大学、短期大学及び高等専門学校卒業予定者の就職・採用活動について(通知)

平成24年11月2日

 この度、11月1日付けで、大学側と企業側が平成25年度以降卒業・修了予定者の就職・採用活動について合意したことを踏まえ、文部科学省としても、学生の就職・採用活動が公平・公正かつ秩序ある形で行われるよう、その趣旨を周知徹底するため、各大学等に対して、通知しましたので、お知らせいたします。

(申合せについて)

1.これまでの経緯

 学生の就職・採用活動においては、学生の就職機会均等の確保や学校教育を尊重した秩序ある形で行うという観点から、「就職協定」が廃止された平成9年度以降は、大学側(就職問題懇談会)が「大学、短期大学及び高等専門学校卒業・修了予定者に係る就職について(申合せ)」(以下「申合せ」という。)を、企業側(一般社団法人日本経済団体連合会)が「採用選考に関する企業の倫理憲章」(以下「倫理憲章」という。)をそれぞれ定め、相互に尊重して行うという方式が採られています。

2.検討経過

 学生の就職・採用活動については、先に企業側において、2014(平成26)年度入社対象の「倫理憲章」について、現行の「倫理憲章」の見直しを行わないことを表明したところですが、この度、大学側において平成24年10月22日に「申合せ」を定めるとともに、大学側・企業側の双方がそれぞれ尊重に努めることが11月1日付けで合意され、公表されることとなりました。
 文部科学省としても、両者の今回の合意を尊重し、学生の就職・採用活動が公平・公正かつ秩序ある形で行われるよう、その趣旨を周知徹底するため、別紙のとおり各大学等に対し、通知しました。

(要請について)

 一方、各経済団体・企業団体の採用活動のあり方については、いまだ、大学等の学事日程や学生の就職活動における問題点などに対し十分な配慮がなされていないところがあり、協議すべき課題が多く残されていること等、大学等関係団体の就職・採用活動に関する総意を「要請書」としてとりまとめ、同日付けで、大学側(就職問題懇談会)が企業関係者及び経済・業界団体代表者側に対し、特に理解を求める事柄について要請を行うこととなりました。

 

大学、短期大学及び高等専門学校卒業予定者の就職・採用活動について(通知)

24文科高第 649号
平成24年11月1日

各国公私立大学長 殿
各国公私立短期大学長 殿
各国公私立高等専門学校長 殿

文部科学大臣政務官 村井 宗明
(印影印刷)

 標記のことについて、大学側において「大学、短期大学及び高等専門学校卒業・修了予定者に係る就職について(申合せ)」(別紙1。以下「申合せ」という。)が定められました。一方、企業側において「採用選考に関する企業の倫理憲章」(別紙2。以下「倫理憲章」という。)が定められており、これらについて、双方がそれぞれ尊重に努めることが就職採用情報交換連絡会議において確認されました。(別紙3)
 また、大学側から企業側に対し、採用活動に当たって、特に理解を求める事柄について「大学、短期大学及び高等専門学校卒業・修了予定者に係る就職に関する要請」(別紙4。以下「要請」という。)を行うこととされました。
 ついては、これらの趣旨及び平成24年6月にまとめられた「若者雇用戦略」や「グローバル人材育成戦略」を踏まえ、大学等の卒業・修了予定者の就職・採用活動の秩序の確立、正常な学校教育と学生の学修環境の確保及び学生の就職機会の均等を期するとともに、就職・採用活動が早期化することなく、学生が自己の能力、適性に応じて適切に職業を選択できるよう、下記の事項に御留意の上、学生に対する就職指導の一層の充実、強化をお願いします。

