国立大学法人筑波技術大学の平成20年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 筑波技術大学は、聴覚・視覚に障害のある者を対象に教育を行う大学であり、学生の障害特性に配慮した教育を通じて、幅広い教養と専門・応用的能力を持つ専門職業人の養成、社会的自立を果たしリーダーとして社会貢献できる人材の育成、国内外の障害者教育の発展に資することを目標として掲げ、聴覚・視覚障害を補償する教育方法・システム等の開発、情報授受のバリアのない教育環境の構築、他大学等に対する支援等の実施に努めている。
 業務運営については、教員の教育能力と事務系職員の業務遂行能力を一層向上させることを目的に、「筑波技術大学FD・SDハンドブック‐聴覚・視覚障害学生の修学のために‐」を作成し、全教職員に配付するなど、積極的な取組が行われている。
 一方、年度計画に掲げられている他の障害者教育機関との人事交流を図ることについては、人事交流は行われるまでには至っていないことから、着実な取組が求められる。
 財務内容については、外部研究資金獲得を促進するため関係情報の収集及びウェブサイト掲示等による周知等の取組により、外部資金の獲得額が増加している。
 教育研究の質の向上については、各学期ごとに学科専攻内の教員全員で、学生の学習状況、学習到達度や授業内容に関する情報交換のみならず、各学部と障害者高等教育研究支援センターとの間で、情報交換会(成績報告会)を継続実施することにより、統一性、一貫性、透明性のある成績評価に取り組んでいる。

2 項目別評価

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  スタッフ・ディベロップメント(SD)について、SD支援調整担当特命学長補佐を新たに任命し、外部講師等による障害学生支援に関するSD研修の開催により、事務系職員の資質向上に取り組んでいる。また、教員の教育能力と事務系職員の業務遂行能力を一層向上させることを目的に、「筑波技術大学FD・SDハンドブック‐聴覚・視覚障害学生の修学のために‐」を全教職員に配付している。
  •  保健科学部附属東西医学統合医療センターの医療サービスの向上及び経営の効率化を図るため、学外有識者を含めた経営改善会議を設置し、改善状況に関する検証を行っている。
  •  育児と仕事の両立を目指し、育児のための多様な勤務形態とする育児短時間勤務制度を導入するとともに、教職員の男女共同参画についての理解を深めるため講演会を開催するなど、男女共同参画の推進に取り組んでいる。
  •  平成19年度評価結果で評価委員会が指摘した職員宿舎の有効利用等については、職員宿舎等の効率的・効果的な運用について、将来的に売却することを視野に入れた審議を行うなど、指摘に対する取組が行われている。

平成20年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。

  •  会計規則の変更については、経営協議会において審議すべき事項であるが、報告事項として扱われていることから、適切な審議を行うことが求められる。

(法人による自己評価と評価委員会の評価が異なる事項)

  •  「引き続き、他の障害者教育機関との人事交流を図る」(実績報告書10頁・年度計画【13】)については、他の障害者教育機関からの教員採用は行われているものの、人事交流は行われていないことから、年度計画を十分には実施していないものと認められる。
【評定】 中期目標・中期計画の達成のためにはやや遅れている

(理由) 年度計画の記載19事項中18事項が「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められるが、1事項について「年度計画を十分には実施していない」と認められ、さらに、経営協議会による適切な審議が行われていないこと等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  外部研究資金獲得を促進するため関係情報の収集及びウェブサイト掲示等による周知等の取組により、外部資金の獲得額が、3,900万3,000円(対前年度比2,568万3,000円増)となっている。
  •  役員会、部局長会議、経営戦略会議及び事務局連絡会は、会議用パソコンを使用した電子会議とし、会議資料のペーパーレス化を進めている。
  •  中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載4事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  筑波エキスポセンターでのパネル常設展示、教育研究紹介イベントの開催や「筑波技術大学学術情報検索システム」のウェブサイト上での試験公開等、情報公開・提供及び広報活動を行っている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載3事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備等、2.安全管理

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  聴覚・視覚障害者のための附属図書館機能の整備・充実を図るため、学習支援、教育支援、研究支援、情報発信を柱とした「筑波技術大学附属図書館マスタープラン」を策定している。
  •  施設環境防災委員会において稼働率の低い施設についての用途の見直しを実施し、共有スペースの設置箇所を決めるなど、施設の有効活用に努めている。
  •  情報システムへの不正アクセス等に対応するため、情報セキュリティ監査規程等を新たに制定するなどの取組が行われている。
  •  予め想定し得る危機に対する対応と危機発生時の被害拡大防止、早期復旧への体制構築のための危機管理マニュアルや危機管理規則を制定するなど、危機管理体制の充実を図っている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載4事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成20年度の外形的・客観的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

  •  各学期ごとに学科専攻内の教員全員で、学生の学習状況や学習到達度、授業内容に関する情報交換のみならず、各学部と障害者高等教育研究支援センターとの間で、情報交換会(成績報告会)を継続実施することにより、統一性、一貫性、透明性のある成績評価に取り組んでいる。
  •  新しい学科及びコース制にマッチした専門教育科目の充実を図るため、コンピュータ室のハード及びソフト面の整備を行うとともに、携帯電話や学内LANの活用により、学生が自学自習できるシステムの改良に努めるなど、情報システムを活用した教育支援を行っている。
  •  保健管理センター、保健科学部及び附属東西医学統合医療センターの医師等による協力体制の下、健康診断時に全学生の感染症の抗体検査を導入し、抗体価の低い学生には予防接種を行うなどの取組を行っている。
  •  特に経済的に困窮している者に対する学力基準を見直し、授業料免除等に関する取扱要項を改定するとともに、各種奨学金に関する情報収集に努め学生に提供し、障害基礎年金の受給手続きや補装具等の給付申請手続き等についても広く相談を行うなど、学生支援に努めている。
  •  聴覚障害者の就労環境の改善及び最新のテクノロジーを活用した情報保障をテーマとしたシンポジウムを開催し、講師として東京障害者職業センター並びに企業に就労する卒業生を招へいしている。
  •  他の研究所と共同で、携帯電話の画面にリアルタイムで、かな漢字混じり文と学年別に対応した漢字のみに読みを漢字の後にかっこ付きで提示する「聴覚障害者向け携帯電話リアルタイム字幕表示システム」について研究を行うなど、他の研究機関との連携に取り組んでいる。
  •  全国聴覚障害者情報提供施設協議会と連携事業の協定を結び、手話奉仕員指導者養成講座、手話通訳者指導員養成講座及び音訳ボランティア養成講座の遠隔講義の実施に関する支援や、視覚障害者を対象とした音声認識字幕作成のための復唱者養成講座の実施等、社会連携・地域貢献に努めている。

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高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成22年02月 --