独立行政法人日本学生支援機構の見直し内容

平成30年8月23日
文部科学省

1.政策上の要請及び現状の課題

 独立行政法人日本学生支援機構(以下「本法人」という。)は、奨学金事業、留学生支援事業、学生生活支援事業を通して、次代の社会を担う豊かな人間性を備えた創造的な優れた人材を育成するとともに、国際理解・交流を図ることを目的とする、学生支援のナショナルセンターである。第3期中期目標期間においては、平成29年3月に独立行政法人日本学生支援機構法の一部を改正する法律が成立し、給付型奨学金が創設される等、学生支援事業における本法人の重要性はますます高まっている。
 昨今の学生への経済的支援を取り巻く状況としては、高等教育のアクセスの機会均等の充実が求められており、「新しい経済政策パッケージ」(平成29年12月8日閣議決定)において、給付型奨学金の大幅な拡充等の低所得世帯を対象とした高等教育無償化に係る施策が2020年4月に実施されることが示され、「高等教育の負担軽減の具体的方策について(報告)」(平成30年6月14日高等教育段階における負担軽減方策に関する専門家会議)においては、給付型奨学金等を円滑かつ確実に実施するため、本法人のシステム改修や必要な人員配置等の体制整備を行う必要性が報告されたところである。
 また、グローバル化の一層の進展が予想される中、グローバルに活躍する人材の育成が重要であり、「第3期教育振興基本計画」(平成30年6月15日閣議決定)においては、意欲と能力のある日本人生徒・学生の海外留学支援と、優秀な外国人留学生の積極的かつ戦略的な受入れの推進が挙げられている。同計画においては、さらに、障害者権利条約の批准や障害者差別解消法の施行も踏まえ、障害のある学生の学習機会の整備を推進するとされているところである。
 このような現状を踏まえ、本法人は以下に示すような経営課題に対応していくことにより、様々な社会的諸要請に応え、学生支援に資する施策を実施することが求められる。

  • 奨学金の貸与及び支給について、事業規模の変化及び制度改正に対応し、意欲と能力がありながら、経済的理由により修学が困難な学生等を的確に支援すること。
  • 給付型奨学金や所得連動返還方式の導入等、重要な制度改正に伴い奨学金制度の周知がより一層求められることから、生徒・学生や保護者、学校担当者等に対し、適時に、正確でわかりやすい情報提供に努め、さらに、奨学金の適切な利用についての理解を深める取組を行うこと。
  • 外国人留学生数及び日本人留学生数はともに増加しており、引き続き、意欲と能力のある学生が留学の機会を得られるよう、国の戦略を踏まえ、各種奨学金制度や大学等の留学生交流を支援する施策等を適切に実施するとともに、留学に関する情報発信を積極的に行い、外国人留学生の受入れ及び日本人生徒・学生の留学支援を推進すること。
  • 高等教育段階における障害のある学生の在籍者数が急激に増加している状況を踏まえ、各学校における障害学生支援の取組を促進するとともに、大学等における多様なインターンシップの推進等に関するキャリア教育の取組拡大を支援するため、問題の把握・分析、先進的取組の共有等、情報提供の一層の充実を図ること。
  • 理事長のリーダーシップの下で内部統制を推進する体制を整備・運用し、業務や組織の適切な改善及びこれに必要とされる職場環境整備を行うとともに、効果的かつ効率的な業務運営に努めること。
  • 給付型奨学金の拡充等に対応し、円滑かつ確実に実施するため、必要なシステムの改修や人員配置等の体制整備を図ること。また、事業規模の拡大、業務の複雑化・高度化及び奨学金制度に係る諸施策等に着実に対応するため、人件費を含めた業務運営のための経費の確保、必要とされる環境整備、健全な財政運営を維持すること。
  • サイバーセキュリティ基本法(平成26年法律第104号)に基づき策定された「政府機関等の情報セキュリティ対策のための統一基準群」(平成28年8月31日サイバーセキュリティ戦略本部決定。平成30年7月25日改定)に従って、独立行政法人は情報セキュリティ対策を講じることが求められている。

 さらに、「サイバーセキュリティ対策を強化するための監査に係る基本方針」(平成27年5月25日サイバーセキュリティ戦略本部決定。平成28年10月12日改定)に基づき、独立行政法人は、サイバーセキュリティ戦略本部が実施する監査の対象とされている。
業務上、マイナンバーや個人情報を取り扱うことから、国の方針に基づいて体制を整備するとともに、情報管理の徹底に加え、サイバー攻撃等への対応の強化など、セキュリティ対策に万全を期すこと。

