国立研究開発法人海洋研究開発機構の見直し内容について

平成30年8月23日
文部科学省

1.政策上の要請及び現状の課題

 国立研究開発法人海洋研究開発機構(以下「本法人」という。)は、平和と福祉の理念に基づき、海洋に関する基盤的研究開発、海洋に関する学術研究に関する協力等の業務を総合的に行うことにより、海洋科学技術の水準の向上を図るとともに、学術研究の発展に資することを目的とする法人である。
 第5期科学技術基本計画(平成28年1月22日閣議決定)において、海洋科学技術は、大きな価値を生み出す国家戦略上重要な科学技術として位置付けられている。また、第3期海洋基本計画(平成30年5月15日閣議決定)においては、「科学的知見の充実」が引き続き実施すべき主要な施策と位置付けられるとともに、新たに、「海洋状況把握(MDA)」体制の確立等の総合的な海洋の安全保障の取組や「北極政策」の推進に係る項目が新たに追加されたところである。中でも、海洋の調査や観測により収集される膨大な海洋情報から、人工知能(AI)やビッグデータ解析技術等を活用して新たな価値を創造し、経済発展や社会的課題の解決につなげていくなど、海洋分野においてもSociety5.0の実現に向けた研究開発が必要となっている。
 国際的な状況をみると、「持続可能な開発目標(SDGs)」(平成27年9月、国連持続可能な開発サミット)やG7伊勢志摩サミット首脳宣言(平成28年5月)、G7科学技術大臣会合つくばコミュニケ(平成28年5月)において、海洋・海洋資源の管理、保全及び持続可能な利用が盛り込まれており、海洋の重要性は我が国のみならず国際的な共通認識となっている。
 このような状況を踏まえ、文部科学省科学技術・学術審議会海洋開発分科会において海洋科学技術に係る研究開発計画(平成29年1月。以下「研究開発計画」という。)を取りまとめ、文部科学省として推進すべき海洋科学技術分野や推進方策を明記したところである。
 本法人は、第3期中期目標期間において海洋の幅広い分野で顕著な成果を創出してきた。次期中長期目標期間では、上述のような国内外の状況の変化やそれに伴う課題を踏まえ、複数の研究船や探査機等を保有している本法人の強みを生かした海洋観測や多様な研究開発による高水準の成果の創出及びその普及・展開等、引き続き我が国の海洋科学技術の中核機関としての役割を担うことが政策上求められている。
 本法人がこのような役割を果たし、国民からの期待に応えていくため、これまでの取組を一層発展させ、以下に示すような課題に取り組む必要がある。

  • 海洋環境の維持・保全と持続可能な利用、海洋由来の自然災害への対応等、経済・社会的課題への対応の一層の推進
  • 関係府省連携の下、海洋状況把握(MDA)体制の確立に資する海洋調査・観測体制を強化し、海洋の安全・安心に貢献
  • 海洋分野におけるSociety5.0の実現に向け、膨大な海洋情報の集約、解析及び予測に係る研究開発を推進
  • 海洋科学技術分野における我が国の研究開発力の強化や国際的なプレゼンスの向上、イノベーションの創出

 以上のような課題の解決のためには、他機関との更なる連携が必要不可欠であり、他機関との分担や協働の在り方を最適化し、現状の連携をより一層強化するとともに、新たな協働体制を確立することが期待される。
 また、これらに取り組むために必要な人材の育成・確保や、財務基盤の強化とともに、法人内での分野間の連携を推進しつつ法人一体となって課題に取り組むため、組織の見直しに係る検討及びガバナンスの強化に向けた取組が求められる。
 さらに、サイバーセキュリティ基本法(平成26年法律第104号)に基づき策定された「政府機関等の情報セキュリティ対策のための統一基準群」(平成28年8月31日サイバーセキュリティ戦略本部決定。平成30年7月25日改定)や「サイバーセキュリティ対策を強化するための監査に係る基本方針」(平成27年5月25日サイバーセキュリティ戦略本部決定。平成28年10月12日改定)を踏まえ、独立行政法人は情報セキュリティ対策を講じることが求められている。

