独立行政法人日本芸術文化振興会見直し内容

平成29年8月25日
文部科学省


1.政策上の要請及び現状の課題

(1)法人のミッション・重要性

 「文化芸術基本法」(平成13年法律第148号)が平成29年6月に改正され、文化芸術の振興にとどまらず、観光、まちづくり、国際交流、福祉、教育、産業その他の関連分野における施策を法律の範囲に取り込むとともに、文化芸術により生み出される様々な価値を文化芸術の継承、発展及び創造に活用することが目指されるなど、文化芸術の重要性は一層高まっている。その中で、独立行政法人日本芸術文化振興会(以下「振興会」という。)は、我が国を代表する文化芸術振興の中核的拠点として、1.文化芸術の豊かな広がりを実現すること、2.我が国の貴重な財産である伝統芸能を後世に伝えていくこと、3.多彩で豊かな芸術の創造活動を活性化させること等の役割を果たすことが求められているところであり、その基盤の整備、活動の発展は我が国の文化芸術の振興において不可欠である。
 このため、振興会は、芸術家・芸術団体等が行う文化芸術活動に対する援助を行うとともに、自らが設置する劇場施設において、我が国古来の伝統的な芸能(以下「伝統芸能」という。)の保存振興及び我が国における現代の舞台芸術(以下「現代舞台芸術」という。)の振興普及を図るための伝統芸能の公開・現代舞台芸術の公演等各種事業を実施することにより、芸術その他の文化の向上に寄与するものとする。

(2)現状の課題

 上記の事業の実施においては、国民の多様化するニーズを踏まえ、より効率的な運営を図るとともに、一層のサービス向上を目指して業務を推進することが求められる。
 また、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会(以下「2020年東京大会」という。)を契機とする文化プログラムの実施等を通じて、観光振興、地方創生、経済の活性化等への貢献も求められる中においては、振興会には、以下に示すような内容を充実させていくことが求められる。 

○ 振興会は、我が国の文化芸術活動に対する援助に関する中核的な拠点として、引き続き事業を継続的かつ安定的に実施していく必要がある。また、公的支援については、社会的費用から社会的必要性に基づく戦略的な投資として捉え直すなどその社会的捉え方も変化している。
 このため助成事業の実施に当たっては、芸術文化振興基金の運用益の将来予測等を踏まえ、より効果的、効率的な支援の在り方について検討を進めるとともに、公的支援に対する社会的な捉え方の変化等を踏まえ、アーツカウンシル機能(専門家による助言、審査、評価等)の連携・強化等を進め、支援策等をより有効に機能させるとともに、助成事業によって得られた成果等の活用についても検討していく必要がある。
○ 2020年東京大会やラグビーワールドカップ2019は、我が国全体の祭典であり、我が国が持つ力を世界に発信する最高の機会である。振興会は我が国における舞台 芸術振興の中核的な拠点として、その開催に向け、我が国の舞台芸術の魅力を世界に発信する取組を強化する必要がある。
○ 少子高齢化や人口の減少等、振興会を取り巻く環境は大きく変容しており、振興会がより幅広く多くの国民に鑑賞機会を提供していくためには、新たな観客層の開拓・育成等を図ることが重要な課題となる。このため、その対応に向けた取組については一層戦略的に進めていく必要がある。
○ 振興会は公演の充実に資するとともにその理解の促進のために、調査研究事業を行い、各種資料の収集を行っているが、得られた成果等を活用することは、伝統芸能及び現代舞台芸術の更なる普及・促進につながるものである。このため事業の実施に当たっては、成果等の活用に係る取組を強化していく必要がある。
○ サイバーセキュリティ基本法(平成26年法律第104号)に基づき策定された「政府機関等の情報セキュリティ対策のための統一基準群」(以下「統一基準群」という。)が平成28年度に改定され、独立行政法人も同基準群に沿った情報セキュリティ対策の徹底が求められることになった。さらに、「サイバーセキュリティ対策を強化するための監査に係る基本方針」(平成27年5月25日サイバーセキュリティ戦略本部決定)が一部改定され、独立行政法人は、サイバーセキュリティ戦略本部が実施する監査の対象とされている。

2.講ずるべき措置

 上記で述べた法人に求められる政策上の要請及び現状の課題を踏まえ、以下の措置を講ずる。

(1)中期目標期間

 振興会が実施する業務は、計画、準備から成果を得るまでに長期間を要するものが多いことから、中期目標の期間は、5年間とする。

(2)中期目標の方向性

 今中期目標期間に行ってきた事務・事業を継続して実施することを基本とし、以下の内容については、次期中期目標において拡充・重点化を図る目標として位置づける。

○ 文化芸術活動に対する援助の効果的な実施

 事業を安定的・継続的に行っていくために、芸術文化振興基金の運用収入の将来予測等を踏まえ、助成事業の一元化も含めた、効果的、効率的な支援の在り方について検討を進める。また、公的支援に対する社会的な捉え方の変化等を踏まえ、調査研究の実施、ネットワークの構築等を進め、アーツカウンシル機能(専門家による助言、審査、評価等)の連携・強化等を図り、支援策等をより有効に機能させるとともに、助成事業によって得られた成果等について、振興会の他の業務等に活かしていくことも検討する。

○ 伝統芸能の公開及び現代舞台芸術の公演の戦略的な実施

  1. 2020年東京大会に向けた文化プログラムの実施の中核的拠点等として、我が国の舞台芸術の魅力を世界に示すとともに、インバウンドの拡大への貢献を果たすため、劇場施設の多言語化やバリアフリー化、多言語による公演や外国人向けの体験型プログラム、海外の芸術団体等との連携・協力体制の構築等国際的な取組を強化する。
  2. 我が国における伝統芸能の保存・振興及び現代舞台芸術の振興・普及の中核的な拠点として、幅広く多くの人が鑑賞することができるよう、新たな観客層の開拓等に努め入場者数の増加を目指すとともに、企画内容や広報、営業宣伝、ニーズの把握、関係団体との連携等について戦略的に取組む。 

 また、上記2つの目標を達成するために、振興会が有する6劇場の相乗効果を最大限に発揮するための取組を推進し、効果的な事業運営を行う。

○ 伝統芸能及び現代舞台芸術に関する調査研究等の成果の活用

 伝統芸能及び現代舞台芸術の理解と促進を図るため、調査研究事業における成果や収集した資料等については幅広く提供するとともに、関係機関等と連携した取組を進めるなどより効果的に活用する。

○ 体制の整備・強化

 上記の実現に向けて、劇場間の連携強化や業務・組織体制の整備等を図る。特に2020年東京大会やラグビーワールドカップ2019開催に向け、我が国の舞台芸術の魅力を国内外に戦略的に発信するため、企画立案・広報機能の強化を図る。

○ 情報セキュリティ対策の推進

 引き続き、統一基準群に沿って策定した情報セキュリティ・ポリシーに基づき、情報セキュリティ対策を推進することに加え、サイバーセキュリティ戦略本部が実施する監査において特定される課題を解決することを目標として位置付ける。

お問合せ先

独立行政法人日本芸術文化振興会見直し内容について

文化庁文化部芸術文化課
電話番号:03-5253-4111(内線4797)