国立大学法人千葉大学の平成20年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 千葉大学は、大学を効率的に運営し、構成員が共通の意識を持って行動するよう、千葉大学憲章、千葉大学行動規範を制定し、教育研究の質を高め、地域貢献・国際化を推進している。
 業務運営については、すべての教員を対象として業績評価を本格実施し、評価結果を処遇に反映しており、評価できる。この他、学術総合推進室の体制を整備し、学長から諮問のあった真菌医学研究センターの活性化、看護学部のブランド化及び英語ハウス設置構想等について、具体的な改革に向けた取組を開始している。
 財務内容については、電子複写機の保守を含めた複写サービスについて一般競争契約を実施した結果、平成19年度と比べ約1,600万円を節減している。また、科学研究費補助金の獲得に向けて事前確認支援制度を新たに実施している。
 その他業務運営については、環境ISO学生委員会が、平成20年度千葉県循環型社会形成推進功労者として表彰されている。
 一方、年度計画で掲げている情報セキュリティ維持のための取組及びハラスメントの解決機能の強化については、それぞれの年度計画に関する取組が十分ではないことが監事監査で指摘されていることから、着実な取組が求められる。
 教育研究の質の向上については、海外研究者3名による「国際研究交流論」の開講、学生によるレポートの英文化等の教育の国際化へ向けた取組、インドネシアの協定校大学連合及びインドネシア教育省との間でのダブルディグリープログラムの締結、千葉県との連携包括協定に基づいた共同研究や職員研修会等に取り組んでいる。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  すべての教員を対象として業績評価を本格実施し、評価結果を平成20年12月の勤勉手当及び平成21年1月の昇給から反映しており、評価できる。
  •  学術総合推進室の体制を整備し、学長から諮問のあったテーマについて真菌医学研究センターの活性化、看護学部のブランド化及び英語ハウス設置構想等具体的な改革に向けた取組を開始している。
  •  生命系科学分野を中心とする自然科学分野において、若手教員が自立して研究できる環境を整備し支援するために、若手人材育成システムの円滑な導入を図り推進することを目的として、生命系科学研究推進機構を設置している。
  •  研究の充実・支援として、「千葉大学の優れた研究に対する支援について」報告のまとめ、「研究成果の見える化」の計画、科学研究費補助金申請に係る事前確認支援制度の導入、COEスタートアッププログラムの設置等に取り組んでいる。
  •  サバティカル研修に関する規程を整備し、平成21年度の研修利用希望者の募集を行い17名を選考している。
  •  外部資金等による特定の教育研究プロジェクト等を推進するため、特定雇用教職員制度を整備し、優秀なスタッフの雇用や研究の継続性の確保に取り組んでいる。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて特筆すべき進捗状況にある

