殿岡委員提出資料

障がいのある学生への支援に関する課題(短期的課題)に関する説明資料

全国障害学生支援センター
殿岡 翼

1.課題2. 奨学金について

【項目】JASSO奨学金の返済免除:精神若しくは身体の障害による免除の見直し等、奨学金制度の充実(就職できなかった場合における猶予・免除制度の要件緩和により、障害基礎年金による奨学金返済充当を回避)

【現状】JASSO奨学金は、「入学時(奨学金申請時)に障害がなく、在学中もしくは卒業後(返還中)に障害のため返還できなくなることを想定」している。JASSOは、別支援下で「障害のある学生が大学に進学する」ことが前提とされていない。

【解説】情報誌・障害をもつ人々の現在No.67 2010年3月17日ISSN 1883-1532より
 JASSOの奨学金制度は、高等教育機関で学ぶこと=卒業後に就職して十分な収入が得られる、という考え方にたっています。だからこそ、学んだときに受け取った奨学金を、卒業後に社会人として働いて返していくことが基本になっています。
 しかし、大学などで学んだ多くの障害学生が卒業後に働く場がなく、また働けたとしても十分な収入が得られず、年金などを頼りに生活せざるを得ない状況も起こっています。その結果、大学で学んだことを社会に還元できないばかりか、奨学金を返すことさえ厳しい経済状態に置かれています。社会において働く機会を奪われた人が存在することは、その人にとってマイナスであるだけでなく、社会全体にとって大きな損失です。この状況を打開するには、就労支援の充実や、高等教育と就労支援の連携が大切で、社会全体の取り組みとして、障害をもつ人が能力を活かして働ける環境を作ることが必須であることも伝えました。
 これらの厳しい状況を知ったJASSOの担当者は、非常に驚いた様子でした。障害学生の奨学金の利用状況と返還状況、就労状況について、JASSOでは把握できていないとのことです。今後に向けて、JASSOでも調査して実態をつかむことなどが大切だということを確認していました。
 また、奨学金返還の猶予や免除の制度があっても、障害学生がそれを知らない場合が多く、知っていても、どのようなときに申請できるのかの判断が難しいことを伝えました。それに対しては、JASSOには奨学金の返還について相談に応じる窓口があるので、返還に少しでも困難を感じたときは、すぐに問い合わせてほしい、とのことでした。
 しかし、現在の奨学金制度では、返還の猶予や免除を申請するには、自分が働けない状態であることを証明しなければなりません。これは高等教育を受けた障害学生にとって、理屈の上でも感覚的にも受け入れがたい手続きです。ここに、障害学生が奨学金制度を利用する上での、JASSOの概念と現実とのギャップがあります。これに加えて、奨学金に関わる各種手続きをする際に、視覚障害者をはじめとする、文字の読み書きが単独では難しい障害者への情報提供やサポートもまだまだ不十分です。

2.課題4.学内介助等について

高等教育機関における、通学・学内介助に関する応急的制度(素案)

【趣旨・目的】:文部科学省において高等教育機関の通学・学内介助を可能にする応急的制度・予算措置。制度のすべてを再設計すると膨大な時間とコストがかかり、結果的に制度のスタートが遅れ、その間大学進学・修学継続を断念せざるを得ない障害学生が発生し続けてしまうため、本来必要な補助が得られず、そのために大学進学・修学継続を断念せざるを得ない障害学生をなくすための予算措置を実現することが望ましい。

【概要】:本制度の対象となる利用者が、対象となる事業所に登録し必要な補助を受け、それにかかった経費を事業者が都道府県・市町村教育部局(教育委員会等)を通じて文部科学省に請求することで、対象範囲の補助が実現する。

【対象範囲】:障害者総合支援法(改正障害者自立支援法)が対象としない、大学等の通学や学内生活での移動支援・介助(医療的ケア含む)・授業補助。
(検討:既存の学内ノートテーカーや手話通訳などとの制度の整合性をどうつけるか?)

【利用者】:大学等の通学・学内生活で、移動支援・介助(医療的ケア含む)・授業補助を必要とする障害学生(全障害)。おおむね障害者総合支援法(改正障害者自立支援法)の重度訪問介護・同行援護・行動援護(発達障害など)・地域生活支援事業の移動支援などを、大学外で使用している、あるいは使用対象となりうる障害学生。

3.「障害学生の受け入れ状況に関する調査2013」開始と『大学案内2013障害者版』発行のお知らせ

 全国障害学生支援センターでは『大学案内2008障害者版』を発行し、大学関係者や学生、保護者の方など、多くの方にご活用いただいております。発行後5年が経過し、大学での障害学生の受け入れ状況も変化しており、障害者基本法の改正など、障害者を取り巻く情勢も大きく変化してきています。こうした中、当センターにも、最新の情報を望む声が多く寄せられています。
 そこで、当センターでは全国全ての大学に対して、本年秋より「大学における障害学生の受け入れ状況に関する調査2013(以下、2013調査)を行い、それを『大学案内2013障害者版』(仮称)として発行することとなりました。(2013年8月予定)
 大学関係者の皆様へ:2013調査は前回の調査と同様、主としてインターネット上で回答していただく方式を採用する予定です。開始の際には、当センターのホームページでお知らせするとともに、要項をお送りいたします。また、個別に大学に訪問し調査にご協力願う場合もございます。障害学生の未来を担うための大切な調査ですので、ご協力いただけますようお願い申し上げます。

お問合せ先

高等教育局学生・留学生課

-- 登録:平成24年11月 --