  1. 大学側の「申合せ」及び企業側の「倫理憲章」等の趣旨や内容について、教職員はもとより学生(大学院生も含む。以下同様。)に対しても、研修やガイダンスの場など様々な機会や方法を通じて、周知徹底するとともに、その趣旨を踏まえ、企業へ必要な働きかけを行う等十全の措置をとること。
  2. 大学側の「申合せ」及び「要請」において、本人の資質、能力に関係のない形式的理由による差別を受けることのないよう、学生の応募書類については、大学等指定書類とするよう企業側に要請することとされているが、大学等指定書類のうち、履歴書及び自己紹介書については、正課外の多様な活動状況などを記載する欄を設けるなど、必要に応じ工夫を行うこと。
  3. 企業規模志向や職業志向のミスマッチの解消を含めた職業観・勤労観を醸成するため、インターンシップを積極的に実施するなど、学生の社会的・職業的自立に向けて、入学から卒業までの間を通じた全学的かつ体系的な指導等を実施すること。
  4. 採用内定については、企業等の意思表示が文書によらない等不明確な場合には、採用内定をめぐるトラブルが生じる恐れがあるので、適切な指導等を行うよう努めること。
  5. 在学生や卒業・修了の際、未就職や非正規雇用となった既卒者等に対し、可能な限り、就職情報の提供や就職相談等の支援を行うよう努めること。

  (具体的内容)  

  • 職業安定法第33条の2の規定に基づき、大学等における就職業務担当者の明確化を図るなど、職業紹介体制を整備すること。また、きめ細やかな学生への就職支援に取り組めるよう、教員を含め全学的な就職指導体制の整備に努めること。
  • 学校の相談・支援機能を強化するため、大学内への就職相談員の継続的な配置に努めること。
  • 必要に応じて、ハローワークやジョブカフェなどの外部関係機関との連携を図ること。また、外国人留学生への就職指導に当たっては、外国人雇用サービスセンターとの連携も図ること。
  • 在学生や進路未決定の卒業者等に対する就職支援として、地域若者サポートステーション(ニート等の若者を対象に、地域の若者支援機関等と連携して、職業的自立支援を行う拠点施設)との連携を図ること。
  • 学生・企業双方にとって効率的で納得性の高いマッチングの仕組みを構築するため、学部・分野別の就職実績等の積極的な公開に取り組むこと。
  • 留学して帰国した学生が困らないよう日本への帰国後の就職関連情報について、効果的な情報提供を行うこと。
  • 就職活動に対する学生の保護者の理解も重要であることから、保護者向けの就職活動に関する説明会やセミナー等の取組を実施するよう努めること。

 

別紙1 大学、短期大学及び高等専門学校卒業・修了予定者に係る就職について(申合せ)

平成24年10月22日
就職問題懇談会

 大学、短期大学及び高等専門学校(以下「大学等」という。)は、学生に高い学力と豊かな人間性を身につけさせた上で卒業生・修了生として、グローバル化をはじめ複雑多様化した社会に送り出すという、本来果たすべき社会的使命と責任を十分に認識し、その責務を果たすため、就職活動の秩序を維持するとともに、正常な学校教育と学生の学修環境を確保することが重要である。
 この度、国公私立大学等で構成する就職問題懇談会は、こうした大学等の社会的責任を全うするとともに、学生がその個性や適性とともに大学等で身につけた資質能力を十分に生かして、社会に貢献することのできる適切な職業選択を行う機会を確保するため、また高等学校卒業予定者の就職活動にも配慮し、平成25年度以降卒業・修了予定者の就職活動について、下記のとおり申し合わせる。各大学等においては、全教職員が協力し、全学的にこれを実行することを確認する。
 各大学等においては、大学等関係団体の総意である「要請書」の目指すところをあらためて確認し、学生の健全な学修環境を確保するため、足並みをそろえ、良識のある対応・行動の徹底をお願いする。特に、学生の勤労観・職業観の育成等の取組を行うため、企業関係者の協力を求める場合は、企業の採用活動とは切り離した形での特段の教育的配慮をもって行動するようお願いする。

1.就職・採用活動の早期化是正について

(1)就職・採用活動の早期化是正について
 学校教育上重要な時期である卒業・修了年次当初及びそれ以前は、学内及び学外で企業が実施する採用選考のための「企業説明会」(名称に関わらず、実質的に採用選考のための説明会を指す。)に対して会場提供や協力を行わない。
 一方で、企業の採用情報等の発信を目的とした採用広報のための説明会等を大学等の協力の下に実施する場合は、参加の有無がその後の選考に影響しないことを学生に対して明示する。さらに、卒業・修了前年度の 3月より前に行う企業の活動については、採用に直結しない、学生の職業観や勤労観の育成を図るための業界研究や企業研究に資する企業の一般的な広報活動であることの確認をすること。
 これらの趣旨を踏まえ、学生に対する就職指導を適切に行う。

