スーパーグローバルハイスクール(SGH)事業の検証に関する有識者会議(第5回)議事要旨

第5回

1  日時

平成30年5月23日(水曜日)14時~17時

2  場所

筑波大学東京キャンパス文京校舎 3階 337会議室

3  出席者

帯野久美子委員,萱島信子委員,河村小百合委員,田代桂子委員,永井裕久委員,二宮皓委員,内藤徹氏,藤田美和氏,
長尾篤志視学官,小幡泰弘国際教育課長,佐藤由郎室長補佐,矢田裕美係長

4  議題

(1)JICAとの連携について
(2)討議
・SGH事業の検証
・SGH事業の成果の把握
・SGH事業の今後の在り方

5  議事要旨

 ○JICAより資料1に基づいて説明が行われた後,質疑応答が行われた。
 ○SGH事業の検証,成果の把握,今後の在り方等について,以下のとおり意見交換が行われた。


【委員等からの主な意見】


○アジアの国々とのつながり,もしくは途上国とのつながり,中進国とのつながりが非常に大きくなってきている。日本に滞在している外国人の数にしても,もしくは経済関係や地域の安全保障などさまざまな観点でも,ASEANとのつながりが非常に強くなってきていると思う。そういう意味で,ぜひ高校生にも途上国への理解,アジアへの理解を深めてほしい。ODAやJICAだけでなくNGOも含めた様々な国内にあるアセットをどう活用するかということを取り入れるとよいのではないか。

○ぜひ高校生に実体験をして,感動を味わってほしい。心を動かされるような経験をすることが,その後の生涯において,グローバルなことに関わる視点を持ち続ける原動力になるのではないかという気がしている。もちろん,体系立った知識を習得することが大前提だとは思うが,多様な世界を実体験するような経験がつくれると良いのではないか。

○海外研修の体験について多くの高校生から話を聞いてきたが,やはり実際に行くとなると,経済的な制約や人数の制約がある。今は技術も進んでいるので,テレビ会議で海外の学校とつなぐこともできる。生徒に疑似体験や,間接的に世界を実体験させていく、そして,子どもたちが驚くとか感動するような経験をうまく盛り込んでいけるようになればよいと思う。

○教員が重要だというのは,いろいろ学校を見ても感じたところだ。グローバルなマインドを持った先生方が準備していく授業,グローバルな教育の経験を先生方が蓄えていき,それを授業に活かすことがやはり重要かと思った。

○JICAとの連携に関しては,個別に全てに対応するのにはJICAも限界があるので,拠点的な学校に対してもう少し集中的に協力することによって,そこで様々なより進んだ経験を積んでいただき,その経験が他の学校に広がっていくというメカニズムができると,SGH全体にとっても良いことではないか。また,協力隊経験者は日本全体にとって非常に大きなアセットではないかと思っている。JOCV隊員は,途上国の各地で現地の人たちと同じ環境の生活をしてきており,JOCV帰国隊員を日本の教育現場でぜひ活用していただけると,日本にとってプラスになるのではないか。もしくは,現職教員の隊員派遣の促進も進めることができればいいと思っている。そうしたことをすることによって,実体験にもう少し結び付いた教育ができればいいのではないか。

○JICAの予算や人を急に増やすことはなかなか難しいので,例えば文科省とJICAと連携してどこかに拠点的に支援し,そこで支援したことが他のところに広がっていくような仕組みのようなものが何かないだろうか。JICAだけでなく,民間企業との連携などにおいても,同じように面的に拡大していくのは限界があるので,もう少し体系立って,一つ支援したことが広がっていくようなことができると,より効果的に数も拡大していく可能性もあるのではないか。情報の共有をするなど,もう少し仕組みを連携させることでできると良いのではないか。

○やはり体験するというのが一番いいことである。JICAの中で,高校生のための海外ボランティアという制度が可能だろうか。危険を考えなくてはいけないが,高校生が国際協力ボランティアとして,数日間参加できるような,実際の国際協力をさせていただくことは,連携の在り方として可能か。

○ビジネスパーソンだけではなく,将来,看護師として世界的に仕事をしたい等の夢を抱く人もいる。SGHの生徒たちなら海外へ行ってもやれるのではないかという印象を持ったので,高校生海外ボランティアのような,JICAイニシアチブのようなものができればと思う。

○SGHについては,JICAの一般的な開発教育よりももう少し目的やターゲットを絞って,どんな力を付けて,何をさせて,どうするのだというプログラムを文科省と一緒になって共同開発し,共同教育課程のようなものを作ってもらえるとありがたい