2.講ずるべき措置

 上記で述べた本法人に求められる政策上の要請及び現状の課題を踏まえ、以下の措置を講ずる。

(1)中期目標期間

 本法人が実施する学生支援業務は、奨学金の貸与や支給など長期的視点に立って行われる必要があることから、中期目標期間を5年とする。

(2)中期目標の方向性

 今中期目標期間に行ってきた事務・事業を継続して実施することを基本とし、以下の内容については、次期中期目標において重要事項として位置づける。

○ 奨学金事業

  • 奨学金制度の適切な運用
     給付型奨学金の大幅な拡充等の低所得世帯を対象とした高等教育無償化に係る施策の実施も踏まえ、経済的支援を必要とする学生等に対し、奨学金の支給及び貸与を的確に実施するとともに、債権の適切な管理及び返還金の確実な回収に引き続き努める。
     学校との連携を強化し、適格認定などの在学中の指導の充実等により、奨学生としての学業精励の自覚を促す。貸与奨学生においては、返還意識の涵養を図るとともに、減額返還制度、返還期限猶予制度等のセーフティネットへの理解を深め、延滞防止やモラルハザードの防止につなげる。
     給付型奨学金や所得連動返還方式等の新たな施策の実施にあたっては、適宜、事務、体制等の見直しや効率的な運用に努めつつ、確実に対応するとともに、施策の効果検証に取り組む。奨学金制度に係る手続においてはマイナンバーを活用し、生徒・学生、返還者等の利便性の向上を図る。
  • 奨学金制度の周知・広報の充実
     生徒・学生や保護者、学校担当者、返還者等に対し、奨学金制度の理解を深め、奨学金の正しい利用に資するため、説明会の開催やスカラシップ・アドバイザー、インターネット等を活用した広報により、正確でわかりやすい情報の提供に努める。インターネット等を活用した広報においては、SNS等の普及、スマートフォンやタブレット端末によるアクセスの増加を考慮し、SNS等の活用、ユーザビリティ等の向上を図る等、利用者への情報提供の一層の充実を図る。
     また、奨学金制度の概要、手続き等の詳細について、奨学金を希望する学生、保護者、返還者等からの照会に対応できるコールセンター機能の充実を図る。
  • システム・体制の整備
     給付型奨学金の拡充等にあたっては、「高等教育段階における負担軽減方策に関する専門家会議」での検討を踏まえ、世帯収入に応じた段階的な支給や進学後の学習状況に応じた措置等を円滑かつ確実に実施するため、必要なシステム改修や人員配置等の体制整備を行う。

○ 留学生支援事業

  • 外国人留学生の受入れ
     外国人留学生の受入れについて、大学のグローバル化の推進や我が国で活躍する高度外国人材受入れ促進等の国の方針を踏まえ、優秀な外国人留学生の戦略的な受入れを推進するため、ホームページ等による日本留学情報発信、学資金支給、留学生に対する就職支援、留学経験者のネットワーク化の支援等の充実を図り、留学前から卒業(修了)後のフォローアップまでの一貫した外国人留学生支援を実施する。
  • 日本人学生の海外留学
     日本人学生の海外留学について、政府方針に基づき、海外留学支援制度による学資金支給事業等の適切な実施や、海外留学への機運を醸成する取組の充実を図り、意欲と能力のある日本人学生の留学支援を推進する。
     また、官民協働留学支援策であるトビタテ!留学JAPANについて、目標の達成に向けて努めるとともに、トビタテ!留学JAPANの施策で得た経験を、日本人学生の海外留学の機運醸成及び留学支援施策に活かす。

○ 学生生活支援事業

  • 障害学生支援
     障害学生支援においては、障害のある学生に対する支援体制の整備が求められている中、障害のある学生の増加に伴い支援体制の整備は全体として進展傾向にあるものの、体制整備が進まない学校も存在することから、障害学生支援に関する理解・啓発に重点を置いたセミナー等を実施する。また、これに併せて、障害学生への修学支援に係る実態調査を通じて問題の把握・分析を行うほか、先進的取組事例の収集及び情報提供の一層の充実に努め、大学等の障害学生支援体制整備の全体的な底上げを図る。
  • キャリア教育・就職支援
     キャリア教育・就職支援の推進のため、各大学等の教職員の資質向上や大学等と企業等のネットワーク構築に資するよう、全国規模のガイダンスや様々な課題に対応したワークショップ等を実施するとともに内容の充実を図る。また、産学連携による教育的効果の高いインターンシップが推進されるよう、専門人材の育成に向けたセミナーの開催や好事例の収集・発信等を行い、各大学等と産業界との取組を支援する。

○ 業務運営及び財務内容等に関する事項

  • 内部統制・ガバナンス等の充実
     理事長のリーダーシップの下で内部統制を推進する体制を整備・運用し、引き続き想定される事業規模の変化、制度改正に的確に対応するための業務改善や柔軟な組織体制の見直しとこれに必要とされる職場環境の整備等を推進し、適切な業務運営に努める。
  • 業務の効率化・運営体制の整備
     事業規模の拡大、業務の複雑化・高度化及び奨学金制度に係る諸施策等に着実に対応するため、業務の更なる効率化、合理化に努めるとともに、人件費を含めた業務運営のための経費の確保、必要とされる環境整備を行い、健全な財政運営の維持に向けた取組を行う。
  • 情報セキュリティ対策の推進
     引き続き、「政府機関等の情報セキュリティ対策のための統一基準群」に基づき本法人が定めた情報セキュリティ対策の基本方針及び対策基準等に従って、情報セキュリティ対策を推進する。さらに、サイバーセキュリティ戦略本部が実施する監査の結果等を踏まえ、リスクを評価し、必要となる情報セキュリティ対策を講じる。
  • 寄附金広報の強化
     学生支援業務の充実に資するため、寄附金募集に係る広報の取組を強化し、一層の寄附金獲得拡大を図る。

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高等教育局学生・留学生課