共同実施制度に関するQ&A

共同実施制度に関するQ&A

1.今回の「大学における教育課程の共同実施」制度の趣旨は何でしょうか?

 この制度は、平成17年1月の中央教育審議会「我が国の高等教育の将来像(答申)」 等を踏まえ、国公私を通じ、複数の大学が相互に教育研究資源を有効に活用しつつ、 共同で教育プログラムを編成する仕組みを創設するものです。
 この制度を活用することで、経済・社会のグローバル化の中、大学は「知の拠点」 として各地域の活性化への貢献とともに、国際的な大学間競争の中で新たな学際 的・先端的領域への先導的な対応も可能になります。また、教育研究資源を有効 に活用することで、さらに質の高い教育研究の提供が可能になります。

 
2.この制度は、どのような大学が実施できるのでしょうか?

 共同実施制度は、大学、大学院、短期大学、専門職大学院において実施できます。 ただし、今回の制度では、通信教育課程や外国で単位を修得しなければならない課程は、 対象となりません。
 また、各大学等において、この制度を実施する場合には、 他に通常の教育課程を編成・実施する学科等(大学院における専攻等を含む。 )の組織が設置されている必要があります。なお、学部のみを有する大学が新 たに共同実施制度により大学院で共同専攻(研究科)を設けること、また、大 学院研究科のみを有する大学院大学が新たに共同実施制度により学部段階で 共同学科(学部)を設けることは可能です。


 3.大学間の協定はどのような形で締結するのでしょうか?

 共同教育課程を編成するに当たっては、構成大学間で共同教育課程 の編成・実施に関して必要な基本的な方針の取決めを行うことが必要です。
  具体的には、各大学ごとの収容定員、教員の配置、教育研究の内容、 業務運営、経費の配分、学生に対する責任、授業料等の取扱い、共同実施の終了の 際の手続きなどについて、協定を締結することが必要です。
 その際、取り決めた内容の確実な実施を確保するため、学長や理事長などの大学 としての運営に責任を有する者の名義で協定が締結されることが必要です。
 その他、実際の協定の締結に当たり、ご不明な点については、文部科学 省までご相談いただければと思います。


 4.この制度を実施するに当たって、協議の場の設置が大学設 置基準等に規定されていますが、協議の場とはどういうもので、何を話し合 うものでしょうか?

  今回の制度では、大学設置基準等において、構成大学は、 共同教育課程の編成・実施に当たって、構成大学間の調整を図るため、協 議会等を設けることを規定しています。
  この協議会等に おいて、審議すべき事項として、以下のような事項が考えられます。
 なお、協議の円滑な実施のため、この協議会等は各大学において決定権 限を有する者あるいは学長、理事長等から必要な権限を委ねられている 者により構成されることが必要です。

  <審議事項(例)>

  ・各大学において開設する授業科目及びこれに係る教 員の配置など共同教育課程の編成及び実施に関する基本的事項
  ・大学院における研究指導教員の選定に係る事項
  ・入学者選抜の方針及び実施計画に関する事項
  ・学生の身分取扱い及び厚生補導に関する事項
  ・共同教育課程に係る成績評価の方針に関する事項
  ・学位審査委員会の設置に関する事項
  ・学位の授与及び課程修了の認定に関する事項
  ・共同教育課程に係る教育研究活動等の状況の評価に関する事項
  ・予算に関する事項
  ・その他共同教育課程の編成及び実施のために必要な事項


 5.この制度によって教育課程の共同実施を行う大学の数 に制限はありますか?

  共同教育課程を編成する大学の数について、法令上の 制限はありません。
 ただし、共同教育課程の修了要件として、 学生にはそれぞれの構成大学において最低限取得すべき単位数につい て規定があり、これを十分に踏まえて、教育課程を編成する大学数を 検討する必要があります。
 なお、共同教育課程について、そ れぞれの構成大学において最低限取得すべき単位数は以下の通りとされ ています。

学部(医学・歯学除く) 

31単位以上

学部(医学・歯学) 

32単位以上

大学院(修士課程・博士課程) 

10単位以上

専門職大学院(法科・教職除く) 

10単位以上

法科大学院・教職大学院  

7単位以上

短期大学(2年制) 

10単位以上

短期大学(3年制)

20単位以上

 


6.この制度を実施する大学院では研究指導体制についてどのような点に留意する必要があるでしょうか?

