(議事録)障がいのある学生の修学支援に関する検討会(第1回)

【松尾課長】  それでは、時間となりましたので、ただいまから障がいのある学生の修学支援に関する検討会を開催したいと思います。
 本日は雨の中、お忙しい中お集まりいただきまして、本当にありがとうございます。私、文部科学省高等教育局で学生・留学生課長をしております松尾でございます。座長選出までの間、私のほうで司会進行をさせていただきたいと思います。
 お手元に資料を配付しておりますが、議事次第のとおりとなっております。配付資料についてご確認いただきたいと思いますが、配付資料1から8、参考資料の1から3、それから机上配付資料2冊となっております。きょうは特別に全国障害学生支援センターの殿岡委員のほうから、「大学案内2008障害者版」をお手元に配付させていただいておりますので、ご確認いただければというふうに思います。
 まず、議事に先立ちまして、今回第1回目でございますので、委員の皆様のご紹介をさせていただきたいと思います。委員の方々でございますが、資料1の2ページに皆様方の名簿を添付させていただいておりますので、記載の順にご紹介をさせていただきたいと思います。お名前だけ申し上げさせていただきたいと思います。
 まず、DO-IT Japan事務局長の巖淵守様でございます。よろしくお願いいたします。
 続きまして、日本マイクロソフト株式会社マネージャーの大島友子様でございます。
 続きまして、東京大学先端科学技術研究センター講師の近藤武夫様でございます。
 続きまして、筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター准教授の白澤麻弓様でございます。
 続きまして、信州大学教育学部教授、高橋知音様でございます。
 続きまして、筑波大学大学院人間総合科学研究科教授、竹田一則様でございます。
 続きまして、全国障害学生支援センター代表の殿岡翼様でございます。
 続きまして、慶應義塾大学経済学部教授の中野泰志様でございます。
 そのお隣でございますが、放送大学ICT活用・遠隔教育センター教授の広瀬洋子様でございます。
 続きまして、長崎大学工学部教授の福永博俊様でございます。
 続きまして、佐世保工業高等専門学校教授の松尾秀樹様でございます。
 続きまして、富山大学学生支援センター特命准教授の吉永崇史様でございます。
 続きまして、日本福祉大学健康科学部准教授の渡辺崇史様でございます。
 皆様、どうぞよろしくお願いいたします。
 また、本日はご欠席でございますが、そのほかにお二方委員をお願いしてございます。お名前だけ述べさせていただきます。
 静岡県立大学国際関係学部教授の石川准様、そして株式会社Kaien代表取締役の鈴木慶太様でございます。このお二人にも参加いただくことになってございます。
 また、今回、オブザーバーといたしまして、関係省庁の方々にもご出席を賜り、種々ご議論に参画をしていただきたいと思っております。
 内閣府政策統括官共生社会政策担当付参事官の障害者施策担当の難波吉雄様でございます。
 そのお隣でございますが、厚生労働省高齢障害者雇用対策部障害者雇用対策課長の山田雅彦様でございます。
 お二方にも施策を紹介していただきながら、いろいろとご議論に参画していただきたいと思ってございますので、よろしくお願いいたします。
 また、文部科学省のほうからも参加しておりますが、資料のとおりでございますので、割愛させていただきます。
 会議に先立ちまして、まず高井文部科学副大臣から開催のごあいさつをさせていただければと思います。高井副大臣、どうぞよろしくお願いいたします。

【高井副大臣】  ご紹介いただきました、今副大臣の任に当たっております高井美穂と申します。本日は大変お忙しいところをこのようにお集まりをいただきましてありがとうございます。障がいのある学生の修学支援ということで、検討会開催第1回目となりまして、皆様のこれからの熱心なご議論を私もきょう時間の許す限り参加をさせていただきたいというふうに思っております。
 ご案内のとおり、平成20年5月に障害者の権利に関する条約が発効されて、これまで我が国において障がい者制度推進本部の設置から、障害者基本法の改正など、取り組みを行ってまいりました。こうした背景の一方で、各大学等においては障がいのある学生の在籍者数が平成23年度に1万人を超えるということになっておりまして、今まで以上に受入態勢や修学支援の体制の整備が必要となってきております。その中で、今までこうした本格的な検討会を高等教育の段階において行ってこなかったということに、私も非常にこれは大変だという気がいたしております。いろいろと発達障がいに関することであったり、特別支援教育であったり、大分施策のほうも進んできまして、まさに義務教育段階、後期中等教育段階においては、かなり条件整備、答申もなされてきているわけですが、この高等教育段階においても、障がいのある学生に対して本格的に議論をしていかねばならないということで、この検討会でいい提案をしていただき、また、概算要求や次の制度改正につなげていきたいというふうに思っておりますので、どうぞこれからもよろしくお願いを申し上げたいと思います。
 今後の皆様の積極的なご意見とご参画を期待申し上げ、今後ともご指導いただくことをお願い申し上げて、冒頭のあいさつにかえさせていただきます。ありがとうございました。

【松尾課長】  続きまして、議事に入りたいと思いますが、本日は資料1から6、それから各省庁のほうからのご説明をさせていただいて、資料7に論点の例というのを挙げさせていただいておりますので、皆様方のフリーディスカッションをいただいてまとめていきたいと思っております。なるべく役所関係の説明は短くしたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 まず、議事の進行と、それから議事の整理、議論の整理に当たりまして、取りまとめに当たっていただく方が必要でございますので、座長を選出したいと思いますが、僭越ではございますけれども、事務局のほうから竹田委員に座長をお願いしたいということで、ご提案させていただきたいと思いますが、皆様方いかがでございますでしょうか。
(拍手)

【松尾課長】  ありがとうございます。皆様方の了承をもちまして、竹田委員に座長をお願いしたいと思いますので、竹田委員、以降の議事進行をよろしくお願いをしたいと思います。
 先生、一言いただいて、議事進行に入っていただければありがたいと思いますので、よろしくお願いします。

【竹田座長】  それでは、座長として選出いただきました筑波大学の竹田と申します。改めてよろしくお願いいたします。
 大学を初めとする高等教育段階は、差別なく優れた人材を見出して、その方たちを社会に送り出すという非常に重要な使命を担っています。障害者の権利に関する条約に謳われています障がい者が人格・能力を最大限発達させ自由な社会に参加することを可能とするというのは、まさに大学の使命に一致したものであるというふうに考えています。私は総合大学で多くの障がい学生にかかわっておりますが、入学時には様々な不安に満ちた障がい学生が、多くの支援を受けて卒業するときには自分の希望する進路に進んで社会で活躍する姿を目にすると、障がい学生の支援の重要さを強く認識いたします。
 多くの問題点はあるかと存じますが、今回の検討会で意義ある議論をいただきまして、ここでの議論を今後の障がい学生の支援に結びつけていけたらいいなというふうに思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、議事に入らせていただきたいと思います。
 まず初めに、資料1の検討会の開催について、その趣旨及び検討内容について、事務局のほうから説明をお願いします。

【松尾課長】  それでは、事務局のほうから資料1と2で、この検討会の開催に当たりましての趣旨等について、簡単にご紹介をします。
 資料1をごらんいただければと思います。趣旨でございますが、冒頭、高井副大臣のほうからございましたように、条約、それから基本法の改正等の整備が行われております。大学等に進学される障がいのある学生につきましても、今、1万人を超えた状況でありまして、こういったのを機会として、遅きに失した感はありますけれども、本日からご議論、あり方について検討したいということで、会議を開かせていただきたいと思っております。
 検討の事項、ここに書いてございますとおり、在り方でございます。短期的な課題と長期的な課題、そしてやはり地に足のついた形で一歩一歩進めるという関係で、皆様方のご議論をいただきたいということでございます。期間でございますが、本日から明年の3月31日までとしてございまして、庶務は私どもが担当するということでございます。
 1枚めくっていただきまして、先ほど述べさせていただきました構成員の構成、それから資料ナンバー2で、この検討会の公開についての決めをしたいと思ってございます。基本的に議事につきましては、原則として公開、ただし、少々問題がある場合、非公開とすることが適当とこの会議で決められたものについてのみ非公開ということにさせていただければと思います。議事録の公開につきましても、議事録を作成し、公開ということ、また上記1で非公開となった部分については非公開。ただし、議事要旨、議事録にかえることができるということ。資料については原則公開ということをさせていただければと思っておりますので、この場でご了承いただければ、こういった形で議事を進めさせていただきたいと思っております。
 以上でございます。

【竹田座長】  ただいまのご説明につきまして、ご意見、ご質問はございませんでしょうか。
 また、資料2の公開の扱いについてもよろしいでしょうか。

【殿岡委員】  この検討会は全国の障がいを持つ学生、あるいは関係者が大変注目をしております。ですから、議事録はなるべく速やかに公開いただき、全国の学生が議事録を見て情報等、議論に参加できるよう、それをお願いし、また会議資料に関しても同様に、真に不都合があるものを除いては公開をお願いいたします。
 以上です。

【竹田座長】  ありがとうございました。できるだけ速やかな議事の公開、資料の公開を事務局よろしくお願いいたします。

【松尾課長】  そのようにいたします。

【竹田座長】  そのほかよろしいでしょうか。
 では、資料2は案のとおり決定することといたします。
 次に、文科省のほから資料3から資料6に障がいのある学生の状況等についてのご説明をお願いしたいと思います。