(2)学校推薦の取扱いについて
 学校推薦は、原則として7月1日以降とする。

(3)正式内定開始について
 正式内定日は、10月1日以降である旨学生に徹底する。正式内定に至るまでの間においては、複数の内々定の状態が継続しないよう、学生を指導するとともに、 9月30日以前の内々定は学生を拘束しないものである旨徹底する。

2.就職・採用活動の公平・公正の確保について

(1)学生の応募書類について
 学生の応募書類は、「大学等指定書類(『履歴書・写真・自己紹介書』、『成績証明書《卒業見込証明書を含む》』)」とし、企業に対して、就職差別につながる恐れのある項目を含む「会社指定書類」《エントリーシート等を含む》、「戸籍謄(抄)本」、「住民票」等の提出を求めないよう要請する。

(2)男女雇用機会均等について
 採用活動は、男女雇用機会均等法及びその指針の趣旨に則って行われるべきであり、その旨を企業側に徹底するよう要請する。特に、総合職採用における女子学生への配慮を要請する。

3.その他の事項について

(1)職業観や勤労観の涵養について
 学生個々人の個性や適性に応じた職業を学生自ら選択できる能力の育成や学修意欲を高めるため、学生の職業観や勤労観を涵養することは重要であり、大学等においては教育課程の実施や厚生補導を通じてキャリア教育やインターンシップを推進する。
 また、大学等において学生の職業観・勤労観の育成等の取組等を行う場合には、企業の採用活動とは切り離した形での特段の教育的配慮をもって行う。

(2)「申合せ」の周知について
 各大学等は、学内の教職員はもとより、学生への周知徹底を図るとともに、企業等に求人依頼文書を発送する際、この「申合せ」を添付し、その趣旨の理解を図る。

(3)就職・採用活動の改善に向けて
 正常な学校教育と学生の健全な学修環境を確保するため、就職問題懇談会は、大学等が要請する就職・採用活動の改善に向け、引き続き企業側との協議を行うこととする。

 

別紙2 採用選考に関する企業の倫理憲章

2011年3月15日改定
社団法人日本経済団体連合会

 企業は、2013 年度入社以降の、大学卒業予定者・大学院修士課程修了予定者等の採用選考にあたり、下記の点に十分配慮しつつ自己責任原則に基づいて行動する。

1.公平・公正な採用の徹底

 公平・公正で透明な採用の徹底に努め、男女雇用機会均等法に沿った採用選考活動を行うのはもちろんのこと、学生の自由な就職活動を妨げる行為(正式内定日前の誓約書要求など)は一切しない。また大学所在地による不利が生じぬよう留意する。

2.正常な学校教育と学習環境の確保

 在学全期間を通して知性、能力と人格を磨き、社会に貢献できる人材を育成、輩出する高等教育の趣旨を踏まえ、採用選考活動にあたっては、正常な学校教育と学習環境の確保に協力し、大学等の学事日程を尊重する。

3.採用選考活動早期開始の自粛

 学生が本分である学業に専念する十分な時間を確保するため、採用選考活動の早期開始は自粛する。具体的には、広報活動ならびに選考活動について、以下の期日より早期に行うことは厳に慎む。
 なお、以下の開始時期に関する規定は、日本国内の大学・大学院等に在籍する学生を対象とするものとする。

(1)広報活動の開始
 インターネット等を通じた不特定多数向けの情報発信以外の広報活動については、卒業・修了学年前年の12月 1日以降に開始する。それより前は、大学が行う学内セミナー等への参加も自粛する。また、広報活動の実施にあたっては、学事日程に十分配慮する。

