国立大学法人山梨大学の平成20年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 山梨大学は、「地域の中核・世界の人材」をキャッチ・フレーズとし、幅広い教養と深い学識、創造性、自律性、倫理観をもつ人材の育成や、諸学の融合による新領域の教育研究の推進等の実現を目指し、教育研究活動を展開している。
 業務運営については、教員の個人評価の評価結果を反映する仕組みとして「優秀教員奨励制度」を創設し、表彰状の授与、勤勉手当の成績率加算、教育研究費の配分等を行い、教育研究の活性化を図っている。また、学長オフィスアワーを設置して、学長が一般教職員、学生、マスコミと直接面談する機会を作る活動を推進し、情報の迅速な伝達と共有に努力している。
 一方、大学院博士課程において、平成19年度から平成20年度にかけて一定の学生収容定員の充足率を満たさなかったことから、今後、速やかに、定員の充足に向けた取組、特に入学定員の適正化に努めることが求められる。
 財務内容については、外部資金獲得に向けて積極的な取組を行い、独立行政法人新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業に採択されるなど、外部資金比率は7.2%(対前年度比2.2%増)となっている。
 教育研究の質の向上については、全学共通教育科目について、学生が獲得すべき学習成果を知識・能力・姿勢の3領域に区分して明示するなど電子シラバスの充実を図っている。また、新潟大学と共同で設立した「国際・大学知財本部コンソーシアム(UCIP)」を中心に、様々な知的財産の国際展開を行い、海外に向かって事業を推進して国際的な産学連携活動を強化している。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  産学連携体制のさらなる強化に向け、研究支援・社会連携部、地域共同開発研究センター及び株式会社山梨TLOを一元化した産学官連携・研究推進機構を新設するなど、学長を中心とする経営体制の推進を図っている。
  •  学長オフィスアワーを設置して、学長が一般教職員、学生、マスコミと直接面談する機会を設ける活動を推進し、情報の迅速な伝達と共有に取り組んでいる。
  •  教員の個人評価の評価結果を反映する仕組みとして「優秀教員奨励制度」を創設し、表彰状の授与、勤勉手当の成績率加算、教育研究費の配分等を行い、教育研究の活性化を図っている。
  •  医師不足対象県における「新医師確保総合対策」として、医学部医学科の入学定員を10名増員し、「地域医療学講座」を新設している。
  •  経営協議会に、「テーマを決めた意見交換」の場を毎回設け、喫緊の課題に関する対応や将来に向けた展開等の検討を行い、会議の活性化を図っている。
  •  平成19年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、超過勤務報告の電子化については、平成21年3月1日から全学で実施しており、指摘に対する取組が行われている。

平成20年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。

  •  平成19年度評価結果で評価委員会が課題として指摘した、大学院博士課程について、学生収容定員の充足率が平成19年度から平成20年度においては90%をそれぞれ満たさなかったことから、今後、速やかに、定員の充足に向けた取組、特に入学定員の適正化に努めることが求められる。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けておおむね順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載36事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められるが、大学院博士課程において学生収容定員の充足率が90%を満たさなかったこと等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  外部資金獲得に向けて積極的な取組を行い、独立行政法人新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業等の受託研究収入が増加し、外部資金比率は7.2%(対前年度比2.2%増)となっている。
  •  医療材料及び医薬品の委託契約内容の見直しを図り、約5,400万円削減している。
  •  中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載19事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  授業評価アンケートを半期ごとに中間・学期末の2回、年4回実施し、結果をフィードバックする中で、改善要望の多い授業は、授業担当教員による改善策を電子シラバスで公開している。
  •  ウェブサイトに特色ある研究を紹介するコーナーを追加するとともに、高校生、受験生の家族、高校教員等を対象にアンケート調査を実施し、調査結果を広報活動に反映させている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載11事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  施設利用実態調査結果をもとに、総合研究棟のプロジェクト研究スペースを確保している。また、退職者等によって生じたスペースの再編に際して学長裁量スペースを確保するとともに、工業会館を改修して若手教員の研究スペースを確保している。
  •  施設整備基本方針の下、整備計画に沿って目的積立金等の学内資金を活用し、看護師宿舎の新築、男子学生寮の全面改修、弓道場改築等、施設・設備の整備を図っている。
  •  医学部キャンパス及び附属病院では、消防署、地域住民、山梨県、中央市及び県内病院と合同で災害対策マニュアルに基づいた大規模災害訓練を実施するとともに、訓練結果に基づき、改善点・対策等を整理している。
  •  医学部キャンパスの熱源機器用燃料を重油から都市ガスに切り替えるとともに、甲府キャンパスの重油ボイラー暖房設備を個別空調に切り替え、温室効果ガス排出削減を図っている。
  •  納品検収時の発注当事者以外(第三者)によるチェック機能として、「納品検収センター」を設置し、研究費の不正防止体制を強化している。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載22事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成20年度の外形的・客観的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

