国立大学法人金沢大学の平成20年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 金沢大学は、「地域と世界に開かれた教育重視の研究大学」を基本的な位置付けとし、「金沢大学憲章」と中期目標・中期計画を踏まえて、「重点課題と取組み」を策定し、その重点課題に向けた対応と各種事業を推進している。
 業務運営においては、学問領域の多様化・学際化、多様化した学生のニーズ、社会的ニーズの変化に対応するため、教育(学生)組織と研究(教員)組織を分離し、「人間社会学域」、「理工学域」、「医薬保健学域」とそれに属する16学類からなる3学域・16学類に教育体制を再編し、「人間社会研究域」、「理工研究域」、「医薬保健研究域」に研究組織を再編している。
 この他、業務運営については、法人運営体制について点検・評価を行い、顧問2名を新設するとともに、学長特別補佐及び学長補佐を増員して、重要事項を企画立案するためのマネジメント体制の強化を図っている。また、出産・育児、介護等と両立して研究活動を行う女性研究者に対して、研究補助業務を行う研究パートナーの雇用を可能とし、平成20年度においては15名を雇用して研究活動を支援する体制を整備している。
 財務内容については、受託研究、共同研究及び奨学寄附金による外部資金の獲得を目指した結果、25億3,292万円(対前年度比3億1,036万円増)となっている。
 教育研究の質の向上については、3学域に合わせ、学域共通科目、学類共通科目、専門基礎科目、専門科目及び副専攻制等を整備し、体系的カリキュラムを実施している。また、内灘町における財政についての調査研究等、能登半島地域における地域活性化に積極的に取り組んでいる。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.教職員の人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  学問領域の多様化・学際化、多様化した学生のニーズ、社会的ニーズの変化に対応するため、教育(学生)組織と研究(教員)組織を分離し、「人間社会学域」、「理工学域」、「医薬保健学域」とそれに属する16学類からなる3学域・16学類に教育体制を再編し、「人間社会研究域」、「理工研究域」、「医薬保健研究域」に研究組織を再編している。
  •  法人運営体制について点検・評価を行い、顧問2名を配置する等、重要事項を企画立案するためのマネジメント体制の強化を図っている。
  •  共同研究センター、インキュベーション施設、知的財産本部、ベンチャー・ビジネス・ラボラトリーの統合により、イノベーション創成センターを設置するなど、学内の知的資源を発掘・管理・社会への発信に取り組んでいる。
  •  情報基盤の整備及び管理の合理化・効率化を図るため、情報戦略本部を設置し、本部長(情報担当理事)の下、情報化全般を体系的・戦略的に推進する体制を整備している。
  •  採用における女性割合や教授職に占める女性割合の数値目標を設定するなど、女性教員の採用・登用の促進に向け取り組んでいる。また、保育園や学校に通っている子供が病気等で集団保育、登校ができない場合に、教職員が仕事を休むことなく子供を保育できる環境として、病児保育室「たんぽぽルーム」を設置している。
  •  平成19年度評価において評価委員会が課題として指摘した、育児・介護に伴う短時間勤務制度の導入については、平成20年度より育児に伴う短時間勤務制度を導入し、介護に伴う短時間勤務制度は検討の結果、制度を導入しないこととしている。

【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載22事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  受託研究、共同研究及び奨学寄附金による外部資金の獲得を目指した結果、25億3,292万円(対前年度比3億1,036万円増)となっている。
  •  「節約(SETSUYAKU)しまいか」プロジェクトを開始し、節約項目の洗い出しを行うとともに、光熱水費に係る点検チームを編成して施設を見回ることにより、現状把握並びに節約について教職員への意識づけを行っている。
  •  中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。
  •  平成19年度評価において評価委員会が課題として指摘した、経費の削減については、燃料費単価の変動分を除き、定期刊行物・印刷物等の経費削減や光熱水料の節減ができており、引き続き経費削減に向けた取組を行うことが期待される。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載11事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  未来開拓研究公開シンポジウム‐Features for the Future‐を開催し、人間社会研究域、理工研究域、医薬保健研究域の3研究域が、それぞれ特徴あるテーマに沿って最先端の研究を紹介し、最新情報を社会に発信している。
  •  統一サーバーによるファイル共有により、年度計画の進捗状況を管理するとともに、評価作業の効率化を図っている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載6事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.北陸地区の国立大学連合、2.施設整備の整備・活用等、3.学内環境問題、4.安全管理、5.同窓会