(2)選考活動の開始
 面接等実質的な選考活動については、卒業・修了学年の4月1日以降に開始する。

4.広報活動であることの明示

 12 月1日以降の広報活動の実施にあたっては、当該活動への参加の有無がその後の選考に影響しないものであることを学生に明示する。

5.採用内定日の遵守

 正式な内定日は、卒業・修了学年の10 月1日以降とする。

6.多様な採用選考機会の提供

 海外留学生や、未就職卒業者への対応を図るため、通年採用や夏季・秋季採用等の実施など、多様な採用選考機会の提供に努める。

7.その他

(1)高校卒業予定者については教育上の配慮を最優先とし、安定的な採用の確保に努める。

(2)インターンシップは、産学連携による人材育成の観点から、学生の就業体験の機会を提供するために実施するものである。したがって、その実施にあたっては、採用選考活動(広報活動・選考活動)とは一切関係ないことを明確にして行うこととする。

※本倫理憲章の内容は、2013 年度入社以降の採用選考活動を対象としている。 2012 年度入社までの採用選考活動については、2009 年 10 月20 日改定の「倫理憲章」及び2010 年9月14 日改定の「参考資料」を参照されたい。

以上

 

採用選考に関する企業の倫理憲章の理解を深めるための参考資料

社団法人日本経済団体連合会
2009年10月20日制定
2011年3月15日改定

 日本経団連では、1997 年に「採用選考に関する企業の倫理憲章」を定めて以降、毎年、採用選考活動の早期化の自粛を呼びかけてきた。本資料は、倫理憲章の理解を一層深めていただくために作成したものであり、 2011 年3月の倫理憲章改定を踏まえて必要な修正を行った。各社の実情に応じ、採用選考活動の早期開始の自粛など、倫理憲章の遵守への一層のご協力をお願いしたい。
 日本経団連は、今後も倫理憲章のさらなる周知徹底をはかり、産業界が一体となった取り組みとなるよう努めていく。

1.広報活動について

(1)広報活動とは
 企業が行う採用選考活動は、一般に広報活動と選考活動に大別することができる。
 広報活動とは、採用を目的として、業界情報、企業情報などを学生に対して広く発信していく活動を指す。本来、こういった情報は可能な限り速やかに、適切な方法により提供していくことが、ミスマッチによる早期離職の防止のためにも望ましいものである。しかし、昨今の早期化ゆえの長期化による過熱化が著しいことに鑑み、倫理憲章では、インターネット等を通じた不特定多数向けの情報発信以外の広報活動の開始時期について規定したものである。
 一方、こうした広報活動の実施に際しての制約は、それが実質的な選考とならないものとすることである。具体的には、会社説明会などのように、選考活動と異なり学生が自主的に参加または不参加を決定することができるものが該当すると考えられ、実施にあたっては、その後の選考活動に影響しない旨を明示するとともに、土日・祝日や平日の夕方開催など、学事日程に十分配慮することが求められる。

(2)広報活動の開始時期について
 倫理憲章では、「3.採用選考活動早期開始の自粛」において、「学生が本分である学業に専念する十分な時間を確保するため、インターネット等を通じた不特定多数向けの情報発信以外の広報活動については、卒業・修了学年前年の 12 月1日以降に開始する。」としている。
 この開始期日の起点は、自社の採用サイトあるいは就職情報会社の運営するサイトで学生の登録を受け付けるプレエントリーの開始時点とする。したがって、 12 月1日より前には学生の個人情報の取得や、それを活用した活動は一切行えない。
 また、12 月1日より前に行うことができる活動は、 HP における文字や写真、動画などを活用した情報発信、文書や冊子等の文字情報によるPR など、不特定多数に向けたものにとどまる。なお、 12 月1日以降に実施予定の広報活動のスケジュールを事前に公表することは可能である。

(3)広報活動であることの明示について
 12 月1日以降に行う広報活動については、学生が自主的に参加の可否を判断できるよう、その後の選考活動に影響を与えるものではないことを十分周知した上で実施することが求められる。具体的には、広報活動を行う際の告知・募集の段階と実施時の段階の双方において、当該活動が広報活動として行われる旨を、ホームページや印刷物への明記、会場での掲示や、口頭による説明などの形で学生に周知徹底する必要がある。
 なお、広報活動であることを示す場合の内容としては、以下のような例が考えられる。

