国立大学法人帯広畜産大学の平成20年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 帯広畜産大学は、「実践的教育の充実」、「世界をリードする研究者の養成」、「地域社会並びに国際社会との連携」を理念とする世界最高水準の獣医・農畜産系大学を目指しており、十勝圏内の各研究施設等との連携を深めながら、「食の生産向上と安全性」を基本とする農畜産物生産から食品衛生及び環境保全に至る一連の研究教育を通じ、人類の健康と福祉に貢献することを目指している。
 特に、平成20年度は、獣医・農畜産融合の教育を推進するため、畜産学部を「学科制」から「課程制」に変更したほか、学部・大学院を通じた一元的な教員組織である「研究域」の設置がなされており、教育研究組織の弾力的な改革が行われている。
 この他、業務運営については、学長補佐体制として位置付けていた学長補佐室を廃止し、新たに企画評価、学部教育、地域連携・国際協力を担当する副学長を置き、理事と副学長を中心とした機動的な学長をサポートする体制を構築している。
 財務内容については、アンケート調査の実施や試飲会の開催等により畜大牛乳の販売拡充に努め、成果を収めている。
 一方、年度計画に掲げている科学研究費補助金の申請希望者の拡大については、説明会を実施するなどの取組を行っているものの、平成19年度から平成20年度にかけて申請希望者が減少しているため、着実な対応が求められる。
 その他業務運営については、家畜病院改修事業において、工事期間中の仮診療場所として取り壊し予定の職員宿舎を利用し、資産の効率的、効果的な運用を行っている。
 教育研究の質の向上については、「大動物総合臨床獣医学教育プログラム」や「大学院教育改革支援プログラム」等の実施により、食の安全・安心確保のために活躍する人材の育成を図っているほか、積極的な国際協力の展開と連携融合事業を推進している。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  学長補佐体制として位置付けていた学長補佐室を廃止し、新たに企画評価、学部教育、地域連携・国際協力を担当する副学長を置き、理事と副学長を中心とした機動的な学長をサポートする体制を構築している。
  •  獣医・農畜産融合の教育を推進するため、畜産学部を「学科制」から「課程制」に変更したほか、学部・大学院を通じた一元的な教員組織である「研究域」を設置しており、教育研究組織の弾力的な改革が行われている。
  •  大学教育センターの運営機能の一層の円滑化を図るため、教育学生支援部、大学院教育部、教育改善部の3部体制から、学部教育部、大学院教育部の2部体制に改編し、ファカルティ・ディベロップメント(FD)等の業務を扱う教育改善部は、スタッフ制の教育改善室に移行し実施組織としての機能を強化している。
  •  別科の学生が持つ閉塞感・差別感は大学にとって問題であるとの監事からの指摘を踏まえ、別科における技能教育の充実のため、「別科の将来構想検討ワーキンググループ」を設置し、検討を行い、学生寮の改修による学部学生と別科生の一体的な生活や教員との接触の機会を増やすなど改善に向けた取組が行われている。
  •  女性教員の採用を推進するため、教員公募に際し、女性の積極的な応募を促すメッセージを大学ウェブサイトに示したほか、講演会を開催するなど、男女共同参画の推進に向けた取組がなされており、今後さらなる取組が期待される。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載29事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  附属家畜病院の診療収入の増加へ向けて、動物看護士の増員のほか、大学ウェブサイトへの案内の掲載等、高度医療の提供及びサービス向上に努めたことにより、約4,276万円(対前年度比360万円増)の収入を得ている。
  •  畜大牛乳の販売拡充のため、アンケートにより消費者の求める新製品の動向調査を行ったほか、学内外において試飲会を開くなど宣伝普及に努めた結果、学内販売分の低温殺菌牛乳について販売実績が7.8%(対前年比44,368円増)増加し、さらに販売本数で1.1倍増(対前年比472本増)となっている。
  •  事務用パソコンのリース化、定時退勤の徹底や複写機等の賃貸契約の見直し等により管理的経費の縮減を図るとともに、学内ウェブサイトでの省エネルギー対策の事例や光熱水使用量の情報の周知により省エネルギー意識の涵養を図っている。
  •  知的財産の効率的・効果的運用については、知的財産の創出促進のため、「電子図書館による文献検索セミナー」、「研究ノートセミナー」、「ライフサイエンスセミナー」を開催している。
  •  中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

平成20年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。

(法人による自己評価と評価委員会の評価が異なる事項)

