国立大学法人徳島大学の平成20年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 徳島大学は、優れた専門的能力を有し、進取の気風を身に付けた人材を育成する大学、根源的な真理を探究する研究と社会的要請の強い課題を解決する研究を通して国際社会で高く評価される大学を基本目標として、世界に通用する研究教育大学を目指し、学長のリーダーシップの下、年度当初に学長より各理事へ重点課題への取組を指示し、自己点検・評価によりその進捗を図ってきている。
 業務運営については、教員の流動性を高め、教育及び研究の活性化を図るため、大学院ヘルスバイオサイエンス研究部の医学系分野、栄養学系分野及び医学部・歯学部附属病院の医科診療部門等の准教授と講師に任期制を適用した結果、任期付教員は136名(対前年度比30名増)、全教員に対する割合は15.6%(対前年度比3%増)となっている。
 財務内容については、大型競争的資金の獲得を目的として編成された組織を育成・支援するため、学長による評価に基づきパイロット事業支援を拡充した結果、質の高い大学教育推進プログラム2件採択など大型競争的資金獲得に結びついている。
 自己点検・評価及び情報公開については、「全国大学サイト・ユーザビリティ調査2007/2008」において指摘された点を中心に、トップページのレイアウト等の見直しを行った結果、「全国大学サイト・ユーザビリティ調査2008/2009」において、2年連続で全国国公私立大学中1位となっている。
 施設設備については、大学内の各施設の基本情報(建築年数・工法)及び基幹設備保守管理情報をまとめたデータベース「施設カルテ」を作成し、施設・設備の基本情報や改修情報、保守管理スペースなど施設に関する種々の情報が一覧できるようにしている。
 教育研究の質の向上については、 全学共通教育のカリキュラムに、平成20年度から新たに「社会性形成科目群」を設け、合わせて5科目群により実施している。また、未来医療の確立を目指す基礎研究と大学病院及び産業界と連携して先端医療の実用化を目指す開発研究を推進するため、「ゲノム機能研究センター」を改組し「疾患ゲノム研究センター」を設立している。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  学長を補佐するため、管理担当理事を学外から、経営担当理事を民間企業から登用している。
  •  学長のリーダーシップの下、「事務組織の活性化‐定員削減下の配置の工夫‐」を目的に全事務組織を対象とした調書及びヒアリングを行い、事務組織・人員配置の見直し等の答申をまとめ、平成21年度から実施することとしている。
  •  教員の流動性を高め、教育及び研究の活性化を図るため、平成20年度から新たに大学院ヘルスバイオサイエンス研究部の医学系分野、栄養学系分野及び医学部・歯学部附属病院の医科診療部門等の准教授と講師に任期制を適用した結果、任期付教員は136名(対前年度比30名増)となり、全教員に対する割合は15.6%(対前年度比3%増)となっている。
  •  監事から役員会、経営協議会及び教育研究評議会の開催状況、審議事項及び審議方法についての点検・評価が定量的に示され、業務運営の改善に効果を上げている。
  •  平成19年度に女性医師復帰支援のための受入れ体制を整え、平成20年度は29名の女性医師をフレックスタイムで受け入れるなど、男女共同参画の推進に向けて取り組んでいる。
  •  平成19年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、平成20年度からの大学院重点化計画の作成については、総合科学教育部及びソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部を平成21年4月に設置することとしており、指摘に対する取組が行われている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載31事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  受託研究、受託事業及び寄附金等による外部資金受入額は、20億422万円(対前年度比4億6,666万円減)、外部資金比率は5.3%(対前年度比1.1%減)となっていることから、外部資金獲得に向けた取組が期待される。
  •  大型競争的資金の獲得を目的として編成された組織を育成・支援するため、学長による事業計画書及び成果のヒアリングを実施し、その評価に基づきパイロット事業支援を拡充し、平成20年度は質の高い大学教育推進プログラム2件採択など大型競争的資金獲得に結びついている。
  •  一般管理経費の主要削減項目(光熱水料、消耗品費、備品費、印刷製本費及び通信運搬費)について平成19年度に対する削減目標値を設定し努力した結果、目標値のとおり2,886万円(対前年度比1.6%減)の削減を行っている。
  •  蔵本地区ボイラー設備運転監視等保全業務他8件の役務及び保全業務について、複数年契約を導入し、1,628万円の削減を行っている。
  •  長期貸付料算定において、平成19年度からの建物貸付料に続いて、平成20年度から土地貸付料についても不動産鑑定士の評価額を基に算定した結果、平成20年度は対前年度比131万円の増収となっている。
  •  中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載6事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  教務システム、人事システム等から一元的に評価データを抽出する情報流通基盤を整備すべく、情報化推進室のワーキンググループにおいてパイロットシステムを構築し、試験的な運用を開始している。
  •  「全国大学サイト・ユーザビリティ調査2007/2008」において指摘された点を中心に、トップページのレイアウト等の見直しを行った結果、「全国大学サイト・ユーザビリティ調査2008/2009」において、2年連続で全国国公私立大学中1位となっている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載5事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  大学内の各施設の基本情報(建築年数・工法)及び基幹設備保守管理情報をまとめたデータベース「施設カルテ」を作成している。施設マネジメント部のウェブサイトに掲載して、教職員に施設・設備の基本情報や改修情報、保守管理スペースなど施設に関する種々の情報が一覧できるようにして、施設情報の共有化を図っている。
  •  施設の使用実態と使用者のニーズを把握し、施設の有効利用を促進するため、スペース利用調査を毎年実施している。平成20年度は大学開放実践センター等のスペース利用調査を行い、報告書を作成して関係部局に報告している。
  •  研究設備の有効利用を図るため、200万円以上の高額機器及び利用価値の高い機器を体系的に分類し、かつ、当該機器の性能、機器の写真などをウェブサイトに掲載し学内に周知するとともに、ウェブサイトから共同利用機器の予約ができるようにしている。
  •  平成17年度に策定した「徳島大学CO2削減行動計画」に基づき、エネルギー使用量の削減に向けた全学的な啓発活動や、省エネルギータイプの設備導入を実施し、平成20年度の単位面積当たりのCO2排出量は、対前年度比1.04%削減している。
  •  地震災害発生時における避難通路の確保や人的被害の軽減を図るため、薬品棚・書棚等の転倒・落下のための措置が必要な箇所について全学で調査し、学長裁量経費を配分し、8部局175台に対して転倒防止対策を講じるなど、毒物、劇物、化学物質及び放射性物質の管理徹底を図っている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載15事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成20年度の外形的・客観的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