【松尾課長】  事務局のほうから、資料3から6について、簡単にご紹介をいたします。もう既に委員各位には、資料を送らせていただいておりますので、資料の説明はできるだけ簡単にポイントだけ、それで議論の時間に費やしたいと思っております。
 資料3が取り巻く背景、それから資料4が今の学生数等の現状、それから資料5が入試における配慮、資料6が予算ということになってございます。
 まず資料3を見ていただければと思いますが、冒頭、副大臣のほうからありましたように、条約が採択され、もう発効してございます。日本の批准はこれからということになってございますが、ここで合理的な配慮を高等教育段階でもしっかりとやるということが明示されているわけでございます。
 2ページ目にそのための日本国内の体制でございます。障がい者制度改革推進本部のもとに推進会議を、そして基本法をということでございます。また、ここでちょっとだけ付言させていただきたいのは、今回、障がいという言葉でございますが、これは基本的に2ページの真ん中、推進本部の中で、この表記のあり方についても検討を行うということになってございますが、今回、固有名詞等々を除いて、なるべくこの会議におきましては平仮名での表記ということでさせていただければと思っておりまして、そういった形で使わせていただいております。この推進本部でも、推進本部の名前は平仮名ということでございますので、それをということで、この会議においてはそういう表記をさせていただくように私どもとして考えてございます。
 また、3ページ目は、それに基づきます基本法の改正等々の状況でございます。これについては既に委員の皆様、ご案内のとおりでございますので、こういう資料ということだけごらんいただければと思います。
 資料4でございますが、現在の高等教育段階にある障がいのある学生の現状でございます。1ページをめくっていただきますと在籍者数でございますが、平成18年の5,000人から現在平成23年には1万人を超える方々が今大学に、高等教育段階に進んでおられる状況でございます。2ページにその在籍者数の内訳でございますが、発達障がいの方々が急増してございますが、その他肢体不自由の方でありますとか、視覚、聴覚の方について、こういった形で数がおられるということでございます。
 3ページ目でございますが、大学における障がい学生の在籍者数でございます。現在、大学においては真ん中のカラムでありますけれども、障がい学生の在籍者数は0.3%ぐらいでございます。これはアメリカにおきましては10%を超えるということを見ますと、やっぱり我が国はまだ少ないということで、この在り方について検討をしたいということで、今回この会議を開催するに至ったわけでございます。それ以降、4ページ目が、在籍学校の数、5ページ目が学校の規模における在籍者の数等々でございます。6ページ目が受験時に特別措置を行った入学者の数等々でございますので、参考にしていただければと思います。
 最後のページ、8ページでございますが、今回お集まりの委員の皆様には、例えばいろいろな活動をされている方々に集まっていただいているわけでございますが、国として行っているネットワーク事業について、1枚資料をつけさせていただきました。平成18年度から日本学生支援機構、JASSOでネットワーク事業というのをやっていまして、拠点校9校にお願いをし、そこからいろいろな支援をしていくというようなことで、サポートさせていただいております。こういった活動も含めて、いかなる支援のあり方がよいのか、ちょっとご議論いただければというふうに思ってございます。以上が資料4でございます。
 資料5、これは1と2と分かれてございますが、入試、それから個別の試験におきます支援でございます。視覚、聴覚、それから肢体不自由の方、病弱の方、発達障がいの方々におかれての特別措置の許可の数、それから資料5-2におきましては、どんな形で支援をされているかということを1表にしてございますので、ご参考にしていただければというふうに思います。
 最後に、資料6でございますが、これは国立大学と私立大学だけの予算でございますけれども、運営費交付金、私学助成、それから施設整備補助金の中で、支援経費を計上しているということで、これもご参考にしていただければと思います。
 文部科学省からの資料説明は以上でございます。

【竹田座長】  ありがとうございました。
 それでは、続きまして、内閣府及び厚生労働省より、障がい者に関する施策の動向、現状等についてご説明いただきたいというふうに思います。
 まずは内閣府よりお願いいたします。

【内閣府】  内閣府でございます。この資料3の中で3ページの部分に障害者基本法の改正という部分がございまして、一番下の部分が、障害者政策委員会というところがございます。内閣府におきましては、この障害者政策委員会、本年の5月に立ち上げました。委員の選出をいたしまして、今後、障害者基本計画に関すること等につきまして、今後議論を進めていく予定にしてございます。内閣府から追加説明は以上でございます。

【竹田座長】  ありがとうございました。続きまして、厚生労働省よりお願いいたします。

【厚生労働省】  厚生労働省の障害者雇用対策課長をしております山田と申します。
 厚労省において今回この検討会、議論に関連する内容を2点、お話をさせていただきたいと思います。1点目は、最近の障がい者雇用が拡大しているという状況について、それから2点目は、労働分野における差別禁止、合理的配慮の議論について、この2点についてお話をさせていただきます。
 資料のほうは一番最後に入っております参考資料3の冒頭グラフが出ておりますが、その資料でまず説明をさせていただきたいと思います。
 先日、5月23日に厚労省の労働政策審議会の障害者雇用分科会におきまして、障がい者の法定雇用義務がかかわっている、その水準である法定雇用率について、15年ぶりの引き上げを決めたところです。これまで1.8%という水準の障がい者の雇用義務について、この規定がありましたが、これが1.8から2.0%に引き上げるということを決めたところであります。6月中旬には恐らく閣議決定がされて、来年の4月から2.0%というのを基準とした新しい法定雇用義務の段階に入ります。
 日本の法定雇用率についてはご承知の方も多いかと思いますが、健常者、障がい者ひっくるめた働く意欲のある人のうち、障がい者で働く意欲のある人の割合を分子としたものでもって日本の法定雇用率は決めております。ある意味、実態を反映させた形で決めているということなので、政府は政策判断でもって上げ下げする性格のものではありません。なぜ、今回1.8から2.0に上がったかということを説明する中で、今の障がい者雇用を巡る状況についてご説明をするという形をとりたいと思います。
 最初の参考資料3の1ページ目を見ていただくと、企業に雇用される障がい者の人の数というのは、その棒グラフが障がい者で働いている人の数ですけれども、8年連続で雇用が拡大している状況です。恐らくこれは第2次世界大戦後、最大の伸びを示している状況だと思います。今現在でも働きたいと思って働けていない障がい者の方が相当数いる中で、余り雇用拡大と騒ぐのもいかがなものかとは思いますが、ただ、この8年の間には、リーマンショックあり、東日本大震災があった、それで健常者の雇用の伸びが非常に伸び悩んでいる中で、障がい者の雇用がこれだけ拡大したということは、ある意味積極的に評価していいものだと思っています。高等教育機関に在籍される学生の方にとっても、障がい者雇用の環境が明るい方向に動いているということについては、前向きにとらえていただきたいと思っています。
 それから2ページ目、これは先ほどの障がい者雇用状況について、企業規模別に状況をしたものであります。今の法定雇用率の制度が現行のような形でなったのは昭和52年からですけれども、その当時というのは基本的に企業規模で見ると、中小企業が障がい者雇用の受け皿になっていたのですが、これが青い実線が1,000人以上規模の企業ですけれども、特に大企業を中心に障がい者の雇用の受け皿というのが今は大企業が牽引する形で動いているということで、恐らく欧米先進国の中でも日本だけがこういう特異なパターンをたどっていると。裏返せば中小企業が伸び悩んでいるという状況だと思います。
 そうした中で、これは障がいを持たない学生の方に対しても申し上げている話ですけれども、ある意味、中小企業が新しい雇用の法定雇用率の中で、より障がい者で雇わなければいけない、雇用しなければいけないという義務を意識して、今、中小企業が大企業以上に障がい者雇用に努力しようとしている状況ですので、障がいを持たれている学生の方におかれても、大企業も中小企業も両方射程に入れて検討していただきたいというふうに思っております。
 それから資料3ページ目です。今の資料1ページ目、2ページ目は、ある意味企業のほうの障がい者雇用が伸びているということのあらわれということを示したものになりますが、いくら企業が障がい者を雇用するモードに入ったとしても、障がい者の方自身が福祉ではなくて、企業だとか官公庁で働くということを望んでいなければ、実際働く障がい者の数はふえるわけはないのですが、これはハローワークに登録している障がい者の数の推移を見たものですが、折れ線グラフのほうが新規求職申込件数、つまり、ハローワークに新たに登録するようになった障がい者の人の数ですが、これも実はここ数年来、ずっと増え続けています。これは普通の健常者で同じグラフをとれば、景気のよし悪しでかなりがたがたのグラフになりますけれども、障がい者の方で新たにハローワークに登録される方は、一貫して増え続けています。これはある意味、障がい者の働く場がふえているということを障がい者の人が好感して、これまで福祉の世界にいたりとか、自分の家にいたりしている人が新たに働こうという意欲を増しているという側面もあると思います。いずれにしても企業の雇用意欲、それから障がい者ご自身の企業や官公庁で働こうとしている意欲が増しているというのは、ここ8年、10年の動きであります。
 ちなみにこの新規求職申込件数の障がい別の内訳を見ると、精神障がいや発達障がいの方が、ここ数年、非常にハローワークに訪れて、みずからの障がいを開示した形で就職活動をする人は非常にふえているというのが、ある意味、この新規求職申込件数を牽引している状況になっております。
 いずれにしても、そういった企業の動き、障がい者ご自身の動き等あり、働く意欲のある人、実際働いている障がい者がふえてきたということで、結果として15年ぶりの法定雇用率の引き上げということになったと言えると思います。
 それからもう一つ、労働・雇用分野における差別禁止、合理的配慮の議論がどういう形で展開されているかということについては、資料の最後の4ページ目にあります。今現在、我々障がい者雇用対策課のほうでは、月に一回、ほぼ毎週のペースでやっていますけれども、大きな課題に対応する3つの研究会を設置して、議論をしているところであります。ここに挙げてある3つの研究会のうち、2番目の労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会というのは、労働分野における差別禁止、合理的配慮の議論をしているものであります。もともとは差別禁止、合理的配慮については、権利条約を批准するために、一番最初に取り組んだのが労働分野でありまして、この研究会に先んずる形で既に検討はしていましたが、内閣府の推進会議のもとで差別禁止の包括的な議論をするということはあったために、一時的に議論を中断していまして、昨年冬からこの2番目の差別禁止にかかわる研究会を始めたところであります。
 平成20年、21年あたりに議論は詰めていたんですが、差別禁止、合理的配慮に関しては、公的な支援のあり方をどうするかという議論がございまして、その合理的配慮の提供を企業に義務づけるということと、公的支援との関係というのは非常に難しい問題で、そこのあたりを今、集中的に議論しているところであります。
 それから研究会で具体的に出ている議論としては、ややもすれば身体障がいを念頭に置いた形で、合理的配慮というのを検討する、合理的配慮の検討に当たっては、身体障がい者が中心に置かれてしまうということもあるので、知的障がい者、精神障がい者、発達障がい者の方々に対する合理的配慮というのも、意識して考えるべきだというような意見が出ております。
 あと、ほかにある議論としては、合理的配慮については、基本的に個別性を意識した形で議論しなければいけないという議論がある一方で、ただ、合理的配慮というのは、ある意味、日本の法制に新たに入ってくる概念であるということから、その合理的配慮というのはどういうふうに実際現場でやったらいいのかということがなかなかわかりにくいということで、一定のガイドラインは示す必要はあるといったような議論も出ております。
 そういったことを考えると、もちろんこの差別禁止、合理的配慮については、政府全体の方針としても方向性を定めることが仮にできたとしても、取りまとめにはいろいろ難しいところもあるかなというふうには思っております。
 障がい者福祉もやはり厚生労働省でやっておりますけれども、差別禁止、合理的配慮の議論というのは、ある意味、障がい者と健常者、それから障がい者と事業者、これは企業だとか学校だとかありますが、そうした障がい者と健常者、事業者との関係、インターフェースのあり方をどう規定するかという問題であって、障がい者の人がまず納得する、理解するということは重要ではありますが、一方で事業者、健常者を含めた広範な理解、納得が必要だということで、そこのところは我々のこの研究会のメンバーをしていただいている委員の方々に対しても、そういう観点はきちんと踏まえる形でやってほしいということと、あとこれは格調の高い法制をつくるということよりも、むしろ合理的配慮や差別禁止というのがきちんと現場に根づくような形で、きちんと施行できるような形でやっていく、取りまとめていく必要があるということは、我々事務方からも申し上げていて、そこは研究会委員にも共有されているところだと思っております。
 いずれにしても、現場でこの差別禁止や合理的配慮を定着させていくということで、霞が関で一番大きな課題を抱えているのは、厚生労働省と文部科学省だと思っておりますので、そういう形でこの検討会の議論にも我々の議論が何らか役に立てばいいと思っておりますし、こちらの議論も我々積極的に受けとめていきたいと思っております。
 少々長くなりましたが、以上です。

