研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドラインに関する質問と回答(FAQ)(平成26年2月18日版)

このFAQは、「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)(平成19年2月15日文部科学大臣決定。平成26年2月18日改正)」(以下「ガイドライン」という。)について関係者の方々により良く理解していただくため、文部科学省がこれまで実施してきた研修会や現地調査、ガイドラインの改正案に関する意見募集等を通じて寄せられた質問等に対する回答をQ&A形式でまとめて掲載しているものです。ガイドラインに基づく管理・監査体制の整備・運用に当たり参考にしてください。
また、今後、随時更新していきますので、ガイドラインに関して御不明な点がございましたら、下記問合せ先に御質問をお寄せいただきますようお願いします。

質問項目

<前文(総論)>

(本ガイドラインの目的と改正の背景)

Q001
ガイドラインの改正に当たっての基本的な考え方を教えてください。
Q002
他府省や他府省所管の独立行政法人が配分する競争的資金等については、どのように管理すればよいですか?
Q003
PDCAサイクル(Plan(計画)・Do(実施・実行)・Check(点検・評価)・Action(改善))を徹底することが求められていますが、その趣旨を教えてください。

(適用)

Q004
第1節から第6節までについては、平成26年度中に、順次、各節に係る取組を行うこととしていますが、どういうことですか?
Q005
第7節、第8節における措置は、平成26年度当初予算以降(継続も含む。)における競争的資金を対象とするとありますが、平成25年度以前の予算における競争的資金の不正事案が発生した場合は措置の対象とならないのですか?
Q006
第7節、第8節における措置は、平成26年度当初予算以降(継続も含む。)における競争的資金を対象とするとありますが、「継続も含む」とはどういうことですか?

(用語の定義)

Q007
「不正」は「故意若しくは重大な過失による競争的資金等の他の用途への使用又は競争的資金等の交付の決定の内容やこれに付した条件に違反した使用」とされていますが、「重大な過失」とは、どのような過失が該当しますか?
Q008
「管理条件」として、どのような条件が考えられますか?

(本ガイドラインの構成と留意点)

Q009
自己点検チェックシート(付属資料2)は、「体制整備等自己評価チェックリスト」に代わるものですか?
Q010
「機関に実施を要請する事項」及び「実施上の留意事項」は全て実施しなければならない事項ですか?

<第1節 機関内の責任体系の明確化>

Q101
最高管理責任者は、原則として機関の長が当たるものとするとありますが、大学を設置する学校法人の場合、学校法人の理事長と大学の学長のどちらを最高管理責任者とすべきですか?また、複数の高等専門学校を設置する独立行政法人国立高等専門学校機構や複数の大学共同利用機関を設置する大学共同利用機関法人の場合はどうすべきですか?
Q102
「コンプライアンス推進責任者」は、改正前のガイドラインの「部局責任者」を改めたものと考えられますが、既に定着していた名称を変更したのはどうしてですか?
Q103
機関の管理責任者がその責任を十分果たさず、結果的に不正を招いた場合は処分の対象とすることが求められていますが、どのような場合が考えられますか?
Q104
不正に関与していない部局等や構成員の研究活動の遂行に影響を及ぼさないよう、必要な措置を講じなければならないとありますが、必要な措置とはどのような措置が考えられますか?

