とりまとめに向けた整理の素案(前回からの修正反映版)

はじめに

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1.本検討会における検討の対象範囲

○本検討会において検討する対象範囲については以下のとおりとした。
 通信教育課程を含む、大学、短期大学及び高等専門学校(以下、大学等という。)に入学を希望する、障害のある者及び学部や大学院に在籍する障害のある学生(以下、学生という。)
 学生には、留学生や科目等履修生、交流校からの交流に基づいて学ぶ学生等も含むものとする。

○なお、大学等の障害のある教職員についても検討対象とすべきとの意見があったが、今後の検討課題とする。

○検討対象とする障害者の範囲については、改正後の障害者基本法において、第2条の障害者の定義について「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であつて、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」としており、社会的障壁とは「障害がある者にとつて日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のもの」と定義している。

○したがって、本検討会において検討対象とする障害者の範囲は、障害者手帳や診断書の有無にかかわらず、学生本人が障害により、修学に関する何らかの配慮を希望する場合の全てを対象とする。

2.本検討会における合理的配慮の定義

(障害者権利条約における位置付け)
○障害者権利条約第24条(教育)において、教育についての障害者の権利を認め、この権利を差別なしに、かつ、機会の均等を基礎として実現するため、障害者を包容する教育制度(インクルーシブ教育システム;inclusive education system)等を確保することとし、その権利の実現に当たり確保するものの一つとして、「個人に必要とされる合理的配慮が提供されること」とされている。

○また、第2条(定義)において、合理的配慮とは「障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。」とされている。なお、「負担」については、「変更及び調整」を行う主体に課される負担を指すとされている。

○さらに、同条において、「障害を理由とする差別」とは、「障害を理由とするあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のあらゆる分野において、他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を認識し、享有し、又は行使することを害し、又は妨げる目的又は効果を有するものをいう。障害を理由とする差別には、あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定を含む。)を含む」とされている。 

(障害者基本法における位置付け)
○障害者基本法第4条においては、「社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによつて前項の規定に違反することとならないよう、その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならない。」と規定している。

(初等中等教育段階における位置付け)
○初等中等教育段階については、「中央教育審議会初等中等教育分科会特別支援教育の在り方に関する特別委員会合理的配慮等環境整備検討ワーキンググループ報告」(以下、「WG報告」という。)において、「合理的配慮」を定義している。

○WG報告において、合理的配慮とは、「障害のある子どもが、他の子どもと平等に「教育を受ける権利」を享有・行使することを確保するために、学校の設置者及び学校が必要かつ適当な変更・調整を行うことであり、障害のある子どもに対し、その状況に応じて、学校教育を受ける場合に個別に必要とされるもの」であり、「学校の設置者及び学校に対して、体制面、財政面において、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」と定義している。 

(本検討会における位置付け)
○上記に照らし、大学等における合理的配慮とは、「障害のある者が、他の者と平等に「教育を受ける権利」を享有・行使することを確保するために、大学等が必要かつ適当な変更・調整を行うことであり、障害のある学生に対し、その状況に応じて、大学等において教育を受ける場合に個別に必要とされるもの」であり、かつ「大学等に対して、体制面、財政面において、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」とした。 

3.大学等における合理的配慮

○合理的配慮は、大学等が個々の学生の状態等に応じて提供するものであり、多様かつ個別性が高いものであることから、合理的配慮の内容全てを網羅して示すことは困難なため、本検討会においては、合理的配慮の観点について、項目別に以下のとおり整理した。

○なお、ここで示すもの以外は合理的配慮として提供する必要がないというものではなく、個々の学生の障害の状態や教育的ニーズ等に応じて配慮されることが望ましい。

○その際、障害のある学生本人からの配慮に関するニーズが、特定の障害種別での支援・配慮事項の例に該当しない場合や複数の種類の障害で代表的に提供されるものにまたがる場合、複数の種類の障害を併せ有する場合等では、障害種別の枠にとらわれず、各障害種別に示している支援・配慮事項を本人のニーズに基づき柔軟に組み合わせることが適当である。 

