国立大学法人鳴門教育大学の平成20年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 鳴門教育大学は、21世紀に生きる人間として豊かな教養を培い、地球的視野に立って総合的に判断できる力量の形成に努め、教育者として子どもに対する愛情と教育に対する使命感を醸成し、教育に関する専門的知識を深めるとともに、教育の今日的課題に応えることのできる教員養成を目的とする「教員のための大学」として、学長のリーダーシップの下、常に大学運営の責任と権限を明確化し、マネジメントサイクル(PDCA)により各年度の取組課題を明確にし、その計画を実行してきている。
 業務運営については、既存の大学院修士課程を改組して大学院教育の実質化を図り、教職大学院を開設するとともに、講座制を廃止し、学問領域に応じた4つの教育部(基礎・臨床系、人文・社会系、自然・生活系、芸術・健康系)に改組するなど、教育研究体制の改革に努めている。
 一方、大学院専門職学位課程(教職大学院)について、平成20年度において一定の学生収容定員の充足率を満たさなかったことから、今後、速やかに、定員の充足に向け、入学定員の適正化に努めることや、入学者の学力水準に留意しつつ充足に努めることが求められる。
 また、年度計画に掲げている外国人教員の増員を図るための英文公募による応募状況の検証については、英文公募を行わず、検証するまでには至らなかったことから、改善に向けた取組が求められる。
 財務内容については、「業務コスト節減対策」に基づき、省エネルギー機器への切換、郵便発送先の見直し等を行い、管理経費について対前年度比1%(314万2,000円)削減している。
 教育研究の質の向上については、「FD推進事業専門部会」を設置し、公開授業や授業研究会、ワークショップ等を実施しているほか、学部において平成20年度入学生から「グレード・ポイント・アベレージ(GPA)制度」を導入するなど、教育方法改善のために組織的な取組が行われている。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  既存の大学院修士課程を改組して大学院教育の実質化を図り、教職大学院を開設している。また、高度専門職業人育成を行う教職大学院を戦略的に運営するため、教員組織の改組及び学長裁量人員枠を活用し実務家教員2名を採用している。
  •  教員組織について、講座制を廃止し、学問領域に応じた4つの教育部(基礎・臨床系、人文・社会系、自然・生活系、芸術・健康系)に改組し、教育研究活動を柔軟かつ弾力的に実施できる体制としている。
  •  女性教員比率を高めるための積極的改善措置を策定するなど、女性教員の採用の促進に向けた取組がなされている。
  •  機動的な業務運営を図るため、外部コンサルタントを導入し、法人経営に着目した「新たな事務組織構想」を策定し、事務局及び総務部長職を廃止している。
  •  個人情報漏洩対策等セキュリティの強化、ソフトウェア管理及び情報共有の効率化を図るため、事務部門におけるパソコンをシンクライアント型に変更している。
  •  日常の学校運営の効率化を図るため、各附属学校に校長の専任制を、また、大学・附属学校間の連絡調整及び附属学校部の管理運営を更に円滑に行うため、附属学校部長の専任制をそれぞれ導入している。

 平成20年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。

  •  大学院専門職学位課程(教職大学院)について、学生収容定員の充足率が90%を満たさなかったことから、今後、速やかに、定員の充足に向け、入学定員の適正化に努めることや、入学者の学力水準に留意しつつ充足に努めることが求められる。

(法人の自己評価と評価委員会の評価が異なる事項)

  •  「「鳴門教育大学における女性大学教員の割合を引き上げるための積極的改善措置(ポジティブ・アクション)」の推進状況及び外国人教員の増員を図るための英文公募による応募状況を検証する。」(実績報告書9頁・年度計画【165】)については、教員選考を実施しているが、英文公募を行わず、全て日本語による公募とし、検証するまでには至っていないことから、年度計画を十分には実施していないものと認められる。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けてやや遅れている