【竹田座長】  ありがとうございました。
 ただいまの内閣府及び厚生労働省からの説明につきまして、何かご質問等、委員の皆様ございますでしょうか。

【福永委員】  福永と申します。先ほどの雇用率なんですが、全体として上がってきていますが、例えば中は3つに分かれておりますが、それぞれのところで見ても、雇用率は上がってきているのでしょうか。

【厚生労働省】  それぞれ絶対的に障がいを持っておられる方で働いている人の数という意味で言えば、すべての障がい類型でもって雇用が伸びてきているのは事実としてございます。ただ、先ほど申し上げた8年連続で上昇しているということの最大の要因というのは、知的障がい者の雇用が大きく拡大したことがあって、参考資料の1ページ目に掲げてあるのは、これは実際に働いている人、それから法定雇用義務がかかっている56人以上規模企業で実際働いている人の数だけをプロットしたものですけれども、一方で身体障がい者と知的障がい者の方に関しては、働きたいけれども働くことができない人の数というのも、ここの資料には出しておりませんが把握していまして、実はそれも身体、知的とも非常に増えてきていると。働く人も増えてきていますけれども、働きたいと新たに思って今現在はまだ働くことができていないという方も増えてきているという状況であります。
 精神障がい者の方については、そのグラフでいくと一番上の棒グラフのところになっておりまして、この平成18年から精神障がい者の人を報告の上でカウントしていいという制度に変わっておりますが、数的には精神障がい者全体の数が非常に大きい中では雇用者数はなかなかまだ少ないですけれども、ここも確実に数は増えている状況でありますので、ある面、障がい類型を問わず、大きく膨らんでいるということは言えると思います。

【竹田座長】  そのほか、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、続きまして、これまでのご説明を踏まえまして、障がいのある学生の修学支援について、自由なご議論をお伺いしたいと思いますが、まずそれに先立ちまして、文科省のほうから資料7、高等教育段階における合理的配慮や支援に関する論点等についてご説明お願いします。

【松尾課長】  この論点は、私どもが参考までにつくらせていただいたものでございますので、大学、それから高校からの大学への接続、大学から社会に接続するという観点で、どういった課題があるかについてご自由にご議論いただければありがたいと思いますが、私どものほうでまとめたものについて、ご紹介をさせていただきます。
 まず、一番大きな課題でございますけれども、これは私どもも思っておりますが、現場、大学の先生がいろいろ支援するに当たって、合理的配慮というのをどう定義するか、そして現場でそれをどう具体的な支援につなげていくかということだと思います。したがいまして、まずは、高等教育を受けるに当たって必要な能力を、これは学力という観点で備えていること、これを前提として、その上でいかなる支援ができるか、合理的に支援していくかということが課題なのではないかというふうに思います。
 そういった範囲の中で必要となる支援の範囲ということで、入学前の段階、入学後の段階、それから卒業前の段階、これは接続の観点も含めてご議論いただければと思っております。入試の問題、センター試験、それから各大学で行われる入試、それから入学後につきましては、通学、修学、それから学内、学外での生活支援、これは恐らく大学だけでできるわけではなくて、自治体やNPOの方々のお力も借りながらやっていくということだと思いますが、その上での連携をどうしていくのかということも含まれると思います。あと、就職の関係、そして障がいのある方々の障がいの状況に応じてどう意見交換をし、そして個々に対応していくかといったものについても、論点を整理をし、共有していくということなのではないかと思います。そういった上で、大学の支援体制としては、ハード面、それからソフト面、ソフト面もいろいろな準備がございますので、そういったものについてご議論をいただければありがたいと思います。そういった中で、短期的にすぐにできることと、やはり時間のかかることというのはあるかと思いますので、それらについて整理ができれば私どもとしてはありがたいなというのが、事務局としての考えでございます。
 先ほど申し上げましたように、高校からの接続、それから社会の接続、また社会から戻ってこられる、大学で学び直したいという方々との関係、そして大学だけではできないと思いますので、自治体、それからNPO、地域社会といかに連携をしていくかということでの支援体制をどうしていくかということについて、私どもいろいろ考えるに当たってのご意見をちょうだいできればありがたいと思っています。箱だけ用意をしていますので、この中にどんどん委員の皆様のご意見を入れていただきたいと思ってございますので、よろしくお願いいたします。
 以上でございます。

【竹田座長】  ありがとうございました。
 今、事務局のほうより、論点についてのご説明がございましたが、ここからがきょうの本題でございますので、ご専門の先生方にお集まりいただきましたので、ご自由に議論を展開していただければというふうに思います。合理的配慮や支援に関することにつきまして、それぞれのご専門の立場で日々お感じになっていること、あるいはこうあるべきだという、いろいろそれぞれのお考えをぜひお聞かせいただければというふうに思います。
 いかがでしょうか。それでは、巖淵委員のほうから、順に何かご意見をいただければと思います。

【巖淵委員】  では僭越ながら。私たちはDO-ITという活動をやっておりまして、それは障がいのある主に高校生の大学進学をサポートする活動をやっておりまして、その活動を通した意見ということで、お話しさせていただければと思います。我々、高校と大学をつなぐ移行の支援というのをベースにやってまいりました。
 そこで大きく問題となりますのは、やはり合理的配慮というものを、特に入試の段階で受験生が申請を出すわけですが、それが大学によって違う。大学が違うからということではありますが、やはり複数大学を受けますので、そのたびに調整等をしなければならないということで、事実上、この資料にもあります大学入試センターで受けた配慮がスタンダードといいますか、ここで掲げられているものがスタンダードとして、そこで認められれば以後二次試験等でも認められるというような流れになっています。何かしらそういうスタンダードになるようなものとして、提言のようなものが出されればうれしいかなと考えています。これはあくまでも長期的な視野ですけれども、何かしら国にそういったものをまとめられるような機関なり、あるいはそれこそスタンダードができれば、すべての大学がその認識に従って動けるようなものが、長期的な視野で見ればできればというふうには思います。ただ、これは国際的に見ても、例えば支援の進む米国においても、移行支援というところで問題になっていることではあります。
 ただ、そのときに、事実上スタンダードとして、要は大学入試センターの試験につきましても、いろいろ修正といいますか、改善の希望等がいくつかありまして、例えば大きく肢体不自由や、あるいは感覚障がい、あるいは発達障がいという枠でとらえられていますけれども、彼らが実際に受けたい支援というのは、具体的に自分たちが抱える困難をそこに対してどう配慮してくれるかということで、問題点としましては、例えば視覚障がいがあるといって、その解決方法がこれというふうに一つには決められないという問題がありますので、やはり困難をベースに合理的配慮というのをもう少し柔軟にできるような体制があればいいかなというふうに思いますし、そういったことが具体的にどういう支援を受けられるかということが、まずまず、また高校生の段階ではあまり整備されていない部分もありまして、確かにスタンダードなものはあそこの配慮のメニューとしては上がっていますけれども、そこがもう少し……例えば前例とか、問題は何人の人が実際に申請をし、何人の方が認められました等な大まかなものはあるんですが、それが次の年以降受ける学生たちにとってみると、自分がどこに該当し、具体的にどうなのかということが、結局申請をし、答えをもらうのに一回のチャンスしかないので、そこの判断ができないわけですね。ですから、そういった情報公開などもできればなというふうに思っています。
 その他、いろいろありますけれども、移行のところで一番我々が感じているのはそういったところです。以上です。

【竹田座長】  ありがとうございました。
 それでは、続きまして、大島委員いかがでしょうか。

【大島委員】  マイクロソフトの大島と申します。私、少しちょっとこういう場にふさわしくないような企業名かもしれないのですけれども、皆さんもご承知のとおり、障がいのある方はITを使って、さまざまな可能性を広げられるということがあると思います。肢体不自由の方はもちろんですけれども、認知に障がいのあるような方でも、ITを使ってその方の可能性を広げている部分、最近特に注目がされてきているところだと思っております。
 今、巖淵委員からもお話がありました試験のことについても、今、ITでの取り組みというのをさせていただいておりますし、入学後のことで言いますと、先ほどのJASSOのネットワークの拠点校にもなっております広島大学などと、障がいのある学生を支援する学生、支援者の学生を育成するというような活動も一緒に行わせていただいておりました。
 特にその部分について、ちょっとお話をさせていただきたいと思いますが、やはりこの高等教育における障がいのある学生支援、大変重要だと思っています。先ほどの大学入学者の数にもありましたけれども、やはり入ってからの不安というのは、先生方もよくご承知のことかと思いますが、多いと思いますので、どうしても障がいのある学生を支援する組織の設置の義務化のようなものが重要になってくるかなと思っております。私どものほうでも、JASSOさんの活動などもご一緒させていただいている際に、障がいのある学生が入ってきて、どうしたらいいかわからないというような学校さんの声、よく耳にしますので、そういったことのないようなケアというものが、組織のもう設立というのが第一かなというふうに思っています。
 さらにやはり障がいのある学生が社会に出た後ですよね。私どもの会社でも障がいのある社員、多く働いております。通常といいますか、障がいのない社員と同じように働いて、もちろんマネージャーですとか、そういって昇格する者もおりますし、障がいのある方専用の制度として、1年間契約社員として来ていただくような制度もあります。1年間契約社員として来ていただいて何をするかというと、実は勉強をしていただくという制度があります。特に1年間ITのスキルを身につけていただいて、その後、また私どもの会社に入っていただいたり、次の会社に行っていただいたりというような制度なのですが、それを考案した理由が、障がいのある人のスキルの低さといいますか、もちろん障がいのある人本人が悪いわけではなくて、そういうことを学ぶことのできる機会ですとか、状況が、特に今まで不足していたと思うんですね。大学では、通常の講義にもちろん障がいのある学生が参加できるのはもちろんですけれども、今、ITですとか、語学ですとか、通常の講義以外の資格などを身につけさせることを奨励している大学も多くあると思いますので、そういったものに障がいのある学生もちゃんと参加ができる、そこも含めた障がいのある学生の支援体制ですね。そういったものは必要かなと思っています。