【会社説明会の場合の明示例】
○明示する場面
1.開催の告知・募集段階
2.開催当日の案内(口頭、会場における掲示など)

○具体例
例1)「この説明会は、学生の皆さまに今後の就職活動を行う上での参考として、当社や業界の状況をご理解いただくための広報活動の一環として開催するものであり、本説明会への参加の有無が今後の採用選考のプロセスに影響するものではありません」
(あるいは、「参加の有無が今後の採用選考のプロセスに影響するものではありません」に替えて)
参加しなかったからといって、今後の採用選考上不利に働くことはありません

例2)「この説明会は、広報活動の一環として、当社の事業やCSRへの取組みなどについて理解を深めていただくために行うものです。説明会への参加は任意であり、参加者の方々を対象に選考を行うことはいたしません」

2.選考活動について

(1)選考活動とは
 選考活動とは、一定の基準に達した学生を選抜することを目的とした活動を指す。

(2)選考活動の開始時期について
 倫理憲章では、「面接等実質的な選考活動については、卒業・修了学年の4月 1日以降に開始する。」としている。
 ここで言う早期開始を自粛すべき「実質的な選考活動」とは、活動の名称や形式等を問わず、実態で判断すべきものであり、具体的には、 1.選考の意思をもって学生の順位付けまたは選抜を行うもの、あるいは、2.当該活動に参加しないと選考のための次のステップに進めないものを言う。
 ただし、WEB テストやテストセンターの受検、エントリーシートの提出など、日程・場所等に関して学生に大幅な裁量が与えられているものについては、学事日程への影響がない場合もあるため、当該活動が早期開始を自粛すべきか否かの検討を行う際には、倫理憲章の趣旨を十分に踏まえた上で、各企業が活動の実態に合わせて適切に判断することが求められる。

3.多様な採用選考機会の提供について

 倫理憲章では、海外留学生の帰国後の就職活動への対応が求められていることや、2010 年 11月に「青少年の雇用機会の確保等に関して事業主が適切に対処するための指針」が改正され、未就職卒業者の新卒採用扱いでの応募機会提供への努力規定が設けられたことを受けて「 6.多様な採用選考機会の提供」の項目を追加している。企業はこれらの対応にあたり、各社の実態に応じた努力を継続していくことが求められる。なお、卒後 3年以内の未就業者の取り扱いについても、上記の指針を踏まえつつ、自社の実情や採用方針に則り、適切な対応を行うことが望ましい。

4.その他

◇インターンシップについて
 倫理憲章では、「7.その他」において、インターンシップについて、「産学連携による人材育成の観点から、学生の就業体験の機会を提供するために実施するものである。したがって、その実施にあたっては、採用選考活動(広報活動・選考活動)とは一切関係ないことを明確にして行うこととする。」としている。
 現状行われているインターンシップをみると、就業体験の提供を行うもののほか、企業の広報が中心になっているものも実施されており、従来の本参考資料では、両者を含めて広報活動の一環であると位置付けていたところである。しかし、今般、就職・採用活動の過熱化の是正に向けて、 12 月1日より前の広報活動の自粛を倫理憲章上で規定したことに基づき、インターンシップと称して企業広報の一環で行っているものは、 12 月1日以降に実施するよう求めることとした。したがって、今後は混乱を避けるためにも、 12 月1日以降に行う企業広報としてのプログラムについては、インターンシップの呼称を使わないことが望ましい。
 なお、「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方(平成9年 9月18 日文部省・通商産業省・労働省)」、「インターンシップの導入と運用のための手引き(平成 21 年7月文科省)」等を踏まえて考えると、本来の趣旨である就業体験として 12 月1日より前に実施するインターンシップは、以下のような条件を満たしたプログラムであることが求められる。

【就業体験としてのインターンシップの在り方】
学生の就業体験の提供を通じた産学連携による人材育成を目的とすることに鑑み、当該プログラムは、5日間以上の期間をもって実施され、学生を企業の職場に受け入れるものであること。
加えて、就業体験の提供であることを明確化するために、実施の際には、採用選考活動と関係ない旨をホームページ等で宣言した上で、以下の取り組みを併せて行うことが求められる。

