国立大学法人秋田大学の平成20年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 秋田大学は、「学習者」中心の大学教育を行い、幅広い教養と深い専門性、豊かな人間性と高度の倫理性を備えた人材を養成することを目指している。
 業務運営については、新学長の下、秋田大学が果たすべき今後の活動指針として、教育・研究・社会貢献・国際化・経営の5つの柱からなる「秋田大学吉村プラン」を策定し、大学運営に関するビジョンを明確に示している。また、学長裁量分としての教員数を設定し、戦略的・効果的な配置を行っている。
 一方、年度計画に掲げている事務系職員に対する人事評価の結果を給与等の処遇に反映させることについては、処遇に反映させるまでには至っていないことから、今後、着実な対応が求められる。
 財務内容については、「秋田大学資金運用事務取扱要領」及び「運用指針」を決定し、国債運用に加え、大口定期預金、譲渡性預金の活用により、約1,190万円の運用益を得て国際交流事業や学生支援事業に活用している。
 自己点検・評価及び情報公開については、東京サテライトにテレビ会議システムを導入し、東京サテライトを訪問した入学希望者、企業の就職担当者、産学連携の希望企業等がテレビ画面を通じて直接担当者と会話し、詳細な説明や情報交換することを可能としている。
 教育研究の質の向上については、「公開講座総合自殺予防インテンシブコース」を開催するとともに、その内容をまとめた「ライブ総合自殺対策学講義」を刊行して自殺予防研究を推進している。また、「秋田学」や「白神学」といった地域に密着した研究を進め、学内外との連携を行ってその研究成果を地域に還元しているほか、中学校、高等学校等と連携した理工系人材の育成に取り組む事業等を行っている。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  今後の活動指針として、教育・研究・社会貢献・国際化・経営の5つの柱からなる具体的なアクションプランを策定した「秋田大学吉村プラン」を全教職員に配付・周知し、今後の大学運営に関するビジョンを明確に示している。
  •  理事の所掌に則した事務組織の配置とそれに伴う事務局長職の廃止及び部長職の廃止等の職階の簡素化をベースに事務組織の再編・合理化について検討し、平成21年度に向けた新たな体制の整備に取り組んでいる。
  •  学長裁量分としての教員数を設定し、評価センターや教育推進総合センター等に戦略的・効果的な配置を行っている。
  •  特定の業務について助言・提言を得るため国際連携、病院、産学連携の3名のコーディネーターを配置し、国際交流協定締結、病院経営、共同研究等に係る助言を得ている。
  •  ワークライフバランスの改善の一環として、3歳未満の子を養育する育児休業の現行制度に加え、長期間にわたる育児と仕事の両立が可能となるように、小学校就学の始期に達するまでの子の養育のための育児短時間勤務制度を導入している。

平成20年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。

  •  大学院博士課程において、学生収容定員の充足率が平成16年度から平成18年度においては85%、平成19年度から平成20年度においては90%をそれぞれ満たさなかったことから、今後、速やかに、定員の充足に向け、入学定員の適正化に努めることや、入学者の学力水準に留意しつつ充足に努めることが求められる。(なお、平成21年度は90%を満たしている。)

(法人による自己評価と評価委員会の評価が異なる事項)

  •  「1.事務系職員に対し、試行結果を踏まえた人事評価システムを実施し、評価結果を給与その他処遇へ適切に反映させる」(実績報告書15頁・年度計画【146】)については、事務系職員に対する人事評価の結果を給与等の処遇に反映するまでには至っていないことから、年度計画を十分には実施していないものと認められる。
  •  「『同一大学出身者の割合、外国人、女性及び障害者の積極的登用に関する指針』及び『男女共同参画推進に係る提言』に基づく採用を引き続き促進する」(実績報告書16頁・年度計画【152】)については、積極的な取組が講じられておらず、かつ、外国人教員数は対前年度実績を下回っていることから、年度計画を十分には実施していないものと認められる。
【評定】 中期目標・中期計画の達成のためにはやや遅れている

(理由) 年度計画の記載33事項中31事項が「年度計画を上回って実施している」 又は「年度計画を十分に実施している」と認められるが、2事項について「年度計画を十分には実施していない」と認められるほか、大学院博士課程において学生収容定員の充足率が90%を満たさなかったこと等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  「秋田大学新技術説明会」等での成果発表や産学官連携セミナー「地下資源シリーズ」(6回)の開催等により、受託研究、共同研究及び奨学寄附金による外部資金の受入額は、約8億7,600万円(対前年度比約1億1,600万円増)となっている。
  •  「秋田大学資金運用事務取扱要領」及び「運用指針」を決定し、国債運用に加え、大口定期預金、譲渡性預金の活用により、約1,190万円の運用益を得て国際交流事業や学生支援事業に活用している。
  •  中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載6事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  東京サテライトにテレビ会議システムを導入し、東京サテライトを訪問した入学希望者、企業の就職担当者、産学連携の希望企業等がテレビ画面を通じて直接担当者と会話し、詳細な説明や情報交換することを可能としている。
  •  大学の様々な行事・活動について積極的にプレスリリースや記者会見等を通じて社会に発信したことにより、新聞等に掲載される件数が大幅に増加して526件(対前年度比223件増)となっている。
  •  平成22年度から実施予定の次期情報化推進基本計画策定作業を開始している。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載6事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  施設の有効利用を推進するため、「施設管理データベースシステム」を活用し講義室・演習室の稼働率について調査・分析を行っている。
  •  環境マネジメントシステム(ISO14001)のエリア拡大を行うために環境管理委員会を立ち上げ、環境方針の策定や環境マネジメントシステムの知識や行動指針・規範を習得するための講習会の実施等を行い、認定に向けて取り組んでいる。
  •  化学物質等による安全衛生上の危害を防止し、その適切な使用及び管理を行うことを目的とする「秋田大学化学物質等安全管理規程」を制定している。
  •  教職員の産学連携活動における利益相反状態が深刻な事態へと発展することを未然に防止し、社会からの信頼を確保するため、利益相反ポリシー、利益相反マネジメント規程等を制定して、利益相反自己申告書を全役員・教職員に配付し、利益相反の状況を確認している。
  •  附属病院において、県の防災センターや消防署の協力を得て本格的な大規模防災訓練を実施している。
  •  核燃料物質の未登録に係る再発防止策として、危機管理対応マニュアルの改訂や取扱いに関する講習会等が行われており、より一層の啓蒙活動を行うことが期待される。