(1)情報発信

○各大学等への入学を望む生徒に向けた情報を提供するため、各大学等は、障害を理由に入学を拒否しないことを原則とし、受入れ姿勢を明確にするため、入試における特別措置の内容、大学構内のバリアフリーの状況、入学後の支援内容・支援体制、受入れ実績(入学者数、在学者数、卒業・修了者数、就職者数等)をホームページ等に掲載するなど、情報アクセシビリティに配慮しつつ、広く情報発信することが重要である。 

(2)決定過程

○大学等は、大学等の体制面、財政面を勘案し、「均衡を失した」又は「過度の」負担について、個別に判断することになる。

○合理的配慮の合意形成過程においては、学生本人のニーズと意思を尊重する。
 大学等、授業担当教員、支援担当者による過度な干渉やハラスメント(苦痛を与えるような行為)を避ける。
 学生の意思表明の際には、そのプロセスを支援する。

○大学等が合理的配慮を決定するに当たっては、学生本人を含む関係者間において、可能な限り合意形成・共通理解を図った上で決定し、提供されることが望ましい。
 関係者間で合理的配慮内容の合意を得られるような組織体制を構築する必要がある。
 障害学生支援についての専門性のある教職員による相談に基づいた学生本人のニーズのヒアリング及びそれに基づく迅速な配慮内容の意思決定が可能となる体制の整備に加え、学生本人による配慮内容に関する異議申し立てを受けることができる体制を学内に整備することが望ましい。

(時間的な経緯の考慮)
○障害のある学生は、障害の状態が多様なだけでなく、障害を併せ有する場合や、障害の状態や病状が変化する場合もあることから、時間的な経緯により必要な支援が変化することに留意する必要がある。また、障害の状態等に応じた「合理的配慮」を決定する上で、(国際生活機能分類)を活用することが考えられる。

(3)教育内容等

○大学等においては、学生の個性や障害の特性に応じて、その持てる力を高めるため、高等教育の質を維持しつつ、高い教養と専門的能力を培えるよう支援する。

(学生が得られる機会への平等な参加が妨げられない配慮)
○大学等においては、高等教育を提供することに鑑み、教育内容の本質や評価基準を変えてしまうことや他の学生に影響を及ぼすような大幅な教育スケジュールの変更や調整を行うものではなく、大学等が学生に提供しているさまざまな機会が、障害のある学生も障害のない学生と平等に得られるよう、合理的配慮を提供する。

(合理的配慮の対象となる高等教育)
○さまざまな機会にあたるものとして、講義や実験、実習や演習などの正課教育、学校が主催する入学式やオリエンテーション、卒業式など教育活動の一環としての学校行事、学生相談や就職指導・修学指導などの正課外教育、これらに密接に関連する入試・履修登録・試験・奨学金などが挙げられる。

(その他大学等における様々な活動)
○学内学生団体・サークルの下で行う文化・体育活動などの課外活動などについては、合理的配慮の提供対象ではないものの、合理的配慮の観点を踏まえて、各大学において判断する。

○障害のある学生に対する支援は、単に障害のある学生を対象とするだけでなく、留学生や高齢者などへの支援を行うユニバーサルサービスとして位置づけることも、中長期的課題として検討する必要がある。

○学生ボランティアによる障害のある学生への支援は、理解啓発の有効な手段となることを考慮し、積極的な活用を目指す。

(4)教育方法

(情報・コミュニケーションの配慮)
○障害の状態等に応じた情報保障やコミュニケーションの方法について配慮する。

(教材の配慮)
○シラバスや使用される教科書・教材に学生がアクセスできるように配慮し、またその際の支援技術の活用についても配慮する。高等教育における学修においては、自宅学習が重要な役割を果たしていることに鑑み、教材の自宅での利用が出来るよう促進する。
 支援機材や教材が高価であることに鑑み、大学間での共用や貸し借りが可能となるよう検討を進める。

(学習機会や体験の確保)
○治療のため学習空白が生じることや障害の状態により経験が不足することに対し、学習機会や体験を確保する方法を工夫する。

(公平な試験の配慮)
○入試や単位認定等のための試験において、障害がある学生が障害のない学生と比して有利・不利な状況とならず、両者が公平に試験を受けられるよう配慮する。(例:試験を免除する、設問のレベルを下げる等)

