国立大学法人お茶の水女子大学の平成20年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 お茶の水女子大学は、「21世紀型お茶の水女子大学モデル(現代のリベラルアーツから新たな大学院の創設へ‐優れた女性人材の育成)」を大学の長期戦略として、豊かな見識と専門的知性を備えた女性リーダーの育成に向けて、学長のリーダーシップの下、新たなリベラルアーツを大学の基幹事業として位置付けるため、「文理融合21世紀型リベラルアーツ」のカリキュラム設計を行っている。
業務運営については、東京医科歯科大学との連携で異分野融合型疾患生命科学教育の高度化を目指した教育研究を開始するとともに、他の私立大学とも連携して、学際生命科学「東京コンソーシアム」を設立するなど、「21世紀型お茶の水女子大学モデル」の具体化に取り組んでいる。
 一方、年度計画に掲げている、独自の採用制度の構築については採用制度を構築するまでには至っていないことから、着実な取組が求められる。
 また、人員に関する基本方針の策定については、基本方針の策定までには至っていないことから、着実な取組が求められる。
 その他業務運営については、長期的な視点に立った施設整備計画の見直しを行い、この施設整備計画に基づき、大学施設2棟、附属学校施設2棟の耐震改修を実施するなど、計画的な施設整備を行っている。
 教育研究の質の向上については、講義と演習・実習・実験を組み合わせた科目群による「文理融合21世紀型リベラルアーツ」プログラムを開始し、全学的運営を行うとともに、携帯電話等により学外から授業情報等にアクセス可能なポータルサイトを開設し、学生に対する授業情報の提供を開始している。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  東京医科歯科大学との連携で異分野融合型疾患生命科学教育の高度化をめざした教育研究を開始するとともに、他の私立大学とも連携して、学際生命科学「東京コンソーシアム」を設立するなど、「21世紀型お茶の水女子大学モデル」の具体化に取り組んでいる。
  •  既存のセンターの再編を行い、学長を本部長とする国際本部とセンター本部に再編して、それぞれの機能の明確化と強化を図っている。
  •  女性のライフスタイルを考慮した多様な研究形態及び支援システムを開発・実践し、「お茶大モデル」を構築するとともに、育児休業・介護休業制度導入のほか、新規採用者の女性教員比率が64.1%となるなど、男女共同参画推進に向けた取組が行われている。

平成20年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。

(法人による自己評価と評価委員会の評価が異なる事項)

  •  「男女とも育児休業を取得しやすい職場の雰囲気づくりに取組むとともに、新たな次世代育成支援対策行動計画を策定し、計画に沿って実行していく。」(実績報告書10頁・年度計画【14‐1】)については、次世代育成支援対策行動計画について検討は行われているものの、新たな次世代育成支援対策行動計画の策定までには至っていないことから、年度計画を十分には実施していないものと認められる。
  •  「事務職員の採用は他大学と協力して採用試験を実施するほか、本学独自の採用制度を構築し、活性化を図る。専門性の高い職種については、職務経験や資格を有する人材を柔軟に確保できる制度を構築する。」(実績報告書12頁・年度計画【21‐1】)については、大学として求める人材の検証等は行われているものの、大学独自の採用制度を構築するまでには至っていないことから、年度計画を十分には実施していないものと認められる。
  •  「制度の検証を行い、経営面での意識改革において効果の期待できる仕組みを構築する」(実績報告書12頁・年度計画【22‐1】)については、研修制度の検証等の取組は行われているものの、経営面での意識改革において効果の期待できる仕組みを構築するまでには至っていないことから、年度計画を十分には実施していないものと認められる。
  •  「人件費推移のシミュレーションを実施し、それに基づき、平成22年度以降の削減計画を含めた人員に関する基本方針を策定する。」(実績報告書12頁・年度計画【25‐1】)については、平成21年度以降5年間のシミュレーションを行うなどの取組は行われているものの、基本方針の策定までには至っていないことから、年度計画を十分には実施していないものと認められる。
【評定】 中期目標・中期計画の達成のためにはやや遅れている

