独立行政法人国立女性教育会館の見直し内容

令和2年9月16 日
文部科学省

1.政策上の要請及び現状の課題

 独立行政法人国立女性教育会館(以下「本法人」という。)は、女性教育の振興を図り、もって男女共同参画社会の形成の促進に資することを目的とする我が国唯一のナショナルセンターとして、関係機関・団体のネットワークの中核を担い、高度で専門的・実践的な人材育成研修の実施や、専門的調査研究及び情報の収集・提供等の事業を行っている。
 「男女共同参画社会基本法」(平成11 年法律第78 号)では、男女共同参画社会の実現を21 世紀の我が国社会を決定する重要事項と位置づけ、男女共同参画基本計画を定め施策の総合的かつ計画的な推進を図っており、今後も引き続き少子高齢化が進み、生産人口が減少する中、国民一人一人がその個性と能力を最大限に発揮できる、柔軟な社会に対応した男女共同参画社会の形成が求められている。
 政府は、平成15(2003)年に「社会のあらゆる分野において、2020 年までに、指導的地位に女性が占める割合が、少なくとも30%程度となるよう期待する」との目標を掲げ、取組を進めてきたが、我が国における女性の参画は、諸外国と比べ低い水準にとどまっており、引き続き、教育分野を含めあらゆる分野における女性参画の推進を強化することが必要である。また、平成27 年に国連で採択された「持続可能な開発のためのアジェンダ」に含まれる持続可能な開発目標(SDGs)のゴール5では、「ジェンダー平等を実現しよう」が掲げられており、貧困等の生活困窮、セクハラや暴力等の困難な課題に直面する女性への支援に関しても、取組を強化することが求められている。
 このような課題の解決のためには、教育機関、行政、地域、企業、団体をはじめとする様々な分野における男女共同参画リーダーの力量をより一層高めるとともに、社会全体に男女共同参画の視点を普及させていくことが重要である。
 その際、新型コロナウイルス感染症の影響による社会の変容を、負の側面のみならず変革の好機としても捉え、男女共同参画の視点を踏まえた社会や人々の生活様式の変容に応じた意識改革や人材育成、調査研究等が必要である。今後は、本法人においても、例えば、これまで展開してきた「対面・集合型」中心の事業を、速やかに「オンライン型」と組み合わせる等、研修手法の見直しを図ることが求められている。

 このような現状認識を踏まえ、本法人は、以下に示す運営課題に対応していくことが必要である。

  • 教育機関をはじめとして社会のあらゆる分野において、指導的地位に女性が占める割合の増加を通じて、政策・方針決定への女性の参画拡大を図ること。
  • 男女の平等を重んずる態度の涵養という教育基本法の目標を実現するため、特に初等中等教育を中心とした学校における男女共同参画推進のための取組を強化すること。
  • 男女共同参画に係る基幹的指導者(リーダー)の育成において、地域的な偏り、年代層の濃淡等をなくし、全国的に幅広く事業の成果を還元するという観点から、ICT 技術(オンライン)の一層の活用を図ること。
  • 近年多発する災害に備えた防災・復興、貧困等の生活困窮、セクハラや暴力等の困難な課題となる分野に、男女共同参画の視点に立った新たな取組を行うこと。
  • 調査研究機能と広報・情報発信機能の有機的な結びつきを強めるとともに、これまで集積してきた図書・史資料・収集データのICT 技術を駆使した活用について検討を進めること。
  • 男女共同参画に係るナショナルセンターとしての機能を一層高めるため、国内外の関係機関・団体との連携強化、特色ある調査研究、国際貢献をさらに推進すること。
  • テレワークや時差出勤等の働き方の新しいスタイルへの移行に伴い、本法人の業務運営の簡素化・効率化を図る観点から見直しを行い、職員の働き方改革を推進すること。

 さらに、「サイバーセキュリティ対策を強化するための監査に係る基本方針」(平成27年5月25 日サイバーセキュリティ戦略本部決定。平成28 年10 月12 日改定)に基づき、本法人は、外部機関が実施する監査の対象とされており、サイバーセキュリティ監査の結果等を踏まえ、必要となるセキュリティ対策を講じる。

