国立大学法人山形大学の平成20年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 山形大学は、「自然と人間の共生」をテーマに、教育・研究・地域貢献に真摯に取り組み、次世代を担う人材の育成、知の探求・継承・発展及び豊かな地域社会の実現に向けた取組を推進している。
 業務運営については、10年後の山形大学のあるべき姿を念頭に置き、「山形大学の将来構想」を策定し、5つの基本理念と今後の進むべき方向を定めている。また、組織評価の結果に基づいて部局に配分するインセンティブ経費の総額を増額し、傾斜配分することにより、部局運営を活発化している。
 一方、年度計画に掲げている全学的に構築した教員の個人評価指針に基づく、各部局での人事評価を実施するまでには至っていないことから、着実な対応が求められる。
 この他、業務運営については、事務組織を再編し、事務局を6部体制から4部体制へスリム化を図るとともに、各キャンパスに配置する事務職員の人数を増やし、各キャンパスの運営体制の強化を図っている。
 施設設備については、中央図書館の改修を行い、「ライブラリープラザ」として広く機能的な空間にリニューアルすることにより、多様化する学習機能に対応するとともに、地域との連携事業にも活用できるようにしている。
 教育研究の質の向上については、「Blackboard授業支援システム」(インターネット上で各授業ごとのスケジュール管理、連絡事項等の機能を統合した教育ポータルサイト)を利用するなどICT(情報通信技術)活用を推進している。また、基礎研究を推進するための支援制度の検討を進め、新任教員のスタートアップ支援制度、科学研究費補助金に関する若手教員助成制度等を新たに実施している。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  10年後の山形大学のあるべき姿を念頭に置き、「山形大学の将来構想」を策定し、5つの基本理念と今後の進むべき方向を定めている。
  •  「結城プラン2009」を策定し、「教養教育の再構築」や「有機エレクトロニクス分野での世界的な教育研究拠点整備」を推進している。
  •  組織評価の結果に基づいて部局に配分するインセンティブ経費の総額を2,000万円から5,000万円に増額し、傾斜配分することにより、部局運営を活発化している。
  •  役割を明確化し効率的な審議を可能とするため全学各種委員会を全面的に見直し、70から46に整理・統廃合を行っている。
  •  山形大学卒業者(修了者)を対象とした外国語能力及び情報処理能力に優れた職員を採用する独自制度を設け、6名を採用することとしている。
  •  事務組織を再編し、事務局を6部体制から4部体制へスリム化を図るとともに、各キャンパスに配置する事務職員の人数を増やし、各キャンパスの運営体制の強化を図っている。
  •  平成19年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、教員評価基準の策定については、全部局で評価基準を策定しており、指摘に対する取組が行われている。
  •  平成19年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、統合文書管理システムの機能の拡充については、文書登録から情報公開までの一体化した運用を進め、文書管理機能の充実を図っており、指摘に対する取組が行われている。

平成20年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。

(法人による自己評価と評価委員会の評価が異なる事項)

  •  「全学的に構築した教員の個人評価指針に基づき、各部局において人事評価を実施する」(実績報告書13頁・年度計画3(1)2)【1‐1】)については、平成20年度中に実施するまでには至っていないことから、年度計画を十分には実施していないものと認められる。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けておおむね順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載32事項中31事項が「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められるが、1事項について「年度計画を十分には実施していない」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  科学研究費補助金支援制度として、「科学研究費補助金に関する若手教員研究助成」、「科学研究費補助金計画書に関するアドバイザー制度」を実施した結果、科学研究費補助金の申請件数は751件となり、対前年度比2%増加している。
  •  図書・雑誌の重複購入の抑制に努め、発注図書の約8%の重複購入を抑止するとともに、図書館デリバリー・サービス(キャンパス間相互利用サービス)の活用により、学内所蔵図書の有効利用を促進している。
  •  一般管理費について、12億7,535万円(対前年度比3億7,965万円増)、一般管理費比率は4.2%(対前年度比1.2%増)となっており、一般管理費削減に向けた取組が期待される。
  •  中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載30事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  組織評価(部局年度業績評価)について、評価項目やデータの記載を見直すなど、自己評価書を作成する教員の負担を考慮している。
  •  組織評価の実施に当たり、経営協議会委員が一同に会して部局長からヒアリングを実施し、より実質的な評価が行えるよう工夫・改善を図っている。
  •  学長による月2回の定例記者会見の開催や学生自らが運営するウェブサイト「山形大学マガジン」の立ち上げ支援等、積極的な情報発信を推進している。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載17事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  山形駅・学生寮と小白川キャンパスの間に山形大学専用シャトルバスを運行するため、バスの乗り入れができるように正門周辺を整備し、キャンパス内にバス停留所を設置している。
  •  中央図書館の改修を行い、「ライブラリープラザ」として広く機能的な空間にリニューアルすることにより、多様化する学習機能に対応するとともに、地域との連携事業にも活用できるようにしている。
  •  環境に配慮した事業の遂行のため実行すべき措置について定める行動計画として、山形大学環境アクションプランを策定し、エネルギー使用状況の実状や環境負荷の詳細を記載した「環境報告書」を継続して公開しつつESCO(Energy Service Company)を活用して環境負荷の低減とコスト節減を推進している。
  •  キャンパス内全面禁煙、又は分煙措置をさらに徹底し、分煙パトロールを実施するなど、キャンパス内での受動喫煙防止を行っている。
  •  「安全への手引き」を基にしたQ&A方式の実例集について、学内で発生した事故事例やヒヤリハット事例を収集・整理し、実例を追加して内容を充実している。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載18事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成20年度の外形的・客観的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