(理由) 年度計画の記載37事項中33事項が「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められるが、4事項について「年度計画を十分には実施していない」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  学長主導の外部資金獲得のためのプロジェクトチームにより、幅広い視点から新たな研究教育プログラムを計画立案し、各種競争的研究資金の獲得に取り組んでいる。
  •  公開講座の開講や湾岸生物教育研究センターでの教育研究のために管理している海洋生物等の余剰(副産物)を教育用に有償で譲渡する仕組みを整備するなど、自己収入の増加及び資産の有効活用に努め、教育研究の充実に活用している。
  •  複写機の賃貸借契約及び保守契約を見直し、競争契約による単一業者との契約に改め、料金体系についても、出力枚数に所定の単価を乗じた金額のみとすることに改め、経費節減と事務の効率化を図っている。
  •  主要な設備について法定点検に加えて自主点検を積極的に行い、機器の長寿命化とトータルコストの削減に努めている。
  •  中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載17事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  教員活動状況データベースによる教員の活動評価と評価結果の昇給反映制度を引き続き運用するとともに、3年間の運用実績を基に個人活動評価項目の改訂を行っている。
  •  グループウェアによる年度計画管理作成システムを構築しており、今後の自己点検・評価作業等の効率化が期待される。
  •  大学が輩出してきた先駆的女性研究者の資料等の貴重な歴史資料約3,000点を「お茶の水女子大学デジタルアーカイブズ:先駆的女性研究者データベース」として構築し、ウェブサイトで公開している。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載7事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  修繕や更新時期を定めた整備計画(年次計画)に基づいて、照度不足の実験室の照明器具を更新し、設備機器(GHP(ガスヒートポンプエアコン)、ポンプ、照明器具等)の修繕や更新を計画的に実施している。
  •  附属図書館のパソコンルーム利用者増に伴い、デザイン性に富む簡易型のパソコンデスクを設置し、学生の利用拡大を図っている。
  •  改修工事で撤去した再利用可能な照明器具や分電盤は再利用のため保管し、工事で発生した廃棄物(鉄くず・電線など)を再資源化できるように分別回収するリサイクルシステムを整備するなど、環境保全対策等を推進している。
  •  平成19年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、
    • 附属小学校の給食施設の衛生管理上の改善については、給食対策委員会の設置や衛生管理基準に適合した施設改修、給食運営体制の再構築を行っている
    • 研究費の不正防止に関する規則については、配分機関・関係府省への報告手続きについて、関係規程を改正し明文化している

など、指摘に対する取組が行われている。

【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載20事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成20年度の外形的・客観的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

  •  講義と実習・実験等を組み合わせた科目群による「文理融合21世紀型リベラルアーツ」プログラムを開始し全学的運営を行っている。
  •  全学的視点で国際的に通用する教育能力の向上を推進するため、教育開発センターの設置を決定し、学部及び大学院における教育課程の開発と改善、成績評価方法の改善、学修支援体制の改善等に取り組むこととしている。
  •  携帯電話等により学外から授業情報等にアクセス可能なポータルサイトを開設し、学生に対する授業情報の提供を開始している。
  •  新入生全員に対する「パソコン貸与教育プログラム」を実施するとともに、学生相談員体制(Co‐Panda)を作り、学生同士での教え合い、学び合いによる学習支援体制を整備している。
  •  ユビキタス実験住宅を建設し、今後、この実験住宅を利用して若手研究者の育成や当該分野において女性や生活者の視点を生かした研究に向けて取り組むなど、多数の個性的研究に取り組んでいる。
  •  お茶大アカデミック・プロダクションの特任助教の研究補助やマネジメント力向上のため、リサーチフェローを採用している。
  •  自宅からでも電子ジャーナル等電子的な学術資料を利用できるよう環境整備を行い、全学的な学術情報の利用環境を大幅に向上させている。
  •  北区・文京区との総合協定のもと、引き続き公開講座等を開催するとともに、千葉県館山市との連携で湾岸生物教育研究センターにおいて理科実習体験授業を実施するなど、教育支援事業や啓蒙活動を活発に行っている。
  •  理学部では、東京都教職員研修として、都の研修センターとの協力のもと、化学・生物分野で理数科教員への実験・実習指導を行っている。
  •  技術移転や特許に関する専門家を採用し、知財財産統括アドバイザーの指導の下、知財本部を本格的に稼動させ、知的財産や研究成果の社会への還元や地域社会との連携強化を図っている。
  •  教育研究の国際化、研究成果を基盤とした国際社会への貢献を戦略的に推進し、教育研究の国際的通用性の向上を図ることを目的とする国際本部を発足させている。
  •  幼・小・中の連携に、学内保育所と高等学校を加えて、異校種間の連携研究を開始している。「環境」「食育」「論理的思考力の育成」「中高社会接続期の研究」の4研究テーマごとに各学校園教員参加のグループを作り、大学教員と協力して研究を進めている。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成22年02月 --