国立大学法人北海道教育大学の平成20年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 北海道教育大学は、義務教育諸学校の教員をはじめ、豊かな人間性を備え創造的に問題解決に取り組み、地域社会で意欲的に活躍できる人材の育成を目指している。平成18年度より「大学再編」を開始し、5キャンパスすべてで教員養成課程といわゆる新課程が並存する体制から、キャンパスごとの機能分担システムに転換するべく、学長のリーダーシップの下、独自の改革に鋭意努力してきている。
 特に、平成20年度は、「中期目標・計画の総括」、「再編の完成に向けた取組の検証と改善」を年度計画のテーマとして掲げ、年度計画の実現を図るとともに、「北海道教育大学アクションプラン2009‐2011」を策定し、教育、教員組織、研究、社会貢献、国際化等について今後のヴィジョンを明らかにしている。
 この他、業務運営については、平成19年度評価結果で評価委員会が指摘した教員の人事評価システムの整備活用及び大学院修士課程の構想の取りまとめについて、それぞれ指摘に対する取組が行われている。
 財務内容については、外部資金獲得者に対して、昇給や勤勉手当増額に反映されるように業績評価において高い評点を与えることとしたほか、様々な外部資金情報を引き続き提供するなど、外部資金の獲得に努めたことにより、共同研究、受託研究、奨学寄附金等の外部資金等受入額は約1億1,862万円(対前年度比3,280万円増)、外部資金比率は1.6%(対前年度比0.4%増)となっている。
 教育研究の質の向上については、教育実習の状況等について学生が自己評価する「電子ポートフォリオ」の試行版を作成しているほか、大学と附属学校が連携した共同研究を積極的に進めている。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  役員会の下に設置した「運営基本方針検討委員会」において、第2期中期目標・中期計画の検討を行うとともに、「北海道教育大学アクションプラン2009‐2011」を策定している。同プランでは、「学生を中心とした教育」、「全学一体とした教員組織の編制」、「社会貢献で地域に根ざした大学」等を基本方針にして、具体的な行動計画を示している。
  •  大学運営・教育研究の戦略性を高め、へき地教育・大学教育・国際交流のさらなる推進・改革を図るため教育研究センターの統合・再編を行い、平成20年4月から新たに「大学教育開発センター」、「学校・地域教育研究支援センター」、「国際交流・協力センター」を発足している。
  •  男女共同参画推進のための組織を設置し、教職員の男女比率の現状や育児・介護と仕事・ジェンダー関連科目の開設状況、男女共同参画の視点に立った学生のキャリア形成・就職支援状況をとりまとめた報告書の作成等、男女共同参画推進に向けた取組を行っている。
  •  新たな仕組みとして、学長が認めた場合は、定年年齢を超えて特別教授として雇用することを可能とする「特別教授制度」を設けたほか、学部再編終了後の教員選考に関して、全学統一の運用による選考方策等の検討に向けて取り組んでいる。
  •  キャンパス情報ネットワーク管理運用業務についてもアウトソーシングを導入し、ネットワークの安全確保と業務の合理化、効率化を図っている。
  •  平成19年度評価結果で評価委員会が課題として指摘した教員の人事評価システムの整備活用については、教員の総合的業績評価システムが平成20年12月に決定され、具体的なデータベースも平成21年3月に集積されており、指摘に対する取組が行われている。
  •  平成19年度評価結果で評価委員会が課題として指摘した大学院修士課程の構想をまとめることについては、平成20年4月に大学院修士課程改革プロジェクトを設置し、修士課程全体の構想案をまとめるなど、指摘に対する取組が行われている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載19事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  外部資金獲得者に対して、昇給や勤勉手当増額に反映されるように業績評価において高い評点を与えることとしたほか、様々な外部資金情報を引き続き提供するなど、外部資金の増加に努めたことにより、共同研究、受託研究、奨学寄附金等の外部資金等受入額は約1億1,862万円(対前年度比3,280万円増)、外部資金比率は1.6%(対前年度比0.4%増)となっている。
  •  図書、コピー用紙等の事務局一括契約及び複写サービスについて賃貸借契約と保守契約の一元化を実施し、約1,500万円の経費を節減するとともに、テレビ会議システム利用の促進を推進した結果、会議旅費換算で約1,800万円の節減が図られている。
  •  北海道地区の国立大学法人の資金運用の共同化(Jファンド)による、業務の効率化とスケールメリットを活かした資金運用に参画することを決定し、北海道内の7国立大学との間で実施協定を結んでおり、今後の成果が期待される。
  •  中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載7事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進、3.その他