○まず,この事業を検証するのは非常に難しいと感じている。そもそもグローバル人材という定義が出発点から現在曖昧なのではないかと思うからである。グローバル人材,つまりグローバル化,グローバリゼーションというものがどんなものなのか,何をもってグローバリズムに一応成功とするのかという定義がよくつかめていなくて,その上で検証するというのは非常に難しいと思っている。“グローバル”というものの定義をどこかでもう少し見つめなおさなくてはならないのではないだろうか。

○我々はその成果を出していかなければならない。どうやって成果を検証するのか等,いろいろな意見が出てきたが,今後は,グローバル教育のパターンに分けた方がよいのではないかと思う。トップ型,地域貢献型等の案があるようだが,やはり地域貢献型がどうあるべきなのかというところを見つめていかないと,このSGHを何をもって検証するのか,今後どのように事業展開するのかがなかなか見えないと思う。

○日本の美しさは地域にしかない。日本が守るべきもの,世界に発信する日本の価値というものは,伝統,文化,人の生き方だと思うが,なかなかそこは気付いていない。本当に,観光,産業,振興,消費の根底にある日本の価値をどのように次の世代が見つめて大切に守り育てていくのか,世界に発信するのか。そういうところまで突っ込んで,今後考えることができればと思っている。

○ターゲットをどうするかがやはり難しい。SGHがなくても立派なリーダーを輩出していくのだろうと感じた学校もあれば,一方でなかなかSGHに時間を割けない学校もあるところで,どのように学校を選ぶのかということである。また,やはりどこの学校も先生方は本当に忙しいので,うまく先生方もしくは学校全体の負担を軽減しながらこういう新しいことをやってもらうということを併せて盛り込んでいかないと,なかなか変わっていかないと感じた。

○実際に海外に行った生徒たちにいろいろと効果があるのは当たり前であり,もしこのSGHの効果がそれだけであれば,効果の把握として足りないのではないか。海外に行った生徒だけでなく学校全体が底上げされなければ,国がなぜこうして事業をつくって国費を入れてやるのかという説明がなかなかつかないのではないのか。

○国際教育に携わる先生方をどう育成するのが大事かという視点もあまりなかった気がする。一部の学校では,青年海外協力隊に行った経験のある先生がいたからこそできたという話もあるが,そういう先生が他の学校に異動したときにどうなのか,せっかくの成果をどう共有するかという枠組みもなかなかできていないと思った。
 
○県内でいかに成果を共有するかを教育委員会にも考えていただきたい。どう地域全体の底上げにつなげていくか等ということをきちんとこの事業の要件にして国費を投入していかないと,説明もできないし収拾も付かないのではないか。

○グローバルリーダーというものをあまり無理に定義しなくてもいいのではないか。今の時代,都会にいればとか,地方だとかということは関係ない。それぞれの地域にもいろいろな波が押し寄せてきていて,今の子どもたちが社会に出ていく際に,それが東京だろうが地方だろうが,求められる役割や海外の方との付き合い方はいろいろ違うだろう。世界トップレベルの研究者になるとか,ビジネスマンになるということだけがグローバルリーダーではない。

○でも,大学レベルになると八十数%以上が大都市圏,特に関東に集中している。高等教育の機会,あるいは出版などの機会は,ほとんど東京に集中しており,最終的には東京で多くの学生たちが育成されてきている。グローバル人材として準備してきた高校生が,たくさんの県からほとんどが東京・関東圏に進学する。そういう意味では,果たして都会と地方というコンセプトがグローバル人材には通用するのかどうか。グローバル人材というのは日本全体の責任ではないかと思う。

○自分自身が帰国子女だという経験も踏まえて考えると,一つは経験がきっかけになるということはすごく大切なので,留学するとか研修する場はとても大切だと思う。しかし,実際は帰ってきてからそれをどうやって維持して,どうやってサポートするかという受け皿がない限り,本人がそう思っていても,残念ながらそこで終わってしまうことがある。学校の場において,さらには企業側において,そういう人材をどうやって維持してサポートしていくかというシステムがないのは,非常に問題だ。英語の教育にしろ,企業側にまだ受け入れの準備ができていないのが,最大の問題の一つではないかと思う。

