国立大学法人・大学共同利用機関法人の平成18年度に係る業務の実績に関する評価結果の概要

1.評価方法、評価の審議経過等

(1)評価制度

 国立大学法人法に基づき、国立大学法人及び大学共同利用機関法人(以下、「法人」という。)の各事業年度における業務の実績について、「国立大学法人及び大学共同利用機関法人の各年度終了時の評価に係る実施要領(平成16年10月国立大学法人評価委員会決定、平成19年1月一部改正)」に従い、国立大学法人評価委員会が評価を行う。
 業務運営・財務内容等の経営面を中心に、当該事業年度における中期計画の実施状況を調査・分析し、業務の実績全体について総合的に評価を行う。
 なお、教育研究の状況については、その特性に配慮し、中期目標期間の業務実績評価において、国立大学法人評価委員会が、独立行政法人大学評価・学位授与機構に対し評価の実施を要請し、当該評価の結果を尊重して行うこととしている。

(2)評価方法

 各法人から提出された実績報告書等を調査・分析するとともに、学長・機構長等からのヒアリング、財務諸表や役職員の給与水準等の分析も踏まえながら評価を実施した。

1.全体評価

  • 当該事業年度における中期計画の進捗状況全体について、記述式により総合的な評価を行う。

2.項目別評価

  • 「業務運営の改善及び効率化」、「財務内容の改善」、「自己点検・評価及び情報提供」、「その他業務運営に関する重要事項(施設設備の整備・活用、安全管理等)」の4項目については、以下の5種類により進捗状況を示す。なお、これらの水準は、基本的には、各法人を通じた最少限の共通の観点を踏まえつつも、各法人の設定した中期計画に対応して示されるものであり、各法人間の相対比較をする趣旨ではないことに留意する必要がある。
     「中期目標・中期計画の達成に向けて特筆すべき進捗状況にある」
     「中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる」
     「中期目標・中期計画の達成に向けておおむね順調に進んでいる」
     「中期目標・中期計画の達成のためにはやや遅れている」
     「中期目標・中期計画の達成のためには重大な改善事項がある」
  • 「教育研究等の質の向上」については、事業の外形的・客観的な進捗状況を確認し、特筆すべき点や遅れている点についてコメントを付す。

(3)評価体制

 国立大学法人評価委員会(委員長:野依良治 独立行政法人理化学研究所理事長)の国立大学法人分科会、大学共同利用機関法人分科会の下に評価チームを設置して、調査・分析を行った。
 評価チームとしては、近隣地区の大学を担当する基本チーム、全国共同利用機能を有する附置研究所・研究施設の専門評価チームに加え、新たに附属病院の専門評価チームを設置した。

(4)審議経過

  • 6月30日まで 各法人から実績報告書、財務諸表等の提出
  • 7月17日~8月10日 各評価チーム会議において実績報告書等の調査・分析
  • 7月24日~8月8日 各法人から業務の実績についてヒアリング(国立大学法人)
  • 8月23日 各法人から業務の実績についてヒアリング(大学共同利用機関法人)
  • 8月27日~9月3日 各評価チーム会議において評価結果(骨子案)の検討
  • 9月7日 国立大学法人分科会及び大学共同利用機関法人分科会において評価結果(素案)の審議
  • 10月5日 国立大学法人評価委員会総会において評価結果(案)の審議・決定

