国立大学法人東京海洋大学の平成20年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 東京海洋大学は、人類の共有財産である海をグローバルな視点でとらえ、自然との共生のもと、海洋の活用・保全に関する科学技術の向上に資することを目標として掲げ、海洋を利活用した教育、研究、社会貢献に積極的に取り組んでいる。
 業務運営については、教員について「個人活動評価データベース」の内容による評価を、事務職員については「個人評価実施方針」に基づく評価をそれぞれ全学的に実施し、その評価結果を処遇に反映しており、評価できる。
 この他、学長の下に置かれた経営企画室を中心に、将来計画委員会や戦略会議において、大学の理念の見直し、中・長期的な大学像の検討を行い、第2期の中期目標・中期計画の立案を行うとともに、「大学の理念」、「中長期的な大学像」及び社会的ニーズを念頭に置いた「大学の研究領域」をまとめている。
 財務内容については、外部資金獲得に向けた説明会の開催、各種産学連携イベントにおける広報活動、コーディネーターによる活動支援等に努めた結果、外部資金比率が平成19年度と比べ増加している。
 一方、随意契約の見直し計画については、計画通りに実施されていないことから、着実な取組が求められる。
 教育研究の質の向上については、アジア諸国への英語によるサテライト授業の実施、社会人等に対する大学院教育の機会拡充、海鷹丸の遠洋航海途上である昭和基地沖等での研究、「水産海洋プラットフォーム事業」の開始等、海洋分野に関する人材育成に積極的に取り組んでいる。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  教員については、各教員が入力する「教員の個人活動評価データベース」の内容に基づき評価を実施し、その評価結果を昇給等処遇に反映する仕組みを策定し、事務系職員については、昇給に係る勤務成績を判定することを目的とした「個人評価実施方針」を定め、それぞれ平成21年1月の昇給から反映しており、評価できる。
  •  学長の下に置かれた経営企画室を中心に、将来計画委員会や戦略会議において、大学の理念の見直し、中・長期的な大学像の検討を行い、第2期の中期目標・中期計画の立案を行うとともに、「大学の理念」、「中長期的な大学像」及び社会的ニーズを念頭に置いた「大学の研究領域」をまとめている。
  •  戦略的重点分野への人的資源の投入を可能とする取組として、学長裁量定員13名を確保し、新専攻に2名を配置している。
  •  自己点検・評価結果等を踏まえた戦略的学内資源配分について、研究等における競争的環境の醸成に向けて検討を行い、新たに「戦略的予算配分の方針」を決定し、学長裁量経費については「「留学生30万人計画」に伴うフォローアップ事業」や「老朽した学生寄宿舎の耐震改修」等を重点事項として措置している。
  •  適切な大学運営を行うために監査機能の充実を図り、学長、理事、監事、監査室及び会計監査人による四者協議会を年2回開催し、経営及び監査上の問題点について意見交換を行い、監事、会計監査人と連携した監査を実施している。
  •  女子学生を対象として「海から未来へのチャレンジ~キャリアパスセミナー~」を実施するなど男女共同参画の推進に向けた取組が行われている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて特筆すべき状況にある

(理由) 年度計画の記載17事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められるほか、教職員評価を実施し、評価結果を処遇へ反映させる取組が行われていること等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  外部資金獲得に向けた説明会の開催、受入窓口体制の整備、各種産学連携イベントにおける広報活動、コーディネーターによる活動支援等により、受託研究、受託事業、共同研究、寄附金等の増加に努めた結果、外部資金比率は12.4%(対前年度比0.7%増)となっている。
  •  老朽施設の改修等に合わせて確保した共用スペースについて、研究スペースを必要とする教員に対し、公募の上、貸出しを行うなど、より効率的な運用を図っている。
  •  省エネキャンペーンを全学的に実施し経費削減を図るとともに、テレビドラマや映画等の撮影等に際し固定資産の積極的な貸出しを行い、外部収入の増加に努めている。
  •  中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