○今回のSGHのテーマではないが,やはりコミュニケーション力が非常に大切だと思う。今,実際問題として,これからは小学校3年生から英語を勉強しても,大学卒業した時点で大してコミュニケーションができないというのは,膨大な時間と労力とお金の無駄だと思う。それだけ費やすのであれば,大学卒業する頃までには最低限コミュニケーションができていないといけないと思うので,SGHの枠組みの小さな片隅かもしれませんが,語学の問題だけではなく,どうやってコミュニケーション力を付けるかということもあっていいのではないか。

○最終的には,企業に勤めている人間としていろいろな危機感がある。やはり外に出張って戦える日本人がいないと,そういう日本の良さも享受できないと思うので,もう少しアグレッシブにならなければいけないのではないだろうか。また,京都にある京セラにしろ,パナソニックにしろ,ワコールにしろ,任天堂にしろ,皆さん大変グローバルな企業で,別に東京に本社を移すわけでもなく非常に活躍している。どうしてグローバルなのか考えると,恐らく東京を見ていないからだと,各企業の経営者はおっしゃっている。そこから学ぶべきことはあるのではないか。非常にテーマは大きいとは思うのだが,この事業に対しては,やらないよりは,もう少し学校の選定の仕方を教育委員会も含めた体系の中で選定する等,考える余地はたくさんあるのではないかと思う。

○今回のSGHのプログラムはスタートアップだと思う。そういう意味で,各学校から出された研究開発課題には独自性があるという認識でスタートし,それ自体はすごくいいと思うが,今後新しいプログラムに向けては,今まで分散しているものの中からベストプラクティスを抽出して修練させ,それを共有していくという枠組みが必要ではないかと思う。

○例えばベストプラクティスを統合したような地域別プログラムを提供して,開発されたものをさらに発展,展開して,なおかつ特定の学校だけではなく,周辺校にも広げられるような仕組みづくりをしていく,そのための資源投下をすべきではないかと思う。

○評価の見直しが必要だと思う。現在,検証をする上で,非常にハードなデータだけで捉えている。もっとより質的な評価というものが必要になってくるのではないか。そのために,複数のステークホルダーを取り,中身をより質的な観点から検証し,失敗事例から学ぶことや,共有できるものは何なのかということを,そしゃくしていくことが重要ではないかと思う。

○グローバルリーダーというのは常に変わると思う。その時に,複数の次世代グローバルリーダーの育成に関わる人たちが,その定義設定に関わるべきではないかと思う。例えば卒業生,SGHを経験して,彼らが就職して実際に働いてみたときに,グローバルリーダーは何なのか追跡調査するとか,それから国内で協力してくださっている連携機関,国際機関や民間企業,NPOなどがあると思うが,そういう方々から見て次世代のグローバルリーダーにこういう能力,資質が必要なのだという視点,あるいは国内だけではなくて海外からの視点も必要なのではないだろうか。

○各県No.1とされるトップ高校の卒業生が,将来日本を引っ張っていくことを考えると,そのようなトップ高校の教育の質を上げるにはどうしたらいいかという教育課題に,真正面から取り組む必要があるのではないか。

○次回は文科省,また委員会が,SGHの目的,例えば期待される最終成果などをより明確にし,例えばターゲットを絞り込むとか,カテゴリー分けをするとよいのではないか。税金を投与しているので難しい面もあるだろうが,文科省側・委員会側の要求がうまく伝わっていない,ミスマッチしている点が多いような気がする。TGU事業のように,複数のカテゴリーに分けて募集することも考えてはどうか。

○県立の高校現場は管理職,教諭,県の管理者の異動が頻繁にあり,誰が最終的な成果に責任を取るのかがはっきりしておらず,長期的な事業を展開しにくい。応募する際には責任者をはっきりとした上で,面接だけでなく,コンサル的なことを導入したらよいと思う。

○結局,日本の学校では生徒が自分自身をしっかり出せない,教室の中で受け入れられないということがあるのではないかと思っている。そういう方向にとにかく変えていかなければ,グローバル化はできないのではないか。

○公立高校は異動があるので,何年か経つと最初に取組を作った人たちが半分ぐらいいなくなって,骨抜きになっている。それが大きな問題だと思っている。最終的に,やはり管理機関がしっかりそこをバックアップしなければいけないと思う。異動があるから,だんだん先生方がやりたい取り組みではなく,やらされている取り組みになっていて,これでは駄目だと思う。いい取り組みも,やらされているから,生徒がそこを見てしまって,いいものにならないという気持ちがある。

○SSHとSGHの両立は難しいのではないか。「グローバルサイエンスハイスクール」にして若干多めの予算を付ける等,何かうまくやればバックアップできるのではないかと思う。