(心理面・健康面の配慮)
○障害のある学生が周囲と適切な人間関係を構築するためには、集団におけるコミュニケーションについて配慮するとともに、他の学生や教職員が障害について理解を深めることが重要である。
 また、学習の見通しが立てられるようにすることや周囲の状況を判断できるようにすることで、学生の心理的不安を取り除く。
 このほか、健康状態に応じて学習内容・方法を柔軟に調整し、障害に起因した不安感や孤独感を解消することにより、自己肯定感を高めることが期待される。

(5)支援体制

(専門性のある支援体制の整備)
○学長がリーダーシップを発揮し、大学等全体として専門性のある支援体制の確保に努めることが重要である。また、学習の場面等を考慮した学内の役割分担を明確にする。

(担当部署の設置及び適切な人的配置)
○支援体制を整備するに当たり、必要に応じ、障害学生の支援を専門に行う担当部署の設置及び適切な人的配置(専門性のある専任教職員、手話等の通訳者、コーディネーター、相談員、支援員等)を行うほか、学内(学生相談に関する部署・施設、保健管理に関する部署・施設、学習支援に関わる部署・施設、障害に関する様々な専門性を持つ教職員)および学外(自治体、NPO、他大学等、特別支援学校など)の教育資源の活用や医療、福祉、労働関係機関等との連携を行う。

(学生、教職員の理解啓発を図るための配慮)
○障害により、日常生活や学習場面において様々な困難が生じることについて、周囲の学生や教職員の理解啓発を図る。
 障害のある学生の集団参加の方法について、障害のない学生や教職員が考え実践する機会や、障害のある学生自身が障害について周囲の人に理解を広げる方法等を考え実践する機会を設定する。

(災害時等の支援体制の整備)
○災害時等の対応について、障害のある学生の状態を考慮し、危機の予測、避難方法、災害時の人的体制等、災害時体制マニュアルを整備する。また、災害時等における対応が十分にできるよう、避難訓練等の取組に当たっては、一人一人の障害の状態等を考慮する。 

(6) 施設・設備

(学内環境のバリアフリー化)
○障害のある学生が安全かつ円滑に学生生活を送ることができるよう、障害の状態等に応じた環境にするために、スロープや手すり、トイレ、出入口、エレベーター、案内・サイン設置等について施設の整備を計画する際に配慮する。
 また、既存の大学等施設のバリアフリー化についても、障害のある学生の在籍状況等を踏まえ、大学等施設に関する合理的な整備計画を策定し、計画的にバリアフリー化を推進できるように配慮する。

(バリアフリーの状況の情報提供)
○障害者が大学等施設のバリアフリーの状況を把握しやすいよう、バリアフリーマップを作成し提供するなど、情報提供を行う。

(障害の状態及び特性等に応じた指導ができる施設・設備の配慮)
○個々の学生が障害の状態等に応じ、十分に学習に取り組めるよう、図書館やコンピュータ室、実験・実習室、運動・体育施設、学生寮等の共同利用施設・設備について、障害のある学生が他の学生と同様に利用できるよう、必要に応じて様々な教育機器・支援技術等の導入や施設の整備、配慮の提供を行う。
 また、個々の学生の障害の状態、障害の特性、認知特性、体の動き、感覚等に応じて、その持てる能力を最大限活用して自主的、自発的に学習や生活ができるよう、各教室等の施設・設備について、分かりやすさ等に配慮するとともに、日照、室温、音の影響等に配慮する。 

(災害時等への対応に必要な施設・設備の配慮)
○災害時等への対応のため、障害の状態等に応じた施設・設備を整備する。

4.国及び独立行政法人等の関係機関が取り組むべき事項

○大学等が障害のある学生に合理的配慮を提供するためには、国や独立行政法人等の関係機関による取組が必要不可欠である。今後、障害のある学生が学びやすい環境を整備し、修学機会を確保するために関係機関が取り組むべき事項について検討し、短期的課題、中・長期的課題として以下のとおり整理した。