2.講ずるべき措置

(1)中期目標期間

 本法人が実施する業務は、男女共同参画社会の形成に資する人材育成や調査研究等を、長期的な視点に立って行う必要があることから、中期目標期間は、令和3(2021)年4月1日から令和8(2026)年3月31 日までの5年とする。

(2)中期目標の方向性

 今中期目標期間に行ってきた事務・事業を継続して実施することを基本とし、以下の内容については、次期中期目標において重要事項として位置付ける。

○ 社会ニーズを踏まえた重点的な取組の推進

 「第5次男女共同参画基本計画策定に当たっての基本的な考え方(素案)」(令和2年7月男女共同参画会議計画策定専門調査会)を踏まえつつ、意思形成過程への女性の参画、持続可能な開発目標(SDGs)のゴール5「ジェンダー平等を実現しよう」を踏まえた災害・貧困・セクハラや暴力等からの女性の安心安全の確保、学校等において男女共同参画の促進等の諸課題に対応するため、男女共同参画基本計画を踏まえた研修体系の構築、新たなロードマップに基づく調査研究の実施と研修事業への成果の活用促進、国際的課題の解決に資する国際貢献等を推進する。
 なお、調査研究においては、大学研究者、NPO、企業等とのネットワークの構築に努めつつ、他機関の研究との重複を避け、より特色ある調査研究に重点化する。  さらに、社会ニーズを踏まえた新たな独自教材を開発し活用する。。

○ 教育分野における政策・方針決定への女性の参画拡大と男女平等を推進する教育・学習の充実

 教育機関における女性の政策・方針決定への参画を拡大するため、女性教員の管理職登用の促進に資する調査研究等を引き続き実施し、その成果を研修等において活用する。
 さらに、学校等における男女共同参画推進のための教育・学習に資する研修の充実を図る。

○ 研修手法の多様化を通じたプログラム内容の充実

 会館施設等での「集合研修」とインターネット等による「オンライン研修」の両方の良さを併用した研修体系を構築する。
 オンライン研修については、受講者の利便性の向上、受講者数の拡大に努める。既存の集合研修については、内容・対象・実施数等を見直す。例えば、①リーダー育成に係る研修では、企業・学校・自治体のトップ層への意識啓発の強化、②アーカイブ保存修復研修におけるコース区分の再検討、③国際貢献事業の一部オンライン化と対象国等の見直しを行い、プログラム内容の充実を図る。
 また、外部機関への研修プログラムの提供を積極的に推進する。

○ 広報活動の強化と情報発信の見直し

 利用者がより使いやすいデータ資料の作成・提供、統計の利活用の促進、電子ブックの導入やデジタル資料の提供、女性情報ポータルWinet の改善、NWEC チャンネルでの動画配信、e ラーニングの活用促進等を通じて、多様な主体に情報発信することにより、広報活動の強化を図る。また、国際研修等を通じて得た諸外国における男女共同参画を取り巻く動向についての情報を国内に発信するとともに、我が国の取組や知見を研修に参加する海外のリーダー等に対して共有し、国外へ情報発信を行う。

○ 法人運営の効率化と情報セキュリティ対策の推進

 システムの更新時に合わせて、ペーパーレス化や決裁手続の簡素化・効率化を推進するとともに、情報セキュリティ対策の強化を図る等、テレワーク環境下での働き方改革と一人一人の業務パフォーマンスの向上に努める。
 また、外部機関の監査結果等を踏まえ、リスクを評価し、必要となる様々な情報セキュリティ対策を講じる。

○ 法人運営と財務基盤の強化

 新型コロナウイルス感染症の影響及び移動や活動の自粛に伴う我が国の社会経済活動の停滞によって、施設利用が長期に亘って低下し、法人運営に支障を来すことがないよう、PFI 事業の適切なモニタリングを通じて業務の安定性や継続性を確認するなど、リスク管理や業務継続に努める。
 また、PFI 事業の導入(平成27 年度)により安定した自己収入の確保に努めているが、今後は、受託研究、科研費や寄附金等の外部資金の獲得にもより一層努める。

以 上



 

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総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課