【竹田座長】  ありがとうございました。
 引き続きまして、近藤委員、よろしくお願いします。

【近藤委員】  東京大学先端科学技術研究センターで教員をしております近藤と申します。当センターは東大の附置研究所のひとつですが、バリアフリーを主要なミッションの一つとして掲げて、学際的な研究領域から集まった研究者が教育研究活動を行う部署があります。その特徴として、さまざまな障がいのある研究者やスタッフも多く参加していて、当事者参加型の研究を行ってきているところがあります。私自身はその中で研究者のひとりとして、支援技術や特別支援教育,就労移行支援をテーマとして研究を行っています。
 さて、今、巖淵委員と大島委員から、入試の配慮と組織づくりの必要性にてお話しがありました。これは私もまさにそのとおりだと思っています。
 入試について少し補足させていただくと、大学入試センター試験での特別措置申請には、視覚障がい、肢体不自由、それから聴覚障がい、発達障がい、その他という申請の枠組みがあり、その枠組み内で申請をしていくわけです。例えば視覚障がいのある人は、点字の受験ができるよといったルールも以前からつくられていて、点字で受験をするということももちろんできるわけです。ところが例えば、中途障害で、目は見えている、つまり視力に障がいはないけれども、脳卒中などで脳の一部が損傷して、視覚情報の認識が難しくなってしまった学生がいたとします。その学生が音声で問題を読んでもらえば、それを理解して解くことができ、日常的にそのような形で勉強をしているとしても、現在のところ、大学入試センターには音声での受験という選択肢が用意されていません。さらに、どの障がいの枠組みで措置を申請しようかと考える際にも難しさがあります。その方たちは医療的には高次脳機能障がいと呼ばれる枠組みになるわけですけれども、現在は高次脳機能障がいという申請の枠がないので、その他という枠で申請をするということになるわけです。もしくは、視覚障がいの手帳を持っている場合もあるので、視覚障がいの枠で申請することもあります。仮に視覚障がいの枠組みで、時間延長措置を受けようとした場合、ルール上は90%以上視能率が欠損している必要があります。しかし、彼らは視覚での文字情報の認識が非常に難しくても,視力自体には問題がない場合があります。したがって措置のニーズが明らかに存在しても、その枠組みに当てはまらない場合があります。
 ところが仮に、個別性を重視することを求めている「合理的配慮」の視点からこれらの障がい種別で区分された措置を見ると、当てはまりの悪さがあります。個別性を重視する場合には、障がい種別で措置の内容を決めるのではなく、個々人が自分のニーズに基づいて措置の申し出ができるようにしておく必要があります。しかし、現在は障がい種別で分けられてしまっているため、個々人の困難ニーズに対応する合理的配慮を提供するという枠組みになっていないという現状があります。さらに、全国の大学では、それが一番簡単という理由はあろうとは思いますが、基本的に大学入試センターのルールに従って入試での配慮を提供すると表明しているところが多いので、いわゆる障がいのある子どもたちが何らかの形で自分の個別のニーズを大学側に伝えていくということが難しいということはあります。
 例えば、アメリカのSATという、日本でいうところの大学入試センター試験のようなものがありますが、その配慮申請書を見ると,一番最初に、「私は読むことに困難があります」、「書くことに困難があります」、「計算することに困難があります」、そのために、「試験時間の延長をこれだけください、こういう配慮をください」というふうに、自分の困難ベースで配慮の申請をまず書くようになっています。そして、なぜそういう困難があるかというと、「私には実はこういう障がいがあって、そのためにこんな困難が出てきています」というふうに、背景となる障がい種別に触れるという順序になっています。日本でもこれに類する困難ベース、個別の事例ベースの配慮申請ができることが妥当な形だと私は思います。そういった申請方式にまず変更しないことには、そもそも配慮申請そのものができていないという障がい者がいると思います。
 さらに、措置に不十分さが残っている以外にも、そもそもそうした措置が利用できるということすら知られていないという現状もあります。私たちは大学受験や高校受験を目指そうと思っている障害のある学生たちの相談も全国から受けつけています。それらのケースに多いことなのですが、高校の教員自体がそういった措置の存在、そのことをご存じないことがあります。障がいのある学生自身やその保護者の方々もそうです。多くの障がいのある学生で、いわゆる通常の教育カリキュラム、通常の学校へ通って学んでいる障がいのある生徒たちは、そもそも社会の中に障がいのある人に対してさまざまな配慮やサポートがあるということを知らない学生たちも多いんですね。もちろん、彼らの高校の教員もそういった支援があることをご存じない。そこで手探りで何とか不十分ながらも,高校の中で支援の体制をつくっていこうと努力している方たちもいらっしゃるのですが、そもそもこうした配慮や措置を知らない場合「自分は大学入試を受けられない」と思っている生徒たちも非常に多いわけですね。
 また,大学入試センターの特別措置のような配慮が、高校入試の段階から使えるよう整備されているわけでもありません。したがって今現在は、障害のある生徒の保護者からは、中学までは通常の学校にいるけれども、高校からはいわゆる特別支援学校の高等部に進まざるを得ないという相談を受けます。特別支援学校の高等部へ進むと、いわゆる「準ずる課程」という通常の教育課程に準ずる教育を特別支援学校でも受けられるのですけれども、なかなかその大学受験、進学というところまではやって来ることができずに、そのまま就職や福祉就労に移行していくという流れもあります。そうすると、専門的で高度な教育を大学で受けるという機会を得られにくいので、高い専門的な知識を持った障がいのある学生が社会になかなか出てきにくい背景があると言っていいと思います。
 なので、今年、統計上は高等教育での障害学生数は1万人を超えたことになっていますけれども、統計の詳細を見ていただくと非常にわかりやすいですけれども、ほとんど数として増加しているのは、「発達障がい」という枠組みと「その他」という枠組みです。またこの「発達障がい」の内訳を詳しく見ると、ほぼ高機能自閉症等のある学生が大部分を占めているという偏りがあります。例えば「発達障がい」の中にも、実際には学習障がいのある学生も含まれているわけなのですが、その数というのが100人程度なのですね。例えばアメリカの障がい学生では、高等教育の学生中の10%を障がい者が占め、数としても200万人程度在籍しているという統計が出ています。ちなみにその10%の内訳の多くを占めているのは、LD、ADHDのある学生です。LDのある学生だけでも16万人程度が大学へ進学している。一方、日本では100人程度です。このように、特定の障害種別を見ても日米の状況には非常に大きな格差があります。その背景にあるものというのは、やはり試験であったり、通常の教育カリキュラムでも障がいのある生徒がアクセスできるようになっているか、いわゆる個別の合理的配慮が現在なかなか通常の教育カリキュラムで用意できていないという背景があるなと思っています。例えば先程の音声で耳で聞いて勉強や受験ができるような環境が整っていないところはその良い例だと思います。
 したがって現時点では、そもそも実際には相当な潜在数がいるはずの障がい者の専門的なキャリアメイクに、大学が寄与できるところまで来ていないという状況があると思います。そこには高校、特に通常の高校ですね。特別支援学校でない高校と大学での勉強と試験での配慮の連続性を上げるような取り組みというのをやらないといけない。これは高校の入試段階からを含めてのことだと思います。高校入試においては、例えば今年初めてLDのある学生が通常の高校を受けるときに、代読といって、かわりに先生から読んでもらって受験をするというケースが奈良県で出てきていますけれども、これがまだ公になった形では初ケースというふうに言えるぐらい少ないです。大学の入試においては書字のLDのある学生が、今年、字が書けないのでワープロを使って入試をするというケースが出てきましたが、こちらも公になる形では初と言えるようなまれなケースなんですね。
 今、例としてわかりやすいので、LD、学習障がいの話を挙げさせていただきましたけれども、そういった個別の配慮が当たり前になるような認知というのが、特別支援学校だけではなくて、通常のいわゆる進学校といったところにも広く広がっていくような形にする必要があると思っています。先ほど、それは大島委員のほうからもおっしゃった組織ですね。大学とか高校の中にも、やはりその専門性を持ったスタッフによってそういう支援ができるような体制というのをつくっていく必要があるというふうに思っています。
 長くなりましたが、以上です。

【竹田座長】  ありがとうございました。 では、白澤委員、お願いします。

【白澤委員】  筑波技術大学の白澤と申します。本学は日本で唯一の聴覚・視覚に障がいのある学生のための高等教育機関で、聴覚障がい学生が200名、視覚障がい学生が160名、それぞれ2つのキャンパスにわかれて学習をしています。学内には、障害者高等教育研究支援センターという部署があり、学内外の聴覚・視覚障がい学生のサポートを担ってきています。私は聴覚障がい学生への支援を専門にしており、全国の大学と共同で運営している「日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク(PEPNet-Japan)」の事務局長をさせていただいております。
 こうした立場でお話をさせていただきますが、現在、聴覚障がい学生の支援は、学内でボランティアの学生を集め、彼らにノートテイクを担ってもらうというスタイルの支援が確立されていて、全国に広まろうとしています。この普及拡大はもちろん重要ですが、それ以上に「質の向上」、すなわちノートテイクだけにとどまらない支援をいかに構築・保障していくのかが課題になっており、それが聞こえない学生の高等教育の保障につながると考えています。
 ノートテイクによる支援は、現在の大学に非常にマッチした方法で、だからこそ急速に全国に広まりました。すなわち、授業時間の合間に学生達にボランティアを担ってもらい、彼らにノートテイクの方法を教え、サポートに入ってもらうという方法です。これは、人材が豊富にいて、かつ、すぐに支援技術を身につけられるような若さのある学生達の力を最大限に生かした方法と言えます。こうした方法は、大学という場の特性に非常にマッチした手段で、このモデルが確立したからこそ今のように多くの大学で支援が行われているような現状があるのですが、残念ながらここで行われている支援は、聴覚障がい学生の「教育の保障」という観点から見ると不十分なものであると言わざるを得ない状況にあります。もちろん、どの学生も一生懸命支援にあたってくれていますし、それにより聞こえない学生の多くがものすごく助けられているのは事実です。また、学生が学生を支援することで、互いに学べることも多く、支援実施によるメリットもたくさんあります。なので、今の現状を否定するつもりはまったくないのですが、少し考えていただければわかるとおり、手書きによって伝えられる情報量というのは、話し言葉の情報量にはほど遠く、まったく及ばないのが現実です。話し言葉の場合、1分間に350字から400字ぐらいのスピードで話をするのに対して、書き言葉の場合、1分間に70文字程度に過ぎません。単純に計算すると二、三割ということになってしまいます。もちろんポイントを要約して伝えていくので、熟練したノートテイカーであれば実質的にはもっと多くの情報が伝えられるでしょうし、完全に二、三割の情報しか伝わっていないというふうには言い切れませんが、やはり聞こえない学生が大学の中で新たな知見を学び、専門家として社会で活躍していくためには、これだけの情報では不十分と言わざるをえません。ですから、現在行われている手書きノートテイクによる支援が、全国の大学に広まり100%の大学でノートテイクが行われる状況を作るのは、現段階における一つの目標ではありますけれど、そこはあくまでスタートでしかなく、そこからより深い情報をどこまで伝えていけるかを突き詰めていくことこそが、本来の聴覚障がい支援、聴覚障がい者に対する高等教育の目指すところではないかと考えています。
 そのために、現在はパソコンノートテイクや手話通訳といったより多くの情報を伝えられるような手段を、いかに大学の中に取り入れ、質を高めていくのかが大きな課題になっています。このうちパソコンノートテイクについては、学生による支援でも十分に質の高い情報を提供できる側面があります。そのため、例えば一つの大学だけで養成することが難しいようであれば、地域のコンソーシアムや中核になるような大学・機関等で定期的に質の高い養成講座を開講し、近隣大学の学生達を集めて集中的に人材を養成したり、またそこで育った学生達を互いに共有していくなどのシステムがあれば、かなり進んでいくのではないかと思います。一方で手話通訳については非常に心細い状況にあります。現在の日本の手話通訳体制は、聴覚障がい者の生活を支えることを目的につくり上げられてきたものであるため、こういう高度で専門的な大学の授業については、担い切れる通訳者が本当に少ないのが現状です。ですから、できれば将来的には大学等の高等教育機関で、専門領域に対応できる手話通訳者の養成を行うことが求められるのだと思います。ただ、これはすぐに解決できる問題ではありませんので、ひとまず現状の課題解決という意味では、OJT等の形で、ある程度の力を持った手話通訳者を現場に配置し、大学側で聴覚障がい学生の受講している学問分野に合わせて、専門的な内容についての研修を行っていくような試みが求められているのではないかと思います。いずれにしても、こうした「支援者の養成」というのが1点目の課題です。
 もう一つ、障がい学生支援の質を高めるために重要だと思っているのは、障がい学生支援コーディネーター、すなわち支援にともなうさまざまな現場のコーディネートを担う職員たちの設置と研修・身分保障です。昨年度、私どもPEPNet-Japanでは、全国197校の大学に対して、障がい学生支援を担っている職員達が今どのような立場に置かれているのか。また、どのような業務を担っていて、どんな知識・スキルを持っているのかという点について調査をさせていただきました。この結果を見ると、現在障がい学生支援を担当している人たちの中で、これまで障がい学生支援業務に携わった経験がある人は、全体の25%にも満たない状況がわかります。加えて、先ほどお話ししたような質的向上につながる取り組み、すなわち例えば手話通訳者を確保したり、通訳技術のよし悪しを評価したりといった聴覚障がい学生の支援に特化したスキルを持った方となると、今回収集したデータの中ではわずか7%しかいないという状態でした。もちろんそれ以外の方々も他の面でたくさんの技術を持っておられるでしょうし、これだけで支援担当者の専門性をはかることはできません。しかし、こと聴覚障がいに特化したという側面から見ていくと、情報保障に関する評価ができない状態では、支援の質を上げていくのは厳しいだろうなと感じます。また、同様に求められるものは大きいのに、研修機会がなかったり、突然の異動でこうした仕事の担当になった方々も非常に多いのが現状ですから、やはりこうしたコーディネーターあるいは支援担当者の専門性を上げていく方法をどう考えていくのかが重要な課題だと思います。一方、こうした支援担当者への身分保障にも大きな課題が残ります。先ほどお話しした調査の中では、障がい学生支援を担当している方々の中で、障がい学生支援業務に専任であたっている人達、つまり障がい学生支援を進めるために学内に配置され、業務時間のほとんどを支援業務にあてている、所謂コーディネーターと呼ばれる方達のうち、非正規で雇用されている方の割合が何と8割を超える(83.9%)状況になっています。また、年収も130万円以下という回答が最も多く、300万円以下という方々が66%にも上るという環境にあります。こうした雇用環境の中で各障がいの専門に応じた知識・技術を身につけ、支援の質的向上を求めていくのは、非常に酷な状況にあると思いますので、こうしたコーディネーターへの保障についても考えていかなければいけませんし、それが障がい学生支援全体の質的向上にもつながっていくのではないかと考えています。

