国立大学法人東京医科歯科大学の平成20年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 東京医科歯科大学は、医学部・歯学部の両附属病院を経営戦略上の重要事項として位置付け、学長の執行方針である、附属病院の運営の見直しによる剰余金を教育研究及び診療活動の質の向上に充て、附属病院の診療活動を高めるというサイクルの循環を、引き続き強力に推進している。
 業務運営については、副学長に関する規程を制定し、新たに7つの業務に区分した副学長を発令し、戦略的な法人経営体制を確立している。
 財務内容については、効率的な資金の管理運用や大学シーズの積極的な広報等により、外部研究資金その他の自己収入の増加に努めている。
 自己点検・評価及び情報提供については、広く海外から学生募集や研究者の招へいを行うため、英語版学外広報誌として「TMDU ANNUAL NEWS」を発行し、大学の国際化の現況、取組、留学生の活躍等を発信している。
 教育研究の質の向上については、研究推進協議会で補助金等の財政支援が終了したプロジェクトのフォローアップとして、学内公募及び審査を行い、研究費、研究スペース等を配分することとしている。また、大学の幅広い教育研究資源を活かし、学び直しに資する良質な教育プログラムの普及を推進している。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  副学長に関する規程を制定し、新たに「評価」、「情報管理」、「苦情相談・学生支援」等の7つの業務に区分した副学長を発令し、戦略的な法人経営体制を確立することにより、学長のリーダーシップの展開を容易にしている。
  •  戦略的法人経営体制の確立のために、学長の下に、各理事を議長とする「企画・国際交流戦略会議」、「教育推進協議会」、「研究推進協議会」、「医療戦略会議」を新たに設置している。
  •  全学的視点から戦略的な学内資源配分として、学長裁量経費、学長裁量人員枠及び共用スペースを設定・確保し、教育研究等の成果に基づき重点的に配分している。
  •  事務局、知的財産本部、共同教育研究センター事務部等において物品請求システムを稼働させ、発注事務の合理化・効率化を図っている。
  •  裁量労働制の導入等、女性教員の裾野の拡大に努め、環境整備と意識改革を重点課題として取り組むため、女性研究者支援対策会議及び女性研究者支援室を設置し、育児を中心に支援策やシンポジウムを開催している。
  •  平成19年度評価結果で評価委員会が課題として指摘した、評価に基づくインセンティブを付与するには至っていなかったことについては、インセンティブ付与を目的とした「特別教授」の名称を付与することができる規定を制定するなどの取組を行っており、指摘に対する取組が行われている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載20事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  運用可能な資金を分析するために日々の預金残高確認表を作成し、それらを基に資金の管理運用に関する検討会を開催するなどの取組により、対前年度比12倍となる約4,900万円の増収となり、教育研究の充実に活用している。
  •  各種イベントで大学シーズを積極的に広報するなどの取組により、受託研究費が8億4,888万5,000円(対前年度比1億5,359万6,000円増)、共同研究では、2億3,121万3,000円(対前年度比2,217万1,000円増)となっている。
  •  施設保守管理経費等の推移を試算し、その削減について検討し、施設保守管理経費について、床面積当たり前年度比0.2%を縮減するとともに、施設修繕費について、個々の工事について契約内容の見直し等を継続的に行い、約4,400万円を縮減している。
  •  中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

平成20年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。

  • 随意契約見直し計画の実施状況について、計画どおりに実施されていないことから、着実な取組が求められる。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載18事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  評価情報室の組織について、新たに副学長(評価担当)を室長に任命し、学長特別補佐の役割分担を明確にするなど全面的に見直し、評価体制の強化と評価システムの充実を図っている。
  •  広く海外から学生募集や研究者の招へいを行うため、英語版学外広報誌として「TMDU ANNUAL NEWS」を発行し、大学の国際化の現況、取組、留学生の活躍等を発信している。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載11事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  断熱効率を上げるため二重ガラス建具への更新等の環境へ配慮した改修を実施し、温室効果ガスの削減のための計画に基づき、蒸気バルブの断熱に改修するなど、地球温暖化対策に取り組んでいる。
  •  労働安全衛生法、労働安全衛生規則に基づき、大学全体の「作業環境管理」、「作業管理・安全管理」、「健康管理」のさらなる強化を図り、労働安全衛生管理の徹底を図っている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載11事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成20年度の外形的・客観的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