(理由) 年度計画の記載16事項中15事項が「年度計画を十分に実施している」と認められるが、1事項について「年度計画を十分には実施していない」と認められるほか、大学院専門職学位課程において学生収容定員の充足率が90%を満たしていないこと等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  戦略的教育研究開発室において、各種GPプログラムの採択に向けて取り組み、「戦略的大学連携支援事業(2件、1,960万9,000円)」や「専門職大学院等における高度専門職業人養成教育プログラム(672万円)」に採択されるなど、外部資金の獲得に努めている。
  •  「業務コスト節減対策」に基づき、省エネルギー機器への切換、郵便発送先の見直し等を行い、管理経費について対前年度比1%(314万2,000円)削減している。
  •  教育研究の充実や学生支援に資するため、剰余金を譲渡性預金による短期運用を行ったことにより、483万6,000円を計上し、授業料免除や講義棟の机・椅子の更新に活用している。
  •  中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載7事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実,2.情報公開等の推進

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  教育研究の質の向上や改善について学外者を含めた「教育評価部会」及び「研究評価部会」により評価を行っており、研究評価部会の提言事項に基づき、センター再編検討委員会を設置し、センターの研究支援機能向上・改善について検討を開始している。
  •  「ウェブページの取扱いに関する規程」を整備するとともに、学生を含めた全学的な組織である「広報サポートワーキング」からの提言を受け、ウェブサイトサポート機能(検索機能)を付加するなど、ウェブサイトを充実させて情報発信に努めている。
  •  卒業生・修了生及び教育関係者のアンケートの分析結果に基づき、長期履修学生の修学支援組織である教職キャリア開発支援オフィスの設置や図書館開館時間の延長等、教育研究支援体制の充実を図っている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載6事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  効率的な業務運営を行うため、施設の現状及び利用状況を点検し、地域連携センター棟に「戦略的教育研究開発室(119m2)」を確保し、各棟に分散していた同室を集約することとしている。
  •  目的積立金を有効に活用して、高島団地では自然棟外2棟の空調設備改修のほか、学生宿舎のシャワー室新設及び居室の改修工事を行っている。
  •  鳴門市の協力を得て、地域住民と合同で防災訓練を実施しており、訓練時における説明会等において、地震防災マニュアルを資料として活用している。
  •  温室効果ガス排出抑制等のための実施計画及びアクションプログラムに基づき、重油使用量を対前年度比36%(20KL)削減している。
  •  平成19年度評価結果で評価委員会が指摘した研究費の不正使用防止のための取組については、研究活動の公正性の確保及び研究費の適正管理等に関する規程を改正し、配分機関・関係府省への報告の手続きに関する条項を追加しており、指摘に対する取組が行われている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載9事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したとによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

評価委員会が平成20年度の外形的・客観的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

  •  「FD推進事業専門部会」を設置し、公開授業や授業研究会、ワークショップ等を実施するなど、教育方法改善のために組織的な取組が行われている。
  •  学部において、平成20年度入学生から「GPA制度」を導入し、学生の学習意欲を高めているとともに、修学指導に役立てている。
  •  学部4年間を通してクラス担当教員を置き、学生相談等を行っているほか、教職大学院生(現職教員)支援基金を創設するなど、学習支援の充実が図られている。
  •  課外活動団体のリーダーに対して「サークル・リーダーシップ・セミナー」を開催するなどの課外活動支援策を講じている。
  •  学部生及び大学院生が教育現場での指導の補助や学校活動の支援を行っているとともに、大学教員が学校現場で講演、授業実践、課題解決等の指導を行うなど、地域貢献活動を展開している。
  •  知的財産室において「利益相反マネジメントポリシー」を制定したほか、四国地域の活性化を目指すため「四国力協創産学官共同体構想」に参画し産学連携を進めるなど、共同研究の推進に取り組んでいる。
  •  教育・研究等の分野において相互に協力し、教育・研究の向上に寄与することを目的として、私立大学3校と包括連携協定を締結している。
  •  幼稚園・小学校の教員が幼小合同保育・授業の実施や、合同研究会等を通して、幼少連携教育の教育内容や年間指導計画を見直し、冊子「生活プラン」としてまとめ、幼児教育研究会で発表している。
  •  平成20年3月卒業者(教員養成課程)の就職状況は卒業者数121名に対し、正規採用が41名、臨時的任用が40名で、平成20年教員就職率は66.9%、進学者を除くと77.1%となっている。

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高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成22年02月 --