【竹田座長】  ありがとうございました。 それでは引き続きまして、高橋委員、よろしくお願いします。

【高橋委員】  信州大学の教育学部の高橋知音と申します。専門として、発達障がいのある方の支援ということを研究テーマにしておりまして、特に発達障がいのある大学生の支援ということに関心を持って研究教育をやっております。今、既に幾つかお話もありましたが、私のほうで2点、おそらくこの会で検討の観点として扱っていったほうがいいかなと思うこと、そしてその最終的な報告等で出していったほうがいいと思われることを2点挙げたいと思います。
 1点目は、合理的配慮の根拠をどうするかという点です。第2点目は、大学としての最低限どこまでやるかというミニマムの、ある程度のスタンダードをつくりたいという、その2点について少しお話ししたいと思います。
 まず、第1点目の配慮の根拠というところなんですけれども、今、センター試験のほうで既にそういった配慮が広がってきているというお話は、巖淵委員のほうからもありましたけれども、また近藤委員のほうからも、障がい種別ではなく、困難ベースでの配慮が必要だということ、そういったお話がありました。そういったところに加えまして、その困難がどの程度なのかということについて、何らかの客観的な根拠を示していく必要があるだろうと。これはとりわけ発達障がい、おそらく精神障がいのほうに関しましても、なかなか客観的に一つの物差しでこの程度の発達障がいがありますということが難しい障がいだと思います。そういった中で、ほかの方に影響のない配慮ですといいのですが、試験等になりますと、その人の結果というものがほかの人に影響を及ぼし得るわけですね。そういったときに、多くの方がその配慮を必要とした場合に、どこまでを認めて、どこからは認めないのか、それはまた信頼のあるなしということだけではなく、また本人の訴えのみだけではなく、何らかの客観的な根拠を持って決める必要があるのではないかと考えます。
 その一つの理由といたしましては、先ほど近藤委員のほうからもありましたけれども、アメリカではLD、ADHDの方が多いという中で、実はLDのある方に対する配慮というのは、障がいのない人への逆差別ではないかという訴訟も起こっております。そういったことも考えますと、単に診断がある、単に本人が困っていると訴えているというだけでは、その配慮を決めるということは難しいのではないかと思うんです。今はこういった配慮がゼロに近い状況ですので、いかにこれをつくり出していくかということですので、今はプロモーションしていく時期ではあるんですけれども、それは際限なくというわけにはいかないので、その根拠ということについては、早い段階から考えていく必要があるだろうということ、特に発達障がいや精神障がいにおいてということを、まず一点考えます。
 第2点目として、最低限のここまではということは、何らか打ち出したいということをお話ししたんですけれども、講演や研修等でこの話題についてはお話ししますときに、やはり大学の関係の方からよくある質問は、どこまでやったらいいのかということをよく聞かれます。また、逆に親御さんたちとお話をしてみますとよく聞かれますのが、要するに大学によって、もしくは人によってやってくれること、やってくれないことにものすごく差がある。これはやはりたまたま運よくこの人と巡り合えたからラッキーだったという形では、いけないのではないかと思います。だからといって、必要なことをすべての大学が限りなく提供するというのは、コスト的にも限界があると思いますので、最低限としてここまでは保障しようという何らかのガイドライン的なものは出していく必要があるのだろうと考えております。
 そういった中に、今まで例えば大島委員のほうからも支援組織を、大学内でのそういった相談の窓口のようなものを、わかりやすくして義務化するということであったり、白澤委員のほうから、支援スタッフの身分保証等のお話もありましたけれども、そういったことも含めました支援の内容等に加えて、そういった支援体制やスタッフのことも含めた、大学としては最低限ここまでといったようなことを話し合っていく必要があるかなというふうに感じております。
 以上です。

【竹田座長】  ありがとうございました。 それでは、引き続きまして、殿岡委員よろしくお願いします。

【殿岡委員】  全国障害学生支援センターの殿岡と申します。最初の大学案内障害者版ができたのは1994年のことです。以来、大変な状況の中、多くの困難を乗り越えて、障がいを持つ学生が高等教育に進んでいったこと、それを経てこういった検討会の場に参加することができ、大変感慨深いものがあります。やはり多くの障がい学生の血のにじむような努力の結果が、今に至っていると確信しております。
 そういったわけで、きょうはまず個別の問題に入る前に、いくつか確認をして、あらゆる論点を出していければと思っています。
 まず、資料1、趣旨に関してですが、本検討会は権利条約とそして障害者基本法の改正を踏まえてということはありますが、合理的配慮という最初の問題のキーワード、これの確認から行っていきます。権利条約の批准、これは全世界の障がい者が待ち望んでいるものですが、そのために政府は障がい者制度改革推進会議をつくって検討を重ねてきました。その第1次意見、ここにはまた義務教育だけでなく、就学前の教育、高校や大学における教育、就労に向けた職業教育や能力開発のための技術教育、生涯教育等についても教育の機会均等が保障されなければならない。これが推進会議の問題認識です。私たちの検討会は、この第1次意見の公式認識を踏まえて検討するべきということを、共通認識としてひとまず確認できたらいいなと思っております。そして、障害者基本法ですが、第4条で合理的な配慮、「な」が入るんですよ。合理的な配慮をしなければ差別であるという趣旨のほうが盛り込まれております。この合理的な配慮というのは、権利条約で定義されている、そして本検討からこれが行われていく合理的配慮のことであると。これは大臣の確認がとれていることです。ということでまず間違いないですよね。

【松尾課長】  そのとおりです。

【殿岡委員】  そうですね。今、松尾課長から確認いただきましたので、権利条約の合理的配慮と障害者基本法に定める合理的な配慮、そして本検討会の合理的配慮、これは同一のものであるということです。総括していいますと、合理的配慮は主体的には、過度な負担を除けば、それをしないことは差別であるということが、現行法、それはもう既に確認され執行されている現行法上、もうあるというそういうことで認識して確認して、そういうことでよろしいかと思っています。障がい学生の実態等に関しては、他の委員から報告されていましたので、私のほうからはそれに加えて新たな論点を展開していけばと思っております。
 まず、障がい学生の実数等については、先ほど近藤委員のほうから発達障がいが増えているというようなことがありました。実は個別の障がい別に見ていくと、増えていない障がいというのがあります。そしてさらに問題なのは、障がい学生の数が増えることと、障がい学生を受け入れる大学の数が増えること、これがイコールではありませんので、障がい学生の数が増えていっても、障がい学生を受け入れる大学の数が増えていない、1大学当たりの障がい学生の数が増えていると。そうすると、受け入れる大学が広がっているということとは、答えがイコールにならない。だからそれを見るときは、障がい学生の変化とともに見ていかなければならないということがあると思います。それは障がい学生が入ることができるという門戸開放につながっていく。逆に当センターの調査では、受験不可と答えている大学も存在しています。詳細はまたこの次にします。
 また、技術的な問題としては、現在、障がい学生の通学、それから学内の介助、これに障害者自立支援法は使用できないことになっています。山田課長は、障害者自立支援法の担当ではないですが、通勤、通学に支援法を使ってはならないということだった。障害者自立支援法だけでも移動介助を利用する学生は、大学への通学となった途端に支援法を使ってはいけないと行政から言われ、そして進学はあきらめざるを得ないところまで追い込まれる、そうしたケースは残っているわけです。
 ちなみに昨年の8月に、推進会議の総合福祉部会で取りまとめられた骨格提言、この骨格提言には、通学、学内介助等を認めるべきだという意見がしっかりと取りまとめられておりますが、これに関しても今国会に上程されている総合支援法には含まれておりません。これだけでなく、ここはたくさんありますが、したがって今国会で成立したとしても、相変わらず障がい学生は通学や学内介助に支援法は使えない。これのために多くの大学が独自にボランティアを養成したり、学内介助にお金をつけたりということがありますが、こうした法の不備によって進学断念が起こっているということをやはり共通課題として、しっかりと取り組んでいかなければならないと思っております。
 そこで一つ、項目だけちょっと話しておきますが、日本学生支援機構、これに関しては障がい学生支援が有名ですが、もう一つ奨学金制度、奨学金制度のほうに障がい学生に対する返還の免除等の制度があるんですが、それが非常に使いづらい。その結果、卒業後、就職が困難になると、障害基礎年金というのがあるんですけれども、障害基礎年金から奨学金を返還するというような事態も起きております。そのほかは事務的な話かもしれませんが、内閣府が発表する毎年の障害者施策関連予算というのがあります。障害者施策関連予算は内閣府が各省庁から取りまとめて発表しているわけですが、その取りまとめて発表している中に、実は高等教育関係の予算は全く含まれておりません。そうすると、障がい者施策、国の障がい者施策の中に障がい学生支援というものがはっきり盛り込まれていないということになってしまうわけですね。ここもやはりきちんと整合性をもって今後は出していただければと思います。
 また、このたび、介護サービスの基盤強化のための介護保険法等が改正されまして、喀痰吸引等ができるようになったわけですが、先般4月27日に介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律の施行に伴う介護職員等の実施する喀痰吸引等の取扱いについてという事務連絡が出まして、大学等においてもこれができるようになっております。やはりこういった支援に関しても、合理的配慮を一つとして、きちっと位置づけていくというがあるかと思います。
 ちょっと順番が前後してしまったんですが、障がい学生の支援に関しては、日本学生支援機構の調査が出ていましたが、高等教育局大学入試室でも、障がい者の入学状況の調査が、私が知っている限りで平成5年ぐらいからずっと行われております。これは原則非公開というふうに聞いていますが、本検討会に関したものですし、資料として議事、出していただいて、きちんとした、これは支援機構よりも古くからあるものですから、資料も整えていますので、刺激を受ける上でも、しっかりとご提供いただければと。その抜粋に関しては、当然白書のほうにも出ておりますが、ぜひ全般の公開をしていただき、議論を整えていけばと思っています。