  •  全学共通教育のカリキュラムに、平成20年度から新たに「社会性形成科目群」を設け、合わせて5科目群により実施している。
  •  文部科学省の教育改革支援事業等への積極的な申請を奨励し、平成20年度は新たに6件(他大学との連携分2件を含む)の教育プログラムが特色ある優れた取組として評価、採択され、教育の質的向上が推進されている。
  •  聴衆応答システム(クリッカー)を254台導入し、既存のものと合わせて308台整備している。
  •  授業遠隔システムを利用して、同時かつ双方向に行われる授業が受講できるように整備している。
  •  e‐ラーニングを前期65科目、後期52科目で実施している。
  •  博士後期課程の学生を対象に、返還義務を課さない「徳島大学ゆめ奨学金」を平成21年度に創設することを決定している。
  •  未来医療の確立を目指す基礎研究と大学病院及び産業界と連携して先端医療の実用化を目指す開発研究を推進するため、「ゲノム機能研究センター」を改組し「疾患ゲノム研究センター」を設立している。
  •  科学研究費補助金等・競争的資金対策検討委員会を設置し、「科学研究費補助金未申請理由・不採択要因等アンケート調査」を実施している。
  •  徳島県等と連携して「地域ファンド」、「JSTシーズ発掘試験」等を推進するとともに、知的創造サイクル推進検討委員会委員に株式会社テクノネットワーク四国(四国TLO)取締役事業本部長を迎え、四国TLOと連携して産学連携、知的財産戦略を推進している。
  •  平成17年度に新設した「留学生センター」の機能向上を図るため、「国際センター」に改組し、留学生・日本人学生・地域住民との交流活動として「国際交流サロン」を開催している。

附属病院関係

  •  卒後臨床研修センターの充実を図るために、平成21年度の臨床研修プログラムに全人的医療等の実践能力を身に付ける「プライマリ・ケアコース」を新設するとともに、3病院連携卒後臨床研修医教育連絡会議を毎月開催している。また、専任教員(2名)を配置して医学科生との個別面談による進路相談等を実施している。診療では、無菌治療やボツリヌス治療、深部脳刺激術等の高度医療の充実・検査件数の増加に努めている。
     今後、先端医療の開発・臨床研究への応用も推進しながら、医科診療と歯科診療の緊密な連携による診療体制の質の向上に向けたさらなる取組が期待される。
(教育・研究面)
  •  看護師の教育・研修では、専門(認定)プログラムの6分野(がん化学療法、がん性疼痛、安全、感染、重症集中、褥瘡)を開講(合計45名受講)し、高度な看護師の育成に努めている。
  •  医学科6年生のためのキャリアデザインセミナーとプログラム説明会を開催、卒後臨床研修センターへ専任教員2名を配置するなど研修の充実に努めている。
(診療面)
  •  ワークライフバランスを考え、女性医師復職支援事業として、育児をしながら29名の女性が「診療支援医師(パートタイム)としての雇用」制度を利用している。
  •  顎関節症外来では、医科診療部門との共診を実施、口腔管理センターでは、医科診療部門の集中治療室(ICU)等への往診により、医科診療と歯科診療が統合されたメリットを生かしたチーム医療の提供に取り組んでいる。
(運営面)
  •  外部評価では、財団法人日本適合性認定協会による品質マネジメントシステムの国際規格ISO9001の認証更新、国際規格ISO15189のサーベイランス受審、財団法人日本情報処理開発協会によるプライバシマーク制度の認定更新に取り組んでいる。
  •  ポジトロン断層・コンピュータ断層複合撮影装置(PET‐CT)の利用件数の増加、分娩介助料の改正、アンチエイジング検診基本コースの設置等により、4億3,277万円の増収につながっている。
  •  看護部において、ワークライフバランス(WLB)支援センターを設置して、職員が仕事と生活の調和を保ち、いきいきと働き続けられるよう、良好な勤務環境の構築に向けた取組を実施している。

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高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成22年02月 --