スーパーグローバルハイスクール(SGH)事業の検証に関する有識者会議(第10回)議事要旨

第10回

1 日時

平成30年11月21日(水曜日) 14時~16時

2 場所

経済産業省8階 850共用会議室

3 出席者

萱島信子委員,河村小百合委員,永井裕久委員,二宮皓委員,松本茂委員
長尾篤志視学官,田村真一参事官,齊藤大輔参事官補佐,矢田裕美専門職

4 議題

(1) スーパーグローバルハイスクール(SGH)事業検証について報告
(2) 討議
  ・スーパーグローバルハイスクール(SGH)事業成果指標の再考について
  ・スーパーグローバルハイスクール(SGH)指定終了後の対応について

5 議事録

○スーパーグローバルハイスクール(SGH)事業検証について,検証機関より報告が行われた。その後,SGH事業成果指標の再考についてと,SGH指定終了後の対応について意見交換が行われた。


【委員等からの主な意見】
事業検証について
○先日議論したように,高等学校の役割というのは,力そのものを付けるというよりはポテンシャルを高めるということで,大学でそれを磨いてもらうということだ。卒業後にどのぐらい伸び率があり,社会に出る一歩前までの間にすごく磨かれて今まではなかったような人材として,大学が社会に送り出せるということになれば,成果である。

○提出された調査を集計して出した結果は,アウトプットを把握するのに近いところがあり,卒業後の職業選択やその後どういうふうに世の中に貢献していくのかということを考えることに,どう影響していくかということは,卒業して1年,2年では測れないはずだ。可能であればもう少し長く続けていただいて検証に反映させていく。元々そういう事業だという説明がきちんとできればよいと思う。

○SGHを受講した生徒は海外文化,国際コミュニケーションや法学・政治学の学部への進学率が高く,非受講生は理工系学部への進学率が高いという結果が出ているが,SGHは本来そういう発想ではないのではないかと思う。海外のいろいろな状況を見て,どうやって自分が貢献していくかを考えた時に,別に文系の道ではなくても,医者や保健関係の仕事もあるし,いろいろある。これは過去のプログラムの構成の影響があったのではないか。海外にとにかく出すとか,とにかく留学させようという感じになってしまったのではないか。しかしそういうところも踏まえてまた新しい年度以降,プログラムの立て付けを少しずつ変えていこうということなので,今後それがどう変わってくるか,スーパーサイエンスが理系向けで,こちらは文系向けというわけではないのだということがもう少し出てくるとよいと思う。

○保護者へのアンケートについては経済的な負担についての質問ぐらいでよいのではないか。いろいろな評価や成果を測るべき主体はあくまで高校生本人,そして彼らが卒業後どうなっていくかというところにアプローチしてやっていくところが主であってしかるべきではないのか。

○母数が多くあるので,グルーピングして見ても何らかの傾向が出るのではないか。例えば経済的な負担等について,高校の種類によって分けて分析すると,もしかしたら違うところも見えてきたりするのではないだろうか。

○これだけ詳細な分析が行われていて,これが今後どう使われるのかというところに関心を持った。次に新しい取り組みがされるときに,ぜひこの結果を新しい学校でもよく見ていただき,どういうことが効果があったというふうにその前のフェーズで検証されたのか等,さらにインタビュー等がされるとエビデンスが出てくると思う。毎回最初からのトライアルとか経験になるのではなく,こういう結果が活かされるといいと思う。

○管理機関では「論文発表,ポスター発表」,「学校訪問」が横ばいであるというのは,管理機関の方がこういうものに参加していないということになろうか。であれば次年度WWLなどをやる際には管理機関にとってかなり負担と感じると思うので,本腰を入れる必要があると思う。

○非受講生徒の理工学部系の進学率が高いというのは,SSHとSGHを両方受けている学校が結構あり,理系と称されている子どもたちにはSSH,SGHの方は文系というふうに分けているケースもあるので,ある意味当然の結果と思う。この事業が始まる前に「SSHがあるので文系型の探求学習のプログラムをつくりたいのだ」いう説明もあったので,やはりその名残というものはあるのではないか。

○法学部は国際化が一番進んでいない学部だ。日本の法律を学びに来る学生がいないので交換留学のプログラムをつくれない。そこに高校の先生等に一番つぶしが利くからといったことをいまだに指導されて来ている生徒が多いようだ。だからすごくこの結果には違和感があるが,なぜ法学部に進むのかということは分かるか。

○本人は人文社会的な能力があるし,好きかもしれないけれども,医学部に行くとか,それから東京大学の法学部を目指すとか,何か違う次元で動いているのかなと思う。一方で学校名とか偏差値だけではなくて,自分の能力,素質を伸ばすとか,そういう回答も見受けられるので,そういう方向につながっていくにはいい取り組みなのではないかと思う。