【竹田座長】  ありがとうございました。それでは引き続きまして、中野委員、よろしくお願いします。

【中野委員】  慶應大学の中野です。ちょっと風邪を引いていて声が通りにくくて申しわけありません。
 私は私学の立場から出させていただいております。それからうちの慶應大学には、教育の専門の課程も、それから福祉の専門の課程もありません。そういう大学から見ると、先ほど来出ている大学間の格差ということを考えるときに、この私学の問題というのをしっかりと考えていただく必要があるなというふうに思っております。
 私学の場合には、今私学助成金が使える形になっているんですが、これは目的が明確にされているわけではなく、交付される形になりますので、障がいのある学生が入ってきたときに、幾ら幾らのお金がその学生のために使えるというふうに大学内で整理できないという問題がありまして、そうなると、例えば障がいのある学生が入ってきたときに、これこれの私学助成金が使えるはずだというような議論がなかなか学内が起こりにくいという問題があります。このあたりは、制度の改革をちょっとしていただければ、目的を明確にして障がい学生に少なくともある程度使えるようにということが明確になるといいなと思っています。
 一方、私学のそれぞれのやっぱり自主性というのも大切ですので、障がいのある学生には例えば1人につき100万円までですとやられると、大学のほうからお金を出さないという問題になってしまうのも問題で、今、うちの大学では大学のほうからもほかの学生たちにも納得していただく形で、大学独自の支援というのをやっているんですが、そういったそれぞれの独自性というのを守りながらも、最低限の支援ができるような体制というのをとっていただけるとうれしいなと思っています。これは具体的に今後議論ができるとすごくうれしいと思っています。
 それから、地域格差の問題というのが非常に感じているところです。私はずっと国立特別支援教育総合研究所というところで、義務教育段階の子どもたちの支援というのを長年やってきました。いろいろな地域からお話をいただいているんですけれども、地域によっては公共交通を使って大学に通うことが非常に難しいという地域があります。先ほど殿岡委員からもお話があったように、現行法では自立支援法を使って、例えば視覚障がいの学生が大学に通うというときに、同行援護という新しい制度がスタートしたんですけれども、これは定期的に使うという話になると使えないという問題があります。首都圏だとそれほど問題にならないんですが、地方都市の場合というのはこういった問題がありますので、ぜひ地方格差の問題というのもこの委員会の中で議論していただけるとうれしいなというふうに思います。
 それから大学に入った後、すごく困るのは、今、いろいろな公共の建物が国土交通省のいろいろな取り組みによってバリアフリー化されているんですが、現在、大学に関してはその適用の範囲外になっています。私、福祉のまちづくりというのをちょっと学会でやらせていただいているんですが、その中でいつも議論になるのは、大学がその公共の建物に指定されていないので、大学内でいろいろなものをつくるときに、障がい者のためのさまざまな配慮というのが適用されないということになって、後づけで障がいのある学生のためのいろいろな設備というのを整えないといけないというような話になってしまいます。これは省庁を超えた話なので、簡単ではないかと思いますけれども、例えばバリアフリー新法の適用範囲の中に大学というのを入れていただけるような検討がなされれば、エレベーターの整備だとか、それから最低限のところまで点字ブロックがちゃんと誘導されているだとか、そういうようなものが整うだけで随分障がい学生が大学で学びやすくなるのではないかというふうに思っています。
 それからあと2点あるんですが、うちの大学は通信教育もやっております。通信教育で障がいのある学生が受けるケースというのが非常に多くて、普段はそんなに問題にならないですが、スクーリングのときに大きな問題が出てきます。通信の場合には通学生と比べると学費も安くなっているので、余り強いことを障がい学生が言えないという問題がありまして、もし可能であれば、この議論の中で、通信教育についても少なくともここまでは合理的な配慮をしましょうというような議論ができるとありがたいと思います。
 最後なんですが、ずっと特別支援教育にかかわってきましたので、今、日本の特別支援教育というのは非常にすばらしい制度を持っていて、そこが持っている専門性というのを先ほど巖淵委員が言われたような、例えばDO-ITで行われているようなことが各地域の支援学校で展開できるような形になり、それこそそれぞれの特別支援学校が地域のハブとして高等教育を支えるというような、そういった支援の仕組みというのができ上がっていくといいなというふうに思っていまして、こういった点についても今後議論していただけるとありがたいと思います。
 以上です。

【竹田座長】  ありがとうございました。それでは、広瀬委員、よろしくお願いいたします。

【広瀬委員】  放送大学の広瀬です。よろしくお願いします。私は過去10年、20年、放送大学、またあるいはメディア教育開発センターという立場から、世界の高等教育の障がい者支援について研究してまいりました。はっきり言って、アメリカからは20年から30年遅れている。ヨーロッパからも10年、20年遅れているというふうに私は思っております。毎年アメリカのAHEADというコーディネーターたち、あるいはその大学における障がい者支援の関連の大会が行われて、数回私も参加しておりますけれども、全米から500名から1,000名ぐらいの方たちが一堂に会して、要するに先ほど白澤委員から出たように、現在の日本ではコーディネーターとはいっても、非常勤の職員で時給800円、1,000円で行われている。それがきちんと家族を養えて、そしてほとんどの方たちが専門職として大学院を卒業なさったり、看護師の資格を持ったり、カウンセラーの資格を持っている方たちがしっかりと福祉を守っている。そういったことを考えると、日本は本当に遅れているというふうに思います。それはアメリカでは人権問題から発して、大学でリーズナブルなコーデーションが行われなければ、訴訟に持っていかれます。訴訟に持っていって負けたら、連邦政府からの助成金が大学に対してカットされる。これはもう障がい者支援が善意に基づくとか、その一部のかわいそうな人たちのためではなくて、大学本体の運営にかかわる中心的なことです。ですから大学には障がい者支援局、あるいはコーディネーターたちもおりますけれども、ADAがきちんと行われているかを監視する、ADAの監視委員というのがいるんです。それは学内を絶えず監視して、あらゆるところで障がい者の差別がないかということをチェックしなければ、大学の運営そのものがやっていけない。だから非常に文化的に日本と違いますけれども、そういった大学の状況の中で、日本はかなりこの点で取り残されているというふうに思っていいと思います。
 私は、放送大学で仕事をしておりますけれども、放送大学には現在、8万6,000人ぐらいの学生がいます。そのうち、障がい者であると自分で申告した人が610人、大体0.71%です。全国の平均を見てみますと、0.27%、そうやって考えると、かなり放送大学には自己申告を入れなければ1万人ぐらいの障がい者、もっといるかもしれません。その方たちが学んでいるというふうに思います。放送大学は無試験で、しかも自宅を中心に勉強ができます。また大島委員からお話があったように、ITを使って今はテレビ、ラジオ、インターネット、それを駆使して授業を配信しています。聴覚障がい者で言えば、授業の約30%に字幕がついています。字幕化はお金がかかりますので、学内でもなかなかこれを推進していくのは大変な、予算の獲得で大変な思いをしていますけれども、すばらしい授業に字幕がついています。これはとても大きいことです。
 それから視覚障がい者のためには、教科書をテキストデータで配布し、それを点字化するサービス、それにつなげるようなことも行っております。今、インターネットサイトの情報も視覚障がい者の方たちには読みやすい形で読めるようなものもつくっております。こうやって考えてまいりますと、610人、あるいは1,000人の障がい者に対して、放送大学が行っているサービスは、実は全国の大学に大きく関連しています。なぜかというと、全国で放送大学の単位互換校というのは、私立、公立、国立合わせて370校あります。これは短大、高専、大学院も含めてですけれども、この数はもっと伸びていくと思います。とすると、例えば1、2年の教養課程で、英語を教えるとします。視覚障がい者、聴覚障がい者、あるいはなかなか大学に行かれない方たちに英語を教えるのは大変なことです。そうすると大概レポートでいいよと、聞けなかったら適当に何とかお茶をにごしてやるという授業が今は行われているけれども、そういったものを放送大学の授業で聞き、何度でも、字幕つき、あるいはテキストデータでパソコンから音声が出てくる。そういった形で勉強することによって、各大学の予算が削られる。そこのところは、例えば放送大学のようなところでやって、そしてその余った予算を本当に必要な、例えば専門課程でのディスカッションに手話通訳を入れるとか、いろいろなサービスができると思うんですね。だからどうぞ放送大学をもっと利用できるのではないかというふうに思いますが、私、放送大学の代表として来たわけではないので、放送大学でこういった予算を取ることもなかなか今の実状として戦っているという状況ですけれども、こういった大島委員からもあったように、IT、インターネット、双方向で勉強ができるのは、例えばイギリスのOU、オープンユニバーシティですね。あれは通信制あるいは遠隔教育の世界の最大の大学ですけれども、あちらにおける障がい者支援というのは、もう設立当初から始まっております。病院でも受けられる。さまざまなサービスが最初からあるんですね。ところが放送大学では、実際には一生懸命やっているんですけれども、昨年、初めて障がい者支援のグループということで、支援グループが立ち上がりましたけれども、学生課にたった一人、しかも3年で交代する要員の方が、たった一人の担当です。ですから、いかに予算をそこに向けるのが難しいか。そしてその人も、実際には専門的な経験のある人ではありません。ですから、私どもがそばにいて、いろいろな形でアドバイスをしたりしながら、今進めているような段階です。
 それからもう一つ言えるのは、発達障がい、精神障がい、発達障がいの方たちの二次障がいとして、精神的な問題を持つことがとても多い。その場合に、リハビリとしても、あるいは何らかの形での社会のつながりとしても、放送大学に入ってこられる方はたくさんいらっしゃるんです。アスペルガーなどにつきましては、中学、高校ではサポートする体制が結構できている。サポート校ができている。大人のアスペルガー、大人の発達障がいの人たちは、どこにも行き場所がないんです。そのときに、放送大学は一つの拠点になる可能性もある。しかしこんなことを学内で申しましたらば、もうそれはまたいろいろ手がかかることもございますので、そんな簡単に進めるのはなかなか予算や人的なことを考えると難しいかもしれませんけれども、放送大学の学習センター、全国の各都道府県にございますので、そういうところをいろいろな形で省庁を超えて支援していただければ、本当に日本のその大人の障がい者、生きづらさを抱えていらっしゃる方たちにとって、大きな意味があるのではないかというふうに思っております。
 まだまだこれからいかにアクセシブルな大学にしていくかということもありますので、今回、皆様と連携して、ぜひ前に進んでいきたいというふうに思っております。ありがとうございました。