○サクセスストーリーからモデルを作るのもいいのですが,ものの真実を見るには,うまくいかなかったところから見ていく方がいいと思う。現場の方で,「最初申請したけれどももう少し修正したい」というような声がないのか,またそれは可能なのか。

○これまでの評価の仕方に反省点がある。また公募するときにもっと具体的な要件を示さなければならない。それは教育委員会などの管理機関の役割も同じだと思うが,申請時に海外フィールドワークの中身等もっと具体的な計画を出してもらい,応募の要件を踏まえて指定すべきである。例えば海外のフィールドワークにしても,これまで行っていた海外研修と同じようなことをして一部負担してあげているということであれば,SGHとして新たに何を開発するのかというところがあまり見えない。やはりSGHとして行く以上,それなりの海外フィールドワークという以上は,単に何かを見に行っているだけではなく,例えば国際的な会議で参加して発表してくるとか,自主体験を伴うボランティアなど,一段高い要件を課すことが必要だ。また、例えば5年間ではなく,3年とか,何年間である程度の成果を出さなければ延長できないというような緊張感を持たせる必要があるのではないか。そして,そうした各学校のフォローアップ,つまりただ学校に任せているだけではなく,やはり教育委員会を含めてしっかりアドバイスする体制をとっていかないと,やらされている感じで惰性的になってきてしまっている学校があると思う。やはり国の税金でやっている以上,そういうところは最初のスキームの中に位置付けていくのが非常に重要で,指定のときにしっかり要件として示した上でやっていく方が,より実行力があると思う。

○一概に全部とは言えないが,公立学校が最初に指定するときには,教育委員会がかなりイニシアチブを取っている。やはり教育委員会も,指定された後は学校に任せ切ってしまうと,教育委員会と学校の間で意識の差が出てくる。特に,もし地域の貢献や普及などをするなら,やはり学校だけではなく教育委員会が県の事業として,しっかりサポートし,県としても何らかの負担をしてやっていくことが必要ではないか。例えば県教育委員会として,SGHのためだけではなく,県全体の高校生に対してその成果を普及する授業を必ずするなど,公募する際にそういう具体的な要件を指定する形にした方が,より実効性のあるものになる。教育委員会としても,この学校,県の教育全体を良くするため,またレベルアップするため,きっかけづくりのためなど,目的や関わり方が分かれています。われわれももっときちんと具体的なアドバイスをしつつ,申請のときにそれを条件に出して指定するというやり方も必要なのではないかと思う。

○公立高校の場合,都道府県の教育委員会の問題意識の持ち方にばらつきがあると感じている。今の段階ではプログラムに要件があまり事細かに付いていないこともあって,それぞれの力量で同じ予算を渡しても,出来上がってきたプログラムはばらけてしまう。その差をどうケアしていくのか。少し海外に行って終わりになってしまうものと,JICAに相談して少しボランティアができるようなものとか,国際会議などをやっているところもある。そのようなことはどこの学校でもできる話ではないと思うが,そういう経験をさせられればすごくいいと思う。

○学校としてリーダーを育てるというのはもちろん大切だが,生徒自体がリーダーになるという意識が必要だと思う。実際,生徒たちにはおそらく自分がリーダーになるという意識があるので,どこかの段階でその人たちを集める作業があると,それぞればらつきがいろいろあっても意識の共有ができて,そのつながりができてくると,何年間もやっているので広げやすいのではないか。生徒自身が,隣の県のSGHに指定されている高校生とコミュニケーションをとれる場があってもいいのではないか。

○今,筑波大附属高校に幹事校をやってもらっているが,123校の幹事校なので,全てをまとめるということがそんなにできるわけではないので,もう少しそれを取りまとめるような中幹事校のようなところがあるとよい。

○この次のSGHを考えるとき,リーダーというコンセプトを残すかどうかについては,がちがちの定義をする必要はないと思うが,自分がリーダーだからある程度普及しなければいけないということと,あとはコミットするという意味でも,意識は必要なのではないかと思う。

○次のSGHの事業の中では,グローバル・シチズンは高等学校の学習指導要領に入ればいいことだが,グローバルリーダーにどの程度こだわるのかというのは,やはり社会で決めてもらわないといけないと思う。それを前面に出す方がいいのか,少し控えたらいいのかとか,あるいは出すのなら明確にした方がいいのかという,そういう問題がありそうな気がする。

○グローバル化するというのは,企業であってもトップになるだけではなくもっと多様なもので,むしろ地域によってもその地域をリードするというより,地域で世界と共に生きていくとか,そういうものだと思う。

