国立大学法人富山大学の平成20年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 富山大学は、「地域と世界に向かって開かれた大学として、生命科学、自然科学と人文社会科学を総合した特色ある国際水準の教育及び研究を行い、高い使命感と創造力のある人材を育成し、地域と国際社会に貢献するとともに、科学、芸術文化と人間社会の調和的発展に寄与する」ことを基本理念とし、その実現に向け、再編統合した3大学のそれぞれの特徴を活かしつつ、さらなる発展を目指し活動を展開している。
 業務運営については、年俸制の職員職種として、特命教授、特命准教授に加え、新たに特命講師、特命助教を採用できる制度を導入し、研究業務や障害者に対する教育支援の充実を図っている。また、女性教員比率について数値目標を設定するほか、学長裁量経費の公募枠のうち女性研究者支援経費枠を設けるなど、男女共同参画推進に向けた取組がなされている。さらに、事務組織を再編成して、部・グループ・チーム制を導入し、意思決定の迅速化、組織のフラット化を図るとともに、人員配置の見直しや病院業務の一部外注化を実施するなど事務の効率化及び合理化を推進している。
 財務内容については、公開講座を78講座企画し、1,022名(対前年度比188名増)が受講して自己収入を上げている。
 教育研究の質の向上については、授業料の1%程度(5,000万円)を学生支援経費枠として確保し、その一部で、大学公認団体に対して、物品援助や遠征費援助を行い、課外活動を支援している。また、社会貢献にかかわってきたセンター等を地域連携推進機構に再編し、全学的に地域、企業等と連携して 共同研究及び受託研究を推進する体制を整備している。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  学長のリーダーシップの強化のため、学長裁量経費を配分する事項をさらに充実させ、3億5,000万円(対前年度比1億円増)を配分している。
  •  女性教員比率について数値目標を設定するほか、学長裁量経費の公募枠のうち女性研究者支援経費枠を設けるなど、男女共同参画推進に向けた取組がなされている。
  •  女性研究者支援モデル育成事業により、研究環境の整備や意識改革など、女性研究者が研究と出産・育児等を両立し、その能力を十分に発揮しつつ研究活動を行える仕組みの導入を進めている。
  •  年俸制の職員職種として、特命教授、特命准教授に加え、新たに特命講師、特命助教を採用できる制度を導入し、研究業務や障害者に対する教育支援の充実を図っている。
  •  事務組織を再編成して、部・グループ・チーム制を導入し、意思決定の迅速化、組織のフラット化を図るとともに、人員配置の見直しや病院業務の一部外注化を実施するなど事務の効率化及び合理化を推進している。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載28事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  目的積立金について、附属病院に起因する目的積立金以外は大学全体で一元管理して計画的な教育環境整備、研究環境整備の財源とし、施設増築工事や設備更新等に充当している。
  •  学生支援事業、教育研究支援事業等に対する助成を目的とする「富山大学基金」を創設するため、「富山大学基金構想(案)」をまとめ、実施に向けて取り組んでいる。
  •  受託研究、共同研究及び奨学寄附金による外部資金の獲得に努め、受入金額は約13億6,330万円(対前年度比2,460万円増)となっている。
  •  公開講座を78講座企画し、1,022名(対前年度比188名増)が受講して自己収入を上げている。
  •  中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載15事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  新たに「改善計画書兼改善報告書」フォーマットを作成し、問題点等の解決に向けた計画内容及びその改善状況を整理・記録することにより、改善プロセスや結果の把握及び検証を容易にするなど、評価システムの改善に努めている。
  •  情報公開の促進に資するため、ユーザビリティの向上を図るなど、常にウェブサイトの内容を見直し、充実に努めている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載5事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理、3.環境配慮、4.北陸地区の国立大学連合

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  老朽化の著しい学生寮の改善整備について、新樹寮改善整備等に関するプロジェクトチームで、改善整備モデルを提案したほか、長期借入金による改善整備の可能性について検討し、2人部屋から個室に順次改修する整備計画を策定している。
  •  附属病院中央機械室の配電設備の増設及び自家発電設備の改修等を行い、電力の安定供給と非常用電源の供給不足を解消し、非常時に適切な対応が図られるよう整備している。
  •  学生や教職員に対する安全意識の向上を図るため、「安全ノート」を作成・配布し、講習会を各キャンパスで開催している。
  •  エネルギーの効率的な利用を促進するため、電気、水道等の使用量の実態把握・分析を行い、結果を分かりやすいデータにし学内グループウェアによって、教職員に周知して省エネルギーを推進している。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載19事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成20年度の外形的・客観的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