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  平成19年度から本格稼働を開始した「大学評価システム」を引き続き活用し、年度計画の策定から評価までの作業を一元管理したウェブシステムで自宅からの作業も可能としたほか、担当を14名から4名の体制に改めるなど、評価作業の効率化・合理化に努めている。
  •  入試広報を含めた大学広報全体をより戦略的に進めるため、地元企業から広報アドバイザーを招へいし、広報計画の立案・実施等全般にわたる助言を受けている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載5事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

 平成20年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

  •  施設・設備の有効活用に関しては、ウェブサイトのリニューアルに伴い、施設利用案内へのアクセスを容易にし、利便性を向上させているほか、旭川校の耐震対策事業と併せて老朽対策を行い、機能を向上させている。
  •  学生寮について、「施設管理状況調査報告書」及び「将来的なあり方」を取りまとめ、さらに、現在の留学生の居住状況を調査し、将来的に留学生を増加させる一方策として、学生寮の有効活用の面から改善計画を策定するとともに、新しい整備手法、土地・建物の有効利用による整備の情報収集を行っている。
  •  省エネルギー対策や地球温暖化対策として、「地球温暖化対策に関する実施計画」を策定し、この中で、温室効果ガスの総排出量を、平成24年度までに5%削減する目標を掲げている。
  •  平成19年度評価結果で評価委員会が課題として指摘した研究費の不正使用防止のための取組については、平成20年6月に規則を改正し、監査室を事務局組織から切り離し、学長直轄の組織としての位置付けを明確にするとともに、監査室規則を新たに制定し、目的、業務内容、体制を明文化しており、指摘に対する取組が行われている。
【評定】 中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由) 年度計画の記載8事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成20年度の外形的・客観的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

  •  現職教員及びストレートマスターの勤務校・附属学校等での教育実践を重視した教職大学院を設置し、1年間を4セメスターに分けるセメスター制、1名の大学院生を複数の教員で指導する協働教育指導体制、札幌・旭川・釧路の3キャンパスを双方向遠隔授業システムで結んだ授業等、特色ある取組を行っている。
  •  大学教育情報システム上で教育実習の状況等について教員等とコミュニケーションを図りながら、学生が自己評価する「電子ポートフォリオ」の試行版を作成し、平成21年度から運用することとしている。
  •  学生の図書館利用を促進し、学生が本に親しむため、「図書館活性化プロジェクト」として、図書館懸賞論文、学生による選書ツアー等の事業を実施している。
  •  教育支援基金による奨学金給付制度を見直し、現職教員の大学院生全員に給付することとしている。また、2年次~4年次の成績優秀な学部学生30人に奨学金を給付している。
  •  附属学校と大学との共同主催で「雪の学習研究会」を開催し、道徳教育連携研究事業を函館で地元公立校と連携して進めるなど、附属学校が大学と連携し、地域教育界に貢献している。
  •  新学習指導要領の移行措置期間における円滑な教育課程の編成等について、北海道内の公立幼・小・中・特別支援学校の教員を対象とした「小中学校新教育課程移行措置準備対応研究協議会」を開催し、改訂のポイントや移行措置期間の課題等について参加者100名とともに協議している。
  •  平成20年3月卒業者(教員養成課程)の就職状況は卒業者数738名に対し、正規採用が174名、臨時的任用が281名で、平成20年教員就職率は61.7%、進学者を除くと66.9%となっている。
  •  既存の大学院修士課程と新課程については、教員養成大学に置く大学院修士課程として、学校現場の課題を大学院修士課程の研究目的とし、実践的な教育内容に変革していくこと、既存の専攻の中で新課程の教育内容を拡げること等を確認し、今後検討することとしている。
  •  教員免許状更新講習について、北海道内の他大学と共同実施体制を構築している。

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高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成22年02月 --