<第2節 適正な運営・管理の基盤となる環境の整備>

Q201
ルールの策定や周知に当たり、「分かりやすい」ことが求められていますが、この点について機関として対応できていることを説明するために、どのような方法が考えられますか?
Q202
コンプライアンス教育には、どのような効果があると考えていますか?
Q203
コンプライアンス教育は、機関の実情を踏まえて適切に実施すべきものであると考えますが、各機関に共通する事項もあると考えます。これに関して、国からの支援として、どのようなことを予定していますか?
Q204
構成員から誓約書等の提出を求めるのはどうしてですか?また、提出を拒否された場合、どのように対応すればよいですか?
Q205
誓約書等の提出を求める対象を「競争的資金等の運営・管理に関わる全ての構成員」としていますが、学生や派遣労働者についてはどのように対応すればよいですか?
Q206
構成員に提出を求める誓約書等は一度提出されれば、誓約書等の内容が同じであれば、再度提出を求める必要はありませんか?
Q207
調査対象とすべき告発の要件として、どのような要件が考えられますか?
Q208
告発等を受け付けた場合は、告発等の受付から30日以内に配分機関に報告することが求められていますが、起算日はいつですか?また、30日目が土日祝日等で配分機関の執務が行われていない日に当たる場合、報告期日はいつになりますか?
Q209
告発が寄せられた場合の手続として、単に事務的に受け付けることを「受付」、受け付けた告発が調査すべき内容であると判断した後に正式に受け付けることを「受理」として区別しているのですが、この場合、ガイドラインの「受付」はどちらに当たると考えればよいですか?
Q210
告発等の受付から配分機関への調査の要否の判断結果の報告までの期限及び最終報告書の提出までの期限がそれぞれ定められていますが、大変厳しい期限設定であると考えます。また、不正に関与した者の多寡等によりこれらに要する日数は変わってくると考えますが、一律に期限を定めたのはどうしてですか?
Q211
報道による場合に、告発等の受付の場合と同様の取扱いを求めているのはどうしてですか?
Q212
調査の要否を配分機関に報告すること、また、調査の実施に際し、調査方針、調査対象及び方法等について配分機関に報告して協議することを求めているのは、どうしてですか?また、配分機関と協議することで調査の迅速性が損なわれるおそれはないですか?
Q213
不正の調査は配分機関が実施すべきではないですか?
Q214
調査中における一時的執行停止について、必要に応じて、被告発者等の調査対象となっている者に対し、調査対象制度の研究費の使用停止を命じることが求められていますが、必要がある場合とはどのような場合ですか?また、調査対象以外の制度の研究費については使用停止を命じる必要はないですか?
Q215
調査の過程であっても、不正の事実が一部でも確認された場合には、速やかに認定し、配分機関に報告することが求められていますが、どうしてですか?
Q216
競争的資金等の不正の調査が終了した場合に配分機関に対して報告すべき事項としては、調査報告書ひな形(付属資料1)で示されている事項が含まれていれば十分であると考えてよいですか?

<第3節 不正を発生させる要因の把握と不正防止計画の策定・実施>

Q301
「不正防止計画」、最高管理責任者が策定する「基本方針」、統括管理責任者が策定する「機関全体の具体的な対策」及び防止計画推進部署が策定する「機関全体の具体的な対策」は相互にどのような関係にあるのですか?
Q302
不正を発生させる要因に対応する具体的な不正防止策を策定することが求められていますが、不正防止策として、不正を行う動機をなくすための取組も必要であると考えます。競争的資金等の使い勝手が向上すれば、不正を行う動機の一部はなくすことができるのではないですか?
Q303
同一の研究室における、同一業者、同一品目の多頻度取引、特定の研究室のみでしか取引実績のない業者や特定の研究室との取引を新規に開始した業者への発注の偏りがある場合は注意が必要であるとしていますが、どうしてですか?
Q304
個人依存度が高い、あるいは閉鎖的な職場環境(特定個人に会計業務等が集中、特定部署に長い在籍年数、上司の意向に逆らえないなど)や、牽制が効きづらい研究環境(発注・検収業務などを研究室内で処理、孤立した研究室など)については注意が必要であるとしていますが、どうしてですか?