(1)短期的課題

1) 各大学等における情報発信及び相談窓口の整備の促進

○各大学等における障害者の修学に関する情報発信について、現状では大学等により情報提供内容は様々である。また、各大学等に相談する際も、窓口が統一されていないなど、学生にとって利用しづらい状況が見受けられる。

○そのため、障害者が大学等への進学を検討するに当たり、必要な情報が得られない大学を修学先の選択肢から除外せざるを得ず、本人の学びたい分野ではなく、通学可能な大学を選択したり、進学自体を断念せざるを得ないなど、その情報の獲得に苦慮している。

○前述のとおり、各大学等は、障害を理由に入学を拒否しないことを原則とし、受入れ姿勢を明確にするため入試における特別措置の内容、入学後の支援内容、大学構内のバリアフリーの状況、受入れ実績(入学者数、在学者数、卒業・修了者数、就職者数等)をホームページ等に掲載するなど、広く情報発信することが重要である。
 また、利用者の利便性の面等から相談窓口の統一や障害学生支援担当部署を設置することが重要である。

○国は、より多くの大学等でこれらの取組が行われるよう促進すべきである。また、国のこうした促進策を踏まえ、大学の認証評価においても、各大学等における情報発信及び相談窓口の整備状況について考慮されることが望ましい。

2) 拠点校及び大学間ネットワークの形成

○各大学等に在籍する障害のある学生数は様々であり、個々の大学の取組のみでは、支援のノウハウが不足している状況にある。

○大学等における障害のある学生の修学支援機能の充実を図るためには、ノウハウの不足している大学等に対し十分な情報提供を行うとともに、障害のある学生への修学支援に関する各大学等の新たな取り組みを促進する動機付けを行うことが重要である。

○そのため、国は、障害のある学生への修学支援に関する優れた取組を実施する大学等を拠点校として整備し、その取組を重点的に支援していくことが重要である。

○また、これら拠点校の取組や、拠点校及び各大学等の個別支援事例を一元的に集約・蓄積し、各大学等に還元することにより、障害のある学生の支援の底上げや教職員等に対する理解促進・意識啓発を図ることが可能となる。

○これらの情報の集約・蓄積及び各大学等への還元に当たっては、拠点校間や地域の自治体やNPO、民間団体、高校及び特別支援学校等とのネットワーク形成が重要であるが、ネットワークの形成に当たっては、これまで独立行政法人日本学生支援機構が取り組んでいる「障害学生支援ネットワーク事業」のノウハウ等を活用することが望ましい。

○また、ネットワークの形成に当たっては、大学等からの相談だけではなく、大学等への進学を希望する障害のある生徒やその担当教員からの相談にも応じられる体制を構築することが望ましい。
 彼らからの相談に対応できるよう、拠点校における専門人材の配置を充実するとともに、大学等への進学を希望する障害のある生徒や担当教員が地域の自治体や特別支援学校等に相談し、これらの関係機関同士が連携して、生徒の進学支援にあたれるようネットワークを形成することも検討すべきである。

(2)中・長期的課題

1) 大学入試等の改善

○現在、大学入試センター試験における特別措置の申請状況等については、独立行政法人大学入試センター(以下、大学入試センターという。)がその数を障害区分毎に公表している。

○大学入試センターにおいては、今後、特別措置毎にその内容を公開することが望まれる。障害種別が同一でもその程度が異なれば、特別措置の内容は異なり、重複障害の場合もある。プライバシーに配慮しつつも、障害の種類・程度・重複の有無と、これらに基づいた特別措置の内容が大学入試センターにおいて公開されることにより、障害のある受験生やその指導教員が、その情報を基に想定される特別措置の内容を知ることが可能となる。

○現在、大学入試センター試験においては、障害等の種類・程度に応じて類型化された特別措置の内容から特別措置申請者が希望するものを選択することを基本としつつも、類型化されていない措置についても希望するものを聴取した上で、それぞれの特別措置の必要性を専門家が判定をしている。
 今後も大学入試センターにおいては、特別措置の決定にあたっては障害のある特別措置申請者の個々の状況に応じた柔軟な対応に努めるとともに、大学入試センター試験の受験を予定している障害者一人ひとりが希望する配慮が措置されるよう、特別措置決定過程の改善が図られるべきである。