  • 採用選考活動と明確に区別するため、告知・募集のための説明会は開催せず、また、合同説明会等のイベントにも参加しない。また、告知・募集は、ホームページなど WEB 上や、大学等を通じて行う。
  • 募集から実施までを通して、当該活動が就業体験の提供であり、採用選考活動とは無関係である旨の周知徹底を図り、参加する学生から活動の趣旨について書面等での了解を得る。
  • 学生の就業体験の提供を通じた産学連携による人材育成を目的としていることが分かるよう、可能な限り詳細にプログラム内容を一般に公開する。
  • インターンシップに際して取得した個人情報をその後の採用選考活動で使用しない。
  • 大学等のカリキュラム上、特定の年次に行う必要がある場合を除き、募集対象を学部3年又は修士 1年次の学生に限定しない。

以上

別紙3

 大学、短期大学及び高等専門学校卒業予定者の就職・採用活動については、企業側の「倫理憲章」と大学側の「申合せ」を双方が遵守し、行動することを期待する。
 引き続き、正常な学校教育と学生の健全な学修環境を確保するため、大学側、企業側の双方が、就職・採用活動の改善に向けた協議を継続するものとする。

平成24年11月1日

一般社団法人日本経済団体連合会雇用政策部会部会長
橋本浩樹
就職問題検討委員会委員長
吉岡知哉

 

別紙4 大学、短期大学及び高等専門学校卒業・修了予定者に係る就職に関する要請

平成24年11月1日

企業等代表者 各位
経済・業界団体代表者 各位

就職問題懇談会座長
濵口道成
(名古屋大学長)

 国公私立の大学、短期大学及び高等専門学校(以下「大学等」という。)で構成する就職問題懇談会においては、大学等卒業・修了予定者の就職・採用活動の秩序を維持し、正常な学校教育と学生の学修環境を確保するとともに、学生が自己の能力や適性に応じて適切に職業を選択できるようにするため、次の通り要請いたします。

就職・採用活動の現状の再認識

 わが国が平和で安定した社会を維持し、厳しい国際競争においてその地位を失することのないようにするために、学士力や社会人基礎力等を担保した豊かな人間性を有する人材を育成することは、我々教育機関に課せられた使命であると認識しています。
 しかし、我々がこの使命を達成するために、学生に対し様々な教育指導を展開する一方で、現実には、採用活動の早期化・長期化により、学生が学業に専念できない等、学生生活や学事日程への影響が生じています。
 また、中央教育審議会答申「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて」(平成24年8月28日)においても、学生が十分な学修時間を確保し、主体的に学修する力を確実に身につけさせるために、企業には、大学における学修を尊重する立場から、大学側との協議によって採用活動の開始時期を更に見直すなど、就職活動の早期化・長期化の是正を図ることが求められる、としています。

就職・採用活動の早期化・長期化がもたらす影響

 大学等では、学生の基礎学力の低下が問題視される中、グローバルスタンダードに基づく知識基盤社会に向け、教育の質保証のため様々な改革をしており、その成果を期するためには学生の健全な学修環境の確保が不可欠となっています。
 また、これまでも経済界からは、大学等に対し、十分な学力と国際性やコミュニケーション能力を修得したストレス耐性に優れた学生を育成されたい旨の要望が寄せられています。しかし、早期の就職・採用活動の影響から十分な学業の成果をあげられないばかりでなく、海外留学を躊躇したり、クラブ活動やボランティア活動等を途中で切り上げる学生が後を絶たないという実態は、一方的に学生のみを責めることはできません。本来ならば、大学等の正課教育とともに、課外活動等を含めた、在学期間を通じた貴重な体験からもたらされる人間的成長は、経済界がもっとも望むところではないかと考えます。
 大学等における教育の到達点から見ると明らかに未成熟な学生を早々に就職・採用活動に導く行為は、事実上学生から学ぶ機会を奪い、大学等の教育の空洞化を引き起こすこととなり、ひいては人材育成における負のスパイラルを生み出すものと懸念します。このような営みを積み重ねることは、将来において国力を損なう重大な結果をもたらしてしまうという認識を、教育に携わる者と学生を人材として選考する者の立場を越えて、真摯に受け止めるべきです。