○着地点はどの辺なのだろうか。さらに5年先や10年先を考えたときに,次の時代にふさわしい力を付けてもらうためにはどんなカリキュラムが必要かということは絶対必要だ。これならうまくいくというものを,学習指導要領に教科なり領域なりとしてきちんと入れるというところが着地点なら,文科省らしい。初中局らしい。大学とは全然違う。高等教育とも全然違う。だから初中局の課題というのは,そういう学校の教育課程にきちんと返して国民の財産にしていくということであり,あとは大学へ行くか,世界に出るかは自由。だからその辺がもし着地点なら,それらしく考えていかないといけない。

○やはりある程度,リーダーの人たちが受益者になってもらいたいと思う。そのときのリーダーというのは,必ずしも海外に出てばりばり競争して働く人たちだけではなく,地域社会や日本に影響を及ぼせるような人たち,改善していける人たち,他の人たちに影響を与えていける人たちが受益者になってほしい。グローバルリーダーと言ったときに,国連職員や国際的な企業の海外派遣社員のようなイメージだけにすると,残った日本はどうなるのだろうという気もする。多分そこだけが活躍の場所ではなく,地域社会にもグローバルなリーダーが必要であると思う。

○世界の環境に貢献するというのは,必ずしもSDGsもそうだと思うが,東京である必要もないし,海外に行く必要もないし,日本で十分だと思うのだが,そういう立場の方が自分をリーダーとして,今の自分のいいものをどうやって世の中に広げていくかという意識があるということが大切だと思う。

○SGHの取り組み,グローバル人材論のリストを見ていて一番個人的に気に入っているのは,グローバルな社会の中でけん引してくれる人材という表現が,非常になじみやすかった。だから,やはり世界を相手に引っ張ってくれる人が欲しい。

○だから,この次は「何でもどうぞ申請してください。その中からいいと思えるようなものを選定しましょう」ではなくて,もっと条件を課して,こういう枠組みの中でこういうことをやってもらいたいとすれば,それが国としてやるべきことかどうかという議論をしてもらえるのではないかと思う。このような学習の機会はぜひ高校生に残してやりたい。学習指導要領が決めた範囲内で交付税でやるだけでは,やはり地方はお金がないので,なかなか伸びる子が伸びない。

○首都圏の一定の裕福な家庭の子以外の,そういう機会のない子どもに機会を与えるという意味では,地域貢献のようなことになってくる。機会の少ないところに機会を与えるというのが大きな事業だと思う。

○国際理解教育において,多様性を認めることを日本の教育の中でもっと広げること,社会への参加意識を育てることが重要だと思う。国際理解教育をやっている立場として,SGHに対してはすごく期待感がある。国の事業としてやっていることで多くの生徒に届くので日本教育のグローバル化が進む,大きな事業だと思うからだ。生徒に対してのリーダーシップもあると思うが,SGH校が他の学校に対してのリーダー的存在,モデル校的な存在として日本教育のグローバル化が進むという期待感を持っている。

○もともと日本人は,協調性もあり,同質な社会の中で一生懸命働くことは得意だが,いろいろ国際的な関係ができてきていて,そこに対応できる人材が育っていかないとこの国はやっていけない。やはり経済成長というと,一人一人の国民の働きの積み重ねなので,どうも今の環境変化に合う形で力を出せる人間を育てられていないのではないかという気がする。高校の段階でそのような力を強化するための取り組みだと思うので,十分意義はあると思う。そういう教育をうまく高等学校の段階に根付かせていき,できれば特定の学校,特定の生徒だけではなく,うまく広がってほしい。それが広がるようなうまい枠組みを考えられるといいのではないのかという感じがする。お金の限りもあるし,よく類型別に分けて考えなくてはいけないと思う。ジャパニーズイングリッシュでいいから出ていって堂々と話をするとか,そういうことがすごく大事である。現在は,インドの方がいたり,中国の方がいたり,香港の方がいたり,そういう人たちと一緒に働くのが普通だ。日本国内にいれば関係ないということでは全然ないので,これからの時代というか,もう実は時代は変わっていたのについていけないからこういうことになってしまったのかなという気もするが,少しでもついていける形にする,その人材がやはり基本だと思う。それを立て直すための事業ではないか。

○けん引するだけではなくて,異なる人たちと一緒に働く力,何かをするという機会は今のSGHのカリキュラムではなかったのではないか。海外に行って,スタンフォードかどこかの先生や学生と話すことはあるけれど,多様性でけんかするような人たちの中で磨き上げるというものはなかったかもしれない。