<第4節 研究費の適正な運営・管理活動>

Q401
予算執行が当初計画に比較して著しく遅れているか否かを確認するためには、当初計画を事前に把握しておく必要があると考えられますが、どの程度の内容を把握しておくとよいですか?
Q402
業者から誓約書等の提出を求めるに当たっては、一定の取引実績(回数、金額等)や機関におけるリスク要因・実効性等を考慮することとしていますが、どのような対応が考えられますか?
Q403
業者から誓約書等の提出を断られた場合、どのように対応すればよいですか?
Q404
「誓約書等に盛り込むべき事項」にある内容が担保されていれば、誓約書等の提出を求める以外の方法を採用することはできますか?
Q405
業者に提出を求める誓約書等は一度提出されれば、誓約書等の内容が同じであれば、再度提出を求める必要はありませんか?
Q406
上下関係を有する同一研究室・グループ内での検収の実施などは避けることが求められていますが、どうしてですか?
Q407
一部の物品等について検収業務を省略する例外的な取扱いとする場合は、定期的に抽出による事後確認を実施することが求められていますが、事後確認の対象として、どのような物品を想定していますか?
Q408
過去に業者による納品物品の持ち帰りや納品検収時における納品物品の反復使用などによる不正が認められた機関においては、それらを防止するための具体的な対策を講じることが求められており、その対策例として、納品物品へのマーキング、シリアル番号の付記が挙げられていますが、全ての物品を対象とすることは多大な事務コストがかかることから現実的ではないと考えます。どのように対応すればよいですか?
Q409
役務の検収については、改正前のガイドラインには明示されていませんが、今回の改正に伴い、新たに検収の対象となったのですか?
Q410
特殊な役務に関する検収について、必要に応じ、発注者以外の専門的な知識を有する者がチェックすることが求められていますが、必要がある場合とはどのような場合ですか?また、発注者以外の専門的な知識を有する者については、発注者と同一研究室・グループ内の者を充ててもよいですか?
Q411
面談や勤務条件の説明、出勤簿・勤務内容の確認の方法として、どのような方法が考えられますか?
Q412
適切に管理すべき換金性の高い物品については、パソコンを除き例示がないことから、機関の判断で対象物品を定めるべきと考えられますが、既に取り組んでいる機関があれば、どのような物品を対象と定めているか教えてください。
Q413
物品管理規程等で管理対象の物品を一定金額以上の物品に限定している場合、換金性の高い物品であっても、一定金額未満の物品については管理する必要はないと考えてよいですか?
Q414
換金性の高い物品の管理について、毎年度、過去に取得した全ての物品を現物確認することは多大な事務コストがかかることから現実的な方法ではないと考えますが、適切な管理方法として、どのような方法が考えられますか?
Q415
研究者の出張計画の実行状況等の把握・確認について、必要に応じて宿泊先等への照会など出張事実を確認することが求められていますが、宿泊先等への照会は個人情報保護の観点から対応することが難しいと考えます。どのように対応すればよいですか?。

<第5節 情報発信・共有化の推進>

Q501
競争的資金等について広く国民の理解と支援を得るためには、競争的資金等を管理する機関が、ガイドラインの要請する実施事項等の対応状況について積極的に情報発信を行う必要があると考えますが、どのように公表するのがよいですか?
Q502
企業等において、その活動上、社内規程等を外部に公表することが困難な場合は、配分機関への報告をもって公表に代えることができるとありますが、報告先をモニタリング主体である文部科学省でなく配分機関としているのはどうしてですか?

<第6節 モニタリングの在り方>

Q601
内部監査部門は最高管理責任者の直轄的な組織として位置付けることとされていますが、統括管理責任者の職務の執行についても内部監査の対象ですか?
Q602
内部監査部門は最高管理責任者の直轄的な組織として位置付けることとされていますが、多くの私立大学においては、最高管理責任者は学長としているが、内部監査部門は「私立大学を設置、運営している学校法人の理事長」の直轄的な組織として位置付けています。この責任体系を見直す必要はありますか?
Q603
リスクアプローチ監査の具体的な方法として、「取引業者の帳簿との突合」が挙げられていますが、業者に協力を求めたところ、帳簿自体の提出については協力できないが、帳簿にある情報と同種の情報が記載された資料の提出については協力できると言われました。帳簿自体でなければいけないですか?
Q604
内部監査について、不正が発生するリスクに対して重点的にサンプルを抽出することが求められていますが、抽出するサンプルの数・割合をどのように考えたらよいですか?

<第7節 文部科学省による研究機関に対するモニタリング等及び文部科学省、配分機関による体制整備の不備がある機関に対する措置の在り方>
<第8節 文部科学省、配分機関による競争的資金制度における不正への対応>

Q701
「書面による報告」を文部科学省に提出することが求められていますが、この報告の詳細については別途お知らせがあるのですか?
Q702
履行状況調査と機動調査について、対象機関の選定方法や実施時期等の定めはあるのですか?
Q703
「管理条件の付与」等の措置を講じるに当たっては、その妥当性等について慎重な検討が必要であると考えますが、この点についてどのように考えていますか?
Q704
「間接経費の削減」措置について、間接経費は競争的資金の管理に必要な経費にも充当されていることから、間接経費を削除することは機関の管理体制を弱体化させことにつながるので適切な措置でないと考えます。この措置を定めたのはどうしてですか?
Q705
機関の体制整備等の状況に不備がある場合に講じられる間接経費の削減措置と、報告遅延の場合に講じられる間接経費の削減措置について、削減する対象に違いはありますか?
Q706
間接経費の削減措置が講じられている期間中(年度途中)に管理条件を着実に履行又は履行に進展があると判断された場合、当該年度の間接経費の削減措置はどうなりますか?また、間接経費の削減割合が年度途中に変わることはありますか?

