国際バカロレアを中心としたグローバル人材育成を考える有識者会議第2回会合 議事録

1.日時

平成29年3月23日(木曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省13F1会議室

3.出席者

(委員)

長谷川壽一(座長)、今泉典彦、荻野勉、加計役、佐藤正光、渋谷真樹、島田康行、田原誠、田村壮児(代理:藤中雄輔)、坪谷ニュウエル郁子、矢野裕俊

(文部科学省(事務局))

森本国際統括官、匂坂国際課長、原田国際協力企画室長、土田国際戦略企画室長補佐(兼)国際協力室長補佐、村越国際課外国人教育政策係長

鈴木国際教育課長補佐

4.議事

【長谷川座長】

若干定刻より早いのでございますけれども、委員の先生方皆さんおそろいですので、第2回の会合を始めたいと思います。本日はお忙しいところ、第2回国際バカロレアを中心としたグローバル人材育成を考える有識者会議にお集まりいただきまして、ありがとうございました。

 本日は、田村委員の代理として藤中高知県教育次長にお越しいただいております。どうぞよろしくお願いいたします。

 また、前回御欠席でした島田委員、どうぞよろしくお願いいたします。

【島田委員】

失礼いたしました。よろしくお願いいたします。

【長谷川座長】

それでは、早速、議題に入っていきたいと思います。本日はヒアリングということで、各委員から15分程度の御説明を頂きたいと思います。

 まずは、国際バカロレア導入校の取組について、佐藤委員から御説明をお願いいたします。

【佐藤委員】

それでは、東京学芸大学附属国際中等教育学校の御紹介と取組についてお話ししたいと思います。

 まず、資料1の表をめくっていただきまして、1枚目の裏ですけれども、本校は2010年に国際バカロレアの中等教育プログラム(MYP)を始めました。2014年と2015年にスーパーサイエンス、スーパーグローバルの指定校となりまして、2015年からはディプロマプログラムも開始しております。

 本校は何といいましても自慢が生徒ということで、それが合い言葉なんですけれども、それをどのように表現したらいいのかと思っていましたところ、3月13日に国立青少年教育振興機構が出された高校生の勉強と生活の調査報告というのがありまして、それは新聞にも載っていましたが、受け身的な授業が中心だということ、これは反対だなと。それから、勉強の態度が消極的だ、これもうちの生徒は反対かな。それから、控え目な人生目標、夢があり過ぎるぐらいというような感じで、そういうところが本校の自慢なんですけれども、それはどういうところで行おうとしているかということについて、必ずしも完全にできているとは申し上げられないんですけれども、そのあたりを御説明できればと思います。

 3ページです。3ページ目のところに、TGUISSとはということで、これは本校の略称ですけれども、これは生徒が自分の学校、自分たちのことをどう例えられるかということで書いたアンケートですけれども、個性があって認め合える、積極性、行動力がある、問題解決に必要なスキルを身に付けられる学校だ。カリキュラムがたくさんあるとか、自由だけどマナーと常識をわきまえている。私もよく言うんですけれども、国際社会で一番求められるのは品性だから、それはしっかりやろうということで、これは生徒たちも自分たちで言っております。生徒一人一人に責任が持たされ大きく成長できる。これは学校が忙しいせいもあるんですけれども、いろいろな場面で生徒に頼んでというか、やってもらって、学校説明会も半分以上、司会から説明まで生徒が行っているというような状況になっております。

 4ページ目を御覧ください。これはもちろんIBに沿った教育内容ですけれども、国際理解、人間理解、理数探究というのを3本の柱として授業をしております。

 済みません。このような内容のことはお配りいたしました学校要覧等に載っておりますので、適宜御参照いただければと思います。

 また、時間の関係で、本校の、ちょっとこれは大きいので1冊しか持ってこなかったんですが、この国際5というのは5年生、高校2年生が行った研究です。1年間を通して行った研究のまとめの冊子でありまして、全部生徒が書いたものです。お回ししますので、ちょっと御覧ください。

 それから、これはスーパーサイエンスの理数探究の中の報告書ですけれども、これも生徒のものです。

 それから、こちらはスーパーグローバルの方の課題研究の論文集になります。

 それから、済みません、これは理科教育に関する本校の授業の取組、実践記録集であります。

 それと、これは昨年出したものですけれども、DPを始めるに当たって、DP生の生徒のための活用ガイドということで、必要な部分を翻訳したものであります。

 済みません。それでは、国際理解の方から説明を始めていきたいと思います。赤い部分がその部分です。左上に赤で、四角に入っているものです。本校では習熟度別、興味関心別クラスということで、英語のクラスをこのような形で分けております。英語は重視しておりますけれども、あくまでツールとしての英語ということで、英語のために英語を勉強するのではないということをいつも伝えております。AdvancedとCoreというのがありまして、Coreは基礎的なもの、中1から始める人たちに開かれたクラスです。Advancedは帰国子女、外国人の生徒を対象にして、もともと話せる生徒に開いている講座です。このような形でだんだん授業が多くなっていくということです。

 6ページを御覧ください。前期課程、中1から中3の課程では、プレ・イマージョンということで、英語だけで行う授業というものをこのような形でやっております。数は少ないんですけれども、なれるということを中心に行っております。それから、後期にはイマージョンの授業をこのような数学、社会、理科などで行っております。これはDP導入以前から行ってきました。

 それから、高校1年生の段階でドイツ語、フランス語、スペイン語、中国語、韓国・朝鮮語等を、1年間だけですけれども、行っております。

 次の8ページを御覧ください。海外留学・海外進学ですけれども、4年生、高1のときに留学したいという生徒がおおむね年に13から14人程度います。本校は1学年百二、三十名ですので、約1割の生徒が海外に留学しております。これらの留学については、現在のところ、相手校の協定関係とかがございませんので、自分たちで探してくるという形になっております。

 下にありますように、これは一昨年までですけれども、約十四、五名ぐらいということです。

 次のページを御覧ください。10ページです。国際教養、理数探究、これは文系と理系というような分け方になっております。

 黄色い四角が国際教養に関するものですけれども、3年生は、修学旅行に当たりますけれども、沖縄ワークキャンプということで、事前に学習して、実際に沖縄に行っていろいろな活動をしたり、自分たちの調べたことを実践的に確認、調査するという内容です。1日だけですけれども、民泊をさせていただいて、そこで沖縄の文化も体験するということになっております。

 次のページを御覧ください。パーソナル・プロジェクトはIBから指定されているものですけれども、4年生の段階で提出する、これはMYP最終段階の論文作成ということで、これが現在は4年生の半ば頃に提出して終わるということになっております。例えばこのような「現在の日本に必要な紫外線対策とは?」とか「図書館をより多くの人に利用してもらうためには?」といった、身近なことから自分で行う研究。パーソナルなので、1人で行うということが前提です。

 下の段を御覧ください。ディスカッション・プログラムは、これは5年生が、やはり修学旅行に準じた形ですけれども、カナダワークキャンプという名称で行っておりまして、1日は観光するんですけれども、それから4日、5日間ですね。4泊5日ぐらいでホームステイをしながら学校に通わせてもらって、授業を受けて、そして1日は授業をそのまま体験する。2日目はディスカッションと、それからプレゼンテーションを行うと、そういうプログラムをしております。カナダに行ってもう今六、七年目ぐらいになりまして、向こうでスーパーサイエンスの発表をしたらどうかということで、実はこちらのカナダの学校3校に行かせていただいているんですけれども、そのうちの1校がアメリカのAPを導入して、アドバンスト・プログラム。それを行っている生徒たちはスーパーサイエンスぐらいのレベルだぞと言われたので、じゃ、お互いに交流しましょうと申し上げたら、今年5月に向こうから20人ぐらいでいらっしゃるということで、1日だけですけれども、交流ができそうな形になっております。

 次のページを御覧ください。こうした研究活動を踏まえて、IBとして最終学年――IBは、後に申し上げますが、DP生は全員ではないんですけれども、IB校ということで、6年生までB教育は続けていきまして、最終学年で社会への提言という名称で6年生がまとめた論文を作成し、それを論文集として出しております。ちょっと今日はお持ちしませんでしたけれども、それも大部の冊子となっております。内容はここに書いてあるようなものです。

 次に理数探究の方を御説明いたします。16ページを御覧ください。例えばですけれども、理科の授業では東日本大震災や原子力発電のことを、放射性同位体などのことなどを授業の中でどんどん取り上げまして、それをきっかけにして、そこでどんな勉強をしていったらいいのか、そこで教科書とリンクさせながら行っていくという授業をしております。数学に関しては本校独自の教科書を作成いたしまして、そうした身近な事象から数学の本質に迫っていくという授業を行っております。

 また、下の段、17ページですけれども、東京学芸大学とは、まず高大接続プログラムというものが今ありまして、学芸大学に推薦入試で入学できるという制度があって、それを使いますと学芸大の方に入れるということ。それから、4年生では、約17名ぐらいの先生方に協力していただいて、1人が3こまの授業を受けられると、そういう模擬授業を体験しております。教育実地研修というのは教育実習生の受け入れということです。

 では、19ページを御覧ください。ディプロマプログラムに関しまして、ディプロマプログラムは昨年の4月から、現在1期生が5年生で、今度6年生に上がりますけれども、15名定員のところ8名が現在勉強しております。この15名というのは、まずお金が掛かるということで、本来の制度にさらに1年間50万円をDP用の費用として出していただいて行っております。奨学金制度もありますので、お金の苦しい生徒には奨学金も出しておりますが、今年、今度の4月からの5年生は16名が今登録しておりまして、16名学ぶことになっております。下にあります、MYP対象者は全生徒ということで、約120名の生徒全員がIB教育を受けております。

 次の20ページを御覧ください。科目についてなんですけれども、ここがちょっと本校の弱いところなんですが、見ていただくと、ハイヤーレベルが文系に偏っておりまして、理科系はそれがないということで、ですから、必然的に理系のレベルの高い大学は受験できないということになっております。これは残念ながらなんですけれども、教員の定員が決まっておりまして、特別に入れることができないものですから、このようなことでスタートいたしました。将来的にはより充実させたいと思っているんですけれども、今のところは文系に偏っているという形。それから、日本語の授業もたくさん行っておりますので、こちらでも対応しております。

