【資料5-3】田村委員提出資料

高知県における国際バカロレア教育の導入に向けた取組(高知県教育長 田村 壮児)

1 高知県における国際バカロレア(IB)教育の導入の経緯とその目的

本県では、少子化による生徒数の減少が進む中においても、高等学校の教育の質を維持・向上させるために、高知県高等学校再編振興計画を平成26年10月に策定した。この計画において、一定の生徒数が見込まれる地域については、1学年6学級以上の学校規模の維持に努めるとし、高知南中学校・高等学校と高知西高等学校を統合することとした。他方、社会や経済のグローバル化が急速に進む中で、本県においても外国人観光客が増加し、一次産業分野でも海外との取引が進むなど、子どもたちがグローバル社会で活躍していくための環境を整備することは重要となった。こうしたことから、高知県教育委員会では、「郷土を愛し、その発展に貢献できる人材や、高い志をもち高知から世界へチャレンジできる人材の育成」を目標にグローバル教育を推進することとした。また、国においては、国内のIB認定校を平成30年までに200校に増加させることを目標とすることが平成25年に閣議決定され、翌年からSGH事業が開始されるなどの動きがあった。これらのことを受けて、本県においてもIBの研究を始めたところ、本県の目指すグローバル人材像とIBの理念が一致することから、先述の両校を統合して新たに開校する高知国際中学校・高等学校においてIB認定校を目指すこととした。公立学校でIB認定校となることは、いわゆる子どもの貧困問題が課題となる中でも、家庭の経済状況に関わらずIB教育を受けることができるという、大きな意義があると考えている。

2 取組状況

(1)IB導入に向けての組織体制
 平成26年度の秋から国際バカロレア機構アジア太平洋地区委員の坪谷ニュウエル郁子氏や大阪大学人間科学研究科教授の山本ベバリーアン氏らを委員として、高知県グローバル教育推進委員会(外部評価委員会)を立ち上げ、本県のグローバル教育についてご助言を受けながら、平成30年度に開校する高知国際中学校・高等学校の母体となる高知南中学校・高等学校と高知西高等学校において、探究型学習や英語教育プログラム(中高6年間)、SGHによる研究開発に取り組んでいる。
 また、IBOの日本担当である星野あゆみ氏と玉川大学のカメダ・クインシー氏のご指導のもと、平成28年度に5名からなるIB教育推進チームを編成し、ユニットプランナーなどのMYPのカリキュラムの研究開発を行っているところである。
(2)IB教員養成
 平成25年度から計画的にIBの公式ワークショップに教員を参加させるとともに、平成26年度からIB認定校である東京学芸大学附属国際中等教育学校に教員を継続的に長期派遣し、MYP及びDPの実践指導ができる教員の養成に取り組んでいる。

3 本県からの提言

(1)MYP・DP一貫の教育の推進
・小学校から中学校までの学習指導要領に基づいた授業形態で学習している児童・生徒にとって、DPから実施することは、生徒及び教員にとって負担が大きい。本来、IBは、PYP、MYP、DPと系統的に実践するべきであるが、日本の学校の形態を考慮すると、中高の6年間でMYP、DPを連続的に実践することが望ましい。
 そのため、高知県においては、MYP、DPと学習できる併設型中高一貫教育校において、IB認定を目指している。
(2)教員養成への支援
・教員養成を考えると公式ワークショップが重要な研修の場となるため、DPのみならずMYPのワークショップ開催が必要である。
・現職でIB指導の実践力を身に付ける場として、数多くの教員養成課程を置く大学院にIB教員養成のコースを設置することを要望する。
(3)IB校間における情報共有の場の設定
・コーディネーター、科目の教員などが他の都道府県の候補校や認定校の同職の教職員と授業計画等を共有できるプラットフォームの創設が必要である。できれば候補校、認定校以外の教員も参加して共に研究できるとなお良い。
・学習指導要領とのマッピングなどの情報が得られるプラットフォームが必要である。
(4)IBを活用した大学入試の拡大
・IBという教育システムの優位性を社会に強く示すうえでも、大学入学審査において、例えば、フルディプロマを取得していない生徒に対しても、特定の科目の合格やEE、TOKなどの修了といった実績を、推薦入試やAO入試で参考資料として活用できるように大学に働きかけていただきたい。
(5)IB資格の取得に向けての経済的な支援
・低所得者層家庭(例:4人世帯で年収582万円以下「高等学校等奨学金制度による」)の生徒に対して、個人負担となる卒業試験代(約10万円)の助成金の制度の検討をお願いしたい。

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大臣官房国際課国際協力企画室

(大臣官房国際課国際協力企画室)