2.評価結果の概要

1 全体の状況

  • 中期目標期間の3年目となる平成18年度においては、いずれの法人においても、法人化を契機として導入された新たな運営・経営体制が学内で定着するとともに、各法人が置かれた環境に対応して、更なる工夫・改善を図りつつ、学長・機構長のリーダーシップの下、中期目標の達成に向けて戦略的な大学運営を進めている。このことは、法人化によるメリットを活かした様々な取組の成果として具体的に現れつつあり、翌年度以降の更なる進展が期待される。また、平成17年度の評価結果において課題として指摘した事項のうち、多くの事項について改善が図られており、各法人において、評価結果を活用した改善システムが有効に機能しつつある
  • 業務運営・財務内容等の状況については、「業務運営の改善及び効率化」、「財務内容の改善」、「自己点検・評価及び情報提供」、「その他業務運営に関する重要事項(施設設備の整備・活用、安全管理等)」の4項目について、中期目標・中期計画の達成に向けた業務の進捗状況等について評価を行った。
     その結果、「業務運営の改善及び効率化」については、平成17年度においては一部の法人において進捗状況に遅れが見られた、新たな人事考課制度、個人評価システムの導入に向けた取組等も含め、ほぼ順調な進捗状況にあり、特筆すべき進捗状況にある法人も見られた
     また、「財務内容の改善」については、平成16、17年度に引き続き、多くの法人でその特色を活かしつつ、外部資金の獲得や経費節減に様々な工夫や努力を行った結果、具体的な成果が得られており、順調に進捗しているものと判断される。
     「自己点検・評価及び情報提供」及び「その他業務運営(施設設備の整備・活用、安全管理等)」については、引き続き、ほとんどの法人において順調に進捗しており、外部評価等に積極的に取り組み、特筆すべき進捗状況にある法人も見られた。なお、平成17年度評価結果において、危機管理に関する取組に課題があると指摘された法人についても、それぞれの法人の置かれた環境に応じて、改善に向けた取組を進めている
  • 一方で、年度計画の実施や学生収容定員の充足、経営協議会の運営、危機管理等への対応について、取組が不十分な法人も見られ、今後適切な改善が求められる。
  • なお、平成17年度は、中期計画に対応する年度計画の数が著しく少ない法人や、中期計画に対応する具体的な年度計画が設定されていない法人が見られたが、平成18年度においても、このような状況の法人が見られる。各法人が中期計画を着実に実施していくためにも、引き続き中期計画に対応した適切な年度計画を積極的に設定していくことが求められる。
  • 教育研究等の質の向上の状況については、平成16、17年度に引き続き、多くの大学において、法人化による環境の変化を積極的に活かし、教育改革を重点に置き、教育機能の強化を図っているほか、競争的環境を醸成しつつ、重点的な資源配分による若手人材の育成や、法人の特色に応じた研究活動の活性化に取り組んでいる。また、産業界や地域社会等に貢献するための取組も見られる。
  • 全国共同利用の附置研究所及び研究施設は、平成18年度に新たに2研究施設(東京大学空間情報科学研究センター及び大阪大学レーザーエネルギー学研究センター)が加わり、18法人46研究所・施設となった。それぞれの研究所・施設において、ユーザーや研究者コミュニティ等の意見を取り入れる体制を整備するとともに、大型研究設備や資料・データの提供、共同研究・研究会の実施等を通じ、大学の枠を越えた共同利用・共同研究を実施しており、引き続き我が国全体の学術研究の発展に向け、全国共同利用の一層の推進が期待される。
  • 附属病院においては、教育研修の充実や高度先端医療開発の推進、医療提供体制の整備、経営分析に基づく経営戦略の策定・実施等、病院長のリーダーシップの下、運営の改善・充実に向けた取組が着実に進展しており、特に平成18年度は、診療報酬のマイナス改定という厳しい状況の中、地域医療やがん診療等、社会的な課題に対する積極的な対応が見受けられる。今後、各々の病院が、地域との連携強化を図ること等により、その果たすべき役割を一層明確にし、特色ある病院運営の円滑な推進を図ることが期待される。
  • 大学共同利用機関法人については、法人が設置する各大学共同利用機関が、全国の国公私立大学の研究者等への共同利用・共同研究の場の提供を通じ、当該分野の中核拠点として学術研究を推進している。また、複数の大学共同利用機関が統合したメリットを活かし、従来の学問分野や組織の枠組みを越えて行ってきた新たな取組について、法人による中間評価の実施等により、更なる推進を図っており注目される。

2 項目別評価の概況(業務運営・財務内容等)