 下のところの写真は、これは「20世紀の戦争」についてのディスカッションをしている風景なんですけれども、壁にいろいろな話題をどんどん思い付くままに書いていって、それをだんだんにまとめていくという形の授業の風景です。

 次のページを御覧ください。ボランティア活動などもたくさん行っておりまして、未知の世界に飛び込むということでいろんなところに行く。それから、ディスカッションもほとんどの授業で日常的に行っております。

 次のページを御覧ください。プロジェクト、これも発表するためには是非必要な技術ということで、1年生のときから行っております。

 グループワークも同じように1年生から行っております。

 次のページのボランティア活動は、これはSAということで、これもIB科目の一つですけれども、例えばロハスデザインアワード、それから次のページの部活動単位でのボランティア活動、それから、地元も大事にするということで、中村町会との防災訓練などに参加しております。

 済みません、ちょっと駆け足になりましたが、次のページを御覧いただくと、SSH、SGHにつきましては、チャレンジ方式ということで、生徒に自分たちで応募するという形を取っておりまして、このように2年間3年間の間に件数が増えまして、今年はSSH65件、SGH50件の応募があり、最終的に4件ずつ選びまして、きのう表彰式などを行いました。

 最後にですけれども、次のページの理研、それから高校との協定など、少しずつ幅を広げていますが、33ページの絵コンテは、これは昨年の6月の公開研究会でお示しした本校の目指している形、MYPを土台としてIB、SSH、SGHを一体化しながら教育を進めるということなんですけれども、次のページのちょっと複雑な図は、今年3月に行いました校内研究会で、もっと整理しなくちゃいけないということで、このようにキーワードを抜き出してまとめております。

 最後のところは、これは新しい学習指導要領とリンクして、IBとSS、SGのどこの部分でどういう人間性を育むかということをまとめようとした図であります。まだこれは今、検討段階にありまして、決まっておりませんけれども、このようにして今進めているところです。

 これで一応、本校の取組について御説明いたしました。どうもありがとうございました。

【長谷川座長】

ありがとうございました。

 委員の皆様、御質問、御意見ございましたら、挙手にて御発言をお願いいたします。

【矢野委員】

矢野です。どうもありがとうございます。2010年にMYPの認定校となってステータスを獲得されているということですが、今DPに応募してDPで学んでいる生徒さんは、MYPで学んできた上でDPで現在学んでいらっしゃると、そういうふうに考えてよろしいんでしょうか。

【佐藤委員】

8名のうち1名は5年生になる時点で入った、編入した生徒でありまして、その生徒は本校のMYPは受けていないんですけれども、7名は下から上がってきた生徒です。

【矢野委員】

ありがとうございます。

【長谷川座長】

ほかにいかがでしょうか。はい、どうぞ。

【荻野委員】

どうもありがとうございます。こちらの、何ページになりますか。未知の世界へ飛び込むというスタディーツアーなんですけれども、これはいわゆるCASの一環でという理解でよろしいんでしょうか。それとも学校が何かオーガナイズしてということなんでしょうか。ページ数は22ページになります。

【佐藤委員】

東北スタディーツアーなどはCASの一環です。フィリピンなどは、これは今はSGHの取組として、いろいろな形が入っております。

【荻野委員】

おのおの参加する生徒の数はどのくらいになりますでしょうか。

【佐藤委員】

スタディーツアーはボランティア部が中心になっておりまして、ボランティア部員は四、五十名いると思うんですけれども、そのうち10名から30名ぐらいの感じです。それから、フィリピンについては、今行っているところなんですけれども、20名行っております。

【長谷川座長】

ほかにいかがでございましょうか。

 ちょっと私から1つだけ。留学を4年生でなさっているんですけれども、それは単位の互換のようなことはあるんでしょうか。

【佐藤委員】

単位につきましては、向こうで取得した単位と、成績も含めてですけれども、それを送って提出するということが前提でありまして、その内容を見比べて、学校での、本校での習得単位とみなすということで、換算しております。それでおおむね単位を満たすということになっております。

【長谷川座長】

ありがとうございます。

 ほかにいかがでございましょうか。

 では、時間になりましたので、佐藤委員、どうもありがとうございました。

 続きまして、議題2の大学における国際バカロレア活用、教員養成の取組について、島田委員から御説明をお願いいたします。

【島田委員】

筑波大学アドミッションセンターの島田と申します。前回会議、欠席いたしまして、失礼いたしました。

 本日は大学における国際バカロレアの活用ということで、筑波大学の取組です。実は筑波大学におけるIBに関する取組は大きく分けて三つございます。一つ目はIBを活用した入試です。国際バカロレア特別入試と呼んでおります。それから、二つ目といたしまして、大学院の修士課程におけるIB教員の要請コースの設置であります。それから、三つ目といたしまして、附属坂戸高校のDP、これの認定という、この三つに取り組んでまいりました。本日はこの三つのうちの最初の二つ、国際バカロレア特別入試について、それからもう一つ、教員養成についてと、この二つをお話しいたしたいと思います。二つのうちでも最初の入試に関してという部分が主たるところになってこようかと思います。筑波大学の国際バカロレア特別入試でございますけれども、平成26年度の実施から導入しております。それから、教員養成コース、こちらは平成29年の4月からということで、来月からスタートするというところになります。附属坂戸高校のIB認定、これは受けたばかりでありまして、来年度、平成30年に募集が始まりまして、31年度からいよいよDPの学びが始まっていくということになります。

 それでは、国際バカロレア特別入試に関する部分につきましてお話をいたします。この入試の導入の経緯と背景でございますけれども、A4のレジュメにちょっとまとめました。平成25年、グローバル化に向けた入試改革の検討。IB入試だけではなくて、大学の中で入試をどのように国際化していくかということに関するタスクフォース、これを学内に設置いたしまして検討を始めました。それが5月のことでした。6月に日本再興戦略、Japan is back、これが出ましたり、7月には国際バカロレア日本アドバイザリー委員会が発足するというような出来事がありまして、そういうものを横目に見つつ検討を続けてまいりました。そして、およそ半年の議論を経て、平成26年の1月には記者発表を行いました。グローバル入試の一環として国際バカロレア特別入試を実施するということです。正面のスライドの方をちょっと御覧いただきますと、本学の13種類ぐらいある学部段階の入試のうち、グローバル入試と位置付けられる入試が四つほどあります。帰国生徒特別入試、私費外国人入学生入試、それからグローバル30学群英語コース入試と、従来のこの三つに加えまして、平成26年度実施の入試から国際バカロレア特別入試と、この四つをまとめてグローバル入試と呼んでおります。これらの四つの入試につきましては、私どものアドミッションセンターが対応すると。対応するというのは、企画したり、実際に選抜を行った利すると、そういう意味であります。平成25年の夏頃に検討を始めて、翌26年の1月には記者発表して、7月には募集要項を公表するということになりました。非常に駆け足でといいますか、拙速でないといいんですけれども、迅速に対応、実施ができたわけですが、その要因の一つには、実は筑波大学ではIBと同じような、主体的で探求的な学習活動を評価するという入試としてのアドミッションセンター入試、スライドでそこにAC入試と書いてありますけれども、あの入試も実は主体的・探求的な学習活動を評価する入試です。これをやっておりました。IB入試が主体的に学ぶ力、いわばみずから学ぶ力というのを評価するという点ではAC入試と非常によく似ているということがありまして、同じような手法でこれは選抜ができるのではないかと考えて入試全体を設計していったわけであります。そんなこともあって比較的早く入試が始められたということになるのではないかと思います。これがそのときに記者発表した資料です。いろいろな意味で見にくいような絵になっておりますけれども、2ポツのところに、入学試験の国際化対応、英語検定試験の導入を含むとありまして、国際バカロレア特別入試を含むグローバル入試を全学で実施するということを発表いたしました。26年の1月のことです。この入試は平成27年4月入学者を対象として、本年11月の推薦入試に合わせて全学で実施すると書いてありますけれども、実際にはもう2か月前倒ししまして、9月のAC入試に合わせて全学で実施いたしました。

 こちらがこの入試の趣旨になります。趣旨と求める人材ということになりますけれども、ちょっと読み上げますと、「筑波大学では、国際バカロレアにかかる活動を支援するとともに、探求心をもって主体的に学び、信念をもって物事に挑戦し、世界的に活躍できる人材を育成するための新たな入学試験として、全学で国際バカロレア特別入試を実施します」と、これが趣旨と、いわば求める人材ということになります。御覧になってお分かりになりますとおり、これは国際バカロレアの10の学習者像と非常に通ずるところがあります。もとより筑波大学の全体としての求める人材像が国際バカロレアの10の学習者像と重なる部分が大きいというところから、この入試を始めるに当たって大きな異はなく取り組むことができたということになろうかと思います。

 こちらがアドミッションポリシーということになります。「国際バカロレア資格を取得した者を対象として、主体的に学ぶための知識や思考力、明確な目標をもって学ぶ意欲、また、語学力を含めたコミュニケーション能力などを重視して入学者を選抜」するということにしております。本学では国際バカロレアというプログラムの特徴というのが、主体的に学ぶと、そのような力を育むところにあると考えております。

 そんなわけで、アドミッションポリシーも設計いたしまして、具体的な選抜方法というところへ落とし込むという作業へ進んでいったわけです。こちらが実際の選抜方法です。募集人員は、各教育組織が若干名を募集しております。出願の時期は9月の上旬というふうに一応は考えました。今は8月の中旬ぐらいから募集開始しておりますけれども、募集の締め切りは9月の上旬であります。10月の下旬に合格発表をいたしまして、4月に入学していただくということであります。国内一条校の場合には、あるいはアジア・太平洋地区のIB校の場合には、最終的なスコアが出るのが1月になりますので、10月の段階では条件付きということにいたしまして、そういった方々については2月に最終的な合否の決定がなされるということであります。第1次選考は書類選考、第2次選考は面接ということです。第1次選考、書類で見ますのは国際バカロレアの成績です。45点満点の成績、これに加えまして、エントリーシートといたしまして課題論文の写しを出してもらっています。さらに、知識の理論で学んだことのまとめ、あるいはCASの概要といったところも書類にまとめて出していただきます。この書類選考に通過いたしますと、第2次選考に進むという手続になります。面接を30分行って、提出された書類についての討議を行うということになります。ということで、国際バカロレアのスコアに偏ることなく、国際バカロレアプログラムを通して身に付けた力というのを書類選考並びに面接で確認していくということになります。