 平成20年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。

  •  随意契約見直し計画の実施状況が計画通りに実施されていないことから、着実な取組が求められる。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載5事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  年度計画の確実な実施を図るため、年度計画の上半期の実施状況について中間評価を実施し、下半期の取組の強化を図るシステムを継続している。
  •  大学ウェブサイトのリニューアルを行い、コンテンツマネジメントシステム(CMS)を導入し、WEBコンテンツの作成、管理、公開を一貫して行うとともに、情報発信の迅速化を図っている。
  •  年末年始に鉄道車内に大学の案内ポスターを掲出し、海洋国日本の唯一の海洋系大学としての知名度アップを図っている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載3事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  プロジェクト研究が進む水圏科学フィールド教育研究センター館山ステーションの研究施設及び宿泊施設の有効利用を図るための改修整備を行っている。
  •  港区の道路整備に伴う土地譲渡収入を財源として、越中島キャンパスに新食堂、品川キャンパスに新講義棟を設ける計画を策定し、平成21年度から着工することとしている。
  •  研究教育機器の学内共同利用を目的とする共同利用機器センターを設置し、電子顕微鏡や船舶運航性能実験水槽設備等大型研究機器等の集中管理を行っている。
  •  船舶の共同運航を目的とする船舶運航センターに関する検討を行い、平成21年度からセンターの運営を開始することを決定している。また、船舶管理体制に対する品質マネジメントシステム(ISO9001)の認証を受けることについても具体的な検討を行い、導入することを決定している。
  •  適正な研究活動等の遂行のため、学内規則を制定し、研究活動等に臨む際の基本的在り方、研究活動等における不正行為の防止、職員等が遵守すべき事項、不正行為に起因する問題が生じた場合の措置等について定めているほか、併せて、研究活動等不正行為防止室を設置し、不正防止計画・研究費使用ガイドを作成し、周知している。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載7事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成20年度の外形的・客観的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

  •  学生による授業評価及び卒業生の就職先及び卒業生を対象に教育の満足度に関するアンケート調査を実施し、大学の授業内容・方法が妥当であるか引き続き検討を行い、改善に向けて取り組んでいる。
  •  大学院生の相互研究・相互学習、相互評価による教育研究の質的向上を図るため、論文発表会への全教員参加を呼びかけ、質的レベルの検証を促している。
  •  SOI(School of Internet)に基づき、私立大学と連携して、アジア諸国への英語によるサテライト授業を実施している。
  •  資格制度に対応した専攻横断的なコースワーク制等の拡充について検証し、食品流通安全管理専攻に「HACCP管理者コース」及び「食品流通ロジスティクス実務家養成コース」を設置し、専攻横断的に博士前期課程、博士後期課程それぞれに大学院教育改革支援プログラム「研究・実務融合による食の高度職業人養成「広域履修コース」」を設置している。
  •  「水先人養成コース」について、平成19年度から開始した一級水先人養成(科目等履修生)及び水先免許更新講習等に加え、平成20年10月から三級水先人養成(大学院学生)を開始している。
  •  海洋の環境、海洋の資源、海上交通、海洋情報及び海洋の安全等に伴う具体的諸問題を学際的に教育研究し、社会的ニーズに即した政策立案を目指す海洋管理政策学専攻を設置している。
  •  若手教員の支援事業として、研究推進委員会において、戦略的に研究を推進する若手教員の募集を行い、3名を採用している。
  •  第50次日本南極地域観測隊及び国際極年の共同観測計画の一環として、大学及び国際共同研究機関の研究者(29名)が、海鷹丸の遠洋航海途上に昭和基地沖等で観測を行い、地球温暖化に係る研究を行っている。
  •  全国の水産海洋系研究者が所有する技術ニーズと関連産業界の様々なニーズを結び、産学の連携及び地域振興を推進することを目的とする「水産海洋プラットフォーム事業」を開始している。
  •  「海の日」記念行事、こうとう産学交流サロン、海洋文化フォーラム、港区小学校を対象とした夏休み学習会等地域振興活動を全学的取組として支援している。

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高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成22年02月 --