  共同教育課程である修士課程又は博士課程においては、学生が全ての構成大学院の教員から研究指導を受けることができるような指導体制を確保していただく必要があります。このため、研究指導教員については、それぞれの学生について全ての構成大学院から教員が主担当又は副担当として配置される必要があります。その際、主担当の教員のみならず、副担当の教員についても研究指導教員である者を充てる必要があります。


 7.この制度を実施する大学について距離的な制約はあるのでしょうか?

  共同実施制度を活用する大学について距離的な制約はありません。
  しかしながら、構成大学が相互に遠く離れている場合には、共同教育課程の実施に当たり、メディア等を活用した遠隔教育の実施や各校地において一定期間まとめて授業を受けることができるようなカリキュラム編成など学生の履修に過度な負担を生じさせることのないよう適切に配慮する必要があります。


 8.共同学科等の設置申請等の手続きはどのようになりますか?

  各大学の共同学科等の設置に当たっては、通常の学部、学科等の設置の場合と同様に、認可申請又は届出等の手続きが必要です。
  たとえば、A大学とB大学の二つの大学で共同実施制度を活用する場合であれば、各々の大学について認可申請又は届出等が必要です。このため、A大学は認可申請が必要な場合で、B大学は届出等で設置可能な場合も想定されます。その場合には、A大学の共同学科等の認可がなされる際に、B大学の共同学科等に係る届出等をあわせて行うこととなります。
  また、構成大学に新たに大学を追加する場合又は構成大学のうち一部の大学が離脱する場合には、編成する共同教育課程を変更するものであり、それまでの共同学科等の組織を一旦廃止の上、改めて新しい組み合わせの構成大学による共同学科等をスタートするものであることから、認可申請又は届出等の手続きが改めて必要です。


9.共同学科等の収容定員はどのようになりますか?

  共同教育課程を履修する学生の収容定員については、各大学に置かれる共同学科等ごとに定められることになります。各大学の学則においては、当該大学に置かれる共同学科等に係る収容定員を記載する必要があります。また、当該共同教育課程全体の状況も参照することができるよう、その他の構成大学に置かれる共同学科等に係る収容定員も併せて記載することが望ましいと考えられます。


10.一旦、共同実施をスタートした後、当該共同教育課程の構成大学間で協議して、各構成大学の入学定員(収容定員)を変更する場合にはどのようにすればよいでしょうか?

 今回の共同実施制度は、それぞれの構成大学に共同学科等の組織を設置して実施するものであり、各大学の共同学科等の組織の収容定員を変更する場合には、通常の学部、学科等の場合と同様に、それぞれの構成大学ごとに収容定員変更の認可申請又は届出等の手続きが必要です。


11.共同学科・共同専攻の名称は何になりますか?

 共同学科等の名称については、他の通常の教育課程を実施する学科等と対外的に区別する必要があります。したがって、名称の冒頭に「共同」を付すこととし、「共同○○学科」「共同××専攻」などと称することとなります。
  また、各大学に置かれる共同学科等の名称は、同一の共同教育課程を実施するものであることから、同一の名称となります。
 また、共同教育課程を修了した学生の履歴書等における表記については、「A大学大学院○○研究科・B大学大学院××研究科共同△△専攻修了」などと表記するよう指導することが必要であると考えられます。


12.学生の在籍関係はどのようになりますか?

 共同実施制度においては、共同教育課程を修了した者には構成大学の連名による学位が授与されることとなっており、学生は制度上は全ての構成大学に在籍しますが、それぞれの学生について、構成大学のうちいずれか本籍を置く大学を決める必要があります。
 その際、各大学ごとの収容定員に応じて、それぞれの学生が本籍を置く大学を定めることが必要です。
 学校基本調査等の各種統計、調査等における共同学科等に係る各大学ごとの学生数は上記により本籍を置く学生の数として取り扱う必要があります。


13.学生が複数の大学に同時に在籍することが不適切であるとされることとの関係はどのようになりますか?