 募集要項の記述をレジュメに写してまいりました。国際バカロレアの学修成果については、スコアがEE、TOK、それからCASの内容から、志願する学群、学類で学ぶために必要な適合性、知識、技能、思考、表現、それから当該領域、当該分野への関心、目的を持って学ぶ意欲等を評価しますということです。実は一番この選抜において我々が苦労するところは適合性の判断というところであります。すなわち、国際バカロレアのスコアを見ると、潜在的な資質、能力の高さというのはうかがえるわけですけれども、なぜその分野の教育組織に出願してくるのかというところです。本当に興味があるのか、それが一歩深められて関心になっているのか、そこからどのような切実な本人の課題意識というのが立ち上げられて、それに向かった探求というのがなされているのかというのを見極めたいと。これはスコアだけでは見えてまいりません。ということで、課題論文あるいはCASの内容とか、こういったものを通じて関心の度合いと、それから主体性の高さと、こういったものを評価しようということでやっております。

 これが26年の9月から実施している入試であります。実はその16年前からアドミッションセンターはAC入試という入試をしておりまして、このIB入試の選抜方法と非常によく似た、こんなような形で選抜をしておりました。ほぼ同じようなやり方でやっていると言っていいと思います。第1次選考は書類選考です。第2次選考は面接です。同じように、書類といたしまして自己推薦書です。高校生までにどのような主体的な学びがあったのかということで、みずから課題を発見して、それを解決しようとした、そのプロセスを丸ごと見せていただくと。その中から課題発見・解決能力を読み取ると。これがよいと思われる場合には面接に呼んで、30分間その資料についてディスカッションして合否を決めると、そのような選抜の方法であります。実はこのAC入試と、それからIB入試と、出願の時期も同じ、合否の発表のタイミングも同じということで、選抜も一緒にやっています。まとめて募集して、今日はここからここまでがAC入試の面接です、ここから後はIB入試の面接になりますというような形で、一緒に実施しているということになります。

 ということで、平成26年度に実施した平成27年度入試から、これで3回、実績が上がってまいりました。御覧いただいているのは志願者数の推移です。平成27年度入試は9名の出願がありました。28年度入試は13名です。本年度に実施しました29年度入試は24名の出願がありました。ということで、非常に堅調に増加していると言っていいのではないかと考えます。実は平成27年度当初、最初の回から国内一条校からの出願もありました。現在では海外のインターナショナルスクールの方がどちらかというと多いんですけれども、国内のIB校からの出願もあります。ちょっと気になります、上の部分が黄色くなっているところが、これは合格者ということになるわけです。27年度入試は合格者は2人でしたかね。28年度が5人ですかね。そして平成29年度、今年ですけれども、志願者は去年に比べると倍近く増えたというところなんですけれども、合格者数はこれぐらいということで、思うようには伸びていないと。志願者数の堅調な伸びに比べると、合格者数の方はちょっと伸び悩んでいるというところであります。

 そういうようなことも含めて、課題ということになってくるわけですけれども、IB入試、これから志願者数をもっと増やして合格者数ももっと増えていくためにはどういうことが必要なのかということで、3回の実施を通じましていろいろと課題も見えてきたというところであります。1点目は、的確な入試制度の設計と、それから適切な選考のために、IBの制度あるいは内容というのの理解、これがファカルティーのスタッフの中に進んでいかないとどうにもならんというところであります。評価する側にIBの制度やプログラム内容の理解が進まないと、当然適切な入試の設計というのはできないということになります。具体的に言うと、IBの45点満点のスコアというのは一体何を意味しているんだというところも大方の教員は知らないわけですので、入試に携わって初めてそこから知り始めるということになるわけであります。これから日本語DPというのが広まっていくわけですけれども、日本語DPというのは何だと、それは一体どういうふうに評価すべきものなんだというところについてもきちんと理解がされていかないと、学内での評価というのはなかなかなされていかないのではないかと思っています。

 これまで大学の入試といえばセンター試験型の学力偏重の入試というのがずっと続いてきたわけです。また、入学後の教育という場面においても、そうした受験勉強を前提として養われた学力というのを持った人たちが入ってきているんだということで大学教育というのも設計されていたような一面もありますので、そういったところから大学教員の意識改革というようなところを進めていかないといけないのかなとは思います。ただ、そのためにはファクトも必要でありまして、IBで学ぶとどうなるのかなと、合格した人たちは学内でどういうパフォーマンスを発揮するのかなというようなデータの蓄積、それから分析というのが必要になってくるだろうと思います。これは研究レベルでこういうものを蓄積されることが望ましいと思いますので、学会の活性化ということは欠かせないことになってくるだろうと思います。

 それから、2点目です。探求的な学習活動、これはますます教育課程の改革の中でも重視されているところでありますので、これは重視する方向に入試も進めていきたいと思っています。そのためには、みずから学ぶ態度の育成というのが鍵になるだろうと考えます。日本においては、IBにおける学び方の習得というのはなかなか難しいところがあって、普通に日本の小学校、中学校で教育を受けた子供たちが、いざ高校に進んでDPだと言ってもなかなか急にはできないので、望ましいのは中高を通してこういった教育がなされることが望ましいのではないか。すなわち、MYPとDPのセットで身に付けられる等できるとよりよいだろうなと思います。そのためには教員養成というのも不可欠になってくるだろうと思います。また、IBの課題探求型の学習というのは進行中の教育改革の方向性とも一致しますので、フルDPを取得することが難しくても、例えばEE等の成果を多面的に評価するような入試というのがあってもいいかなとも思っています。

 ごめんなさい。ちょっと時間が押してしまいました。三つ目です。合格者がなかなか伸びていかないということの理由の一つには、実は募集がずっと若干名のままだというところがあります。これは定員化できないと、なかなか合格者も増やしていくことができないということになろうかと思います。

 ちょっと1回、時間になりましたので、教員養成の話は飛ばしてしまいますけれども、レジュメだけ御覧いただくということにいたしまして、私の最初の御報告はここで切りたいと思います。失礼いたします。

【長谷川座長】

島田委員、どうもありがとうございました。

 委員の皆様、御質問、御意見等ございますでしょうか。はい、どうぞ。

【田村委員代理(藤中)】

ありがとうございました。高知県でございますけれども、資料の6ページの国際バカロレア特別入試で志願者数が3年間で一定数増えているということですが、少し教えていただければというところが、志願者の動向というか、例えば文系、文科系であるとか理科系であるとか、そういったところの動向というのはどんな形でしょうか。ちょっと教えていただければ。

【島田委員】

ありがとうございます。実は毎年合格者が出ている教育組織が一つありまして、これは医学類です。今年に関しては24名出願がありましたけれども、文理に偏ることなく、人文科学の領域から社会科学、心理学等の人間科学、本学はいろいろな領域がありますけれども、情報工学あるいは芸術の領域にも出願者がありました。この傾向は、最初の年は人数少ないものですから散らばりもそんなにないんですけれども、去年あたりから顕著になってきました。満遍なく出願者はいろいろな領域にあると言えると思います。

【田村委員代理(藤中)】

ありがとうございました。

【長谷川座長】

どうぞ。

【渋谷委員】

ありがとうございます。二つほど教えていただきたいんですけれども、まず面接及び入学後の勉強する教授言語というのは英語でしょうか、日本語でしょうか。それによって受験生さんも違ってくるかと思うので教えてください。

 それからもう一つは、この入試はアドミッションセンターが担当なさっているというお話でしたけれども、2次選考で面接するのは各専修の教員でしょうか。それともアドミッションセンターでなさるんでしょうか。それを教えてください。

【島田委員】

まず1点目でありますけれども、実はこれは学部、本学では教育組織、学類と言っておりますけれども、そこの教育が支障なく受けられることというのが前提になっております。学類の教育は日本語で行われておりますので、出願の際の条件として、日本語を母語とする方、あるいはバカロレアの中で語学のところで日本語を学ばれて成績のいい方ということにしております。基本的には日本語ができる方というのが対象になります。

 2点目は、ちょっと入試の方法のことなので、かなり微妙な話になるんですけれども。

【渋谷委員】

済みません。可能な範囲で。

【島田委員】

アドミッションセンターの教員と各教育組織の教員が協力して選抜チームを作って選抜に当たります。選抜チームには必ずアドミッションセンターのメンバーが1人は入って、全学的なアドミッションポリシーにぶれが生じないようにすると、そういうふうなコントロールをしているということです。

【渋谷委員】

ありがとうございます。

【長谷川座長】

どうもありがとうございました。

 それでは、多少時間が押しておりますので、次に移らせていただきます。議題の次でございます。国際バカロレア導入を目指す地方自治体の取組について、田原委員の方からお願いいたします。

【田原委員】

岡山大学から大学の取組を紹介させていただきます。資料3というこの資料以外に、こういう八角形の大学案内と、あとはこういうチラシが2枚入っています。「知の理論」についてのチラシが入っています。これを使わせていただきますので、よろしくお願いします。

 まず、岡山大学からは、国際バカロレアディプロマ修了生の受け入れに関してと、国際バカロレアを教育に生かすための活動、その2点について現在取り組んでいる内容を報告させていただきます。ちょっと内容が多いものですから、早口で失礼します。

 資料をめくって裏を見てください。これが大学です。岡山大学は11学部1コース7研究科から構成される国立の総合大学です。お手元に大学案内、これをお配りしていますので、後ほど御覧いただければ幸いです。学部ですけれども、このページの下のスライドのように、学部は文系、理工系、医療系の学部がありまして、それ以外に、下の方にマッチングプログラムコースと書いてありますが、それがあります。このマッチングプログラムコースに多くの国際バカロレア修了生の方が入学していただいています。このコースは今年の10月からグローバルディスカバリープログラムとして生まれ変わります。

 反対のページを見ていただきますとグローバルディスカバリーの説明があります。下側のスライドを御覧ください。1学年60名を募集します。半分は国内から、半分は海外で教育を受けた高校生を受け入れます。マッチングプログラムの実績を生かしつつ、英語と日本語でミックスドクラスといいますか、混合ゼミを準備して、英語だけでも卒業できるような科目を組んでいきます。このコースでは、赤枠で示しましたように、IB入試を行います。それ以外に、AO入試の中では、いわゆる科目履修生ですね。サーティフィケートですけれども、それの受け入れも進めていきます。実際に志願者もあります。