質問と回答

<前文(総論)>

(本ガイドラインの目的と改正の背景)

Q001
ガイドラインの改正に当たっての基本的な考え方を教えてください。

A001
今回の改正に当たっては、昨今、不正事案が社会問題として大きく取り上げられる事態となっていることから、「研究における不正行為・研究費の不正使用に関するタスクフォース」の中間取りまとめに沿って、新たな内容を加えるとともに、これまで、各機関において既に実施されており、実効性が期待できる取組や近年の不正事案の発生要因も考慮しつつ、従前のガイドラインの記述の具体化・明確化を図ることに主眼が置かれています。

Q002
他府省や他府省所管の独立行政法人が配分する競争的資金等については、どのように管理すればよいですか?

A002
他府省等が配分する競争的資金等の管理については、別途他府省から示されるガイドライン等に基づき管理していただくことになります。今後、「研究における不正行為・研究費の不正使用に関するタスクフォース」の中間取りまとめの「4.今後に向けて」において、不正の問題は、「文部科学省の所掌の範囲に閉じるものではなく、全政府を挙げて取り組むべき課題であることから、各府省とも連携・協調を図っていくことが不可欠である。ここで打ち出した方向性を基礎に、関係府省間で政府としての対応策について早急に検討することが必要である」とされていることも踏まえ、文部科学省のガイドラインが示す対応策について、関係府省においても可能な限り統一的な運用等がなされるよう、関係府省に働きかけを行う予定です。

Q003
PDCAサイクル(Plan(計画)・Do(実施・実行)・Check(点検・評価)・Action(改善))を徹底することが求められていますが、その趣旨を教えてください。

A003
文部科学省はこれまで、ガイドラインに基づく体制整備等の実施状況について現地調査を行ってきましたが、現地調査の対象となった機関において多く確認された状況として、機関の構成員が不正防止計画やルールで定められている事項の目的・必要性、さらには内容自体について十分に把握しておらず計画等を確実に実施できていない、計画等の実施状況について点検・評価していない、計画等を確実に実施できていないにもかかわらず改善を指示していない、その結果、改善につながらないという状況、つまり、PDCAサイクルが機能していないという状況がありました。機関において適切に管理体制が整備・運用されるためには、PDCAサイクルが徹底されることが不可欠であると考えることから、その重要性に意識を向けていただくために、今回の改正に当たり、ガイドラインの前文に明記しました。

(適用)

Q004
第1節から第6節までについては、平成26年度中に、順次、各節に係る取組を行うこととしていますが、どういうことですか?

A004
改正後のガイドラインは平成26年4月1日付けで施行されますが、機関においてガイドラインが求める全ての事項に対応するためには一定の期間を要すると考えられることから、平成26年度はそのための期間(経過措置期間)と位置付けています。

Q005
第7節、第8節における措置は、平成26年度当初予算以降(継続も含む。)における競争的資金を対象とするとありますが、平成25年度以前の予算における競争的資金の不正事案が発生した場合は措置の対象とならないのですか?

A005
平成25年度以前の予算における競争的資金の不正事案が発生した場合、配分機関が、ガイドラインに基づき、第7節における間接経費の削減、第8節における不正が一部認定された場合の採択又は交付決定の保留、交付停止、機関に対する執行停止の指示、間接経費の削減の措置を講じることはありません。ただし、配分機関がそれぞれのルール等に基づきこれらの措置を講じることを妨げるものではありません。
なお、第8節における「不正に係る競争的資金の返還等」、「競争的資金への申請及び参加資格の制限」は、平成25年度以前の予算における競争的資金の不正事案が発生した場合でも、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律や当時の配分機関との委託契約等に基づき、措置が講じられることになります。

Q006
第7節、第8節における措置は、平成26年度当初予算以降(継続も含む。)における競争的資金を対象とするとありますが、「継続も含む」とはどういうことですか?

A006
平成25年度以前の予算が平成26年度に繰り越される場合や平成25年度以前の予算が基金を通じて平成26年度以降に配分される場合など、平成25年度以前の予算であっても、平成26年度以降に管理されることになる競争的資金については対象に含まれるということです。

(用語の定義)

Q007
「不正」は「故意若しくは重大な過失による競争的資金等の他の用途への使用又は競争的資金等の交付の決定の内容やこれに付した条件に違反した使用」とされていますが、「重大な過失」とは、どのような過失が該当しますか?

