成のための共同研究を実施している。

○ 図書館情報システムを更新し、OPAC(蔵書検索システム)機能の強化、マイライブラリ機能の充実等を図り、図書館を学術情報のセンターとして強化すべく努めている。

○ 北海道立教育研究所と「食育の進め方に関するプロジェクト研究」を共同実施し、リーフレット「食育の進め方に関する研究」として刊行し、また、「食と農をつなぐ教育フォーラム報告書」を刊行し、関係者に配布している。

○ 民間企業・団体等と連携し、「金融教育公開研究会」、「食と農をつなぐ教育フォーラム」、「稲作・酪農体験塾」等の事業を行っている。

○ 現職教員の国際交流に関する派遣事業の多様化を図るため、マサチューセッツ大学アマースト校との間で現職教員プログラムの新規実施に向けた協議を行っている。

○ 平成22年度から教員養成課程を有する全キャンパスで新任教員研修を附属学校で行うことを決定し、大学・学部のファカルティ・ディベロップメント(FD)の場として活用することとしている。

○ 研究推進連絡協議会で調整を行い、大学・附属学校が連携して「外国語及び外国語活動(英語)」を共通テーマに共同研究を行い、その成果を「実践資料」として、全道の学校園に配付するとともに、研究大会を実施している。(教員就職状況)

○ 平成21年3月卒業者(教員養成課程)の就職状況は卒業者数771名に対し、正規採用が185名、臨時的任用が281名で、平成21年教員就職率は60.4%、進学者を除くと65.9%となっている。

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高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成23年12月 --