【竹田座長】  ありがとうございました。それでは福永委員、よろしくお願いいたします。

【福永委員】  長崎大学の福永と申します。私は工学部に所属しておりまして、特に専門に研究しているわけではございませんが、大学入試センターのほうで、大学入試センター試験の実施にかかわる小委員会に数年間かかわってまいりました。きょう既に何点かご提言いただいておりますが、特に大学入試センター試験は、ある程度スタンダードとして、他の大学の試験にも影響を及ぼすということでございますので、責任重大かなと思っておりました。私も決して大学入試センターを代表しているわけでもありませんし、委員会を代表しているわけでもございませんが、私個人としてはこの入試と大学内の教育というのは、恐らく車の両輪であろうと。どちらが先に進んでもうまくいかなくて、同時に進んでいかないといけないだろうというふうに思っています。
 入試という、特に競争制度の中でのシステムでございますので、高橋委員から先ほどお話しありましたように、合理的な配慮の範囲というのを、皆さんがやはり納得できる範囲できちっと決めていかないといけないという点が入試に関して一つ大きい点であろうというふうに思います。
 それともう一つは、実際にそういう配慮を入試というシステムの中にどう組み込んでいくかということが重要かと思っております。例えば大学入試センターはある程度予算というのを持っていないと言われるかもしれませんが、スタッフを抱えていろいろなシステムをやっておりますが、それから国立大学におりていったときに、果たしてその同じことができるかということ、例えば、点字で問題出しますよといっても、ではだれが点字をつくるか。私びっくりしたんですけれども、例えば地図をどうやってつくるかとか、そういうような問題もございます。ですから、そういう実際にやるときのサポートというのもあわせてやらないと、かけ声だけではなかなか進まないというようなことを考えております。
 皆さん方と有意義なご議論ができればと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【竹田座長】  ありがとうございました。それでは、引き続きまして、松尾委員、よろしくお願いいたします。

【松尾委員】  佐世保高専の松尾と申します。私は先生方と違って高専という、年齢層が中学校卒業から5年間、専攻科を入れると7年間、大卒の年齢を預かっている教育機関ですので、センター試験とかとはちょっと違うところがあります。平成19年度に文科省の学生支援GPという事業で、発達障がいの事業に取り組ませていただきました。きっかけとしてはやっぱり潜在的に理工系の学校で自閉症スペクトラムを含んだ発達障がいの学生が多いのではないかと。今までは途中でドロップアウトしたりということで、なかなかわからなかった学生の中にも、やっぱり発達障がいの学生がいたのではないかということで取り組ませていただきました。多分、全国の高専共通の問題として、現在やっぱり発達障がいの問題にどう取り組むかということが大きなテーマになっているかと思います。
 先生方からありますように、発達障がいというのは非常に見えづらいので、やっぱり対応は難しいので、うちの学生にもいますけれども、自閉症のレベルからしたら非常に高い方ですけれども、成績は非常に優秀という場合があったりして、成績的に問題がなければ問題ないという場合もありますが、よく出てくるのは就職の場面でやっぱりつまずくということがあります。また問題点としては、やっぱり教員側の教育感、障がい感、負担感というのが違いますので、合理的配慮といってもやっぱり排除の発想がどうしてもありまして、どうしてこういう学生を対応しないといけないのかというのはやっぱりあります。そういう面で、こういう文科省とかの委員会で真剣に議論された結果というのが高専の現場に伝わると、教職員の意識も変わってくれるのかなという、そういう期待があります。
 あと、いろいろな高専でお話をさせてもらうとき、うちの学校でもそうですけれども、どこまで配慮するのか。特に成績の面が問題となります。工学系の学校ですので、大体共通で問題になるのは実験のレポートが書けない。それによって成績が問題となる。進級の問題になると。そういう場合に、どこまで配慮したらいいのかという、そういう問題があります。その成績の問題のときに常に高専間で言われるのは、JABEEの認定制度に高専は通っておりますので、ある一定の能力を持ったエンジニアを育てるという使命とその配慮の問題、あと成績の問題で、そういう面がありますので、委員会で指針が出れば、そういう話としては進めやすいというふうに思っております。
 以上です。よろしくお願いいたします。

【竹田座長】  ありがとうございました。
 それでは、吉永委員、よろしくお願いします。

【吉永委員】  富山大学の吉永です。どうぞよろしくお願いいたします。
 私は富山大学において、障がいのある学生の支援を行っております。特に発達障がいの学生の支援には、重点的に取り組んできたという経緯がございます。その観点から少しお話しできればと思っております。
 これまで先生方がお話しされたことと少し重なるかもしれませんが、特に発達障がいという観点から考えますに、そもそもだれが障がい学生として大学が認めて支援をしていくかという問題があると思っております。日本学生支援機構の調査でも、診断のある発達障がいの方が、1,253名だったということに対して、診断がないのだけれども、大学のほうで発達障がいであろうと見立てて、支援をしている方は2,310名います。この2,310名の方々に対して、どのような支援を行っていくのかということについては、基本的にはそれぞれの大学に任せられている状況でもございますので、支援対象の範囲をどのように定めるのかという問題は出てくると思っています。富山大学ではこの問題を解決するために、発達障がいをもう少し拡張する形で、高機能発達不均等という概念を提唱させていただいて、発達障がいの診断はもしかしたらつかないかもしれないけれども、同じような支援の仕方でうまく修学ができる学生を支援している実績がございます。一方で高橋委員のほうからご指摘のあった合理的配慮のスタンダードということも考えて、どのように進めていくのかということが、現実的な課題と思っています。
 支援を担う人員の確保ということは非常に大きな問題だと思っておりまして、そういった意味では、白澤委員のご指摘のあったことというのは非常に大きな問題だろうと思います。年収130万円以下の方々が実際に強いモチベーションを持って支援してくださっているということはあると思うのですが、一方で、合理的配慮をつくっていくということに関して言えば、圧倒的なパワー不足を感じられるのではないかなと思います。仕事内容に見合わない給料の低さの問題もあるのですが、それと同じぐらいその方の大学内で持っているポジションや発言力の大きさに対して、非常に大きな問題があるのではないかなと思っております。合理的配慮でしたら個別に積み上げていく際に、具体的に授業を行う教員との話し合いをしていくわけなのですが、対等な立場でもってしっかりとその学生の困難さに基づくニーズを伝えていったり、教員がその学生の支援をしたいときに支援をするためのニーズもあるのですね。それにどのように応えていくのかということに対する一定の見識と、それを実際に実現可能にしていくためのパワーが必要で、それらをどのようにその方々に身につけていただくかという問題はすごく大きな問題だろうなと思っております。
 そういった中で、一生懸命支援されている方というのは、例えば任期が1年限りしかないということの問題や、場合によっては雇い止めの問題で強制的に辞めざるを得ないというような状況にさらされているわけですよね。そのような形で、大学から見た場合はそういった方々、非常に力のある方々で、なおかつ一生懸命やってくださる方を、どのように安定的に雇用していくかという問題は、避けて通れない問題だろうなというふうに思っております。
 単純に私は人員の確保の問題だけを取り上げたいというわけではありませんで、これは実はハード面の負担とソフト面の負担、バランスという観点から考えるべきだろうと思います。例えば、大学の施設を丸ごとバリアフリー化してしまうと、そうすると支援員が必要ないのではないかという話は非常に極端な話ですし、では人をたくさん増やせば今の既存の建物のままでいいのではないかというのも非常に極端な話ですよね。むしろ適切なハード面での改修ないしは整備と、それから適切な人員の確保によってトータルとして支援にかかるコストを下げる努力はできると思いますし、それがまさしく大学の運営側の最も大きな関心事だと思うのです。これはちょっと私の立場を逸脱してしまっていて申しわけないのですが、やはり大学からしてみると、実際に障がいのある学生を受け入れた場合に、どれぐらいのコストがかかるんだろうかということについては、皆目見当がつかないわけですね。それが何百万円の話なのか、何億の話なのか。それは当然、学生の個々の状態で違いますが、では例えば何億円とお金がかかってきた場合に、ではそのお金を年々削られつつある運営交付金の中から捻出するべきなのだろうか、他を削ってそれに充てなければいけないのか。そうすると、まさに合理的配慮の問題に立ち入ってくるわけですね。大学側の運営をする面において、過剰な負担を強いないということに対して、それをどのように保障をしていくのかという問題は出てくるだろうなというふうに思っています。
 また、中野委員がご指摘くださったとおり、後づけでやっていかなければいけないのは、国立大学も全く一緒です。今までは障がいのある学生に対して、人数によって一定の修学支援に関する補助金が出ていたと思うのですが、今はその制度はないという理解でいます。それは正しいでしょうか。関連予算について資料6に書いていただいているとおり、学生支援に関する特別経費がついています。大学側は障がいのある学生だけを支援しているわけではありませんし、ほかにも特別なニーズのある学生はたくさんいますので、この特別経費は一定の意義があると思います。一方で障がい学生支援という観点から立った場合は、一括で交付された金額をどのように振り分けていけばいいのかということについての、指針がないということで、実際の運営はすごく難しくなっているだろうと思います。
 大学としては限られた予算がある。また、大学がどの程度国に支援を要請していけるのかわからないというようなところで、なおかつ、障がいのある学生が入ってきたら、後づけで施設を改修していかなければいけない、人員を確保していかなければいけないという、そういうジレンマを解消していただけるような仕組みということはやはり考えていただく必要があるのかなと思っております。
 すみません、もう一点だけ話しをさせてください。特に発達障がいの学生に関して思いますのは、大学だけではなくて、その方々は生まれてから、小中高と来て大学、それから社会に出ていかれるわけですね。そのような一貫した支援というのを考えていった場合、やっぱり大学にとっては入り口と出口に当たる部分との整合性というのをしっかりと議論していかなければいけないと思っています。例えば、小中高の中等教育において、特別支援教育は非常に充実してきています。特に発達障がいの方に関しては、そういった診断がなくても周りの先生方の気づきによって、同等の支援が与えられるような体制が整ってきていると認識しています。そういった整備がされていきながら、実際大学に来た瞬間、診断書がないと支援ができませんという話であれば全く整合性がとれなくなってくるわけですよね。一方で、大学を出ました、大学までは個々の事情に応じて、診断書を求めることもなく支援してきたのに、会社に入って就職するということになった場合、障害者手帳を取得してください、という話をされてしまう。そういった状況では非常に混乱されると思いますし、実態としては障がい者雇用の仕事の内容も含めると、その方々が高等教育を受けた意味ということ自体が、問われかねないということになるかと思います。
 私は、もしかしたら理想論かもしれませんが、障がいのある方がある特定の分野について、勉強されて、知見を深められて、技術を高められて、そういったものに応じた就職をしていく。それによって社会貢献をしていくということが必要だというふうに思いますので、そのようなあり方をうまく後押しできるような教育を行い、また就職をしてその会社のほうにつなげていくような、出口での移行支援の問題も含めてご検討いただければと思っております。長くなりました。申しわけございません。