 二重在籍が望ましくないとしているのは、学校教育法の修業年限の規定の趣旨に照らし、学生が二以上の大学の教育課程を同時に履修することは学生の十分な学習時間が確保できなくなると考えられるためです。
 一方、共同実施制度は複数大学が共同して一つの教育課程を提供するものであり、学生は当該共同教育課程を履修し連名学位を授与されるためには、複数大学に制度上は重複して在籍している必要があると解され、これは前記の二重在籍とは趣旨・態様を異にするものであり、これまでの見解と矛盾しないものと考えられます。(したがって、一般的に「二重在籍」が望ましくないという点に変更はありません。)


14.学生に事故があった場合の対応はどのようになりますか?

  共同実施制度では、学生は、それぞれの大学において授業を履修したり、研究指導を受けたりすることになりますが、学生の事故が特定の授業の中で生じた場合などその事故に関する施設設備の設置管理や学生に対する安全配慮の責任の所在が構成大学の中で特定できるような場合には、その大学において損害賠償等の必要な対応をとる必要があると考えられます。
  一方で、論文作成のための学外での調査・研究活動中の事故などについては、構成大学が連帯して責任を負うものと考えられますので、あらかじめ構成大学間で協議会等の場において、その際の対応について協議をしておく必要があると考えられます。


15.入学者選抜の方法等についてはどのようになりますか?

 入学者選抜の内容・方法等については構成大学で協議の上、共同して実施することが望ましいと考えられます。
 この場合において、入学者選抜の際に、各入学志願者から入学した場合に本籍を置く大学についての希望を聴取し、入学者選抜の結果も合わせて勘案の上、それぞれの学生について本籍を置く大学の割り振りを行うことが考えられます。
 なお、共同学科等の入学者選抜は、「大学入学選抜実施要領」及び「大学院入学者選抜実施要領」を踏まえ、適切に実施していただく必要があり、特に、入学者選抜の実施方法等の公表時期については、入学志願者保護の観点から可能な限り早期の周知に努めていただくようお願いします。


16.入学金、授業料等の学費の設定についてはどのようになりますか?

 共同学科等の入学金、授業料等の学費については、構成大学間の協議を踏まえ、各大学ごとに定め、学生は本籍を置く大学において入学金、授業料等を納付する必要があります。
 入学金、授業料等の算定に当たっては、構成大学の学生間で公平が図られるよう配慮するとともに、構成大学間においてできる限り、学生の便益に配慮して検討することが望ましいと考えられます。
 たとえば、入学金、授業料等のほかに、実験実習費などの費用を徴収する方法や、それぞれの大学が徴収した授業料等を大学間で協定に基づいて再調整して配分するなどの方法も考えられます。


17.その他の学生に関する事項について留意点はありますか?

  奨学金の申請については、共同学科等の学生は、それぞれ本籍を置く大学の学生として取り扱うことが必要です。
  また、共同学科等において、国費外国人留学生を受け入れる場合には、それぞれ留学生が本籍を置く大学の学生として取り扱うことが必要です。
  学生証については、構成大学の連名による学生証を発行するなどにより、共同学科等の学生が構成大学のうちいずれの大学の施設(図書館、自習室等)も利用可能となるように扱うのが望ましいと考えられます。
  なお、上記の入学金、授業料等の納付、奨学金、国費留学生その他の共同学科等の学生の取扱いについては、あらかじめ学生が了知することができるよう入学者選抜要項や募集要項等において明記しておくことが必要です。


18.教職員の身分取扱いはどのようになりますか?

 共同学科等の教職員は、原則として構成大学のうちのいずれかの大学に所属するものです。
 このため、教員の採用、昇任、降任、免職、懲戒等はそれぞれの所属大学を設置する各法人等においてそれぞれの手続きにしたがって行っていただくことになります。非常勤講師や非常勤職員などについても同様の扱いです。なお、構成大学間で、共同学科等に係る各大学の教職員について共通の給与等のルールを整備することは妨げるものではありません。


19.共同学科等の長の選任等についてはどのようになりますか?