  •  全学共通教育科目について、学生が獲得すべき学習成果を知識・能力・姿勢の3領域に区分して明示するなど電子シラバスの充実を図っている。
  •  グレード・ポイント・アベレージ(GPA)制度を導入するとともに、全学共通教育科目についてキャップ制を導入し、単位の実質化を図っている。また、成績通知書にGPAのGP(グレードポイント)を記載し、9月に学生本人のほか教職員・保護者に送付している。さらに、授業への出席状況を各学期の3分の1を経過した時点で調査し、その結果を踏まえ、欠席の多い学生等への早期指導を行っている。
  •  学生相談「よろずボックス」をウェブサイトに設置するとともに、「学生相談対応事例集」等を活用して、学生相談体制をさらに充実している。
  •  地域で不足する産科医師と助産師等の連携及び育成・活用方法、地域周産期医療機関との連携強化等、県内の周産期医療体制の確保に関する研究を行い、それを基に、地域周産期等医療学講座を開設している。
  •  産学連携関係センター等を一元化して「産学官連携・研究推進機構」を設置し、研究成果の社会還元の効率化やワンストップサービスの強化を図っている。
  •  新潟大学と共同で設立した「国際・大学知財本部コンソーシアム(UCIP)」を中心に、様々な知的財産の国際展開を行い、海外に向かって事業を推進して国際的な産学連携活動を強化している。

附属病院関係

  •  地域医療を担う医師を育成するために、「山梨県ドクタープール制度」、「山梨県医師修学資金給付制度」を活用させ、地域医療学講座を新たに新設して活性化に取り組んでいる。また、医工融合領域により開発した遠隔診断ロボットの作成に着手するなど先端医療の開発に取り組んでいる。診療では、がん診療連携拠点病院に加えて肝疾患診療連携拠点病院に認定され、地域の拠点病院としての役割を担っている。
     今後、専門的で高度な医療をより一層提供していくとともに、経営戦略部門が主体となった経営分析やその策定に関わるなどさらなる取組が期待される。
(教育・研究面)
  •  大学病院連携型高度医療人養成推進事業(研修医の多様な要望に応える専門医養成事業)により、医師キャリア形成センターを設置して、受入れ体制の準備を行っている。
  •  難治性悪性腫瘍に対する新規癌拒絶抗原を用いた免疫療法の開発を進めるとともに、がん免疫療法用細胞プロセッシングシステムを導入している。
(診療面)
  •  助産師外来の本格的な稼働により、研修会の開催、マニュアル作成を通じて助産師教育を推進するとともに、助産師能力の活用により医師との業務分担を推進している。
  •  クリニカルパス作成を促進した結果、一般病床の平均在院日数の短縮(16.2日(対前年度比1.3日減))が図られている。
  •  平成21年度からの7対1看護体制への移行に向け、看護師を採用(内定96名)しているほか、看護師の勤務実績及び患者の看護度等の調査・集計を行っている。
(運営面)
  •  手術部において、看護師が行っていた手術準備等の間接業務を外部委託化して業務内容の見直しを行った結果、手術件数が増加し、附属病院収入も約1億6,000万円増加している。
  •  医療材料及び医薬品等の契約に当たり、外部に委託した価格交渉支援請負業務を有効活用して価格交渉を行い、約5,400万円の節減を図っている。

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高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成22年02月 --