【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載19事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成20年度の外形的・客観的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

  •  「公開講座総合自殺予防インテンシブコース」を開催するとともに、その内容をまとめた「ライブ総合自殺対策学講義」を刊行して自殺予防研究を推進している。
  •  大学院工学資源学研究科ではMOT(Management of Technorogy)コースを開設し、大学で学んだ知識や技術を事業・経営に活かし、創造力、マネジメント力を発揮できる人材養成を推進している。
  •  渡日前入学許可制度の導入について各学部へ検討を依頼した結果、平成23年度から工学資源学部において渡日前入学許可制度を実施することとしている。
  •  平成18年度から実施している「学習ピアサポート・システム」に関して、従来からのピアサポート・ルームでの相談活動、ピアサポート・アワーの設定に加え、ピアサポーター自身の企画による「学習支援企画」を実施している。
  •  ウェブサイト上で履修登録、成績登録、成績確認が行える「秋田大学総合学務支援システム」を平成21年4月から稼働することとしている。システム稼働により、学生及び教職員の各データ共有化による教育効果の増大及び事務作業の合理化・省力化が期待されている。
  •  「秋田学」や「白神学」といった地域に密着した研究を進め、学内外との連携を行ってその研究成果を地域に還元しているほか、中学校、高等学校等と連携した理工系人材の育成に取り組む事業等を行っている。
  •  「ロケットガール養成講座」「理工系シンポジウム」などにより理工系人材の発掘に努めたほか、外国への技術者育成協力を行っている。
  •  平成21年度から医学科の入学定員を5名増加させて110名とするとともに、地域枠の定員を20名として、医師不足解消及び地元の医師確保に向けた取組を行っている。
  •  幼小・小中一貫教育や交流教育を視野に入れ、幼稚園年長児と小学校1年生のTT(Team Teaching)保育やTT授業、小・中学校と特別支援学校の交流授業・交流活動等をとおして他校種の教員の相互乗り入れによる授業を実施している。

附属病院関係

  •  優れた医療人育成の具体的方策として、東京医科歯科大学との間で「広域連携臨床研修プログラム」を開始、県内臨床研修病院合同説明会の開催等、教育体制の充実に取り組んでいる。また、先進医療が2件認定されるとともに、新たな申請に向けた症例数増加を図るために規程の見直し、プロジェクトコンペでの選考等、積極的な高度先端医療の開発に努めている。診療では、患者満足度(アンケート)調査の実施(2回)、ナンバー診療科から臓器別・機能別診療体制への決定等、患者本位の医療提供を心がけている。
     今後、県から寄贈されたポジトロン断層・コンピュータ断層複合撮影装置(PET‐CT)や前立腺がん治療用密封小線源治療システム等を有効活用して、高度先端医療の提供に努めるとともに、地域住民から期待される大学病院としてさらなる取組が期待される。
(教育・研究面)
  •  がんプロフェッショナル養成プラン(北東北における総合的がん専門医療人の養成)の実施により、初期研修医や専門医を対象としたファカルティ・ディベロプメント(FD)ワークショップの開催等、事業を推進している。
  •  大学病院連携型高度医療人養成推進事業(都会と地方の協調連携による高度医療人養成)等により、養成プログラムを開始し、医師キャリア形成支援センターの設置、テレビ会議システムやSimMan3Gシミュレータを全国で初めて導入するなど多彩な取組を行っている。
  •  初期臨床研修プログラムでは、救急、産婦人科、小児科のプログラムを新設するとともに、院内外において説明会・セミナー等を開催して研修体制の整備を図っている。
(診療面)
  •  特定機能病院の役割を県民に啓蒙するために病院広告をテレビと新聞で1か月間行い、休日夜間等のコンビニ受診(本来、重症者の受入れを対象とする救急外来を、緊急性のない軽症者が夜間や休日に受診すること)の抑制につなげている。
  •  全病棟へのクラーク配置、外来クラークの増員によって、医師の業務軽減を図るとともに、分娩支援手当や診療に従事する大学院生への診療支援手当を新たに設けるなど処遇改善に取り組んでいる。
  •  集中治療室(ICU)、新生児集中治療室(NICU)の後方病床を確保するために、心臓血管外科病床に重症病床を2室、小児科病棟に重症病床を3室設置し、効率的な診療体制を構築している。
(運営面)
  •  7対1看護体制の導入や高額手術の増加等により、附属病院収入の増収を図り、また、後発薬品の採用や物流管理システム(SPDシステム)の一元管理化を進めコスト削減に取り組んでいる。
  •  「秋田大学医学部附属病院における重点診療一覧」を改訂し、地域医療機関に配布している。

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高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成22年02月 --