 それでは、めくっていただいて、大学全体の入試の話に戻します。このスライドを見ていただきますと、岡山大学はAOと推薦入試で定員の19%、約2割を選考しています。国立大学のほとんどは、AO入試と推薦入試を合わせた割合が実は10%未満です。本学はこういう形で多面的な評価の入試を行ってきました。その一環として国際バカロレアを導入してきました。

 国際バカロレア入試導入の経緯は下のスライドに示しております。導入のきっかけは秋季入学を検討したことです。この点につきましては後で説明いたしますが、学内でIBに関する説明会を行った上で入試を導入しています。最初は4学部1コースでしたが、2年前から全学部で受け入れを行っています。

 次のページを御覧ください。本学の国際バカロレア修了生の受け入れ方針は、「国際バカロレア教育の質と成績評価を全面的に信頼して、受け入れよう」ということです。教育学部と医療系学部では面接を課しています。これは一般の入試も課していることでして、こういう学部では生徒さんとか患者さん、人との関わりが重要となる職業に就くわけですから、面接を課しているということです。それから、医学部医学科では39点というスコアを条件としていますが、そのほかではこういう要件は設定していません。ただし、それぞれの学部では、入学後それぞれの専門をしっかり学んでいただくために、HLと書いているハイヤーレベルの科目をきちっと取ってきてくださいということを指定しています。

 その内容は、めくった裏のページまで、全学について書いておりますので、紹介させていただきます。

 次に、国際バカロレア志願者と入学者の推移です。IB入試を始めた平成24年の頃は志願者は少なかったのですが、年々増えてきております。志願者数と合格発表者数を御覧ください。本学の前期課程、後期課程の一般入試の競争倍率は3倍です。競争的な大学です。この表を見ていただきますと、本学は、先ほど申し上げたように、国際バカロレアの教育の質、成績評価を信頼して修了生を受け入れるという基本方針で取り組んでいるのがお分かりいただけると思います。ただ、残念なことですが、本学の立地条件から、国外や首都圏の大学に進学する受験者が多くて、入学者数はまだまだ少ないのが現状です。

 次に受け入れた学生さんですが、本学のグローバル人材の中心的役割を果たすということを期待しております。実際にいろんな場面で活躍していただいています。しかしながら、その下のところに書いていますけれども、IB修了生が日本の大学の教育の中で彼らの特徴を発揮して育っていただくためには、いろいろと配慮が必要な点があります。簡単ですけれども、このような点をここでまとめております。

 ページをめくっていただきますと、L-Cafeという場所の写真があります。これは留学生と日本人学生が気楽に交流できる場所というのを提供しようということでキャンパスに設けました。例えばこういう場所でIBの修了生というのは大変活躍していただいています。

 その下のスライドです。岡山大学はおかげさまで文部科学省から、大学教育再生加速プログラムの中で入試改革という項目で事業の採択を受けております。このプログラムはIB教育の普及を目的にしております。そのプログラムの下、IB生の活動を支援する教員を配していまして、入学したIB生の修学動向などの調査を進めております。近々、論文などとして報告させていただくことにしています。

 次にめくっていただきまして、国際バカロレアを国内の教育、入試に生かすということで、そういう活動もしていますので、紹介させていただきます。これは先ほどの文部科学省の事業を活用させていただいています。18と書いてある下のスライドです。国際バカロレアの教育を簡単に振り返ってみますと、ミッションステートメントの中に、より平和な世界を築くことに貢献する若者を育成するとしています。そのために10の学習者像を決めて、どういう能力を育成するか、どういう態度を育成していくかということを明確に決めています。

 次のページを見ていただきますと、そういう教育の目的を達成するために、生徒さんにどういう方法、どういう能力を付けてもらうか、具体的には、思考スキル、コミュニケーションスキルというようなもの、そういうことをきっちり定めた上で、そのためにはどういう教育をしたらいいのかと、教育の方法を明示的に示し、実行しています。例えば探求を基礎とした指導、概念理解に重点を置いた指導というのは、なかなか日本の高校では、見られない指導方法です。先ほどのミッションステートメントに示された目的を実現するために、教育の方法までが論理的に組み立てられた形で実行されていること、これが国際バカロレアのすばらしいところだと思います。こういうところを見て、IBの教育体系の中で、岡山大学では、下のスライドになりますけれども、一つは、学習評価を活用できないかという点と、二つ目ですが、コア科目である「知の理論」を普及させることができないか、さらに、IB教育と日本の教育を調べますと、共通した基盤があるので、こういうことを拡大していこうということで取り組んでおります。

 めくっていただいた次のページです。これはIBディプロマプログラムの学習評価を説明しています。このグラフは、IBディプロマ試験の結果を示したものです。24点というところを示していますが、この点数がディプロマの資格を得るために必要です。この最終試験の評価というのは、枠の中に書いていますが、大学進学者決定、要するに入試合否の決定、給付奨学金の決定、大学の単位認定などに利用されています。これは結局、入試の採否も決めてしまうわけですから、世界の大学から非常に高い信頼を得られているということを示しています。これ以外にも、この最終試験の成績と大学入学後の成績に高い相関があるという研究が報告されております。

 次に下のスライドになります。このIBの成績評価では、1番の内部評価と言われるIB校の履修中の学習評価が、全ての科目で行われ、最終成績の20%から50%の配点が行われています。この内部評価の対象は、具体的には、四角で囲った枠に書いてあるような、課題研究とか、言語活動の口頭試験、フィールドワーク、実験であったりします。2番のDP課程を通して取り組む課題、3番の世界統一試験というのは、IBCAと呼ばれている国際バカロレア機構の機関が一括して採点している評価です。ですから、これは外部評価になります。このような評価ですが、毎年、3,000校以上、15万人以上が受けているということになります。

 この中の内部評価です。めくっていただいた次のページに手順を簡単にまとめています。その基本は、教科の担当者、IB校の先生が評価を行って、IBCAという機構に提出するということです。機構のIBCAはこの評価を信頼して採用するということになっています。ただし、機構側はIB校に成績評価の確認調整用のサンプルを求めて、場合によっては調整を行うということで、内部評価の安定性、信頼性を確保していることになります。

 ちょっと話は変わりますが、下のスライドは、現在進められている高大接続改革についてです。この改革では、下の方にある学力の3要素、1番、知識、技能、2番、思考力・判断力・表現力、3番、主体的に多様な人々と協働して学ぶ態度を、教育全体を通して育むということを進めようとしています。このために、高校と大学をつなぐ入試においても、この3要素を評価しなさいとされています。しかし、国立大学の入試を見て見ますと、先ほども申し上げましたが、いわゆる筆記試験のみの一般入試は現在90%以上です。当面の目標も70%です。筆記試験では学力の1と2の要素は評価できても、3の要素は評価できません。このために高校の調査書とか活動報告書などを活用することになっています。しかし、大学側から、入試の観点から見ますと、調査書は特に態度などの部分については客観的で公平な評価を行うのは難しいというのが現状です。このために、現在、IBの先ほど申し上げた内部評価の仕組みについて少し研究しておりまして、ほかの大学の方とか高校の方などと今、高校での活動評価としての可能性についての検討を進めております。

 続いて、国際バカロレア教育を日本の教育に生かすという活動を紹介します。資料の次のページです。

 まず、知の理論です。これはIBディプロマプログラムのコア科目で、必修です。しかしながら、日本の教育においては全くなじみのない科目です。知の理論は多様な視点から知識を検討し、検証的に考える力を養うことを目的にしています。このような力は、大学入試を突破することを重点においた教育を受けてきた大学生においては全く育まれていない能力であります。

 次のページを御覧ください。TOKの学習の狙いというのを書いていますけれども、例えば1番、広い世界との間のつながり。3番、イデオロギーの底流にある前提について自覚的になるというように、この会議のテーマであるグローバル人材の育成に欠かせない能力、態度のほか、4番のような、これから生きていくための技術というのを導くものであります。こういうことがありますので、大学教育を受ける、特に岡山大学で勉強してもらっている学生さんには、いわゆるリベラルアーツの一つとして是非とも身に付けてほしいということで取り組んできました。

 このために、下のスライドにありますように、知の理論の教員養成ワークショップで教員が研修を受けて研究を進め、モデル授業を行いました。それから、入門書の翻訳ということで、緑色のチラシをお配りしていますけれども、オックスフォード大学出版社の本の翻訳も行いました。ここにその本がありますので、もしよければ回しますので御覧ください。現在、実用的なワークブックを作成しています。それを作った上で、この4月からは実際に教養教育科目としていよいよ授業を始めます。

 次のページですけれども、これは2年前に行いましたモデル授業のチラシです。

 その下が、先ほど申しました翻訳した本です。お配りしたチラシの本です。

 次のページですけれども、これはTOKなどの関係で昨年こういうワークショップを開催しました。

 下側は、これから出版するワークブックの説明です。この本の狙いは、そこに書きましたように、IB教育とは関わりのなかった学生に知の理論について広く学んでもらおうということを考えております。これにつきましても、今、チラシをお手元にお配りします。この本は、今、最終稿をとりまとめている段階でして、4月中旬には出版できる予定です。

 次のページからは、大学教育再生加速プログラムで頂いていますプログラムで、IB教育普及のため行って活動を紹介しています。最初のページは、修了生による座談会の様子です。

 めくっていただきまして、国際バカロレアと既存の教育との整合性をテーマとしたシンポジウムです。これは先ほどお話しがありました筑波大学、それから先週、加計委員の方から御紹介がありました岡山理科大学と岡山大学の共催で開催したものです。これは、IB教育には日本の教育とも共通するすばらしい基盤があるので、そういうことを広く広報していこうというために行っています。

 めくっていただいて、その次のページは、実際、今、岡山大学で行われている、CASの教育要素が含まれる地域実践型授業、下のパネルは模擬国連に関する岡山大学の取組です。模擬国連はバランスの取れた真にグローバルな人材を育成するためには、極めてすぐれた取組であると考えておりまして、実はこの中でIB修了生が活躍しています。

 最後の部分です。済みません、時間を取ってしまって申し訳ないですが、ここでは、国際バカロレア・ディプロマ・プログラムで履修したクラスを大学の単位として認定できるように、文部科学省の省令を変えてくださいというお願いです。国際バカロレア普及のためには必要な条件であると考えております。