倫理憲章見直し内容の問題点

 近時、各経済団体・業界団体が、採用活動のあり方について一定の方針等を提案されたことは歓迎いたしますが、その内容はいまだ、大学等の学事日程や学生の就職活動における問題点などに対し十分な配慮がなされていないところがあり、協議すべき課題が多く残されています。
 とりわけ平成23年3月に公表された社団法人日本経済団体連合会(現:一般社団法人日本経済団体連合会)の「採用選考に関する企業の倫理憲章」(以下「倫理憲章」という。)に対しては、大学等としての問題点を指摘し、改善の検討を要請していたにもかかわらず、大学等と協議もなく平成24年7月に見直しを行わないことを表明したことは誠に残念でなりません。
 また、現行の「倫理憲章」では「広報活動」を「選考活動」と区別し、その開始時期を12月1日以降としていますが、その内容はインターネット上で学生の登録を受け付けるプレエントリーを起点としており、我々が定義する「採用選考活動」が実質的に行われるものであると認識せざるを得ません。更に、倫理憲章の「広報活動」が本格化する時期が、大学等が実施する後期試験の日程に重なっていることも事実です。
 一方で、倫理憲章の「広報活動」の徹底のために、各企業の12月1日より前の大学訪問をも制約されていますが、大学等のキャリア教育において、学生の産業や職業に関する理解を深める取組みの実効性を高めるためには、採用選考と直接結びつかない企業の協力も不可欠です。
 また、倫理憲章における「選考活動」については、「採用選考に関する企業の倫理憲章の理解を深めるための参考資料」(平成23年3月15日社団法人日本経済団体連合会(現:一般社団法人日本経済団体連合会) 改定)(以下「倫理憲章参考資料」という。)において、「一定基準に達した学生を選抜することを目的とした活動」と定義し、従来通りの4月1日以降としていますが、「選考活動」を4月1日直後から開始した場合には、卒業・修了前年度における学業成績を踏まえた採用選考が困難となります。
 倫理憲章について検証をしていただくことは重要ですが、今後とも大学等の意見を十分にお汲み取りいただき、就職・採用活動の改善に資する改定を切にお願いいたします。

あらためてのお願い

 つきましては、上記事情をご賢察いただき、平成24年度大学等卒業・修了予定者の採用活動にあたり、下記の事項についてあらためてご検討をお願いいたします。
 あわせて学生の就職・採用活動の秩序を維持し、未来ある学生の将来を保障するため、新規学校卒業・修了者(以下「新卒者」という。)はもとより、新卒者に限定することなく、諸般の事情により就職未決定のまま卒業・修了した者の採用枠の拡大など積極的な採用に向けた特段のご配慮を引き続きお願いいたします。

1.採用活動の早期化・長期化の是正について

(1)卒業・修了年次に達しない学生に対する「採用選考活動」を厳に慎み、それぞれの教育機関や分野等の学事日程に配慮したスケジュールとしていただきたいこと。
 また、少なくとも卒業・修了前年度の学業成果(成績)を適切に評価した上で、採用選考を行っていただきたいこと。

(2)「採用選考活動」は、卒業・修了年次の夏期休暇以降に行う等、大学等の教育活動に支障の生ずることのないように行われることが望まれること。
 その際、大学等では概ね7月第2週から8月第1週において前期試験等を実施していること等に特段の配慮をいただきたいこと。

(3)「採用広報活動」は、卒業・修了前年度の3月以降とし、「企業説明会」等の就職支援イベントについては、原則として休日又は長期休暇期間に行う等、大学等の教育活動を尊重していただきたいこと。
 なお、これらに参加することが、採用選考につながるものではないことを学生に対してしっかりと明示していただきたいこと。特に近時、ソーシャルメディアを利用した活動が増加しているが、これについても、同様の慎重な配慮がなされるよう注意いただきたいこと。
 また、一般的な「広報活動」については、時期を制約するものではありませんが、あくまでも学生の勤労観・職業観の育成を図るための情報提供であることを明確にし、後述する大学等のキャリア教育との連携に留意していただきたいこと。