(1)業務運営の改善及び効率化

 この項目については、1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化等、業務運営の改善及び効率化に関する各法人の中期目標・中期計画の達成に向けた業務の進捗状況について、総合的に評価を実施した。

  • 学長・機構長のリーダーシップを発揮するための体制整備については、各法人とも円滑な全学レベルの意思形成に留意しつつ、機動的、戦略的な法人運営を可能とする工夫・改善が行われ、学長・機構長のリーダーシップによる意思決定や企画立案・業務執行の仕組みが定着してきており、今後は、中期計画の着実な実施のため、これらを効果的に機能させることが課題となる。
  • 学長等の裁量による経費・人員等の配分については、いずれの法人においても、戦略的・重点的な配分が行われており、その成果の検証を行い効果的・効率的な配分を行う例も見られる
    経営協議会や監事監査については、法人化後初めて導入された制度でもあり、平成17年度の評価結果において、運営面での課題が指摘されているが、多くの法人において、これらをおおむね解消している。今後は学外者の大学運営への参画について実効性を高めるよう、各法人の工夫が求められる。また、多くの法人において、法人としての自己規律、自己責任の確立を図るため、独立した内部監査組織が整備されているが、今後はその適切な運用による監査機能の充実が求められる。
  • 新たな人事考課制度、個人評価システムの導入については、多くの法人が初期の検討段階を終え、教職員の新たな個人評価の実施とその結果の処遇への反映に向けて動きつつある。今後、教職員のインセンティブを高め、教育研究活動の活性化に結びつけていくよう、制度の適切な導入とその運用が求められる。
  • 大学院博士課程等の学生収容定員の充足率が85パーセントを満たさない大学がなお8大学あり、速やかにその改善に努めるよう引き続き法人に注意を促す必要がある。
【評定の結果】
平成18年度(全91法人中) (平成17年度)(全95法人(注1)中)
「特筆すべき進捗状況にある」 4法人(4パーセント) (11法人(12パーセント))
「順調に進んでいる」 66法人(73パーセント) (54法人(57パーセント))
「おおむね順調に進んでいる」 18法人(20パーセント) (22法人(23パーセント))
「やや遅れている」 3法人(3パーセント) (8法人(8パーセント))
「重大な改善事項がある」 0法人(0パーセント) (0法人(0パーセント))

(注1)旧富山3法人(旧富山大学、旧富山医科薬科大学、旧高岡短期大学)及び旧筑波技術短期大学を含む。以下同じ。

(2)財務内容の改善

 この項目については、1.外部資金の導入その他自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善等、財務内容の改善に関する各法人の中期目標・中期計画の達成に向けた業務の進捗状況について、総合的に評価を実施した。

  • 財務内容の改善・充実については、多くの法人において科学研究費補助金の採択、共同研究や受託研究の実施等による外部資金の獲得に向け、法人内で教員のインセンティブを高める方策を講じるなど意欲的な取組を進め、一定の成果を上げている。また、余裕金の運用に積極的に取り組み、成果を上げている法人も見られた。
     また、経費の節減についても、各法人とも引き続き各種の方策を講じ、積極的に取り組んでいる。なお、これらの取組の成果が、外部資金比率の向上や一般管理費比率の低下等の財務指標に現れている例も見られる
     一方、年度計画に具体的な達成目標を設定し、積極的に外部資金の獲得や経費の節減に努力したものの、実現できなかった法人もあり、翌年度以降も努力を継続し、成果が現れることが期待される。
     この他、財務指標の経年比較や他大学との比較等による財務分析を行い、大学運営の改善に活用している法人も見られた。
  • 人件費管理については、「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」(平成十八年六月二日法律第四十七号)を踏まえ、各法人の中期計画において人件費削減の目標値が設定されており、すべての法人がその達成に向けて、着実に人件費の削減を行っている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、適切に人件費削減の取組を行うことが求められる。
【評定の結果】
平成18年度(全91法人中) (平成17年度)(全95法人中)
「特筆すべき進捗状況にある」 0法人(0パーセント) (0法人(0パーセント))
「順調に進んでいる」 81法人(89パーセント) (82法人(86パーセント))
「おおむね順調に進んでいる」 7法人(8パーセント) (11法人(12パーセント))
「やや遅れている」 3法人(3パーセント) (2法人(2パーセント))
「重大な改善事項がある」 0法人(0パーセント) (0法人(0パーセント))