 先ほどもご紹介しましたが、岡山大学でIB入試を始めたきっかけは9月入試でした。9月入試を実現するためには、3年半の早期卒業が前提になります。そのためには英語の単位、それからIBのハイヤーレベルの履修科目を一般教育の科目として単位認定していただければ半年分履修期間を短くできますということです。この場合には、理系では2年生以降履修する実験、演習などについて、4月入学生と同時に履修することで3年半卒業ができるいうことで検討をすすめました。実験、演習授業を、4月と9月の入学者に合わせて2セット組むのは、組織的に極めて難しいからです。ところが、大学が単位を与えることができる学修というのは文部科学省告示で決まっていまして、TOEIC、TOEFLなどは書いてありますが、普通高校やIB高校での学修は対象外です。このため、この9月入学制度の導入は諦めることになりました。

 最後のところですが、欧米の大学の状況を見ますと、欧米の大学の就学年数は4年よりはるかに短いです。ヨーロッパ、オーストラリアは3年です。カナダ、米国ではIBの科目とかAP(Advanced Placement)の科目を大学の単位として認定しています。このため、早期卒業が可能です。幾つかの大学ではIBディプロマ生の2年次入学の制度もあります。下のスライドにはカナダの一部の例を示しました。、IBDPの科目の履修時間はハイヤーレベルでは240時間、日本の高校の科目では70時間から140時間ということです。これは、IBのハイヤーレベルが日本の高校の授業で習う内容を十分超えていることを示しています。このようなカリキュラム比較は、本有識者会議の矢野先生がかなりお詳しく研究されていると思います。IBDP生の確保のためには大学の就学年数を短くするのもすごく大事な条件になると思います。例えばアジアの留学生がIBを修了した後、日本と欧米を比べたときに、日本は4年掛かる、欧米は3年となれば、日本は就学に要する費用の点でかなり不利な立場になると思います。そのために、最後に書いていますけれども、大学が単位を与えることのできる学修について、今受け入れている大学で、あるいはデュアルランゲージプログラムのIBと普通高校のカリキュラム比較などででかなりの検討をされていると思います。こういうところで検証を進めていただいて、認めていただけるようでしたら、IBディプロマの普及ということにもつながっていくのではないかと思っております。

 済みません、ちょっと長い時間を掛けて、足早で申し訳なかったですけれども、以上で報告とさせていただきます。

【長谷川座長】

田原委員、大変貴重で先進的な岡山大学の取組についてプレゼンテーションいただきまして、ありがとうございました。

 それでは、委員の皆様、御質問、御意見等ございましたら、よろしくお願いいたします。どうぞ。

【島田委員】

よろしいでしょうか。島田です。24というノンブルのあるスライドであります。一般入試における学力の3要素の評価ですね。高大接続改革後の接続の部分ですけれども、3要素のうちの三つ目の学力の評価に、IBにおける内部評価を活用する方法を御検討中ということでしたけれども、このあたり、もしもう少し具体的に御教示いただければ、補足していただきたいと思います。

【田原委員

IBの内部評価というのは、やり方といいますか、基本的にこうしてくださいというルールが決まっていまして、どういうふうに評価するかということも具体的なやり方が示されています。そういう形での評価を、国内で進学される高校の方にお願いできないかなと。特に探求型学習ということで、それぞれの科目ではなくて、総合的な学修の時間があるわけですけれども、そこについてなかなか評価の体系ができていないということを伺っています。もし高校の方でそういうことに対する評価で主体性、それから協働する態度のような内容が評価していただけるようでしたら、それを全国的なレベルで使えないかなということです。まだまだ本当にアイデアをほかの大学の先生とか県内の高校の先生たち、校長先生中心に検討している段階でして、まだどこまで実現できるかは分かりません。ただ、こういう形でないとなかなか3番目の要素というのは評価できないかなとは思っております。せっかくIBのいい例があるわけですから、何とか活用できないかなということです。

【島田委員】

ありがとうございました。

【長谷川座長】

ほかにいかがでしょうか。

【矢野委員】

このIBの入試を全国の国立大学で最初になさったということで、それは4学部から始められて、現在11学部全部でというお話でしたが、これは相当IBについての理解を学部で、それから全学的に共有していくということが大変なことだったのではないかと想像するわけですけれども、その点において特にどういうことを留意されてそういう全学的な合意なり共通理解を作られたのか、簡単で結構ですので、ちょっと御紹介いただけたらありがたいです。

【田原委員】

資料3の8と書いてあるところに導入の経緯を書いています。9月入学の可能性について調べたところ、東南アジア、それからヨーロッパでは日本の駐在員の方のお子様がIB校におられて、大学からは日本に帰ってきたいというような方もかなりおられることが分かりました。これは平成21年2月のことです。その後、導入を前提に検討を進めようという学長の判断をいただき、IBOのアジア・パシフィックの代表の方を学内に招いて、全学対象にIBについての講演会を行いました。22年7月には、IB校のジャパニーズAの先生を、ヨーロッパとアジアからお招きして、やはり全学対象の説明会を開きました。

 それから、アドミッションセミナーというセミナーを毎年全学の教職員相手に行っています。その中で、IBというのはどういうものなのか、どういう教育をしているのかというようなことの説明会を繰り返し行ってきました。そういうような活動をアドミッションセンターとしては行ってきました。

【矢野委員】

ありがとうございます。

【長谷川座長】

まだまだ御質問あろうかと思いますが、時間でございますので、田原委員、本当に貴重な発表ありがとうございました。

 続きまして、企業における国際バカロレアへの期待について、今泉委員の方から御説明お願いいたします。

【今泉委員】

こんにちは。ただいま御紹介を頂きました第一生命経済研究所の今泉です。経団連では、教育問題委員会の企画部会に委員として参加をしています。本日は「産業界から見た国際バカロレア課程への期待」というテーマで、まず産業界が人材に求める素質や能力、またそれらを育成するために求められる取組等につきまして、経団連における検討状況や私の第一生命保険の事例などを若干交えながら御説明をさせていただきたいと存じます。その上で、グローバル人材の育成に関するIB課程への期待、またIB教育を日本で普及させていく上での課題と考えていることについて述べたいと思います。

 表紙をおめくりください。産業界が人材に求める素質や能力についてお話しする前に、現在、企業がどのような環境に置かれているのか、簡単に御説明をいたします。ページは3ページでございます。現在、我が国では少子高齢化が急速に進みまして、とりわけ生産年齢人口が急減している。また、企業活動のグローバル化による新興市場国との競争の激化、何より、今のアメリカがそうですけれども、先が読めないといいますか、前例が全く通用しない世の中。それから技術革新ですね。IoTやロボット、AI(人工知能)、こういう技術革新やSociety 5.0と言われるような未来の社会の実現に向けまして、産業・社会構造の劇的な変化に直面しています。

 こうした変化が激しくて、将来を展望しにくい状況にありまして、経済成長を実現、維持するためには、一人一人の個人が開かれた質の高い教育を通じて能力を高めて、主体的に変化に対応していくということが求められます。

 そのために、産業界が次の時代、世代を担う人材に求めていることは3点ございまして、まず第1点は、複雑な事象の中からみずから課題を発見、設定をして、主体的に解を見出す能力、みずからの意見を論理的に発信する力、外国語によるコミュニケーション能力、またリベラルアーツ、多様性を尊重し、他者と協働する能力。

 また2点目は、理工系であっても人文社会科学系を学ぶこと、また人文社会科学系であっても、先端技術や理数系の基礎知識を学ぶこと。

 3点目に、質の高い情報を取捨選択して、課題解決のための情報を使いこなす能力などでございます。

 4ページ目以降のスライドでは、経団連が2015年3月に公表しました「グローバル人材の育成・活用に向けて求められる取組に関するアンケート結果」に基づきまして、事業活動のグローバル化を踏まえた産業界の人材ニーズ、また求める人材像について御紹介申し上げます。

 なお、このアンケートは、経団連の教育問題委員会が2014年11月から2015年2月にかけまして、経団連会員企業並びに全国の経営者協会の加盟企業を対象に実施いたしまして、463社から回答を得たものでございます。

 5ページ目を御覧ください。中期経営計画で目指すグローバル事業展開の類型、これを尋ねたところ、製造業ではグローバル最適型と回答した企業が最も多くなってございます。このグローバル最適型というのは、左下にございますけれども、研究開発、商品企画、調達、販売、マーケティング、アフターサービス等々の各バリューチェーンをグローバルな視点から最もふさわしい拠点で実施をして、世界最適を目指す事業展開の姿でございます。したがいまして、今後は国内外を問わず、世界の拠点間で資源や技術、人材を交流させていくということが予想されるということでございます。

 6ページを御覧ください。グローバル経営を進める上での課題に対しましては、本社でのグローバル人材育成が海外展開のスピードに追い付いていないと指摘する企業が最も多くございます。次いで、経営幹部層におけるグローバルに活躍できる人材不足が挙げられておりまして、いずれにしてもグローバル人材の不足が日本企業の大きな経営課題として認識されていることが伺えます。

 7ページを御覧ください。グローバル事業で活躍する人材に求められる素質、知識・能力について尋ねたところ、2011年に実施した前回調査では3位だった「海外との社会・文化、価値観の差に興味・関心を持ち、柔軟に対応する姿勢」、これが第1位となっております。グローバル社会で活躍するためには、多様性への理解や寛容性が重要であるという認識がさらに広がったことが伺えます。続いて「既成概念にとらわれず、チャレンジ精神を持ち続ける」が第2位。第3位に「英語をはじめ外国語によるコミュニケーション能力を有する」が続いております。

 8ページを御覧ください。ここから少し第一生命の事例を御紹介いたします。創立115周年を迎える、いわゆる伝統的なといいますか、ドメスティックな生命保険会社である第一生命にも急速な国際化の波が押し寄せております。国内の生産年齢人口の減少に生命保険会社の保有契約高というのが連動しているという危機感から、当社は他社に先駆けまして株式会社化を進めて、この10年ほどでアジアとアメリカを中心にグローバル3極体制の下で急速に海外展開を進めております。

 ここにはございませんけれども、顕著な変化として海外比率がございまして、全体の利益に占める海外比率、これは5年前は1割なかったんですけれども、最近では3割程度にまで急拡大をしているということでございます。

 また、採用につきましても、従来の新卒一辺倒から、中途採用、通年採用に、徐々にではありますけれども、多様化しつつありまして、海外の大学卒と日本への外国人留学生を合わせて毎年採用の数%になってきています。