(注)我々が定義する「採用選考活動」とは、プレエントリーやソーシャルメディアを活用した選考、エントリーシートによる選考、各種検査など実質的な採用選考につながる全活動を指し、倫理憲章参考資料において「一定の基準に達した学生を選抜することを目的とした活動」と定義されている「選考活動」とは異なります。
 また、「採用広報活動」とは、説明会日程、採用予定数、選考スケジュールなど採用情報を広く学生等に発信することを目的として行われる活動を指します。
 更に、「広報活動」とは、学生の業界研究や企業研究に資する一般的な企業情報や業界情報を提供することを目的として行われる活動を指します。

2.大学等のキャリア教育への協力について

(1)学生の勤労観・職業観の育成や学修意欲の喚起を促すキャリア教育の観点から重要な意義を有するインターンシップについては、今後も積極的に受け入れていただきたいこと。
 ただし、インターンシップは、あくまでも教育の一環として位置付けられた就業体験であり、採用選考と直結した取組みは、本来の趣旨にそぐわないものであることに留意していただきたいこと。

(2)大学等のキャリア教育は、学生自らが視野を広げて進路を具体化し、社会的・職業的な自立をするために極めて重要ですので、大学等が取り組む「次代を創造する礎となる業界研究」については、厳に採用選考と結びつけることなく特段の配慮をもってご協力をいただきたいこと。

3.採用活動の公平・公正の確保について

(1)学生の応募書類は、「大学等指定書類(『履歴書・写真・自己紹介書』、『成績証明書《卒業見込証明書を含む》』)」とし、就職差別につながる恐れのある項目を含む「会社指定書類」《エントリーシート等を含む》、「戸籍謄(抄)本」、「住民票」等の提出を求めないようにしていただきたいこと。

(2)男女雇用機会均等法及びその指針の趣旨に則った採用活動を行っていただきたいこと。特に、総合職採用において女子学生への特段の配慮をいただきたいこと。

(3)採用情報の提供にあたっては、求める人材の能力や資質を大学等の教育において修得した専門性や成果等に基づき具体的に示し、公平・公正な公開を徹底するとともに、学校名、学部・学科、地域により就職情報(情報誌、ダイレクトメール等を含む。)の提供や採用選考に差異を設けない等、就職の機会均等について一層の改善を図っていただきたいこと。

(4)「採用選考活動」においては、採用基準等の開示を図るなど採用決定プロセスの透明性の向上を図り、大学等での学修歴等を踏まえた人物本位の採用の徹底を図っていただきたいこと。

(5)正式内定開始前の9月30日以前に内定承諾書、誓約書、連帯保証書の提出を求める等、学生の自由な就職活動を妨げ、心理的な負担となる拘束を行わないでいただきたいこと。また、内定後に内定式や入社前研修等を行う場合には、学生の学修に支障がないよう配慮していただきたいこと。

4.新卒要件の緩和について

 卒業・修了の際に、未就職や非正規雇用となった既卒者が、新たな就職先を求め、再チャレンジできるよう配慮していただきたいこと。その際、新卒者と同じ扱いをするよう配慮していただき、少なくとも、卒業・修了後3年程度は新卒者として扱うなど、新卒要件の緩和に引き続き努めていただきたいこと。

5.就職問題の解決に向けて

 学生等の就職問題を抜本的に解決していくためには、企業側団体・大学等関係団体及び関係機関等幅広い関係者間の共通認識を深める努力が不可欠であると考えます。このため、平成22年に設置された「新卒者等の就職採用活動に関する懇話会」をより積極的に活用し、可能な限り早期に一定の指針を示すべきであると考えておりますので、今後ともご理解とご協力をお願いいたします。

以上

お問合せ先

高等教育局学生・留学生課

電話番号:03-5253-4111(代表)内線2519

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-- 登録:平成24年11月 --