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  既存施設・設備の有効活用を目的として、施設等の利用区分及び使用実績調査を行うとともに、調査結果を踏まえ、施設利用計画を見直し、3学域・16学類への改組に必要な教育スペースの確保や事務スペースの整理統合を行っている。
  •  角間キャンパスでは、学生、教職員、市民等が多数参加して約7,000本の幼苗を植樹し、緑化活動を推進するとともに環境意識の向上を図っている。
  •  角間キャンパス中地区と平和町キャンパスの屋外環境の実態調査を実施し、その調査結果に基づき、機能保全・維持管理計画を策定し、緊急に改善が必要な施設に対し、改善・改修を実施している。
  •  環境調査チームによるキャンパスの巡視により、省エネルギーの取組状況等について実態調査を行い、室内設定温度の徹底、休憩時の消灯及び階段利用の徹底等を実施している。
  •  附属病院外来診療棟屋根にシースルーソーラーを採用し、中央図書館空冷チラーを高効率空冷チラーに更新するなど、新営・改修工事時における省エネルギー対策を実施している。
  •  監事監査報告において、防火管理者が作成することとされている「災害対策マニュアル」について、作成されていないとの指摘がされており、速やかに、平成20年度の教育研究組織の改組を踏まえた全学的な危機管理に関するマニュアル等を整備することが期待される。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載42事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成20年度の外形的・客観的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

  •  3学域に合わせ、各学期の履修登録単位数の上限を定め、単位の実質化に関する取組を実施している。
  •  3学域に合わせ、学域共通科目、学類共通科目、専門基礎科目、専門科目並びに副専攻制等を整備し、体系的カリキュラムを実施している。
  •  学生の研究成果による地元特産野菜の復活及びブランド化や内灘町における財政についての調査研究等、能登半島地域における地域活性化に積極的に取り組んでいる。
  •  学生生活で悩みがある学生に、同じ学生の目線から、話を聴き、アドバイスをしたり、適切な相談機関を紹介したり、有益な情報を提供するピア・サポーターを増員し、ピア支援体制を拡充している。
  •  観測所「能登スーパーサイト」を設置し、黄砂が環境や人体に及ぼす影響解明のための先端的な観測研究を開始している。
  •  若手研究者の自立的研究環境整備促進事業により、一定期間終了後の審査合格者をより安定的な職として採用する制度(テニュア・トラック制度)に基づき若手教員に競争的環境の中で自立と活躍の機会を与える仕組みの導入を進めている。
  •  私立大学を含む4大学連合によるeラーニングによる教員免許状更新講習を実施している。
  •  共同研究の目標件数を219件に設定しており、平成20年度の実績は211件であったが、昨年度実績(192件)を上回る共同研究を推進している。
  •  学校教育学類教員は、附属学校園で教育相談の支援・各教科の校内研究授業講師・英語のゲストティーチャー等を延べ78人が158時間(平成19年度は189時間)担当し、園児・児童・生徒の発達段階に適した授業の研究開発等について助言を行っている。

附属病院関係

  •  初期臨床研修では、外科、小児科、救急・麻酔科を重点的に研修する新たなプログラムを追加するなど、教育体制の充実に努めている。また、「治験・臨床研究についての院内講習会」「まんなか治験拠点医療機関連絡協議会」等を開催して、治験・臨床研究の推進に積極的に取り組んでいる。診療では、肝疾患診療連携拠点病院に選定されるなど、肝疾患診療をはじめとする高度な医療提供に努めている。
     今後、新外来診療棟の開院等を見据えて、診療機能体制のさらなる強化に努めるとともに、北陸地区の中核病院としての役割を果たすための取組が期待される。
(教育・研究面)
  •  インドネシアから外国人医師1名の受入れ、外国医師・外国歯科医師臨床修練制度を周知徹底させるなど、外国医師に対する臨床研修の場の提供を促進している。
  •  メディカルスキルアップセンターに教育担当看護師を配置して、新卒新人看護師に対して看護技術等取得のための研修コースを設けるなど、教育体制を整備している。
(診療面)
  •  外来待ち時間を短縮させるために、予約センターに専任職員を配置させ、全診療科外来で予約制を開始している。また、診療受付及び計算受付を行う8ブロック受付体制の整備に向けた準備に取り組んでいる。
  •  高度化する診療業務等に対応するため、コ・メディカルスタッフの増員、看護の質の向上に向けて、看護師を増員して7対1看護体制を確立するなど、医療の効率化を進めている。
(運営面)
  •  経営企画部門の体制強化を図るために、経営企画部長として学外から専任教授を採用するとともに、医療安全管理部に専任ゼネラルリスクマネージャー(GRM)(准教授)を配置している。
  •  地域医療機関との連携を強化した結果、紹介患者数の増(平成20年度月平均959名(対前年度比20名増))、逆紹介率の増(平成20年度月平均40.3%(対前年度比6.4%増))となっている。

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高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成22年02月 --