2.講ずるべき措置

 上述した法人に求められる政策上の要請及び現状の課題を踏まえ、以下の措置を講ずる。

(1)中長期目標期間

 本法人は、研究開発成果の最大化を第一目的とする国立研究開発法人であり、長期的視点を含む研究開発の特性を踏まえて中長期目標を策定する必要があることから、中長期目標期間を7年とする。

(2)中長期目標の方向性

 次期中長期目標の策定に当たっては、以下に示す事項を踏まえた上で、本法人の果たすべき役割を具体的かつ明確に記載するものとする。また、目標の達成度に係る客観的かつ的確な評価を行う観点から、達成すべき内容や水準等を分野の特性に応じて具体化した指標を設定することとする。

○重点的研究開発課題

 国立研究開発法人に求められる研究開発成果の最大化に向けて、第3期海洋基本計画や研究開発計画等に定められた施策を着実に実行する。特に、以下の研究開発課題に重点的に取り組む。

  • 地球環境変動の把握・予測や、海域地震、津波及び海域火山に係る防災・減災への貢献、生物や鉱物等の海洋資源の持続的な利用等、科学的知見の充実と課題の解決に向けた研究開発の推進
  • 海洋の調査・観測を効率的に実施するシステムの整備及び高度化等、基盤的な研究開発の推進
  • 海洋の調査・観測等により取得したデータの統合及び解析機能を強化し、有用な情報として社会に発信することで、新たな価値を創出
  • 挑戦的・創造的な研究開発の推進により、次世代海洋科学技術を支える知を創出

○外部機関との連携の強化

 本法人が、海洋科学技術の中核機関として、大学や研究機関を含めた我が国の関連分野の研究開発力の強化に必要な役割を果たすとともに、成果の社会実装を着実に進めていくためには、これまで以上に、国内外の大学や研究機関、民間企業、自治体などの関係機関との戦略的な連携や協力関係を構築し、これらとの協創を推進することが必要である。このため、必要な組織体制の整備、職員の能力開発、国内外の関係機関との人材交流を進める。

○人材育成機能の強化

 将来にわたって、海洋に関する研究開発を推進し、海洋科学技術により経済・社会的課題に対応するため、専門性と俯瞰力を持った人材の質と層の向上に寄与する取組を推進する。また、新たな価値創造の風土を醸成するため、分野の壁にとらわれない国内外の優秀な研究者の確保に取り組むとともに、研究環境の整備に努める。

○財務内容に関する取組

 研究開発活動を更に活性化させるため、競争的資金等の外部資金獲得、国内外の民間企業や研究機関との連携強化及び研究開発成果や知的財産の戦略的な活用等、自己収入の増加に向けた取組を推進する。

○運営及び組織に関する取組

 第3期中期目標期間の状況を踏まえ、組織のマネジメント機能をより一層強化する必要がある。研究開発成果の最大化という国立研究開発法人としてのミッションの遂行のため、理事長のリーダーシップの下、業務運営の在り方を不断に見直す。特に、我が国全体の研究開発力の強化や国際的なプレゼンスの向上、イノベーション創出に向けた柔軟な組織運営に配慮しつつ、本法人を挙げて目標を達成するための適切な体制やマネジメントを実現するとともに、国立研究開発法人の職員としての一人一人の意識改革に取り組む。

○情報セキュリティ対策の推進

 引き続き、「政府機関等の情報セキュリティ対策のための統一基準群」に沿って本法人が定めた情報セキュリティ対策の基本方針及び対策基準や、サイバーセキュリティ戦略本部が実施する監査の結果等を踏まえ、必要となる情報セキュリティ対策を推進する。

お問合せ先

研究開発局海洋地球課