国立大学法人東京芸術大学の平成20年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 東京芸術大学は、国立の総合芸術大学として世界的な芸術家を輩出し、我が国の芸術の指導的役割を果たしてきており、創立以来の自由と創造の精神を発展させ、優れた芸術家、研究者、教育者を養成することを目標とし、芸術をもって社会に貢献し続けることを使命として、教育研究と社会連携活動を推進してきている。 業務運営については、常に社会との接点を持ちながら教育研究を推進していくという大学の姿勢を具現化していくために、「東京藝術大学アクションプラン―世に「ときめき」を―平成21年1月改訂」を取りまとめ、教育研究や社会連携活動に取り組んでいる。
 財務内容の改善については、これまで細分化されていた奨学寄附金の管理を大学本部で一本化し、資産の効率的運用に取り組んでいる。
 その他業務運営については、危機管理マニュアル及び安全管理指針を配布するとともに、各校地で消防訓練等を開催するなど、危機管理マニュアルに記載されている行動が速やかにとれるよう、全学的に取り組んでいる。
 教育研究の質の向上については、地域の芸術文化振興等のため、台東区、荒川区、民間企業等と連携協定等を締結している。また、科学と芸術が交差することで新しい表現を創り出すことを目指すため、独立行政法人理化学研究所との間で連携・協力の推進に関する基本協定書を締結するなど、教育研究並びに社会連携活動の幅を一層広げる体制づくりを行っている。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  常に社会との接点を持ちながら教育研究を推進していくという大学の姿勢を、学長のリーダーシップの下でより明確にし、着実に具現化していくために、「東京藝術大学アクションプラン ― 世に「ときめき」を ― 平成21年1月改訂」をとりまとめ、教育研究や社会連携活動に取り組んでいる。
  •  「展覧会概論」、「東京芸術大学史概論(美術編)」等、大学独自の研修を企画し、大学への理解を深め、教職員の能力開発や意識向上を図っている。
  •  各部局の枠を超えた全学的な視点から教育研究の一層の充実発展を図るため、学内公募プロジェクト、学長発信プロジェクト及び学長プロジェクトの3つの制度を構築し、各プロジェクトの特色に応じた戦略的な配分を行っている。
  •  外部資金から得た間接経費については、教育研究経費と一般管理経費の使途区分をなくすなど見直しを行っている。
  •  学生サービス強化を図るため、学生課と入試・学務課を統合し、また、美術学部、音楽学部の各事務部会計係を事務局会計課に一元化するなど、事務組織の見直しを行っている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載22事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  ウェブサイトに受託研究、受託事業、共同研究及び寄附講座の案内等を掲載し、連携を希望する民間企業等からの外部資金受入れに関する手続き等について、情報提供を行っている。
  •  外部資金比率が5.5%(対前年度比1.6%減)となっていることから、外部資金獲得に向けた取組が期待される。
  •  新聞社等と「バウハウス・デッサウ展」、「狩野芳崖 悲母観音の軌跡」等を共同開催し、開催経費の一部を共同開催者が負担することにより、大学の事業費抑制を図っている。
  •  東京国立博物館、国立西洋美術館及び国立科学博物館とコピー用紙、トイレットペーパー、廃棄物処理、古紙等の売り払いについて共同調達を実施し、事務の効率化・合理化及び経費削減を図っている。
  •  一般管理費比率が7.2%(対前年度比1.5%増)となっていることから、削減に向けた取組が期待される。
  •  これまで細分化されていた奨学寄附金の管理を大学本部で一本化し、資産の効率的運用に取り組んでいる。
  •  中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載12事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  芸術文化振興に関心のある企業、団体を対象にした「芸術系大学への期待に関する調査」を実施し、芸術分野評価方法等の試案作成の基礎資料として使用するとともに、教育・研究・社会貢献等各分野での企画立案に活用するよう取り組んでいる。
  •  ウェブサイトのアクセス解析結果からユーザーのニーズに応えるため、「入試情報」ページについて、合格発表掲示を平成21年度入学者選抜試験から実施するなど、ユーザーの視点に立ったウェブサイトの改善に取り組んでいる。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載6事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  施設の点検・評価に基づく専有及び共用スペースの運用実態の調査として、教員に対して各部屋の使用状況の報告を求め、実際に巡回して使用状況を調査し、非効果的・非効率的に使用していると思われ改善が必要とされた29室について、改善を要請している。
  •  施設維持管理マップを作成し、効率的な修繕計画を策定することにより、耐震工事と併せてトイレ改修が行われ、仮設材、仕上げ材及び共通経費の削減が図られるなど、予算の有効な利用が図られている。
  •  危機管理マニュアル及び安全管理指針を紙媒体で学内に配付するとともに、学内ウェブサイトにも掲載し、各校地で消防訓練、救命講習会等を開催するなど、危機管理マニュアルに記載されている行動が速やかにとれるよう、全学的に取り組んでいる。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載9事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成20年度の外形的・客観的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

  •  大学院映像研究科修士課程アニメーション専攻を新たに開設し、アニメーション表現を専門とする高度な教育研究組織として、実技、スタジオベースの演習(ゼミナール)から構成されるカリキュラムを編成し、アニメーション制作に必要な技法と知識を習得することとし、日常的な指導についても、デモンストレーション、1対1の個人面談等の形態を採り入れ、大学の中心的な指導方法である少人数指導又は1対1のマンツーマンによる方法が採用されている。
  •  学位審査の公開性を高めるための博士審査展の開催や実技系博士学生の論文執筆のサポート体制の構築等、芸術系大学院における学位授与プロセスの研究についての取組を行っている。
  •  成績優秀者を顕彰するために、安宅賞をはじめ、新たに設けられた大賀典雄賞を含む25の学内奨学金を設け、さらに優秀な成績を得て卒業・修了する者に対して、サロン・ド・プランタン賞、芸大デザイン賞、アカンサス音楽賞等を授与している。
  •  講義科目等についても、シラバスにオフィスアワー又は教員との連絡方法を掲載し、学生が教員に学習上の相談ができるように配慮している。
  •  金融危機による外国為替相場の急激で大幅な変動の影響を強く受けた国からの留学生に対して、就学を支えるための緊急支援奨学金を支給している。
  •  地域の芸術文化振興等のため、台東区、荒川区、民間企業等と連携協定等を締結し、さらに「音楽と言語に共通する認知構造解明といった共同研究、人材育成」、「科学的手法と芸術的完成の結びついた新しい表現の創造」等を目指すため、独立行政法人理化学研究所との間における連携・協力の推進に関する基本協定書を締結するなど、社会との連携活動を推進している。
  •  アジア総合芸術センター構想プロジェクトによる「日韓製作領域合同ワークショップ2008」、「日中韓陶芸サマースクール」等の取組を展開し、さらなる中国、韓国等の大学との交流を促進している。

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高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成22年02月 --