 9ページを御覧ください。これは第一生命の求める人材像ということでございまして、新人採用で求める人材像としましては、プロフェッショナル&チームワークというコンセプトを掲げてございます。このプロフェッショナルということでは、自律心、向上心、これをもって積極的に挑戦・変革をし、継続的に価値創造し続けることができる人財。一方でチームワークということでは、多様な個性を互いに受け入れて、ともに成長していくことができる人材、これを求めています。いずれもIBの求める人材像と非常に親和性といいますか、フィットしているものだと考えております。

 経団連では、これまで御説明申し上げたような素質や能力を持つグローバル人材を政府、教育機関、企業が連携して育成していくために必要な取組について検討しまして、2013年、2014年、2016年にそれぞれ提言としてまとめて公表しております。本日はそのポイントを御紹介申し上げます。

 資料11ページを御覧ください。まず第1は、主体的・対話的で深い学びであるアクティブ・ラーニングの推進でございます。グローバル人材に求められる、正解のない課題にみずから答えを導く力、他者に働きかけ、協働しながら考えを深めて学習する力、自分の考えを外に発信する力等々を育成するために、初等中等教育段階から高等教育段階まで一貫してアクティブ・ラーニングを推進することが求められると考えています。

 第2は、英語で積極的にコミュニケーションを図れるように、読む、聞く、書く、話す、この4技能をバランスよく強化する必要がございます。

 第3は、政府目標達成に向けまして、日本の大学で学ぶ外国人留学生と海外の大学で学ぶ日本人学生の数を大幅に増やすということが求められるということでございます。

 IB教育の理念、目指す学習像を踏まえれば、このIB課程はこれら3つの目標達成にも大いに資するものと考えております。

 13ページを御覧ください。最後に、産業界の求める人材の育成に向けて、IB課程への期待を2点申し述べたいと存じます。

 まず第1点は、IB課程はグローバル人材育成の有効な手段であるということでございます。語学力のみならず、コミュニケーション能力や異文化を受容する力、論理的思考力や課題発見力などグローバル人材に求められる素質や能力を身に付ける上でIB教育は非常に効果的です。

 また第2は、IB教育の普及は、日本で働く優秀な外国人人材を増やす上でも効果があるということでございます。IB認定校が国内で増えれば、日本人生徒のグローバル化が進むのみならず、外国人子弟のための良質な教育機関が増えることを通じて、優秀な高度外国人人材を日本に呼び込むことにもつながると考えております。

 一方で、IB教育を国内で普及させるためには課題もございます。14ページに5点指摘しております。

 まず第1は、IB課程を教授できる教員が不足しているということでございます。教員養成大学にIBコースを新設するなど、IBを教えられる教員の育成・確保に迅速に取り組む必要がございます。

 第2は、IB課程の周知に向けた取組でございます。国内におけるIB課程の認知度はまだまだ低いと言わざるを得ないと思いますが、IB認定校を200校に増やすという目標に向けまして、政府や自治体が一層努力をすることが求められると思います。そのためにも、IB課程と学習指導要領の要件の双方を無理なく取得できるような特例措置を推進することなども必要だと思います。

 第3には、国公立校におけるIB課程の普及でございます。IB課程は家庭への教育負担が大きいほか、導入する国公立校にとってもヒト・モノ・カネ等の負担が大きくなっています。より少ない経済負担でIB教育が受けられるよう、国や地方自治体が国公立校におけるIB教育の普及を支援することが求められると思います。

 第4は、大学入試におけるIBディプロマ資格の活用でございます。先ほどもお話がありましたように、近年、大学入試でIBディプロマ資格を活用できる大学は非常に増えてきておりますが、さらに増やすことが必要ではないかと思います。

 第5に、非常に重要なポイントなんですけれども、企業における適切な評価ということでございます。日本ではIB教育を受けた生徒の数がまだ少ないということで、IB教育について企業の人事担当者は余り知らないというか、ほとんど知らないのが現状であると思います。この企業の人事担当者にIB教育やディプロマ資格について十分に周知をし、企業の採用や人材活用においてIBディプロマ資格取得者が適切に評価されるようにすることが求められます。

 5点の課題は以上でございます。

 なお、参考資料として、15ページ以降には、経団連のグローバル人材育成推進事業を掲げております。

 16ページは、人材育成スカラーシップ事業といいまして、大学生、大学院生の海外留学に向けた奨学金事業、これは経団連の会員企業等の寄附をベースにしまして、1人1年間100万円の奨学金を支援するものでございます。

 それから17ページ、これはグローバルキャリア・ミーティングと申しまして、海外留学帰国生を対象とした合同の就職説明会、面接会を開催しているものでございます。

 それから18ページと19ページ、これは大学に入ってからなるべく早い段階で学生さんにグローバルビジネスで働くことへの動機付けをしてほしいという企業側の意向がありまして、それに沿って企業が出前授業の形で参加をして、企業の実務者によるモデルカリキュラム講座を上智大学と東京工業大学大学院で実施しているものでございます。

 最後に20ページ、これはUWCへの高校生の海外留学支援ということで、経団連がUWCの日本協会の事務局をしているという関係から、経団連の会員企業の寄附をベースにしまして、高校生の方に奨学金を支給して、UWCの各校に派遣する事業でございます。

 私からは以上でございます。

【長谷川座長】

今泉委員、ありがとうございました。

 それでは、御質問ございましたら挙手お願いいたします。いかがでしょうか。まさに企業の方も、IBで培われる力というのが企業にとっても非常にグローバル人材としてフィットするというお話を頂いたところでございますけれども、よろしいでしょうか。

 では、ちょっと時間が押しておりますので先に進めさせていただきます。今泉委員、どうもありがとうございました。

 続きまして、「日本語DP導入の意義について」、渋谷委員の方からお願いいたします。

【渋谷委員】

よろしくお願いいたします。私の方からは資料5を使って御報告いたします。私からは「日本語DP導入の意義について」ということで、意義に加えて、留意すべき点と提言ということについてお話ししたいと思います。

 まず初めに、私の立場の御説明なんですけれども、ちょっと今までのお話とは違うかと思うんですが、私は教育学を専門としている研究者です。とりわけ異文化間教育とか教育社会学というふうに言われるようなことをやっておりまして、具体的には、先ほどから出ております海外に駐在して帰ってくる家庭のお子さん、帰国生と言われている子供たちとか、あるいは外国籍の子供たちとか、あるいは国際結婚している家庭の子供とか、多文化な環境で育つ子供たちの教育ということをこれまで見てまいりました。

 そういった子供たちを追い掛ける中で、実は私はIBというものに出会いました。海外の現地校で学んでいるときのIB、その資格で実は帰国受験をするということは前々からあったことでして、それから日本に帰ってきてもIB校で学ぶというような子供たちがいるという中で出会いました。

 2012年からは、今お集まりの先生方の中にもお世話になっておりますけれども、IB校を訪問させていただいて調査しております。現在、DPを行っている一条校は17校あると思いますけれども、現在までに主に認定の古い順番に13校を訪問しております。そこで管理職の方とか、あるいはコーディネーターの方とか先生方、あるいは生徒さんたちに聞き取りをして、あるいは授業、あるいは行事といったものに参加させていただく中で考えてきたことをお話ししたいと思います。

 こうしたことは、以下4つ挙げましたような論文にもなっておりますので、必要なものがありましたらば、おっしゃっていただければお届けいたします。下の2つの方に関しては既にホームページでも、ネット上にも掲載されているものです。

 さて、まず初めに日本語DP導入の意義ということですが、こちらの方はもう既に皆様からも、あるいは文科省の方からも繰り返し指摘されていることですが、3点について、私なりのこれまで調査してきた中からのデータを付け加えながらお話ししたいと思います。

 まず1つは国際通用性ということです。このIBあるいはDPを導入することによって、それが国際的に通用する資格だということがまず何よりも大きいです。これは生徒個人にとってのメリットということと日本社会にとってのメリットという、この2つの面から考えていく必要があると思うんですけれども、生徒個人にとっては、まず一番初めに思い付きやすいことは、それだったら海外の大学にも行けるんだろうということですけれども、それは1番目にアウトバウンドと書いて、海外の大学への進学と書きましたが、今のところは、実は日本語DPの卒業生もまだ非常に少ない段階でして、英語での一条校でのDP生にも聞き取りしていますけれども、そういった子供たちを含めましても、まだ海外に行けるからDPを取ろうという人は実は多くはないと認識しています。

 なぜ海外の大学にはさほど行かないかといいますと、多く出てきますのは費用の問題です。海外大学に進学するための費用が国内よりも随分高いということ。それ以外にも複数出てくるのは、実は日本にいたいという、行けなかったからやむなく日本にいるというよりは、積極的に選んで日本にいたいという生徒さんも複数おりまして、それは例えば就職するには日本の学卒を取っていた方がいいんじゃないか、修士号からは海外に行った方がいいとか、はっきりした意見を言う方もいますし、あるいは家族がそのように望むのか、あるいはなれている日本にいたいとか、日本の大学を経験したいとか、日本を選ぶという人が少なからずいます。このことが必ずしも悪いとは言い切れないかもしれないですが、しかし、本日のメディアの報道にもありましたけれども、日本人の科学者の世界的な科学雑誌に対する掲載率が下がっていると。それは、国内の大学の予算が減っているということもありますけれども、もう1つは、アメリカへの留学が減っているということも報道されていましたが、そういった面でも1つはIBはあり得るのですが、現状として聞こえてくる生徒の声は、海外に行けるからIBを取ろうではなくて、むしろ選択肢が増えるという声は非常に複数聞きます。それは最後まで国内にいるか、国外に行くか、迷った上で、どちらかを自分で選べるんだという、そのためにIBがメリットがあるという声を聞きます。

 インバウンドとしては、大学においてIBの資格を持った留学生を受け入れるという、この準備も、ここの場にはいらしていないと思いますけれども、英語で授業をやっている日本の大学も少しずつ増えてきまして、そういった大学なんかを中心に進んできているかと思います。