(理由) 年度計画の記載22事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められるほか、すべての教員について全学で業績評価を実施し、評価結果を処遇に反映させている取組が行われていること等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  科学研究費補助金の応募に向けて事前確認支援制度を新たに実施している。
  •  環境健康フィールド科学センターにおける自己収入は、農場の高度化セル成型苗生産利用システムの軌道化、柏の葉診療所の診療枠の拡充等により、全体で2,494万円(対前年度比15.5%増)の増収となっている。
  •  電子複写機の保守を含めた複写サービスについて一般競争契約を実施した結果、平成19年度と比べ約1,600万円を節減している。
  •  資金運用については、新たに合同運用指定金銭信託での運用を行うなど効果的な運用を行い対前年度比で1,739万円の増収となり、国際プロジェクト経費等に活用している。
  •  中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載12事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  認証評価における評価基準を参考に、学生の成績分布や学生の授業評価の実施状況等、大学独自の点検・評価項目を設定し、その評価基準に基づいて自己点検・評価を実施している。
  •  研究者情報データベースの更新を実施し、併せて英語版インターフェースによる多言語化により研究業績52,342件を公開するなど、教育研究活動の公表に積極的に取り組んでいる。
  •  卒業生及び修了生に対し情報発信を積極的かつ効果的に推進することを目的として、卒業生室を整備し、ウェブサイトの開設や卒業生アンケート集計結果や卒業生との「絆ニュース」を配信している。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載6事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  建物状況調査に基づいた劣化防止度を判定するほか、緊急性・必要性・利用頻度・学習環境への効果及び部局の特殊性等を考慮した要望等を踏まえ点数化し、客観的・総合的に判断した施設の維持管理計画書を策定している。
  •  全学の電力使用機器調査を実施し、電力使用量削減対策案を作成しており、今後の効果が期待される。
  •  環境ISO学生委員会が、千葉県から平成20年度千葉県循環型社会形成推進功労者として表彰されており、教育面での効果が期待される。
  •  発生が想定される様々なリスクにおける担当部署(主要窓口)を整理し、危機管理体制フローの作成及び各部局等へ周知徹底に取り組んでいる。
  •  災害対策本部行動マニュアルを改訂し、マニュアルの下で情報整理・伝達訓練を主体とした各キャンパス合同の訓練を実施し、学生・職員の避難行動や、避難場所を記載した地震防災のしおりを配付している。

 平成20年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。

(法人による自己評価と評価委員会の評価が異なる事項)

  • 「「情報セキュリティ対策基準」を遵守し、情報システムの監査を定期的に実施することにより、不正アクセスやウィルス被害等を防止する」(実績報告書37頁・年度計画【225】)については、情報セキュリティ対策基準に基づき各部局が作成することとされている所有情報資産のセキュリティ維持のための「実施手順書」がほとんどの部局において作成されていなかったこと、「実施手順書」の作業がいつ完了するのか目処が立たない状況にあると監事監査で指摘されており、防止に向け取り組んでいるとはいえないことから、年度計画を十分には実施していないものと認められる。
  •  「ハラスメントに関する講演会、相談員に対する研修会を実施して解決機能を強化する」(実績報告書37頁・年度計画【226】)については、3地区で開催されたハラスメント講習会において、教員の出席がほとんどなく1名も出席者がいない部局もあると監事監査で指摘されており、解決機能を強化しているとはいえないことから、年度計画を十分には実施していないものと認められる。
【評定】 中期目標・中期計画の達成のためにはやや遅れている

(理由) 年度計画の記載16事項のうち14事項が「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められるが、2事項について「年度計画を十分には実施していない」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成20年度の外形的・客観的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

  •  既存の3分野(物理学コース、フロンティアテクノロジーコース、人間探求コース)に加え、理学部化学科(物理化学分野)での飛び入学者受入れ体制の整備を行い、平成21年度の入学者選抜を実施している。
  •  教育の国際化として、海外研究者3名の招へいによる「国際研究交流論」講義、学生によるレポートの英文化等を実施している。また、融合科学研究科では英語で行われる科目を履修し、英語による発表を行うことにより学位取得も可能な「先進国際プログラム」の募集を開始している。
  •  中国の大学との学術交流の推進・若手教員の養成に資することを目的として、日本学術振興会北京研究連絡センターとの共同シンポジウムを開催しており、共同研究発表、教育プログラムの紹介、各研究科の紹介、パネルディスカッション等も活発に行っている。
  •  環境リモートセンシング研究センター、理学研究科及び融合科学研究科とインドネシアの協定校大学連合・インドネシア教育省との間でダブルディグリープログラムを締結している。
  •  優秀な学生の確保及び若手研究者としての研究能力の向上の取組として、大学院博士後期課程の学生を対象に特別リサーチ・アシスタント(特別RA)制度を導入している。
  •  インターンシップの単位化や企業開拓、事前講習の充実に取り組み、281名(対前年度比17.6%増)の学生がインターンシップに参加している。
  •  地域社会と連携・協力し、観光人材育成講座、夏休み薬草教室等を開講している。
  •  千葉県との連携包括協定に基づき、職員研修会の開催や共同研究等を行うとともに、千葉県の観光振興にも協力している。
  •  附属学校委員会では、「音声言語を土台にした小学校における英語リテラシー・カリキュラムの開発」や「音楽の基礎的な能力、表現力を育てる小学校音楽科学習指導のあり方」等のカリキュラム開発や学習指導法に関する28件の連携研究が展開されている。