A007
ほとんど故意に近い著しい注意欠如の状態が該当します。当事者が故意であることを認めないなど故意と認定することはできないが、他の状況から、当事者がわずかの注意さえすれば、たやすく「競争的資金等の他の用途への使用又は競争的資金等の交付の決定の内容やこれに付した条件に違反した使用」の結果を予見することができた場合であるのに、漫然これを見過ごしたような場合は、重大な過失があったとして「不正」になります。

Q008
「管理条件」として、どのような条件が考えられますか?

A008
管理条件は、機関の体制整備等の状況について調査した結果、ガイドラインが求める事項を実施するための規程等が整備されていない場合、また、規程等は整備されているが、それに基づき実施されていない場合に、個別に改善事項とその履行期限を示して付与するものです。例えば、コンプライアンス推進責任者が明確に定められていない場合、「○○規程等において、コンプライアンス推進責任者の役割を担う者を明確に定め、適切に運用すること」、また、コンプライアンス教育の受講管理について、機関の規程等には定められているが実施されていない場合、「コンプライアンス教育の受講管理について、□□規程等に基づき適切に実施すること」などの改善事項を示した管理条件を付与することが考えられます。

(本ガイドラインの構成と留意点)

Q009
自己点検チェックシート(付属資料2)は、「体制整備等自己評価チェックリスト」に代わるものですか?

A009
自己点検チェックシートは、「体制整備等自己評価チェックリスト」に代わるものではありません。Q701を御覧ください。

Q010
「機関に実施を要請する事項」及び「実施上の留意事項」は全て実施しなければならない事項ですか?

A010
文末が「望ましい」という表現になっている事項を除き、「機関に実施を要請する事項」及び「実施上の留意事項」は全て、機関の性格や規模、コストやリソース等を考慮して実効性のある対策として実施されることが必要です。例えば、小規模機関において、独立した専属の内部監査部門として人員を配置することが困難な場合は、最高管理責任者の直轄的な組織として位置付けることや必要な権限を付与することなどを規程において明確に定めた上で、他の部署の職員を監査担当者に任命し、監査チームを編成するなどの対応が考えられます。

<第1節 機関内の責任体系の明確化>

Q101
最高管理責任者は、原則として機関の長が当たるものとするとありますが、大学を設置する学校法人の場合、学校法人の理事長と大学の学長のどちらを最高管理責任者とすべきですか?また、複数の高等専門学校を設置する独立行政法人国立高等専門学校機構や複数の大学共同利用機関を設置する大学共同利用機関法人の場合はどうすべきですか?

A101
競争的資金等を適正に管理できる規模等を考慮した上で適切に最高管理責任者を定めていただければ、どちらを最高管理責任者としていただいても構いません。独立行政法人国立高等専門学校機構や大学共同利用機関法人の場合も同様に考えてください。

Q102
「コンプライアンス推進責任者」は、改正前のガイドラインの「部局責任者」を改めたものと考えられますが、既に定着していた名称を変更したのはどうしてですか?

A102
改正後のガイドラインでは、コンプライアンス教育を重要事項として位置付けており、そのことを明示的に表すため、新たに「コンプライアンス推進責任者」という名称を使用することにしました。なお、ガイドラインに基づく管理体制の整備に当たっては、必ずしもガイドラインと同じ名称を使用する必要はなく、コンプライアンス推進責任者などの各責任者に求められている役割を担う者が明確に定められていれば問題ありません。

Q103
機関の管理責任者がその責任を十分果たさず、結果的に不正を招いた場合は処分の対象とすることが求められていますが、どのような場合が考えられますか?

A103
機関の管理責任者がガイドラインに基づき適切に管理体制を整備・運用していたとしても、不正が発生することは十分に起こり得ると考えます。そのため、不正が発生したという結果のみをもって、処分の対象とすべきであるとは考えていません。機関において、不正を招いた原因を分析・特定した結果、ガイドラインが求める事項を適切に実施していれば、その不正の発生を防ぐことができたと考えられる場合(例えば、コンプライアンス教育の受講管理や指導等が適切に行われていなかった場合)に処分の対象とすべきであると考えます。このほか、一般的に、機関の懲戒処分規程等に照らして、管理監督者としての指導監督に適正を欠いていた場合などが考えられます。

Q104
不正に関与していない部局等や構成員の研究活動の遂行に影響を及ぼさないよう、必要な措置を講じなければならないとありますが、必要な措置とはどのような措置が考えられますか?