 もう1つ、私が注目しているのは、日本の高校における留学生の受け入れということでも、実はこのIBというのはメリットがあるなというふうに見ています。

 複数のIB校を見せていただきますと、実は生徒さんはどの学校でも今の段階では少ないと思いますけれども、その中にかなりの割合で留学生の方が混じっています。英語でのDPであっても、日本語でのDPであっても、少なからぬ部分を英語で勉強できるということが、それから日本の大学だけじゃなくて海外にも行けるということが、海外の高校生を日本の高校に引き付ける要因になっているなということを観察しております。そのことは実は国内にいる日本の生徒にとっても、国際的な環境で学ぶことができるという点でメリットがあるというわけで、こういったところにIBを導入する意義があるかなというふうに考えています。

 2点目に、中等教育改革ですけれども、例えば新しい学力観でありますとか、あるいは新しい教育方法とかということは、国内でも繰り返しかつてから言われていることなんですが、それを育成する、そういったことを実現する具体案を示しているという意味で、IBを導入するということは意義があるだろうというふうに考えています。

 例えば、探求型の学習とか論述といったようなものは日本でも既に取り組まれておりますけれども、じゃ、具体的にどうしたらいいのかというようなことがIBでは明らかになるというメリットがある。

 それから、先ほど学芸大附属さんからは、日本の高校生の平均像とは違って、学芸大では、学習にもっと主体的で楽しいと感じている子供が多いということが言われていましたけれども、あるいは、実はこれはIB校の生徒さんの特徴でもあるかなと見ているんですけれども、都立国際さんの方からも御報告がありましたけれども、何せ「学びが楽しい」という声を非常に多く聞きます。このことは、IBが優れているということかとも思いますけれども、もう一つ注意しなくてはいけないのは、現段階においてはこのIBは非常に少人数で、そして非常に高い教員割合で、そしてIBは非常に優れているんだ、進んでいるんだ、新しいんだという言説がたくさんある中で学習している生徒たちだということは留意すべきことで、非常に集中的に投資されていて、それから受益者負担としても大きいものを支払っている中で、楽しい、好きだ、おもしろいというふうに感じている子供が多いということも留意すべきかと思います。

 さて、それから3つ目の高大接続ですけれども、こちらの方も今二つの大学の方から御報告がありましたように、明快な評価基準を持っているという点で、高校の学習成果を多面的に評価するという意味で、IBを導入する価値があるというふうに考えています。

 とりわけ、例えばボランティア活動ということを見るにしても、単に活動したことではなくて、それがどのような目標で、どのような計画に従って何が学ばれたのかという、学習成果として結実しているかどうかということを確認するためには、例えばCASみたいなものがその質を保障してくれるという点があるかと思います。

 それから、卒業論文みたいなものを高校生でも書いているところが今複数ありますけれども、そういったものもあるきちんとした体系にのっとって書かれて、ある質を保障しているという点で、このDPというものが活用し得るというふうに考えています。

 明示的な評価基準をもって絶対的に評価しているというところで、比較可能性という意味でも活用し得る。それはフル・ディプロマとしてだけではなくて、一部の科目だけを取るということであっても活用し得るものであるかなというふうに考えています。

 さて、そうしたことを踏まえた上で、幾つか留意すべき点について申し上げます。1つ目は、そもそもこの有識者会議のタイトルにもなっておりますけれども、「グローバル人材育成を考える」というときに、そもそもグローバル人材って何だろうかということの合意ですが、これは少し懐かしい資料になりますけれども、グローバル人材育成推進会議ではこの3つの要素が出ています。その最後の方、3つ目に、異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティーということが挙がっているわけです。

 朝日新聞の記事にもありましたが、グローバル人材とは国益を追求して、国益のために世界の舞台で発信できる人間なのか、あるいは国益を損することがあったとしてもグローバル益を追求する人間なのか、あるいは国境を越えてマーケットの利益を追求していく人間なのか、どういうものをグローバル人材と呼ぶのかということは、いま一度確認していく必要があるかと思います。

 そのことと関連しまして、IBの追求する国際教育というものと国民の教育というものをどのように両立させるのか、どのような位置関係にあるのかということの確認は必要と思われます。教育基本法を持ち出すまでもなく、教育の目的は、平和で民主的な国家及び社会の形成者を育成する、心身ともに健康な国民を育成するとか、我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際平和に寄与するというようなことがうたわれているわけですが、こういったことがどのようにIBのミッションと位置付けられて、どのような関係になっていくのかということの確認は必要かと思われます。

 それから3つ目に、これは複数の研究者が言っていることですが、やはりIBというのは西洋の論理にのっとっているということは往々にありまして、例えば日本の小学校で学ばれる論理的な発表の仕方と、アメリカの小学校で学ばれる論理の構造は違うという研究もありますけれども、例えば、先ほどテキストの御紹介もありましたけれども、TOK、批判的な思考といったことでも、それは確かに1つの非常に有効な語り方であったり、読み方であることは確かだと思いますけれども、それは絶対的な思考の仕方ではないと私は考えているんですけれども、そういったところに潜んでいる西洋的な価値観とかいったものを認識した上で取り入れていくという必要はあるだろうなと思います。

 それから、国内の二極化ということですけれども、グローバル人材といったときに、ドメスティック人材という言葉があるのかどうか分かりませんが、IBというのはこれまで恵まれた階層を再生産する手段になっているというような指摘は繰り返しなされています。非常にコストが掛かる教育です。それだからこそ、今、政府の支援があって、国公立でも行われているところが非常に望ましいことでありますが、そうであっても、例えば、アメリカの公立高校においてIBコースに入っている生徒たちがいつの間にかエリート意識を持ったりとか、あるいは他の生徒との離脱感を持っていくというような、1つの学校の中に2つの学校があるような状況になっているという、そういう研究もありまして、教室だったりとか、指導される教師であるとか、あるいは行事とか部活とか生徒会とかいったものが共有されているかどうかということによって、他のコースの生徒たちと、同輩たちと連帯感を持てるかどうかということがポイントになってくるかと思います。

 これも古い論文になりますが、ライシュという方が、グローバルに生きる最富裕層というのは、しばしば国内にとどまる貧困層とは連帯感を持ちにくくなっていくということを言っていますけれども、IBというのは、生徒同士が世界大会みたいなものに参加したり、同じカリキュラムで勉強したりしていますから、国境を越えて一体感を持っていくということができるすばらしいカリキュラムだと思います。

 ただし、一方で、国内の同世代とはどのような距離感を持っていくことになるのかということを考えていく必要があるかと思います。1つの大学にこれから複数の例えば能力観で選抜された者が併存していくようになるんだとすれば、お互いが認め合えるような、お互いを学び合えるような環境を作っていく、その公平性を担保していくという必要があるだろうと思います。

 すみません、時間が押しているので、ちょっと早口で行きますけれども、それから、こういったIBを導入することによって、否応なくグローバルな競争に日本の大学も、そして高校も巻き込まれていくということが加速するということが考えられます。

 ということを踏まえまして、4つほど提言を挙げましたけれども、1つは、これまでの日本の教育というのは、国際学力調査などでも非常に高い成績を上げております。それから、特別活動などの全人教育ということでも海外から注目されているところもありますので、まずはこういった強みを自覚しつつ継承していくということ。

 それから、IB生というのをごく少数の別枠にしないような工夫が必要です。そういったIB的な教育のエッセンスというものを普及させていく必要があるだろうということ。

 それから3つ目に、IB生に対しても日本社会の形成者としての意識を育成していくという必要があるだろうということ。

 そして最後に、IBを既にある固定的なものとして受け入れるというよりは、積極的にIBオーガナイゼーションの方にも日本からも発信していって、日本の教育のよさということを混ぜ込んだ中で、IBそのものをよりよいものに作り替えていくという姿勢が必要かなというふうに考えております。

 すみません、時間押しました。以上です。

【長谷川座長】

渋谷委員、ありがとうございました。委員の皆様、御質問、御意見いかがでしょうか。

【佐藤委員】

ありがとうございました。1枚目の裏なんですけれども、2)の国民教育と国際教育のところで、一番最後、気になっているんですが、「予期せぬ脱国家化」という、「予期せぬ」というのはどういうところなんでしょうか。

【渋谷委員】

ありがとうございます。レズニックという方が論文にしているんですけれども、IB教育を受けることによって、国家に対する所属感というようなものが結果として育たないといいますか、国に所属しなくてもいいという生き方を選んでいくということも考えられるということです。

【長谷川座長】

ほか、いかがでございましょうか。よろしいでしょうか。留意点についても整理していただいた上で、提言ということで建設的な御意見を頂きました。渋谷委員、改めてどうもありがとうございました。

 それでは、ヒアリング最後でございます。「国際バカロレアとグローバル人材育成に向けた各種取組の連携について」、矢野委員の方から御説明お願いいたします。

【矢野委員】

失礼します。かなり皆さんお疲れと思いますので、3時までに終わることを目途に手短にお話ししたいと思います。

 この各種取組との連携ということですが、これは前回の会合で配られました資料の中の資料4に、文部科学省等が実施するグローバル人材育成施策と連携した国際バカロレアの目標設定及び推進施策として、どのようなことが考えられるのかということがありまして、それとの関連で私は今までに、きょうのレジュメの中に2つ、これまでの文部科学省が進めてこられたグローバル人材育成施策というのがあり、そのいずれにも委員として関わったという立場から、ちょっと御紹介をするということが私の役割ではないかと考えて、用意してきた次第です。

 1つは、1ページ目のグローバル人材育成施策、2のところですが、それの(1)「国際バカロレアの趣旨を踏まえた教育の推進に関する調査研究」という、これは平成24年から26年度にかけて行われたもので、それから3ページ目に(2)とありますが、トップのところですが、スーパーグローバルハイスクールという、これはSGHとしてよく知られていることですけれども、この2つについて簡単に振り返ってみたいということであります。

 1番目のまた1ページですが、国際バカロレアの趣旨を踏まえた教育の推進に関する調査研究というのは、どういう趣旨で始まったかというと、この趣旨のところに書いてありますが、2つ目の段落のところ、特に我が国における国際バカロレア資格の認知度の向上、視野の拡大を行い、グローバル人材の育成や将来の認定校の増加につなげることということで、この前提としては、国際バカロレアのカリキュラムというのが、現在の学習指導要領に埋め込まれた能力、生きる力という形でまとめられたものとの親和性が非常に高いということへの注目があったかと思います。

 そこで2ページですけれども、表1は、この授業に15校が応募したわけですけれども、その中から選ばれた5校、選定指定された5校がこういうラインナップであったということであります。