 共同学科等の組織の長の任命の方法は、構成大学間の協議により決めることが望ましいと考えられます。
 共同実施制度においては、各構成大学にそれぞれ共同学科等の組織が存在し、共同学科等の組織の長のポストもそれぞれの大学にありますが、運用上それぞれの大学ごとに別々の者を共同学科等の長として置くのではなく、全体として一人の長を置く場合には、その者がそれぞれの大学に置かれる共同学科等の組織の長と兼ねることとなることから、それぞれの構成大学において、各大学の手続きにしたがって任命される必要があります。


20.共同教育課程における卒業認定の基準や成績評価基準の設定はどのようにすればよいでしょうか?

 共同教育課程全体を通じた卒業認定の基準を設定する場合には、今回の制度では修了者に対して構成大学連名の学位を授与することになることを踏まえ、構成大学間で共通に設定し、合同で卒業認定を実施する必要があります。
 一方で、共同教育課程においては、各授業科目は構成大学のうちのいずれかの大学において開講されることから、各授業科目ごとの成績評価基準の設定やそれに基づく成績評価、単位認定は各授業科目の担当大学の権限と責任において実施されることになりますが、合同で卒業認定等を実施する必要があることを踏まえて、成績評価基準や評価方法を構成大学間で協議することが望ましいと考えられます。


21.学位審査の在り方についてはどのようになりますか?

 共同教育課程を履修する者に係る学位の審査は構成大学が合同で行うことが必要です。この場合において、学位審査委員会は、全ての構成大学の教員をもって構成することが必要です。
 ただし、共同教育課程に係る学位審査委員会は、制度上は各大学に置かれている学位審査委員会を合同で開催するものですから、共同教育課程に係る学位審査委員会の構成員となる教員は所属する大学以外の他の大学の教員を併任するか、あるいは、学位規則第5条に基づく協力者と位置付けられることが必要です。
  また、共同教育課程に係る学位審査の円滑な実施のため、構成大学は協議の上、学位審査に係る規程等を共同で策定することが望ましいと考えられます。


22.教育研究活動の評価に関しての留意点はありますか?

 共同学科等の教育研究活動に係る評価について、各大学の自己点検・評価、認証評価、国立大学法人評価など大学又は法人単位で実施されるものにおいては、共同教育課程に係る当該大学の教育研究活動の状況に加えて、共同教育課程に係る全体としての教育研究活動の状況を示す報告書を添付することが必要です。
 また、専門職大学院の認証評価においては、課程単位でその教育研究活動の状況を評価するものであることから、共同教育課程を編成する構成大学が共同して認証評価を受けることが必要です。


23.共同学科等に係る事務の在り方についてはどのようになりますか?

 共同学科等に係る事務については、効率的な事務処理の観点から、構成大学において協議の上、共同で事務を一括処理する拠点を設けることが望ましいと考えられます。


24.共同実施制度によって授与される「共同学位」は、いわゆる「ダブル・ディグリー」と異なるものですか?

 いわゆる「ダブル・ディグリー」については、法令上で定義されたものはありませんが、海外の大学と行う場合も含め、複数の大学が単位互換制度を活用して、学生に一定の期間において複数の学位プログラムを修了させることにより複数の学位を授与するものと考えられます。
 一方で、今回の共同実施制度によって授与される「共同学位」は、複数の大学が共同で一つの学位プログラムを編成し、これを修了した学生に対し、複数大学の連名で学位を授与するものであり、いわゆる「ダブル・ディグリー」とは異なるものです。


25.連合大学院制度との関係についてはどのようになりますか?

 今回の大学における教育課程の共同実施制度のほか、他の大学の協力を得て教育研究を実施する仕組みとして連合大学院制度が既にあります。連合大学院制度と共同実施制度の主な相違点は以下の通りですが、各大学においては、それぞれの実情に応じて、これらの仕組みを選択・活用していただきたいと思います。

 

連合大学院制度

共同実施制度

組織

基幹となる大学院に研究科を設置

各構成大学にそれぞれ共同学科等の組織を設置

教員

基幹となる大学院に所属

それぞれ各構成大学に所属

学生

基幹となる大学院に所属

全ての構成大学に在籍するが、いずれか本籍を置く大学を決定

教育課程

基幹となる大学院において必要な授業科目等を自ら開設

複数の大学が共同して一つの共同教育課程を編成

学位

基幹となる大学院の名義での学位授与

複数の大学が共同して一つの共同教育課程を編成

 

お問合せ先

高等教育局大学振興課

-- 登録:平成21年以前 --