  •  高い倫理観や人間的共感力を持った医療人を養成するために臨床体験を重視し、全新入生参加のオリエンテーションを実施し、全国患者の会の協力を得ながら、患者の医療体験談と質疑応答を通じ、医療人としての動機付け等に取り組んでいる。
  •  早期臨床体験実習において、その都度、自己の知識と基本的な技術をつき合わせる模擬体験を実施し、PBL(Problem‐Based Learning、問題解決型学習)チュートリアル教育等を実施しており、自己問題解決型学習の効果の検証が期待される。
  •  学生の国際感覚の育成のために海外の大学への派遣、自己学習支援のためのIT教育の充実、技能教育充実の支援となるシミュレーション教育の充実を図っている。
  •  研究推進協議会で補助金等の財政支援が終了したプロジェクトのフォローアップとして、学内公募及び審査を行い、研究費、研究スペース等を配分することとしている。
  •  4大学連合協定に基づき、学術研究の最前線をわかりやすく解説する講演会の開催等の取組を行っており、今後とも複合領域での教育研究活動の一層の進展が期待される。
  •  全学の取組として連続公開講座を企画立案、実施し、積極的な健康作りのための基礎的知識を医学・歯学の両面から6つのテーマを設定して講義している。
  •  「医師不足、診療科偏在の解消に向けたママさんドクター・リターン支援プログラム」、「社会的なニーズに対応した歯科衛生士および歯科技工士への再教育プログラム」等により、大学の幅広い教育研究資源を活かし、学び直しに資する良質な教育プログラムの普及を推進している。
  •  「歯と骨の分子疾患科学の国際教育研究拠点」として、国際的に活躍する研究者をチューターとして招へいしたほか、国際シンポジウム、国際ディベート・リトリート等を実施し、国際的な研究拠点形成及び若手研究者の育成等の取組を推進している。

附属病院関係

<医学部附属病院>
  •  初期臨床研修の習熟度を測定するため、オンライン臨床研修評価システム(EPOC)を活用して評価を行うとともに、利用者から意見聴取を行ってシステム改良を行い、精度を高めている。また、臨床試験管理センターを中心として治験や自主臨床試験を推進している。診療では、ホットラインによる救急車やヘリコプターによる救急患者を受入れ(救急車による受入れ患者数6,732名)、さらに、早期救命活動実現のために東京消防庁と協定を締結し、ドクターカーの運用を開始するなど、社会的に要請の高い課題に対して積極的に取り組んでいる。
     今後、質の高い臨床教育、救急医療等の地域貢献の取組を維持しつつ、臨床研究の開発・推進のためのさらなる取組が期待される。
(教育・研究面)
  •  大学病院連携型高度医療人養成推進事業(都会と地方の協調連携による高度医療人養成)により、東京・秋田・島根間における広域連携臨床研修プログラムを創設して、臨床研修の充実に取り組んでいる。
(診療面)
  •  がん治療センターを設置、医師やクラーク等を配置するとともに、化学療法レジメンの管理体制を強化し、化学療法件数を伸ばしている。(平成20年度4,961件)また、ポジトロン断層・コンピュータ断層複合撮影装置(PET‐CT)を活用した結果、検査件数も増加している。(平成20年度3,236件(対前年度比454件増))
(運営面)
  •  国立大学病院管理会計システム(HOMAS)を活用しながら、病院運営会議において部門別診療科別原価計算表を公開し運営状況を報告している。
  •  東京慈恵会医科大学病院を中心に実施されている「脳卒中地域連携クリニカルパス」に加入して、患者が安心して在宅医療に戻るまでの医療支援の道筋をつけている。
<歯学部附属病院>
  •  医科と歯科が併設する病院として、病院長のリーダーシップの下で、医科と歯科の壁を越えた救急診療に取り組み、患者サービスの向上を図っている。また、歯科器材・薬品開発センターによるシンポジウムを開催し、歯科材料に関する薬事申請・認定制度及び治験関係情報の収集・治験手続について関係者に指導・周知を行うなど、先端歯科医療の開発に取り組んでいる。
     今後、医学部附属病院とも協力しながら、患者のニーズに対応した診療、附属病院経営の向上に向けたさらなる取組が期待される。
(教育・研究面)
  •  社会人の学び直しニーズ対応教育推進プログラム(社会的なニーズに対応した歯科衛生士及び歯科技工士への再教育プログラム)では、最新のエビデンスに基づいた歯科スキル向上を図る教育プログラムを実施している。(74名の受講者)
(診療面)
  •  歯科ユニット(歯科用治療装置)18台、洗浄滅菌システム及び手術処置映像管理システムの更新を行い、診療環境を整備している。
  •  安全対策研修会及び心肺蘇生・AED講習会を実施して医療安全重要性の認識を徹底させている。
(運営面)
  •  病院運営企画会議を毎週1回開催し、病院長のリーダーシップの強化を図っている。また、同会議において、部門別原価計算表を提示し、病院幹部に対して経営の効率化を推進するための取組を行っている。
  •  診療に従事する職員のタイムスタディ調査を実施し、原価計算の精度向上を図っている。
  •  外来患者アンケート及び入院患者アンケートを実施し、さわやかサービス委員会において分析を行い、患者サービスの向上に努めている。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成22年02月 --