2) 高校と大学等との接続の円滑化

○高校と大学等の接続の円滑化の推進が必要である。障害のある進学希望者においては、自らの障害に気づかないまま初等中等教育段階で一般の高校に通っている生徒が存在する。

○また、障害を本人が認識している場合でも、一般の高校に通っている場合、担任や進路指導の教員が、障害のある生徒の大学等進学する場合の支援について知見がないこともあり、これらの生徒をサポートすることが難しい場合がある。

○そのため、大学等への進学を希望する障害のある生徒やその担当教員からの相談に対応できるよう、拠点校における専門人材の配置を充実するとともに、大学等への進学を希望する障害のある生徒や担当教員が地域の自治体や特別支援学校等に相談し、これらの関係機関同士が連携して、生徒の進学支援にあたれるようネットワークを形成することも検討すべきである。

3) 通学上の困難の改善

○現状では、大学等における通学支援については、各大学等の判断に任されている。一方で、障害者自立支援法の移動支援において、通学支援を行なうかについては、各自治体の判断に任されている。

○そのため、通学における移動が困難な障害者は、大学等や自治体からの通学支援が得られない場合、移動費用を自己負担するか、進学自体を諦めざるを得ない場合がある。

○また,日々の通学だけではなく、学内の移動支援は、学内の建物等の施設のバリアフリーが完全でない場合、移動に障害のある学生にとっては不可欠となる。

○通学における困難の改善については、障害者政策委員会等の議論を踏まえ慎重に検討を行う必要があるが、移動に障害のある学生の教育機会を保障するため、例えば、大学等と自治体等が連携を図り対応していくことも考えられる。

4) 教材の確保

○視覚障害や読字障害(ディスレクシア)のため文字が見えない、見えにくい、肢体不自由のため書籍のページめくりや持ち運びが難しいなどといった「印刷物障害(Print Disabilities)」に含まれる障害のある学生は、教科書や副読本、各種資料といった様々な教材の利用が難しく、大学等での学習機会への参加が難しい現状がある。

○印刷物を電子化することにより、本人にとって見やすい体裁への変更・調整や支援技術製品(音声読み上げソフトウェア等)の活用により耳で聞いて内容を読むことが可能となるため、大学等や図書館、出版社との連携の促進について検討することが望ましい。

5) 個に応じた指導や学びの場の設定等による特別な指導

○障害のある学生の中には医療行為、社会復帰の訓練等により通学が困難となり、修業期間の延長や休学又は通信教育により修学する学生が存在するほか、中にはそのために進学や修学を断念する者も存在する。

○近年、インターネットなどの通信技術の発達により、家や病院に居ながらにして学習をすることが可能な状況となっている。障害があり、通学することが困難な場合においても、大学等進学が可能となるよう、放送大学その他の通信制大学を含め、通信教育を活用した療育の推進について検討することが望ましい。その際は、障害によりスクーリングが困難な場合もあること等を踏まえた検討を行うべきである。

6) 就職支援

○ 障害のある学生の就職に関する支援については、就職が障害者の自立や社会参加にとって極めて重要であることから、ハローワークや地域の社会福祉施設、NPO等と連携してきめ細やかな就職支援を行うことが必要である。さらに、具体的な支援方策等について、今後検討を進めていく必要がある。

7) 財政支援

○バリアフリー化のための施設・設備の整備や専門的スタッフの配置については、各大学等において計画的に充実させていくことが望ましいが、国においては、障害のある学生が学びやすい環境を整備し、修学機会を確保するため、各大学等におけるこれらの取組に対し、必要な財政支援を充実させることが重要である。

○また、独立行政法人日本学生支援機構が行う奨学金事業については、障害のある学生に対して貸与基準を弾力的に取り扱うことや返還猶予等について一定の配慮を行っている。このような制度について障害のある学生への理解が計られるよう更なる周知に努めるとともに、より利用しやすくなるよう検討を行うことが望ましい。

おわりに

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お問合せ先

高等教育局学生・留学生課

-- 登録:平成24年11月 --