  •  「Blackboard授業支援システム」(インターネット上で各授業ごとのスケジュール管理、連絡事項等の機能を統合した教育ポータルサイト)を利用するなどICT(情報通信技術)活用を推進している。
  •  「アドミニストレイティブ・アシスタント」制度を設け、学生支援業務の充実と学生の就業意識の向上を図っている。
  •  先端分子疫学研究所を設置し、分子疫学研究を推進している。
  •  全学的な自己点検・評価に基づき、経営協議会学外委員による外部評価を取り入れた組織評価を実施している。
  •  女性教員の国際学会への旅費支援制度を設けるなど、女性研究者の育成を図っている。
  •  基礎研究を推進するための支援制度の検討を進め、新任教員のスタートアップ支援制度、科学研究費補助金に関する若手教員助成制度等を新たに実施している。
  •  理学部では工業高等学校、工学部と農学部では高等専門学校と連携協力を推進している。
  •  山形大学SCITAセンターの設置により、全県民を対象として開催する体験型の科学実験教室プログラムを提供している。
  •  附属学校担当理事を中心に、従来の教員養成機構、附属学校運営会議に加え、四附経営部会ワーキンググループ及び附属学校将来計画検討ワーキンググループを設置し、附属学校の存在意義や運営組織の検討、将来計画の策定等を行い、平成21年度から附属学校園を総括する附属学校運営部の新設、校長の専任化等を決定している。

附属病院関係

  •  臨床研修の質を高めるため、研修プログラムを常時見直し、「大学病院・協力病院自由選択コース」を設置するとともに、山形大学関連病院会や山形大学蔵王協議会との連携強化を図り、27名の研修マッチング数を確保するなど、着実な成果を上げている。また、競争的資金獲得のためのプロジェクトチームの発足により、グローバルCOEプログラム採択につながるなど積極的な高度医療の開発に取り組んでいる。診療では、新病棟での診療開始に伴い、救急部や手術部の拡充を行い、先進医療を提供する体制を整備している。
     今後、集中治療室(ICU)、高度治療室(HCU)、新生児集中治療室(NICU)等の増床・設置も検討されていることから、地域医療機関との連携強化にも努めながら、安全で安心な医療を提供するためのさらなる取組が期待される。
(教育・研究面)
  •  クリニカルクラークシップに参加する医学生を「スチューデントドクター」と認定し、医師を目指す医学生に責任感や使命感を再認識させるとともに、医療行為を大学が保証する体制を構築している。
  •  医師減少の著しい小児科、産婦人科、救急医学、外科の医師養成のために、3年間の学費免除等を盛り込んだ、学部教育から卒後研修・専門医研修まで一貫した医師養成コースを新設している。
  •  日中学術交流協定事業に基づいて2名の研修者を受け入れるとともに、教員等の外国人スタッフも4か国から6名を受入れ、国際交流を活発化させている。
(診療面)
  •  がん診療において「キャンサートリートメントボード」を稼働させ12ボードの運営を開始し、また、地域がん医療レベルアップを図るため、「東北がんEBM事業」により、地域がん医療リーダー育成及びe‐ラーニングによる科学的根拠に基づいたがん医療(EBM)教育に取り組んでいる。
  •  短時間勤務制度を医師にも適用させ、医師14名(うち女性12名)が利用しており、また、時間外特別料金の徴収を開始して、医師が重症患者の診療に集中できるように負担軽減化を図っている。
(運営面)
  •  病院再整備事業により病床数が落ち込んでいるにもかかわらず、手術件数の増加・平均在院日数の短縮等の目標を達成している。
  •  外部評価では、財団法人日本適合性認定協会による品質マネジメントシステム(ISO9001)が認定され、また、財団法人日本医療機能評価機構による病院機能評価Ver5.0も認定されている。
  •  定期的に患者満足度調査を実施し、患者の意見を分析し業務改善に反映している。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成22年02月 --