○アクティブラーニングを高校時代に体験していましたかというようなアンケートがあって,高ければ高いほど自分で学びたいものを学んでいる,学部を選んでいるというある結果がある。やはりAO入試とか指定校推薦の生徒がその結果は高く,そういう生徒の方が一般入試で入ってきている生徒よりも,本学では入学後の成績が良い。やはり何を学びたいかはっきりしている方が成績は有意に出ている。だからその辺も今後調査するといいのではないかと思う。

成果指標について
○成果指標とは,成果が出ていると一言で言えば,何でもって成果が出ていると言えるのか,ということだ。そもそも目的は何だったのかという辺りで,あまり言葉を飾らないで,すぐに理解していただけるようなものを出さないといけないかなと思う。

○行政事業レビューの資料に書かれている表現を拝見すると,成果指標は成果を測ることができているのか疑問とある。新たな指標を追加してほしいとかというレベルではなく,疑問という意味は,子供を海外に出すことがアウトカムみたいになってしまっていないか,それが成果なのかとレビューの評価者から聞かれているのではないか。全てアウトプットの指標のようになっているのではないか。だから従来の指標をやめることは別にしなくてもいいかもしれないが,アウトカムとして何を把握するのかということをもう少し考えて,前面に出さないといけないのではないかと思う。追加指標の案としてグローバルマインドセットやコンピテンシーを出してくださっており,それらがうまく取れればいいが,外に出た生徒数とか留学した生徒数というものであればそれはアウトカムではない。

○立ち上がりのころは,直接海外の大学に行ける子どもを育てるべきだというの割と強い声があった。海外の大学に直接進学できる生徒をといった方向も少し影響を及ぼし,ゆらぎながら成長してきたという経緯がある。

○次年度以降につながることを考えると,リージョナル型は必ずしも海外で働く人材の育成というわけではないので,アウトカムとアウトプットは分けて考えた方がよい。アウトカムはそんなにたくさん並べられない事業もいっぱいある。最終的な成果は何かというと,なかなかつかみにくいけれども,挙げるとすればこれだろうというのものをきっちり幾つか挙げておく。この事業は来年度以降2コースに分かれる予定だが,両方に共通なのは,今すごくこの国が置かれた環境が変わってきているということを,生徒たちがきちんと認識できて,学校を出て社会に出て働いていくときにどういう仕事によって貢献していこうか,その課題の解決に当たれるかという,問題意識を持たせるということが一つ。もう一つは能力も必要だ。きちんと英語もできないといけないし,語学だけではなくてコミュニケーション能力がなくてはいけない。だから二つ大事なことをアウトカム指標に持ってきて,今までアウトカムとして挙げているのはアウトプット指標で挙げれば違和感はないと思う。

○世界で活躍する人はもっと増やしたいという教育を大学も高等学校もやりたいとなったときに,一つは海外で活躍される人の行動特性を知る必要がある。これがコンピテンシーだ。この度そういう行動特性や能力が分かったとすれば,そういうコンピテンシーを高等学校の段階からしっかりと育てて,ポテンシャルを高めて大学に送ってその量を増やさないといけない。そうでないと質も高くならない。このカリキュラムはたくさんの子どもたちが,将来のグローバルな人材を目指している。職業の選択と同時にコンピテンシーの準備をしておかないといけないので,コンピテンシーが付いているか付いていないかというのはやはり測っておかない。アウトカムは,どれだけの子どもたちがそういう意識や能力を持って高等学校を卒業し大学に入って,さらに磨いて,それにふさわしいカリキュラム,最適なカリキュラムをたくさん多様性も持ちながら開発してくれたか,ということだと思う。「ああ良かった。これなら日本もやっていける」という状態ができることが本当のアウトカムなのだ。

○SGH事業の成果をグローバルマインドセット,コンピテンシー,PPDAC(探求学習)という能力が生徒にいかに付いたかということで測るというのは,すごくいいと思う。それがこの事業の目的である。しかし,それをどう指標でつかまえて,レビューシートに載せられるような指標にするかというところがなかなか難しい。対象校に悉皆調査をかけてやるというようなことができて,しっかりと結果を示すことができれば載せられると思う。

○あと残るのはそれを物語ってくれるアウトプットをどのように整理するかだ。それが海外留学数なのか,その辺はこれから再検証を待たないといけないが,そうやって整理していくと非常に分かりやすくならないだろうか。それで各学校を再評価してみると,ポテンシャルが高まっているかどうか,海外研修も修学旅行で終わっているなどおざなりなカリキュラムになっていないかどうか等が分かると思う。