【竹田座長】  ありがとうございました。それでは、最後になりましたけれども、渡辺委員、よろしくお願いいたします。

【渡辺委員】  日本福祉大学の渡辺と申します。僕は7年前に福祉大学にかわり、その以前はリハビリテーションセンターで福祉用具の開発とか、適合相談をずっとしてきました。大学内では今障がい学生支援センターの運営委員をやっておりますので、そういったところで2つ程お話をさせていただきたいと思います。
 一つは、やっぱり教育というのは連続性がすごく大事だと思うので、大学での合理的配慮といったときに、今吉永委員さんが言われたように、入り口、出口がすごく大事だと思っています。例えば入学前の問題はすごく大きくて、近藤委員が言われたように、高校の先生が入試時の配慮について知らないというのと、バリアフリーが整っているからこの大学を受験したいですという学生が多い。
 やはり学びたい学問であったり、大学であったり、どこで何を勉強するかということが重要なことで、バリアフリーが整っているということはすごく大事なことなんですけれども、環境があれば合理的配慮だったり、学びたい勉強ができるかということとはまた別の問題なので、高校の段階から合理的配慮をどうするかということを考えることが重要であると思うので、そういった進学相談センター的なものとかが、高校生であったり高校の先生が地域で相談に乗れるところをつくればいいのかなと思います。これは一大学でやるというよりも、地域で支えていくというような考え方でできればいいかなと思っています。
 それからもう一つは、学内に入ってからの障がい学生の支援というところで、福祉大学でも大学内の資源で全部支えていくというのはもう限界が来ていて、自立支援法とか、地域の専門性とか、地域の社会資源をうまく使うということを、大学の中でもどんどん入れていくということが大事だということ、ひいてはそういったサービス利用の経験が障がい学生が社会に出たときに生きる力であったり、社会に対しての合理的配慮という力になっていくので、それは4年間の中でそれも教育活動の一つだと思っています。これは厚労省ももちろん絡んでくることだと思うんですけれども、学内でも使っていいよという制度上の配慮だけで、今いる学生で力が増していくだろうなと思っています。
 それともう一つ、学内で個別ケースに当たるというのはものすごく大変で、教学部門だけではなくて、就職課と入試課なども含めて、全部同じ方向を向かないと絶対できない支援がたくさんあるので、そういったところをうまくつないでいく横断的なセンターを置きなさいというのはやはりここで決めていったほうがいいと思います。どういうメンバーで構成し、どういう立場に立って発言し、どう支えるかというような、そのセンターをつくるための設置ガイドライン的なもを、この中で議論できればいいかなと思っています。
 以上です。また議論の中でいろいろお話をしていきたいと思っています。

【竹田座長】  ありがとうございました。各委員から非常に重要な今後の議論における論点を出していただけたと思います。
 殿岡委員から出されました合理的配慮の定義、これは非常に前提としては大事かというふうに思いますし、高橋委員から言われましたような、そのエビデンスの問題、あるいはミニマムリクワイアメントの問題、これはほかの委員からもありましたようなガイドラインのようなものをどういうふうに考えていくか、それから大島委員や白澤委員からありました組織の問題ですね。支援組織をどういうふうに位置づけていくのか、あるいはその支援にかかわる専門職員をどういうふうに、身分保障も含めて、位置づけていくのかというようなことも非常に大事な議論の論点ではないかというふうに思います。
 また、中野委員からは私学助成金との関係を含め、バリアフリーとしてのハード面でのあり方をほかの関係法令との関係も含めて議論していくことが提案されていますし、広瀬委員から諸外国との関係、諸外国からは遅れているということ、あるいは放送大学でのご経験から、大学、社会でのリソースの有効活用というのがご提案だったというふうに思います。
 また、ほかの吉永委員、高橋委員からもありました、発達障がいとの関係で松尾委員のほうから、理工系の高等教育機関の発達障がいの学生の問題、どういうふうな修学の配慮をどういうふうにしたらいいか、成績あるいはJABEEとの関係などのご提案もございました。それから最後の渡辺委員のほうからは、高等学校からの連携といった、非常に重要な論点がここで出そろったかというふうに思います。
 時間の関係もありますので、きょうはこういう論点を出していただいたということが非常に大きな成果ではないかというふうに思いますが、今後、各委員のほうで追加のいろいろな論点等がございましたら、事務局のほうに次回の検討会までに提言をいただければというふうに思います。先生方、本当にいろいろなご意見ありがとうございました。
 それでは、ここできょうの取りまとめを踏まえまして、板東局長のほうから一言お願いします。

【板東高等教育局長】  今日は第1回目から大変活発なご議論、ご意見をいただきましてありがとうございました。先ほどからもいろいろご指摘ありましたように、やはり我が国の高等教育機関におけるこの障がいある学生の支援というのは、まだまだと。先ほど二、三十年ぐらい遅れているというお話がございましたけれども、本日をスタートとして、急いでスピードを上げていきたいというふうに思っているところでございます。
 ちょっと個人的に、私自身も大学の学生ではないんですけれども、ちょっと視覚障がい者の方のスポーツのボランティアをずっとやっていたということがございまして、いろいろな先ほどから出ているICTを活用したり、いろいろなことにより情報のやりとりなんかも相当円滑にできるようになっていたり、あるいはちょっとしたいろいろなボランティアの人たちの助けによって、いろいろな可能性が開かれてくるんだということを、本当に身を持って感じておりますので、やはり日本社会全体がそういう学ぶ学生を支えていくということで、先ほどからお話が出ておりました大学の中だけの力というのではなく、もう少し幅広い、いろいろな連携なり、地域の方々なり、そういうところも含めて大学の学生がまさに力をつけて、社会に出て活躍できるような、そこのところの支援の場なりネットワークというものを、大きな視点から考えていくことができたらというのは、改めてお話を伺わせていただきながら感じさせていただきました。
 それからきょう、関係省庁からも来ていただいておりますので、文部科学省の中、やっぱり教育機関の中だけではない連携、先ほどからいろいろなお話が出ておりますけれども、それも強化をしていきたいというふうに思っておりますので、またいろいろなご指摘をいただければありがたいと思っております。
 本日はどうもありがとうございました。これからもよろしくお願い申し上げます。

【竹田座長】  ありがとうございました。 どうぞ、殿岡委員。

【殿岡委員】  1点だけ、6月8日、今度の金曜日に開かれる中教審の特別支援教育の在り方に関する特別委員会で報告がまとまる予定になっています。その中で教職員の障がいのある者の人事配置という項目が出ておりまして、その中にも高等教育の教員養成課程における障がいのある学生の環境整備が行われることが望まれるということが、最終案でも取りまとめられております。他方、きょう山田課長、ご出席ですが、3月30日に都道府県の教育委員会における障がい者雇用が進んでいないということで、17都道県が勧告を出されています。都道府県によっては法定雇用率を達成していないということで5回目の勧告を受けたところもあります。教育行政での裁量と、高等教育での教員養成課程で、障がいのある学生を採用することについて、山田課長よりコメントをいただければと思います。

【厚生労働省】  先ほど法定雇用率、5月23日に民間企業については1.8%から2.0%に引き上げるということでお話ししましたが、同じくそのタイミングで公的部門については、これまでの2.1%から2.3%、都道府県教育委員会については2.0%から2.2%引き上げるということになります。今特に民間企業の障がい者雇用の拡大のピッチが激しくなっているということもあって、都道府県教育委員会のほうが民間企業よりは実雇用率は高いですけれども、法定雇用率は満たしていないことは問題であるということはよく指摘がされているところです。実際、我々としては今、特別支援学校はその学生の就職に数年前から非常に熱心に取り組んでいただいているという状況がある中で、その県の教育委員会、小中学校の先生の多くはそこにカウントされますけれども、そこでもやはり直接雇用するということを積極的に進めていただきたいと思っておりますので、そこはまさしく殿岡委員の言われるとおり、生徒を企業に何とか送り込むということを頑張る以上、当の教育委員会、学校のほうも、障がい者雇用に熱心にやっていただきたいという思いは強くありますので、そこは引き続き教育委員会に対して指導をしていきたいと思っています。

【竹田座長】  ありがとうございました。
 そのほかの委員の先生方もご意見等ございましたら、事務局のほうまでメール等でお寄せいただければと思います。
 それでは、最後に今後の検討スケジュールについて、事務局のほうからご説明お願いいたします。

【松尾課長】  資料8を御覧いただければと思います。きょうは本当に各委員、本当にありがとうございました。この説明の前にちょっと一点だけ、殿岡委員からございました奨学金の件でありますとか、そこら辺は私のところで担当していますので、ちょっと確認をさせていただきます。また、データにつきましてもちょっと他課でございますが、ちょっと確認をさせていただきたいと思います。また、吉永委員からありました大学の予算の関係でございますけれども、出し方に変更はあるものの、障がいのある学生を基礎としたお金というのは運営費交付金の中に入ってございますので、ご留意いただければと思います。
 それでは、資料8でございますけれども、本日第1回目を開かせていただきました。また、次回以降、6月下旬、それから7月等々開かせていただきたいと思っております。次回につきましては、今回いただきました意見をまた整理をいたしまして、論点まとめてお出しをしたいと思っていますし、また何人かの委員の方は海外のほうでご視察をされるということもございますので、その状況をご報告いただくというようなことを今検討しております。また、3回目以降は関係している方々からのヒアリングを含めまして、最終的に報告書をまとめるということにしたいと思っていますが、報告書につきましては、余り大部なものというよりは、実際、理念は必要ではございますけれども、実際に行動で移せるような形、皆様方が現場で、そしてまた障がいのある方々が本当にわかる、本当にアクションが起こせるような形でのものにまとめたいと思っておりますので、よろしくお願いをしたいと思います。次回以降また日程等、委員の皆様にご照会をさせていただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 以上でございます。

【竹田座長】  ありがとうございました。
 非常にタイトなスケジュールだと思いますが、重要な検討内容ですので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、以上で障がいのある学生の修学支援に関する検討会の第1回を終了いたします。
 どうもありがとうございました。

 

お問合せ先

高等教育局学生・留学生課

-- 登録:平成24年08月 --