 それぞれを見ていくと、それぞれに違うわけですけれども、特に注目をしていただきたいのは、例えば最初の名古屋大学教育学部附属中・高等学校は、ここは総合的な学習の時間を総合人間科という名前でずっと過去20年くらい取り組んできたという実績がありまして、それからもう1つは地球市民学という学校設定教科を設けたという、そういうそれまでのカリキュラム開発の蓄積、その成果を改めて国際バカロレアのカリキュラムという観点から見直していくという、そういうことであったと思います。それから、3番目の京都市立堀川高等学校、こちらも探求基礎という教科を立ち上げて、ずっと探求基礎を核にしながらカリキュラムを実施してきたといういきさつがあります。

 そういったそれまでの取組のカリキュラムの研究開発を、国際バカロレアとの関連なり、その趣旨との親和性というか、そういうことを考え直すというような趣旨で取り組まれた学校と、それから一番下の関西学院千里国際高等部というのは、併設されているインターナショナルスクールがありまして、そういうインターナショナルスクールの教育と、それから一条校である当該学校の教育とがどう連携・連動することによって、IB的な教育を実施、導入することが可能なのかという、そういう問題意識で進められた研究です。

 調査研究の成果というところに5つほど書きましたけれども、国際バカロレア資格の認知度の向上には寄与したと言えるけれども、もう1つの授業の目標にあった視野の拡大という点では、この授業自体は余り大きなインパクトを持ったとは言えないかなと。これは私の勝手なまとめですけれども、というふうに思います。

 それから同時に、ここの中には公立高等学校が3校ですか、国立1校、市立2校で、公立が3校あるんですが、公立校がIBの認定を受けるということには、ヒト・モノ・カネのいずれにおいても大きなハードルというか、課題があるということが分かったということです。

 さらには、それまでに、先ほども申し上げたような総合人間科だとか探求基礎だとか、そういう取組はIBのDPのカリキュラム、プログラムと通じ合う考え方を持っているということにも気付いたということも言えるかと思います。

 それから一番下ですが、教員の研修が、例えば、特にIB、DPのTOK、そういう日本のカリキュラムの中にはないというお話がありましたけれども、そういうものを実施していく上では教員の研修が不可欠だろうというふうなことに気付いたということも1つの成果であったかと思います。

 ちなみに、この5校は、その後、今度は平成26年度から始まりますスーパーグローバルハイスクールの授業ですけれども、それにも指定を受けて、5校全てスーパーグローバルハイスクールとなっているということを付け加えておきます。

 3ページです。スーパーグローバルハイスクールですけれども、これの目的は、アンダーラインを引いているところに注目していただきたいんですが、社会課題に対する関心と深い教養、それだけではなく、コミュニケーション能力や問題解決力等の国際的教養を身に付け、将来、国際的に活躍できるグローバルリーダーを高等学校段階から育成するという、そういう目的であります。

 授業概要は、グローバルな社会課題を発見、解決できる人材やグローバルなビジネスで活躍できる人材の育成に取り組む高等学校をSGHというふうに指定して、質の高いカリキュラムの開発・実践やその体制整備を進めていくという5年間の取組で、先ほど申しましたように平成26年度から始まっております。

 それから、ちょっと飛ばしますが、表2を御覧いただくと、これはSGHの指定校が年度ごとにどうなっているかと。およそ26年度、27年度は50校をめどに指定をするということであったのですが、それぞれ56校、それから28年度はちょっと事業規模が予算の関係で小さくなりまして、11校の指定。合計、現在のところ123校の指定SGHがあるということであります。国立1割、公立6割、市立3割と、大体そういうことになろうかと思います。

 また、指定されている学校の中には、これは余り正確な数字ではないのですけれども、例えば、普通科の高校だけではなしに、農業科の高校、それから科学技術科、工業系とも言えると思いますが、1校、それから総合学科の高校、音楽科の高校という、そういういわゆる専門学科の高等学校が指定を受けている中に入っているということも特色であります。

 さらに、選ばれた123校の指定以外に、指定から外れた学校56校がアソシエイト校と。ここには予算的な手当はないわけですけれども、1つ指定校とともにSGHコミュニティーを形成するという形で、いろいろ学び合うということに参加しているということであります。

 注記の3つ目のところにありますように、構想の多様性を確保するという観点から、取組の特徴、地域性及び国公私のバランスにも配慮して、こういう表2のような結果になっているということであります。

 SGHでの取組の中ではどういうことをやっているのかといえば、ここに5点書いてあるようなことなのですが、グローバル人材の育成の多様な在り方というものを模索している事業であると。

 それから2番目、地域的な課題解決を目指すという、いわゆるグローバルというとともに、ローカルな視点あるいはローカルな課題に対する注目ということで取り組んでいる学校が多いです。

 それから、もちろんですが、探求的、課題解決的な学習というのをカリキュラムの重要な中味として位置付けている。さらには、海外でのフィールドワークや海外の学校や諸機関との連携を通して、海外研修、生徒たちを海外へ送り出して、そこで学んでいくという、そういうプログラムを組み込んでいるという点も1つの取組の特色ではないかと。

 さらには、海外大学等への留学などもどれだけ考えているかというようなことを、数値目標のような形でそれぞれ学校が設定するということになっております。

 4ページ目ですけれども、関係施策との連携を図る上での必要な視点、これはちょっと問題提起的に私が書いたものですが、先ほどの渋谷委員の御発表の中味ともかなり重なり合うかと思います。

 1つは、多様なグローバル人材像と書いていますが、グローバル人材だとかグローバルリーダーという言葉が授業の中で使われてきているわけですけれども、1つ、グローバル人材って何か、これはいろいろあるであろうということなんですね。また、いろいろあるべきだと思いますけれども、SGHの取組がまさしくこういったグローバル人材についての概念的な理解を豊かにしていく取組になっているのではないだろうかというふうに思います。

 それから、それについては、世界で活躍するグローバル人材というのと、それからローカルにも軸足を置いたグローカルな人材育成、さらにはそういう両方を視野に入れたカリキュラムの開発というのを考えているような、3つぐらいのグルーピングが今のSGHの中ではできるかなという印象であります。

 ちょっと時間がありませんので駆け足で行きますけれども、2番目は、国際バカロレアとグローバル人材の関連性はと。この有識者会議が国際バカロレアを中心としたグローバル人材育成を考えるということになっていますので、国際バカロレア、これはすなわちグローバル人材の育成だということが前提のようにされているのかもしれませんけれども、果たして国際バカロレアはグローバル人材を育てるということを1つのミッションにしているかというと、先ほどの御紹介ありましたけれども、多様な文化の理解や尊重をするというようなことが内容としてあるけれども、グローバル人材という言葉はないわけですよね。したがって、我々が国際バカロレアのプログラムを、グローバル人材を育成するものだというふうに捉えるならば、それはいかなる意味において、どういうところがそうなのかという、そういう検討がやはり必要だろうと思います。

 渋谷委員のお話もありましたように、国民の育成ということを考えると、どうもIBのDPのプログラムにはちょっと足りないところもあるわけです。逆に、日本の国民の育成という形で学習指導要領で示されている高等学校の教育内容には、IB、DPにはないところがあるという、そういうところにももうちょっとセンシティブになっていく必要があるのではないかということです。

 3番目は、国際バカロレアプログラムと国際バカロレア的なプログラムの区別。これをしておく必要があるのではないか。それは最初の趣旨を踏まえた教育の開発というのを紹介しましたけれども、その考え方というのは今ももうちょっと大事にしていく必要があるかなというふうに思います。

 以上です。ちょっと時間を超過してしまいました。

【長谷川座長】

矢野委員、どうもありがとうございました。委員の皆様、御質問、御意見いかがでございしょうか。

【佐藤委員】

ありがとうございました。2ページのところなんですが、調査研究の成果というところの3番目のところで、IB、DPが日本の教育と結構リンクしているということで、本校でもよく見学に来た方が言われるんですけれども、教育活動とした場合、コンセプトというか、概念の部分と教育方法という部分があると思うんですけれども、その辺は、先生はやはり近くてリンクが可能だというふうにお考えなんでしょうか。

【矢野委員】

コアとしてのTOKやCASやExtended Essayという、これは特に、例えばCASは、日本でいえば特別活動に対応するのかなとも思うんですけれども、CASは非常にはっきりとクリエーティビティーと、それから活動と、それからサービス、そういうことでその価値をそこの中に明示的に組み込んでいますけれども、日本の特別活動は、望ましいよりよい人間関係の在り方とか、もうちょっと漠としている。そういう点は、IBと日本の高等学校の特別活動との違いかなというふうに思います。

 逆に、日本の高等学校ももうちょっとCASのような焦点化をしてもいいかなというふうな気も私は個人的にはしておりますけれども、ただ、そういう対応領域があり得るということがありますし、TOKを除けば、Extended Essayでもそれは総合的な学習の時間というような時間を用意されているということで、そういう多様性はあるということは言えるかなと思うんです。

 答えになっていますでしょうか。

【長谷川座長】

ほかにいかがでしょうか。

 矢野委員、どうもありがとうございました。

 本日は6名の委員からヒアリングを頂いたということですが、非常に密度の濃い会議だったと思います。非常に多岐にわたる方面から、課題も含めてですけれども、また実際に進めていらっしゃるところから先進的な取組の実情の御紹介などもありまして、今後のIBを推進していく上で非常に重要な視点とか論点とか実践例とか御紹介いただけたと思います。また次の委員会で、きょう頂いた様々な御議論を深めていければというふうに思っております。

 最後に、まだ御発言これだけはしておきたいということがございましたら、どうぞ御遠慮なくおっしゃってくださいませ。よろしいですか。じゃ、きょうは主に勉強会だったということで、次回以降また一層活発な議論をお願いしたいと思います。

 これで本日の議題は終了いたしますが、最後に今後のスケジュール等について事務局の方から御説明をお願いいたします。

【村越外国人教育政策係長】

事務局ですけれども、今まで頂いた御意見について再度整理させていただいて、第3回以降の議論につなげていければと思っています。大変恐縮なんですけれども、次回の日程についてまだ調整中ですので、近日中にまた整理して御案内差し上げたいと思っています。またよろしくお願いいたします。

【長谷川座長】

ありがとうございました。それでは、本日の第2回目の会議を終了といたします。本当に御苦労さまでございました。次回もよろしくお願いいたします。

 

―― 了 ――


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