(3)自己点検・評価及び情報提供

 この項目については、1.評価の充実、2.情報公開の推進等に関する各法人の中期目標・中期計画の達成に向けた業務の進捗状況について、総合的に評価を実施した。

  • 自己点検・評価については、法人全体としての評価の実施に向けた体制の整備等がほぼすべての法人で行われており、各法人において「企画‐実行‐評価」の改革サイクルが確立しつつある。平成18年度は、認証評価を受審し、教育研究活動の改善・向上に積極的に取り組んだ法人があったほか、認証評価、法人評価、教員個人評価等に活用するためのデータベースの構築・運用を開始したり、評価室等の評価担当組織を設置するなど、評価の本格実施に備え、評価体制の構築を進める法人が多く見られた。また、平成17年度の評価結果を踏まえ、多くの法人が運営改善に取り組んでいる。
  • 広報については、学長がマスコミ、地域の企業等と定期的な懇談を行ったり、ウェブサイトの内容充実を図ったほか、テレビ番組の放送や新聞広告の掲載等、多様なメディアを活用し、法人の活動状況や存在意義を広く社会に示す取組が着実に進展している。
【評定の結果】
平成18年度(全91法人中) (平成17年度)(全95法人中)
「特筆すべき進捗状況にある」 7法人(8パーセント) (5法人(5パーセント))
「順調に進んでいる」 80法人(88パーセント) (79法人(83パーセント))
「おおむね順調に進んでいる」 3法人(3パーセント) (8法人(8パーセント))
「やや遅れている」 1法人(1パーセント) (3法人(3パーセント))
「重大な改善事項がある」 0法人(0パーセント) (0法人(0パーセント))

(4)その他業務運営に関する重要事項

 この項目については、1.施設設備の整備・活用、2.安全管理等、その他業務運営に関する重要事項に関する各法人の中期目標・中期計画の達成に向けた業務の進捗状況について、総合的に評価を実施した。

  • 施設設備に関しては、計画的な整備や維持管理等を実施するためのマネジメント体制がすべての法人で確立しており、共有スペースの確保等を通じた既存施設設備の有効活用や、寄附や地方公共団体等との連携による整備、民間借入による整備等、多様な整備手法による施設設備の充実等の取組が進展している。
  • 環境保全対策については、すべての法人が経費の節減に向けた取組と相俟って省エネルギー対策の推進に努めている。引き続き、環境に配慮した取組の進展が期待される。
  • 危機管理については、全法人が危機管理対応部署を設けて全学的・総合的な危機管理態勢の整備を進めており、各法人が置かれた環境に応じて、想定される事象ごとに異なる対応を工夫する法人も見られた。また予防的観点に沿った危機管理として、地域との連携を図りながら防災対策を行っている法人も見られた。
  • 研究費の不正使用防止に向けた取組については、すべての法人において、平成19年度中の規程や体制の整備に向けた検討を開始しており、平成18年度中にこれらの整備を既に進めている法人も見られた。
【評定の結果】
平成18年度(全91法人中) (平成17年度)(全95法人中)
「特筆すべき進捗状況にある」 0法人(0パーセント) (0法人(0パーセント))
「順調に進んでいる」 80法人(88パーセント) (84法人(88パーセント))
「おおむね順調に進んでいる」 10法人(11パーセント) (9法人(9パーセント))
「やや遅れている」 1法人(1パーセント) (2法人(2パーセント))
「重大な改善事項がある」 0法人(0パーセント) (0法人(0パーセント))

-- 登録:平成21年以前 --