  •  「科学研究費補助金の申請率、採択率を上昇させるため、科学研究費補助金制度説明会、申請書の事前審査を実施し、その希望者の拡大を図る。」(実績報告書23頁・年度計画【33】)については、説明会を実施するなどしているものの、平成19年度から平成20年度にかけて、申請率が低下しており、申請希望者の拡大も図られていないことから、年度計画を十分には実施していないものと認められる。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けておおむね順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載12事項中11事項が「年度計画を十分に実施している」と認められるが、1事項について「年度計画を十分には実施していない」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  機動性及び専門性の一層の向上のため、企画評価室の構成員を増強するとともに、企画評価担当副学長を室長とし、年度途中の中間評価や年度終了時の自己点検・評価の評価結果を踏まえた大学運営改善を推進する体制を整備している。
  •  大学に関する情報を一元的に管理する広報室において整理を行い、大学の英文ウェブサイトを更新したほか、大学紹介DVDの作成や冊子体広報誌の点検を行い利便性の向上に努め、大学情報の積極的な発信を図っている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載8事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  維持管理計画(中長期修繕計画)に基づき、肉畜処理施設、国際交流会館の屋上防水工事の実施及び樹木剪定等の計画的な実施並びにキャパスマスタープラン2006に基づいた、学生実習による植栽及び危険樹木の伐採や転換を行い、施設機能の維持向上と緑化推進によるキャンパス環境を充実させている。
  •  家畜病院改修事業において、工事期間中の仮診療場所に取り壊し予定の職員宿舎を利用し、資産の効率的、効果的な運用を行っている。また、施設環境マネジメントオフィスでの意見及び施設利用状況調査により、外来者の誘導の不便さを解消するため、総合研究棟3.号館6階事務室を1階へ移行し、跡地をマルチルームとして整備し、施設の有効活用を図っている。
  •  研究費不正使用防止の取組に関して、検収室を設置し、チェック機能を果たすシステムを構築したことは注目されるものの、事務職員の負担軽減等を目的として、1件当たり50万円未満の物品の教員発注を認めていることについてはさらなる改善が期待される。
  •  学生・教職員の海外渡航における「海外危機管理マニュアル」を策定したほか、病原体等の安全管理をより徹底するため、「病原体等安全管理規程」及び「病原体等安全管理取扱マニュアル」の一部改正を行うなど、危機管理への対応に努めている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載17事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

評価委員会が平成20年度の外形的・客観的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

  •  「大動物総合臨床獣医学教育プログラム」により、地域と連携して実際の大動物病畜を材料とした実践的臨床獣医学教育を実施し、食の安全・安心の確立のために活躍する大動物臨床獣医師の育成を推進している。
  •  「大学院教育改革プログラム」を実施し、急速に変化する食の安全に関する国際状況を的確に把握・理解し、食の安全確保のための「国際標準」に適切かつ迅速に対応できる人材育成を目指している。
  •  畜産衛生学専攻、原虫病研究センター、大動物特殊疾病研究センターを中核として「アニマル・グローバル・ヘルス開拓拠点プログラム」を開始し、獣医学と畜産学が融合した「国際畜産衛生学」の世界的中核教育研究拠点を目指し、世界をリードする研究者の養成を図っている。
  •  「スクラム十勝」を構成する地域の研究機関と密に連携し、「シンポジウム~石油・肥料・飼料価格高騰と、これからの十勝農業」の開催を通して一般市民に対して研究成果を積極的に公表している。
  •  食品衛生分野における社会人再教育プログラムとして「食品衛生に関わる人材育成プログラム」を実施するなど、地域貢献事業を推進している。
  •  北海道大学等と連携し、食の安全・安心の基盤である農業生産・食品生産問題の枠組みを生産基盤から理解しうる人材養成を行っている。
  •  独立行政法人国際協力機構(JICA)との連携協力協定に基づき、青年海外協力隊短期派遣制度を利用して学生6名を「フィリピン酪農開発強化プロジェクト」へボランティア派遣しているほか、JICA草の根技術協力事業「マラウイ耕畜連携システムによる食料の生産性向上と安定的確保」により、専門業務チームを設置しマラウイの予備調査を行っている。

全国共同利用関係

  •  全国共同利用の研究施設である原虫病研究センターは、研究者コミュニティに開かれた運営体制を整備し、大学の枠を越えた全国共同利用を実施している。平成20年5月にセンターの研究成果が認められ、「動物の原虫病に関する監視と制圧」に関する国際獣疫事務局(OIE)コラボレーティングセンター(連携拠点)に認定されている。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成22年02月 --