国立大学法人上越教育大学の平成20年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 上越教育大学は、優れた実践力を備えた教員を養成するとともに、現職教員の研修を通じてその資質向上を図るという使命を果たすために、学長のリーダーシップの下、大学の持つ人的・物的資源を活用しつつ、学校現場、他大学、地域との連携協力を進めてきている。
 業務運営については、大学教員について、大学教員業績登録システム(エフォート)に登録した活動実績データを活用して人材評価を実施し、その結果を平成20年12月の勤勉手当から反映させており、評価できる。また、教職大学院の開設に併せて、学士課程及び大学院修士課程の見直しを行っている。
 一方、大学院専門職学位課程(教職大学院)について、平成20年度において一定の学生収容定員の充足率を満たさなかったことから、今後、速やかに、定員の充足に向け、入学定員の適正化に努めることや、入学者の学力水準に留意しつつ充足に努めることが求められる。
 財務内容については、年度計画に掲げている管理的経費の抑制について、教職大学院等に係る広告費や創立30周年記念行事関係経費等の取組により、全体として管理的経費が増加しているため、今後、支出状況の分析を適切に行い、計画的に抑制に向けた取組を実施することが期待される。
 自己点検・評価については、平成19年度評価結果において評価委員会が課題として指摘したUniversity Identity(UI)の確立について段階的な取組を進め、大学憲章を制定しており、指摘に対する取組が行われている。
 教育研究の質の向上については、「上越教育大学スタンダード」の作成、「上越教育大学くびきの奨学金」の創設、キャリアコーディネーターの増員による就職相談体制の強化等の取組を行っている。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  大学教員について、大学教員業績登録システム(エフォート)に登録した活動実績データを活用して人材評価を実施し、その結果を平成20年12月の勤勉手当から反映させており、評価できる。
  •  女性教員採用促進のため、大学の人事方針に女性を積極的に採用する旨を明記するなど、男女共同参画推進に向けて取り組んでいる。
  •  限られた人的資源を最大限に活用するため、これまでの教育研究組織である「部」及び「講座」を廃止し、教員組織としての「学系」と、教育組織としての「専攻・コース」を置き、学系から教育組織に出向く体制へと移行している。
  •  教職大学院を教育実践高度化専攻として設置し「教育実践リーダーコース」、「学校運営リーダーコース」を配置している。併せて、学校教育専攻のコースを見直すとともに、教職大学院と学士課程をつなげる教職デザインコースを設置するなど、学士課程及び大学院修士課程の見直しを行っている。
  •  教員免許状更新講習の実施に向けて、幹事校として、新潟県内の16の国公私立大学等を取りまとめ、試行・予備講習を実施している。
  •  学生用の単身用宿舎、世帯用宿舎及び国際学生宿舎の退去点検業務について外部委託し、業務のアウトソーシングを進めており、業務運営の効率化に努めている。

 平成20年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。

  •  大学院専門職学位課程(教職大学院)について、学生収容定員の充足率が90%を満たさなかったことから、今後、速やかに、定員の充足に向け、入学定員の適正化に努めることや、入学者の学力水準に留意しつつ充足に努めることが求められる。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載22事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められるが、大学院専門職学位課程(教職大学院)において学生収容定員の充足率が90%を満たさなかったほか、教員について人材評価を本格実施し、評価結果を処遇に反映する取組が行われていること等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  年度計画に掲げている管理的経費の抑制については、教職大学院等に係る広告費や創立30周年記念行事関係経費等の取組により、全体として管理的経費が増加していることから、今後、支出状況の分析を適切に行い、計画的に抑制に向けた取組を実施することが期待される。
  •  随意契約によることが真にやむを得ないものとして締結した随意契約のみならず、業務の公共性及び運営の透明性をさらに確保するため、随意契約以外の大学が締結した契約の内容も公表することとして「契約の公表に関する取扱について」を策定するとともに、これに基づきウェブサイト上で公表している。
  •  中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載5事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実,2.情報公開等の推進

平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  教職大学院の新設に伴う自己点検・評価の検討に着手し、日本教育大学協会が実施する教職大学院の試行評価に参加するとともに、教職大学院に係る自己点検・評価項目及び評価基準の原案を作成している。
  •  大学の研究成果等を電子情報として蓄積し、学外へ情報発信するため、機関リポジトリの構築に向けて、研究紀要中の656論文を電子化している。
  •  平成19年度評価結果で評価委員会が課題として指摘したUniversity Identity(UI)の確立については段階的な取組を進め、大学憲章を制定しており、指摘に対する取組が行われている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載5事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  院生研究室の狭隘解消のため、研究室、実験室、演習室、院生研究室などの見直しを行うとともに、共同利用スペースについても見直しを行っている。また、既存施設の効率的・効果的な利用に向けて、チャージスペース制度の導入を決定し、利用に係る経費及び貸与方法の取扱いを策定している。
  •  危機管理に関する総合的なポータルサイトの開設、飲料水の確保等に係る清涼飲料水メーカーとの協定締結、新型インフルエンザの予防と発生時の対応についての検討等に取り組んでいる。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載7事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

評価委員会が平成20年度の外形的・客観的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

  •  学部において、教員に求められる実践的指導力を育成し、学生が各学年・卒業段階で修得すべき到達目標やその確認指標である「上越教育大学スタンダード」を作成している。
  •  教育実習において、各学年段階、各実習段階で学習目標になる具体的な評価基準を示した「教育実習ルーブリック」を作成・活用することにより、実習前の自己課題の明確化を図るなど、教育実習の質的な充実が図られている。
  •  創立30周年記念事業として、経済的理由により修学が困難でかつ成績が優秀な者に対する奨学金として「上越教育大学くびきの奨学金」を創設し、平成21年度から実施することとしている。
  •  学生の教員就職及び修学指導等に総合的に対応する支援体制を充実させるため、公立学校長経験者による就職相談員等をキャリアコーディネーターとして、6名体制(対前年度比2名増)とし、常時3人以上の勤務体制としている。その結果、就職相談の件数が2,945件(対前年度比1,355件増)と増加し、就職相談を受けた学生の教員採用試験合格率が前年度に比べ12.8%上昇している。
  •  教育実践学領域での学内研究プロジェクトについて、一般研究と若手研究の区分を設け研究費の配分を行っている。採択された若手研究7件のうち6件が附属学校教員の取組となっており、附属学校教員の研究への意識が高く、大学との連携が良好であることを示している。
  •  産官学連携による学校評価支援のための研究プロジェクト「バードアイシステムの構築による学校評価支援に関する研究」において、附属学校を含む上越市内の小・中学校(17校)を対象に試行評価を引き続き実施している。また、同システムの平成21年度からの事業化に向けて、大学、上越市教育委員会及び民間企業との間で包括的な協定を締結することを決定している。
  •  各附属学校において大学教員、公立学校教諭等を研究協力者とした教育実践に関する研究協議会を開催し、参加者との意見交流を行うとともに、研究成果をウェブサイトや教育図書により公表している。
  •  平成20年3月卒業者(教員養成課程)の就職状況は卒業者数161名に対し、正規採用が42名、臨時的任用が57名で、平成20年教員就職率は61.5%、進学者を除くと71.2%となっている。

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高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成22年02月 --