○指標化するときにはこの中で重要そうなものを例えば三つとか五つに絞って,それぞれの特性について生徒本人に聞くものと先生方の評価を聞くものと,できれば何か客観的に把握できるものに絞った方がいいのではないか。それを組み合わせてそれぞれの三つの指標をつくって,最後のアウトカムの指標にするとよい。それはもちろん手間もかかり,時間的に何年か経過しないと出てこないというものがあると思うが,アウトカム指標とはそういうものでもいいはずだ。

指定終了後の対応について
○研究期間が過ぎても,ずっと永久的にSGHだったということのお墨付きを付けてあげるということについては,あまり積極的に賛成できる内容ではないと思う。もし出すのだったら,何年から何年までといった説明を付けなければ,永久保証のようになるのはよくないのではないか。

○この趣旨は,終わったらそれで全て終わるというのではなくて,SGHの成果もそれぞれ上がっているので,誇りを持ってそれ以降の高等学校教育に残してもらいたいということだ。そのためには何かインセンティブがあった方がいい,あるいは社会的な認知が受けられるような,そういう支援をしてあげられたらいいのではないかということだ。

○ただその効果はホームページ等にマークを載せたりすることで,ブランドを構築したいということだろうが,その期間においてSGHだったということにしか過ぎず,特に公立は教員が5年程で入れ替わるので,教育保証を文科省がするわけにはいかない。だから少し違和感がある。

○学校ブランドとか学校イメージにこういうものを活用したいという学校側の意向は,実態的には強いのだろうという印象は持っている。例えばホームページにその後の活動が継続されているような記録を出すとか,さらに拡大しているような活動をきちんとホームページで公表して,その後さらに国際化や子どもたちの成長も見られるというようなものがあれば,もちろんいつからいつまでの間は認定されていましたと書くことはうそではないのでよいのではないか。そういう形で永年保証のような意味だけではなく,逆にそれが学校側にとっても,責任や義務というような形になっていくとなれば,まだこういうものを今後に向けても使うという意味が出てくるのではないか。

○何年から何年まで指定されていたかをホームページに書くことは別に問題ないので,その期間スーパーグローバルハイスクールだったことに誇りを持って,その後もこういうふうに取り組んでいますということを報告してもらうということで,何ら問題ないのではないか。例えばSGUでも,指定されていたということを何年もしてから使うところは多分ないと思う。積極的にその後どうしているのかということの報告をホームページ等でぜひしてくださいとか,その地域における普及活動,それから今度できるWWLなどのコンソーシアムに積極的に参加してくださいというような働き掛けをするとか,それで十分なのではないかと思う。

○過去にSGHの指定を受けていた学校が,今,指定を受けているところと全く共通のエンブレムやロゴマークを使うのは問題だ。書くのだったらSGHの何年から何年と書いて,この事業自体もいずれは自立していただきたい。国費を出している間だけだということではなくて,それを最初のきっかけに使ってつなげていけるようにということなので,この学校はこのときに国から支援を受けてこの事業を立ち上げて,今軌道に乗せているのだなと分かるようにするのがよい。

○保護者の中にはSGHだからといって進学させている方もいる。その子が3年終了するぐらいまでは,このサスティナブルなカリキュラムはきちんとやってもらわないと,信頼を裏切ることになる。またグローバルな人材養成は,しばらく日本の大きなテーマになり続けると思う。だったら新しい事業は新しい事業で別にしておいて,これで開発されたカリキュラムがさらに一部でも生き延びて高等学校がグローバル人材の育成ということに取り組んでくれるような,そういう自覚,オポチュニティ,そういうものを期待したい。後継事業があるからそれで終わりではなく,これで育てたものは本当に効果もあるので,エネルギーを大量に投入しなくてもうまくいく部分は結構ある。そういうところがきちんと残っていって,絶えずルーブリックを使いながら,この学びを検証しながら将来世界で活躍するという意欲を高めていただきたい。

○長期的に考えたときに今後,認証評価的にこの学校はグローバル人材を育成するカリキュラムを備えているという形で,質を保証していくというのであれば,そういった認証評価を受けている学校だということを恒常的に付けていくということはいいと思う。ロゴに関しては,もし使いたければ,何年採択というのはやはり入れるべきではないかと思う。

○指定終了後の結果にはばらつきもあるので,サティフィケートを出すというと違和感がある。もちろんいろいろな構想の計画を聞いた上で,認定する方がSSH,SGHと言えるかどうか決めているとは思うが,サティフィケートを出すほどのものではない。

○最後に、事務局より今後の開催スケジュールについて説明があり、閉会した。

以上

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