○やはりカリキュラムはただの手段,プロセスなので,どういう人が欲しいかということが明確にならなければいけない。だから,どういう人材が欲しいのかを国としても明確にすることが必要だ。もちろんそれを類型化して構わないので,類型化したら,その類型に合うようなカリキュラムをしっかり作ってもらいたい,そして子どもを育ててもらいたいということだ。

○単純化してしまうとよくないのかもしれないが,まさに海外でばりばり,国際機関やビジネスマンとして活躍するようなグローバルリーダーを育てるのがアドバンス型で,地域のグローバル人材として,地域でグローバルな視点を持って,観光や地域産業,そういういろいろなものを引っ張っていく人材を育てるのが,地域普及型だとイメージしている。今までは,それを同じ仕組みの中で募集し,審査し,指定し,評価し,同じ金額でやってきたところが,やり方として良くない点があったと感じている。

○アドバンスであろうが地域貢献であろうが,高校だけではこのSGHはできない。やはり大学の力,JICAの力,いろいろな企業の力が,いずれにしても必要だと思う。それぞれがそういうスキームを作れるようにしていく必要がある。海外へ行くだけがグローバル人材ではないが,そういうアドバンス的な人材,まさにそういうレベルの人たちを,もっと日本の高校レベルから育てていかなければ日本はもう遅れていると思う。もう既に遅れているといわれている議論が結構行われている一方,教育委員会の方などと話すと,やはり地域のグローバルという視点が,観光だったり,外国人が増えてきたりという地域の中での議論で起きているという。その両方があるので,その辺をこのSGHとしてどう受け止めていけばいいのかというところはある。

○特色型についてはまだイメージがはっきりしているわけではなく,例えば,今でも芸術だったり農業だったり,そういう特色ある学校がSGHになっているので,それをちゃんと受け止めてあげる必要があるのか,受け止めることができるのかと議論する必要がある。

○カテゴリーわけすれば,要件に応じたアウトプット指標が決められるので,指定1~2年目から,アウトプットは出せるはずであるし,やらされている感もない。お金の使い方も効率的になる。

○それぞれの育て方の方法論として,高校だけでプログラムを作るのはなかなか難しいので,大学や,JICA,他のいろいろな民間の団体,交流財団,国際財団などがやっているプログラム,ユネスコ,企業等の外部の機関と連携してやることを要件としてお願いしたい。

○多様な機関とぜひ連携して進めてほしい。高校生の方たちに実体験もしくは疑似実体験,間接的実体験などしていただくことが非常に重要ではないかという意味でも,学校の関係者や学校の中だけで完結するより,やはり外部のさまざまな機関と上手に連携したり活用したりしながらやっていただくのが,実体験に近いことに近づく方法かもしれないと思う。その橋渡しの役割を教育委員会や文部科学省でやっていくのがよいと思う。

○JICAの,今既に持っているプログラムをもっとうまく使わせていただくという意味で,このSGHは最終的には高校での教育課程にどう生かしていくかということだと思うのだが,これを教える先生方の育成も大事なのではないかと思う。公立学校の先生方などが実際に青年海外協力隊に出る仕組みはもうできている。県であれば,県の教育委員会が自分の県でこのSGHをやっていくときに,それをどう回していこうか,それを担う基幹になってくださる先生をどう育成していこうかということをもっと考えていただくような枠組みにする。そうすれば別に新しく何か付けなくても,今ある枠組みで先生方に行っていただくことはできる。

○グローバルな力を付けるカリキュラムを展開できる教員研修が必要だ。JICAの研修も何人か枠を貸していただいて,スーパーグローバルハイスクールの先生を県として生徒とセット型という感じで派遣してみるということもできるのではないか。

○協定でも5年間という指定でやっているので,同じことを6年目,7年目やりますということで手を挙げられても,それはもう5年間でしっかり結果を出してくださいということになる。当然,カリキュラム開発していただいているはずなので,その部分はお金がなくても引き継いでやってくれているはずだと。今のままではなく,よりレベルアップ,バージョンアップしたものをというやり方をしていかなければいけない。後継というか,発展的に継承していくようなイメージである。申請の主体なども,公立学校については教育委員会でやっていただくというのも一つの考え方だと思う。そうすると,今のものとは全然違ってくる。

○最後に、事務局より今後の開催スケジュールについて説明があり、閉会した。

                                    以上

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(初等中等教育局参事官(高等学校担当)付)