全国共同利用関係

  •  全国共同利用の研究施設である環境リモートセンシング研究センター、真菌医学研究センターではそれぞれ研究者コミュニティに開かれた運営体制を整備し、大学の枠を越えた全国共同利用を実施している。
  •  環境リモートセンシング研究センターは、地球温暖化寄附研究部門を設置し、地球温暖化の現象の解明・対策・適応を目標とした研究活動を実施するなど、社会的ニーズを踏まえた共同研究を拠点として実施している。また、衛星データと図書情報との連携の試みとして、高解像度衛星画像と文献情報を同時に検索できるシステム(CUWiC)を附属図書館との共同研究で試験構築し、衛星画像データをより一層効果的に発信することを可能としている。

附属病院関係

  •  初期臨床研修の充実を図るために、新たに6つの特別プログラム(内科、外科1.、外科2.、小児科、産婦人科、救急科)を設定するとともに、県内の医師養成・確保のために特定非営利活動法人(NPO)千葉医師研修支援ネットワークと連携し専門医の育成・定着を図るための体制整備を実施している。また、未来開拓センターを開設して、遺伝子治療や再生医療等の先進医療の開発・実施に取り組んでいる。診療では、新病棟「ひがし棟」が開院し、患者プライバシーに配慮した療養環境の改善が図られたほか、屋上のヘリポート設置によりドクターヘリ等による救急搬送体制が整備されている。
     今後、院内の経営基盤の強化を図りつつ、これまで築き上げた地域医療機関との密接な連携も維持しながら、地域の拠点病院としてさらなる取組が期待される。
(教育・研究面)
  •  大学病院連携型高度医療人養成推進事業(東関東・東京高度医療人養成ネットワーク)により、5大学で200コース以上の研修コースが設定され、後期研修医の受入れ体制を整備している。
  •  死因究明や病理解剖に代わるものとして期待されている「Ai(オートプシーイメージング)センター」を設置している。
  •  グローバルCOEプログラム(免疫システム統御治療学の国際教育研究拠点)により、医学研究院及び放射線医学総合研究所と連携した研究開発と若手人材養成を実施している。
(診療面)
  •  千葉県医師会や千葉県の協力の下、8種類の千葉県版循環型地域連携パスを完成させ、また、院内においてもクリニカルパスの適用の促進を図り、平均在院日数の短縮を実現させている。
  •  患者紹介率向上のために「地域連携の会」を開催して、医師会や関係医療機関に協力を求めた結果、患者紹介率77.2%となり、着実に地域医療連携を推進している。
  •  患者待ち時間を平均30分以内に短縮させ、また、他学部からの協力を得て病棟における絵画の展示等を実施しており、総合大学としての利点を活かした患者サービスの充実に努めている。
  •  安全な医療を提供するために、7対1看護体制を導入し、平成21年度は117名を新規採用するなど、看護体制の強化を図っている。
(運営面)
  •  病院長の任期制の延長(2年から3年)やリコール制度の制定、病院長補佐をチームリーダーとした経営改善対策プロジェクトチームを設置するなど、附属病院の管理運営体制の強化を図っている。
  •  日曜入院の導入、診断群分類包括評価(DPC)の専門チームによる院内査定率の縮減、医療材料の価格交渉等、種々の増収・削減方策に取り組んでいる。実施に当たっては、病院長の強力なリーダシップにより、会議、院内ウェブサイト、経営改善ニュースの配信等を利用し、病院全体で取り組んでいる。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成22年02月 --