国立大学法人電気通信大学の平成20年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 電気通信大学は、「高度コミュニケーション科学」の諸領域で世界をリードする教育・研究拠点を築き、21世紀を担う先駆的な科学者、技術者、専門職業人を育成するとの大学の基本的な目標の達成に向けて、より具体的に大学が創立100周年を迎える2018年までに目指す目標として「UECビジョン2018」を策定し、ビジョンの実現を目指して大学運営を推進している。
 業務運営については、「教育研究組織整備本部」を設置し、平成19年度までの検討結果を踏まえて、教育研究組織の抜本的見直しの検討を進め、平成22年度からの電気通信学部及び電気通信学研究科の改組計画を取りまとめている。また、平成19年度評価結果で評価委員会が課題として指摘した経営協議会の審議の適正化については、再発防止のため「経営協議会等審議事項の確認体制」を策定し、経営協議会において審議すべき事項を適切に審議しており、対応している。
 財務内容については、外部資金にかかる間接経費等の使途について、全学的な視野で戦略的に活用するため、「間接経費等の活用方針」を見直し、この方針に沿った活用を行っている。
 自己点検・評価については、歴史資料館を移転・整備するとともに、名称を「UECコミュニケーションミュージアム」と改め、所蔵資料の系統的な整理・展示を行い、利用者サービスの充実を図っている。
 その他業務運営については、これまでの施設整備計画を検証し、新たに第1期中期目標を達成するための当面の整備計画と次期中期目標につなげる整備計画を内容とする「キャンパスマスタープラン」を策定し、実施に向けた準備を進めている。
 教育研究の質の向上については、スーパー連携大学院の実現に向けた取組、研究ステーションの設立、海外事務所「深セン教育研究センター」の設置等、引き続き、積極的な取組が進められている。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  大学が掲げる理念、基本方針等に基づき、より具体的に大学が創立100周年を迎える2018年までに目指す目標として「UECビジョン2018」を策定し、公表している。
  •  専任理事に加えて、副学長3名(「教務・入試担当」「大学院教育担当」「学生支援担当」)を選任し、学長のリーダーシップによる運営体制の強化を図っている。また、学長、理事、副学長、監事、部局長をメンバーとする拡大役員会を定期的に開催し、相互の意思疎通を図っている。
  •  「教育研究組織整備本部」を設置し、平成19年度までの検討結果を踏まえて、教育研究組織の抜本的見直しの検討を進め、平成22年度からの電気通信学部及び電気通信学研究科の改組計画を取りまとめている。
  •  全教員の10%に当たる36のポストを全学裁量ポストとして確保しており、平成20年度は情報基盤センターに「センターのシステム及び学内の基幹LAN、対外ネットワーク接続の管理運用及び将来計画の策定を担いうる若手研究者」として助教1名の採用を行っている。
  •  「先端領域若手研究者グローバル人材育成プログラム」により特任助教4名を採用したほか、特任教員制度を活用し、「統合システムの研究開発」(JST CREST)及び「超短パルスレーザープロジェクト」(JST ICORP)それぞれに特任助教1名を採用するなど戦略的な人事配置を行っている。
  •  業務組織の効率化のため、国際交流関係業務と留学生関係業務、事務情報化関係業務と情報基盤センターの支援業務をそれぞれ一元化し、運営組織のスリム化を図っている。
  •  平成19年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した経営協議会の適正化については、再発防止のため「経営協議会等審議事項の確認体制」を策定し、経営協議会において審議すべき事項を適切に審議しており、指摘に対する取組が行われている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載20事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.総人件費改革、2.外部研究資金その他の自己収入の増加、3.経費の抑制、4.資産の運用管理

平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  財政基盤の確立のため、間接経費等の活用方針について見直しを行い、研究費を獲得した教員の研究環境等の向上に資する施設修繕等のための配分や、競争的資金を獲得した教員の当該研究に係る補助職員の雇用や汎用的物品購入等のための配分を行っている。
  •  「産学官連携DAY in 電通大」や「電通大フォーラム」の開催、研究室の研究内容を紹介した「OPAL‐RING 研究室紹介~共同研究はじめの一歩 Vol.5」の発行を通じて、大学の教育研究を広く地域社会に公開し、企業とのマッチングを行った結果、平成20年度における共同研究、受託研究の獲得額合計が10億1,212万円(対前年度比1億8,611万円増)、外部資金比率が11.9%(対前年度比1.2%増)となっている。
  •  科学研究費補助金獲得のため、外部資金獲得に実績と経験のある教員による研究計画調書の事前チェック及びアドバイスが実施されており、これらの教員の負担軽減策については入学試験時の試験監督を免除することに限られていることから、今後とも配慮することが期待される。
  •  大学におけるソフトウェアの権利化について効果的管理・活用に向けた検討体制の整備を行い、調査・研究を開始している。
  •  中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載16事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  「教育」、「研究」、「社会貢献」、「管理・運営」の4領域からなる教員基本データベースを構築し、各教員が四半期ごとに自身の活動状況を入力することにより、効率的な把握を行っている。
  •  広報室を広報センターに改組するとともに理事をセンター長に任命し、広報体制の強化を図ったほか、大学広報として、「UEC NEWS」や地域広報誌「調布電通大どおり」の発行、「電気通信大学フォーラム」の開催等、積極的な広報を展開している。
  •  歴史資料館を移転・整備するとともに、名称を「UECコミュニケーションミュージアム」と改め、所蔵資料の系統的な整理・展示を行い、利用者サービスの充実を図っている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載7事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  今後の施設整備及び施設修繕計画等に関する各部局からの要望等を調査し、利用率の低い特殊実験室の一般研究室への転用や老朽施設の改善を行うなど有効活用を促進している。
  •  これまでの施設整備計画を検証し、新たに第1期中期目標を達成するための当面の整備計画と次期中期目標につなげる整備計画を内容とする「キャンパスマスタープラン」を策定し、実施に向けた準備を進めている。
  •  アメニティの高いオープンスペースとして学生、職員、学外者が相互に交流できる緑豊かな「コミュニケーションパーク」の整備計画を策定している。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載18事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

評価委員会が平成20年度の外形的・客観的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

  •  平成19年度に策定した「電気通信大学ファカルティ・ディベロップメント推進規程」に基づき、ファカルティ・ディベロップメント(FD)活動の組織的展開のさらなる強化を図っている。
  •  代表校として提案した「スーパー連携大学院構想」事業における「産学官の広域連携を通じたイノベーション博士人材育成」プログラムへ14大学の参画を得て、各種委員会等を設置し、その実現に向けた検討を行っている。
  •  情報基盤センターによって統合された全学内のアカウントを、各学科の計算機室で個別に利用可能とするシステムを開発し運用を開始している。
  •  設置期間が満了する研究ステーションについて、これまでの研究成果を踏まえて、さらに発展させる提案を募り、その結果、4つの研究ステーションを設置している。
  •  「学内RA制度」、「UECポスドク研究員制度」、「若手教員の海外研修制度」及び創立80周年学術交流基金による助成等、大学独自の若手研究者支援を引き続き実施している。
  •  民間アパート入居に際し要求される「保証人」については、「留学生住宅総合補償」に加入させ、国際交流推進センター長を保証人とする「機関保証」を行っている。
  •  「少年少女発明クラブ」、「工作教室」、「SPP(Science Partnership Program)」等を通じた地域の理科教育支援、「地域貢献シンポシオン」の開催等、地域貢献活動を推進している。
  •  深セン虚擬大学(中国)の学内に電気通信大学として初となる海外事務所「深セン教育研究センター」を設置している。

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高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成22年02月 --