  •  授業料の1%程度(5,000万円)を学生支援経費枠として確保し、その一部で、大学公認団体に対して、物品援助や遠征費援助を行い、課外活動を支援している。
  •  障害のある学生のカウンセリングやサポート体制を充実させるとともに、「障害学生修学支援ネットワーク事業」の北陸・信越地区拠点校として、全国のネットワーク事業運営を推進している。
  •  間接経費等の25%相当(約5,000万円)を基盤的研究設備整備費に充当し、学術研究用設備整備の推進を図っている。
  •  地域的な特色を持つ「環日本海における学際的環境科学の推進」プロジェクトを理工・医薬で学際的に推進している。
  •  社会貢献にかかわってきたセンター等を地域連携推進機構に再編し、全学的に地域、企業等と連携して 共同研究及び受託研究を推進する体制を整備している。
  •  県内の地域医療を担う人材育成を推進するため、医学部医学科に新たな特別選抜により入学定員を5人増員し、「富山県地域医療確保修学資金貸与制度」が利用できることとしている。
  •  北陸がんプロフェッショナル養成プログラムにおいて、e‐ラーニング教育による、がん専門医コース、がん専門コメディカルコース及び専門医等のインテンシブコースを設け、がんに特化した大学院教育とがん医療の臨床教育を効果的に実施している。
  •  中学校において、心に悩みを持つ生徒に対し、カウンセリングの訓練を受けた学生ボランティア(ハートケアフレンド)が対応することにより、個々に応じた柔軟な支援として成果を上げている。

附属病院関係

  •  臨床研修体制の活性化を図るため、研修医と病院長の懇談会(3か月に1回)を開催、研修医から研修現場で感じた問題点や診療科で異なる病棟マニュアルの統一化についての意見交換を行うなど、より良い研修環境の向上に寄与している。また、フォーラム富山「創薬」において、産学官共同による新医薬品開発を推進している。診療では、角膜移植・同種死体腎移植をはじめとして高度先端医療を実践しており、着実に実績をあげている。
     今後、大規模な病院再整備計画を控えており、病院長のリーダーシップのもと、病院マネジメント改革を推進し着実な成果が得られるようさらなる取組が期待される。
(教育・研究面)
  •  大学病院連携型高度医療人養成推進事業(地域発信・統合型専門医養成プログラム)により、専門医養成支援センターの設置、113の専門医養成コースを設けるなど、教育体制の整備を行っている。
  •  地域医療に貢献する医師を育成するために、初期臨床研修プログラムにおいて、小児科、産婦人科研修プログラムを新たに追加して研修プログラムの充実に努めている。
(診療面)
  •  地域がん診療連携拠点病院として、がん治療部を中心に治療ベッドの増床(6床→9床)、化学療法レジメン登録委員会等の整備を行っている。また、職員が北陸地区初の「がん看護専門看護師」、「がん化学療法看護認定看護師」に認定され、質の高い看護の提供に努めている。
  •  患者本位の医療を提供するために、地元代表者、患者、病院長、副病院長から構成される「病院モニター懇談会」の意見に基づいて、診察室の改修や駐車場拡張に向けた取組等を行っている。
  •  救急部から総合診療部への医師派遣並びに総合診療部医師による当直業務等により、救急部と総合診療部が相互に診療を補助・連携する体制が整備されている。
(運営面)
  •  病院情報の開示を進め、診療科ごとに手術実績を公開、最新治療法の紹介等、患者が求める情報を豊富に掲載し、病院ウェブサイトの充実に努めている。
  •  年度当初に「附属病院収支改善基本方針」を定め病院職員に周知している。その結果、手術件数の大幅な増(平成20年度4,746件(対前年度比13%増))や後発薬品利用による経費削減、医療費率の減(平成20年度38.3%(対前年度比0.2%減))となるなど、経営の効率化を進めている。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成22年02月 --