国立大学法人横浜国立大学の平成20年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 横浜国立大学は、「実践性」、「先進性」、「開放性」及び「国際性」の4つの具体的な理念を掲げ、この理念を実現するため「大学憲章」を定めて大学運営を推進している。
 業務運営については、役員会、経営協議会、教育研究評議会の法定会議はもとより、役員・部局長合同会議の議題等学内ウェブサイトを通じた公表を開始し、学内構成員の迅速かつ正確な情報共有を推進するなど、教職員等とのコミュニケーションを重視した大学運営を推進している。この他、在職中に教育、研究に優れた実績を持ち、大学に多大な貢献をした教授のうち、定年退職後に引き続き大学に対する貢献が期待できる者を、教育担当、研究担当の任期付特任教授として採用している。
 財務内容については、運用実績を踏まえたポートフォリオ(運用計画)を作成し、四半期ごとの効果的な運用を実施するとともに、大学ブランド製品販売、学内広報誌に有料広告枠を設けるなど、自己収入増加に努めている。
 その他業務運営については、建設から運営まで民間資金により行うベーカリーレストランとコンビニエンスストアの複合サービス施設を整備するとともに、留学生・外国人教員等宿舎について民間資金を活用した整備に取り組んでいる。
 教育研究の質の向上については、卒業した留学生等の協力を得ながら国際交流拠点として海外リエゾンオフィスの設置を計画し、ブラジルサンパウロ市、ベトナムホーチミン市の2か所に海外拠点が整備されており、今後の戦略的運用が期待される。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  役員会、経営協議会、教育研究評議会の法定会議はもとより、役員・部局長合同会議の議題等学内ウェブサイトを通じた公表を開始している。
  •  「横浜国立大学国際戦略」に基づき、「国際戦略会議」、「国際戦略推進室」を設け、行動計画の企画・立案・実施を機動的に行える体制を整備している。
  •  全学教員枠を学内教員配置数の3%まで拡大することを決定し、戦略的な教育研究の展開に努めている。
  •  在職中に教育、研究に優れた実績を持ち、大学に多大な貢献をした教授のうち、定年退職後に引き続き大学に対する貢献が期待できる者を、教育担当、研究担当の任期付特任教授として採用している。
  •  大学教員の専門業務型裁量労働制の本格実施、再雇用職員雇用制度の運用、有期雇用職員制度を活用した特任職員の公募採用等、柔軟で多様な人事制度の充実に取り組んでいる。
  •  教員の流動性の確保や若手教員の育成を目的に任期制を活用しており、特に一定期間終了後の審査合格者をより安定的な職として採用する制度(テニュア・トラック制度)として位置付けている助教、特任教員の採用拡大を図っている。
  •  男女共同参画に関する指針を策定し、推進のための組織を設置するほか、部局長裁量経費にインセンティブ経費を新設し、男女共同参画の取組状況等を踏まえて一定額を明示し配分するなど、男女共同参画推進に向けた取組がなされている。
  •  事務系職員の人事評価について、目標設定型の新評価制度の導入に向け、平成19年度に実施した予備調査を踏まえ、全事務職員・技術職員を対象として試行を実施しており、今後、本格実施及び評価結果の処遇反映が期待される。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載29事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  運用実績を踏まえたポートフォリオ(運用計画)を作成し、四半期ごとの効果的な運用を実施するとともに、大学ブランド製品販売、学内広報誌に有料広告枠を設けるなど、自己収入増加に努め、教育研究の充実に活用している。
  •  戦略的に剰余見込額の活用計画を早期に立て、中期計画・年度計画の達成に向け、計画的に教育研究環境の整備・充実に充てるなど、予算の有効活用に努めている。
  •  複写機の適正配置と契約見直しによる節約、ボイラー暖房廃止による経費削減を行っている。
  •  中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載15事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  学内ウェブサイトに「大学評価について」のコーナーを設け、大学評価に関する情報を一元的に集約し、活用できるようにしている。
  •  各高等学校単位での見学受入れや高等学校、予備校等における講演会、進学ガイダンス等への積極的参加を行うなど、積極的な入試広報を行っている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載4事項すべてが「年度計画を上回って実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  全学的な視点から建物、インフラ設備等のライフサイクルコスト(LCC)の試算及び現地調査を行い、評価基準等に基づいた年度計画を策定し、屋上の防水改修、エレベーターの更新等を実施し、良好な教育研究環境の確保に努めている。
  •  建設から運営まで民間資金により行うベーカリーレストランとコンビニエンスストアの複合サービス施設を整備するとともに、留学生・外国人教員等宿舎について民間資金を活用した整備に取り組んでいる。
  •  全学施設の利用状況調査を行い、改修工事に伴う移行スペースを確保するとともに稼働率の低い会議室等(180㎡)を全学共通利用スペースとするなど、施設の有効活用を行っている。
  •  横浜国立大学エコキャンパス構築指針及び同行動計画等に基づき、エコキャンパス白書2008(環境報告書)を公表し、環境保全に関する自己点検を実施している。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載14事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成20年度の外形的・客観的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

  •  教育人間科学部では、外国の学校の卒業(修了)生を対象とした秋季入学制度を開始し国際性に富んだ学生を積極的に受け入れている。
  •  学習成果の客観性及び厳格性を確保するため、大学院の全研究科・学府でグレード・ポイント・アベレージ(GPA)制度を試行し、平成21年度から本格実施することとしている。
  •  学習ニーズの多様化に対応した新たな取組として「経済・工学金融教育プログラム」等の6つの副専攻プログラムを開始し、修了証を発行し、成績証明書に記録することとしている。
  •  ものづくり技術者育成として、問題設定解決型学習法を取り入れた「フォーミュラーカー設計製作」等を正規課程に組み入れ、第6回全日本学生フォーミュラ大会で総合4位となるなど、成果を上げている。
  •  海外で開催される国際会議出席や研究調査する学生へ奨励金を授与する国際学術交流奨励事業を実施するとともに、8つの再チャレンジ支援プログラムを実施し、授業料免除により社会人の就学等の財政的支援を行っている。
  •  情報通信による医工融合イノベーション創生事業では、未来情報通信医療社会基盤センターを中心として横浜市立大学、情報通信研究機構、オウル大学(フィンランド)と連携した研究を開始している。
  •  地域交流科目・地域課題プロジェクトに付随した地域連携イベントの実施等、学生が地域の課題解決に参画する活動が行われている。
  •  実践的教育研究の側面から、横浜・神奈川の地域再生・都市再生に取り組んできた成果を地域に還元するため、シンポジウム「横浜国大発地域再生モデルの提言」を開催している。
  •  産学連携による神奈川県内高等学校生徒に対する早期工学人材育成プログラム開発事業により、県内企業と連携して講義・講演・実習・見学を実施している。
  •  卒業した留学生等の協力を得ながら国際交流拠点として海外リエゾンオフィスの設置を計画し、ブラジルサンパウロ市、ベトナムホーチミン市の2か所に海外拠点が整備されている。
  •  教育人間科学部学校教育課程1年次で履修する「基礎演習」において附属学校5校の授業参観を行い、さらに2年次では「教育実地研究」において、附属学校教員の指導の下に附属学校の授業参加と指導案の作成等の指導を実施するなど、附属学校を活用した教員養成が積極的に行われている。

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高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成22年02月 --