国立大学法人一橋大学の平成20年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 一橋大学は、21世紀に求められる先端的社会科学の研究教育を積極的に推進し、日本、アジア及び世界に共通する重点課題を理論的、実践的に解決することを目指す基本的目標の達成に向けて、「一橋大学の長期研究戦略‐21世紀の経済・社会への挑戦‐世界水準の社会科学の創造と総合をめざして」を策定し、大学全体として組織的な研究活動の推進を図っている。
 業務運営については、一般職員評価制度を本格的に実施し、評価結果を処遇に反映しており、評価できる。この他、「一橋大学の長期研究戦略」を具体化するために、研究カウンシルを開催し、研究科横断的組織である「一橋大学研究機構(仮称)」の設立に向けた取組を行っている。
 財務内容については、公募型研究費応募につながる学内助成制度の充実や事務局本部と部局の連携による支援体制の強化等により、外部資金獲得に取り組んでいる。
 自己点検・評価及び情報提供については、大学ウェブサイトへの「研究活動案内」、「連携事業」のページの新設や、速報性が重視されるプロジェクトの暫定的なウェブサイトの作成・公表等の工夫が行われている。
 その他業務運営については、保健所と連携し、大麻等薬物問題についての学生説明会の開催や、新型インフルエンザ対策マニュアルの作成等の取組を行っている。
 教育研究の質の向上については、希望する学部学生を選考の上、一橋大学基金から奨学金を給付し、米国のカリフォルニア大学デイビス校及びスタンフォード大学の英語プログラムに参加させて単位認定を行うなどの取組を行っている。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  一般職員評価制度を本格実施し、評価結果を平成20年12月期の賞与から反映しており、評価できる。今後、教員の個人評価についても本格実施することが期待される。
  •  「一橋大学の長期研究戦略‐21世紀の経済・社会への挑戦‐世界水準の社会科学の創造と総合をめざして」を具体化するために、研究カウンシルを開催し、研究科横断的組織である「一橋大学研究機構(仮称)」の設立に向け取り組んでいる。
  •  ウェブサイトによる成績登録システムの導入、教職員グループウェアと連携した旅費システムの構築・試行、職員証のICカード化等、教職員の基本情報の一元管理と統合認証シテムの運用に向け取り組んでおり、業務運営の効率化・合理化が進められている。
  •  ジェンダー社会科学研究センターにおいて、全学的なジェンダー教育プログラムを提供し、平成20年度は4回の公開レクチャーを行うなど、男女共同参画の推進に向けて取り組んでいる。
  •  国際交流や広報戦略について提言・助言を求めるために、国際金融機関の責任者やインベスター・リレーションズ(IR)会社の元社長を顧問として委嘱するなど、外部有識者の積極的活用が行われている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて特筆すべき進捗状況にある

(理由) 年度計画の記載30事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められるほか、一般職員評価制度を本格実施し、評価結果を処遇に反映していること等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  公募型研究費応募につながる学内助成制度の充実や事務局本部と部局の連携による支援体制の強化等により、外部資金獲得に取り組んでいる。
  •  国立キャンパスのガス供給契約について、契約変更したことにより、原油高騰に伴ったガス料金単価全体の値上げがあったにもかかわらず、前年度に比べて削減している。
  •  全学的に古紙回収を行うこととして、古紙回収場所を大幅に増やし、回収場所に常設の回収ボックスを設置することにより、収入が前年の2倍を超えている。
  •  中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載9事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  国立大学法人評価の基礎資料用データ集積を目的とした、大学独自の大学情報データベースシステムの構築を行っている。
  •  大学ウェブサイトに「研究活動案内」「連携事業」のページを新設するなど、大学の特徴をアピールしやすいよう情報を整理・集約するとともに、速報性が重視されるプロジェクトについて、暫定的なサイトを作成・公表するなどの工夫が行われている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載6事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  国際的拠点としての環境整備のため、外国人研究者及び教員用研究室(第3研究館)及び外国人研究員等宿舎の新築整備に向け取り組んでいる。
  •  第1研究館改修工事において、全学共同利用スペースを確保するなど、施設の有効活用に取り組んでいる。
  •  保健所と連携し、大麻等薬物問題についての学生説明会の開催や、結核やインフルエンザ等の感染症に対する学内関係者の理解を深め、新型インフルエンザ対策マニュアルの作成を行うなど、安全対策に取り組んでいる。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載11事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成20年度の外形的・客観的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

  •  希望する学部学生を選考の上、一橋大学基金から奨学金を給付し、米国のカリフォルニア大学デイビス校及びスタンフォード大学の英語プログラムに参加させて単位認定を行っている。
  •  プロジェクト研究と有機的に結合したオン・ザ・ジョブ・トレーニング、少人数のゼミナール形式での授業等を重視しつつ、研究能力やプレゼンテーション能力を高める取組が行われている。
  •  キャリア支援室にアドバイザーを1名増員し、支援体制を増強するとともに、学部生のみならず大学院生の支援充実も図り、大学院生全員を対象とした専門の外部講師による進路個別相談を実施するなどの取組が行われている。
  •  大学院生に対し、国内外のフィールドワーク、国際ワークショップ計画、サーベイリサーチ及び海外学会発表への経済的支援を行っている。
  •  大学戦略推進経費を増額し、各部局から提出されたプロジェクトについて、学長のリーダーシップの下、その緊急性、必要性を検討し、重点的な配分が行われている。
  •  経済研究所において、学外者を主体とする運営委員会を設置するとともに、世代間問題研究プロジェクト推進のための外部機関との連携関係の構築、四大学連合の推進、グローバルCOE実施のための事務局体制の強化、附属社会科学統計情報研究センターにおける政府統計ミクロデータの試行的提供のための人員強化等を行うなど、共同利用施設化に向けて取り組んでいる。
  •  商学研究科では、証券会社、保険会社等と教育・研究に関して包括的協力関係を結び、経営学修士(MBA)コースにおいて金融プログラムを実施している。
  •  研究等の活動を広く学外に発信するために、機関リポジトリ(HERMES‐IR)コンテンツのさらなる充実、制度の整備、利用許諾の依頼等に取り組んでいる。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成22年02月 --