国立大学法人福井大学の平成20年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 福井大学は、教育地域科学、医学、工学の各分野がそれぞれ独自性を発揮しつつ、有機的に連携・融合しながら、人々が健やかに暮らせるための学術文化や科学・技術に関する高度な教育を実施するとともに、世界的水準の研究推進を理念とし、地域や国際社会にも貢献し得る人材を育成するとともに、基礎研究を重視しつつ、独創的な研究及び高度な先端的医療を実践することを推進している。
 業務運営については、学長特別補佐や学長・理事の直接指揮下で企画立案等を行う経営戦略課を新設するなど学長のリーダーシップ強化を図っている。
 自己点検・評価及び情報公開については、報道機関向け情報誌「ウィークリー・トピックス」を創刊し、学内の教育研究活動の状況等を掲載し、積極的な情報発信に取り組んでいる。
 その他業務運営については、地球温暖化対策推進計画に基づき、温室効果ガス排出量削減措置に全学的な体制で取り組んだ結果、削減目標値(12%)を上回る約13.9%相当を削減している。
 教育研究の質の向上については、学部1年次に副専攻希望調査を実施し、履修抽選における配慮、共通教養副専攻科目の新設、副専攻科目に「原子力・エネルギー安全工学」等の新設により副専攻制度の充実を図っている。また、生命科学及び関連分野の推進を図るためにライフサイエンスイノベーション推進機構や、基礎研究の成果を臨床応用へと橋渡しするトランスレーショナルリサーチ推進センターを設置している。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  学長のシンクタンクとして活動する「学長特別補佐」や「役員・学部長等懇談会」の構成員の追加、学長・理事の直接指揮下で企画立案等を行う「経営戦略課」を新設するなど学長のリーダーシップ強化を図っている。
  •  学長のリーダーシップの下で、長期的視点に立った大学の戦略、重点課題の達成等のために対応する経費としての重点配分経費を約9億7,551万円(対前年度比1億7,822万円増)を措置し、戦略的な資源配分を行っている。
  •  役員室発行のメールマガジン「福大☆スター・ナビゲーション」を毎月2回発行し、全学の重要会議の議事内容を発信するとともに、大学運営等に係る意見等を直接役員に伝えることができるように、役員室直通の電子メールアドレスを記載し、双方向での意思疎通を図っている。
  •  昇格人事の基本方針において女性職員の昇格について明記するなど、女性職員の登用の促進に向け取り組むとともに、「はなみずき保育園」を設置するなど男女共同参画を積極的に推進している。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載37事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  大学と産業界の交流、連携促進を目的に企業をメンバーとして設置している「産学官連携本部協力会」の拡充や協力会企業とのトップ懇談会等により、外部資金(共同・受託研究及び奨学寄附金)の獲得額は、14億7,200万円(対前年度比2億3,500万円増)となっている。
  •  学内リサイクルによる再利用(3,994件)が行われ、約2,000万円経費削減が行われている。
  •  中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載20事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  年度計画進行管理システム等を構築し、「福井大学総合データベース」とともに、評価作業のさらなる効率化に向け取り組んでいる。
  •  報道機関向け情報誌「ウィークリー・トピックス」を創刊し、大学内の教育研究活動の状況や主要な取組等を掲載し、毎週、福井県及び愛知県の教育記者クラブ、大阪・東京の主要新聞社等の報道機関に送付し、新聞掲載率については50%に達している。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載6事項すべてが「年度計画を上回って実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備等、2.安全管理

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  地球温暖化対策推進計画の実施により、全学において抑制措置に積極的に取り組み、削減目標(12%)を上回る約13.9%(3,400t‐CO2)の温室効果ガス削減を達成している。
  •  自己資金の活用を含む新たな手法による施設整備事業(総事業費約8億円)により、総合研究棟1.の増築等、教育研究環境を整備している。
  •  長期保全計画に基づき計画的な施設保全(プリメンテナンス)として、教育地域科学部附属中学校校舎防水改修等を実施している。
  •  平成19年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、研究費の不正防止に関する規則については、配分機関等への報告について明文化する規則の改正が行われており、指摘に対する取組が行われている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載12事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成20年度の外形的・客観的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

  •  学部1年次に副専攻希望調査を実施し、履修抽選における配慮、共通教養副専攻科目の新設、副専攻科目に「原子力・エネルギー安全工学」等の新設により副専攻制度の充実を図っている。
  •  成績評価等の正確さを担保する措置として、キャンパスルールとして成績に関する申立て手続きを説明している。
  •  大学院工学研究科では、地域企業等と連携して研究を中心とした就業体験を中長期間行う「長期インターンシップ」を実施している。
  •  県内の大学や図書館との連携による「福井県地域共同リポジトリ」の構築を行っている。
  •  携帯電子メールに就職情報を発信する「学生管理e‐supportシステム」を構築し、活用するなど就職支援強化に向けて取り組んでいる。
  •  全学を挙げて重点的に行う事項に対し必要な支援を行うための経費として、新たに特定プロジェクト等支援経費(3億8,369万円)を創設している。
  •  生命科学及び関連分野の推進を図るためにライフサイエンスイノベーション推進機構や、基礎研究の成果を臨床応用へと橋渡しするトランスレーショナルリサーチ推進センターを設置している。

附属病院関係

  •  臨床教育の拠点として、研修医をはじめとした多くの医療人に医療技術や知識を習得する場として、「臨床教育研修センター」を新築し研修環境の充実を図っている。
     また、医師主導型治験(L‐アルギニン:神経内科)をスタートさせ、治験推進事業の実施体制を整備している。診療では、がん診療推進センターに「キャンサーボード部門」を新たに設置、北陸地区の5大学によるインターネット上での症例検討会を開催するなど、地域のがん診療体制の更なる活性化を図っている。
     今後、病院再整備計画を迎えるに当たって、救命救急型(ER)診療体制・がん診療体制の強化を図るとともに、医療情報ネットワークを有効活用して地域医療機関との連携をより一層深める取組が期待される。
(教育・研究面)
  •  国内外の医療機関や学内の他学部・センター等との共同研究による先進治療を目指した研究を実施している。
  •  治験コーディネーター(CRC)の関与が望ましい先進医療シーズを選抜し、CRCの介入により医師の負担軽減及び登録症例の増加が図られるサポート体制を構築している。
(診療面)
  •  7対1看護体制の維持及び退職者の補充のため、79名の看護師を採用するとともに、病床稼働状況、看護必要度等の調査を基に傾斜配置を行っている。
  •  遠隔画像情報交換システムを用い、遠隔画像診断、術中病理診断を継続的に実施し、地域医療機関の診断技術の向上に貢献しており、また、2診療所との症例カンファレンスを実施し、最新の医療情報を提供している。
(運営面)
  •  病院コーディネーターによる273医療機関の訪問及び関連病院長会議等での意見・要望等に対する改善を行い、地域医療連携の強化を図っている。
  •  フィルムレス化によるX線フィルム購入費の削減(約5,000万円)、北陸地区の3大学共同購入による医薬品購入費の削減(約5,500万円)、医療材料の規格統一による材料費の削減(約140万円)等、経費削減に取り組んでいる。

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高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成22年02月 --