A104
例えば、配分機関から一定割合の間接経費の削減措置を受けた場合に、機関内で間接経費を部局等に再配分する際、全ての部局等に一律に同じ割合の間接経費の削減措置を講じるのでなく、不正に関与していない部局や構成員に対する削減割合を小さくする(あるいはゼロにする)などの措置が考えられます。こうした措置を講じる前提として、機関の間接経費の配分ルール等をあらかじめ整備しておくことも必要となります。

<第2節 適正な運営・管理の基盤となる環境の整備>

Q201
ルールの策定や周知に当たり、「分かりやすい」ことが求められていますが、この点について機関として対応できていることを説明するために、どのような方法が考えられますか?

A201
研究者、事務職員など、それぞれの職務に応じた視点からハンドブックやマニュアル等を作成することが考えられます。また、ルールの理解度を把握し、全ての構成員について高い理解度が確認できれば、「分かりやすい」ルールであることの一つの証左になると考えられます。ただし、理解度の把握方法が適切であることが前提です。

Q202
コンプライアンス教育には、どのような効果があると考えていますか?

A202
コンプライアンス教育はルールの遵守につながると考えています。ルールが遵守されるためには、単にルールの内容を知っているだけでなく、ルールの目的・必要性について理解、納得すること、さらには、ルールを遵守しなければ処分の対象になることについて十分認識することが必要です。そのための機会としてコンプライアンス教育を位置付けています。そのほか、不正を事前に防止する対策が整っていることなどを説明し、機関が不正に対して断固たる姿勢で臨んでいることを示すことにより、不正に対する意識の向上などが期待できます。
また、遵守すべきルールそのものが研究現場の実態に合わない場合も不正を誘発するおそれがあることから、ルールと研究現場における運用実態に乖離がある場合は、ルールの変更も視野に入れることが必要です。
なお、コンプライアンス教育における説明内容の例として、「自らの過去の不正について機関に自己申告した場合には、懲戒処分等において情状が考慮されることがあること」を挙げていますが、処分が不当に軽減されることを推奨するものではありません。

Q203
コンプライアンス教育は、機関の実情を踏まえて適切に実施すべきものであると考えますが、各機関に共通する事項もあると考えます。これに関して、国からの支援として、どのようなことを予定していますか?

A203
コンプライアンス教育に関する支援策として、各機関に共通すると考えられる事項に関し、コンテンツ教材を作成することを予定しています。そのほか、ガイドラインの内容を簡易に説明するためのパンフレットを作成すること、ガイドラインに関する研修会を開催することなどを予定しています。

Q204
構成員から誓約書等の提出を求めるのはどうしてですか?また、提出を拒否された場合、どのように対応すればよいですか?

A204
一般的に、構成員は機関に対し、雇用契約に基づき、又は雇用契約に付随する信義則上の義務として、機関の規則等を遵守しなければならないなどの義務を既に負っていますが、不正の問題の重要性に鑑み、別途その内容を誓約書等に明確に示した上で提出を求めることにより、構成員の不正に対する意識の向上が一層図られると考えられることから、誓約書等の提出を求めることとしています。
また、誓約書等の提出が拒否されたことのみをもって、何らかの処分を講じることは不当な処分とみなされる可能性があります。そうした場合は、機関内において、構成員のコンセンサスを形成した上で、誓約書等の提出について内部規程等に明確に定めておくことが必要となります。
なお、誓約書等が提出されない場合には、機関の管理責任が果たされているかという観点から、少なくともコンプライアンス教育の受講管理の記録などを整理しておくことが必要です。
そのほか、配分機関が別途、誓約書等の提出を求めている場合は、配分機関の指示に従ってください。

Q205
誓約書等の提出を求める対象を「競争的資金等の運営・管理に関わる全ての構成員」としていますが、学生や派遣労働者についてはどのように対応すればよいですか?

A205
ガイドラインでは、リサーチアシスタントなど、機関と雇用関係を有する学生については構成員と位置付けていることから、競争的資金等の運営・管理に関わる場合は、他の構成員と同様に対応してください。機関と雇用関係を有しない学生についても、研究プロジェクトに参画するなど競争的資金等の運営・管理に関わる場合は、当該学生向けの誓約書等を別途定めて提出を求めることや適正な使用について指導するなど適切に対応することが望ましいと考えます。
また、派遣労働者については、競争的資金等の運営・管理に関わる場合は、派遣元事業主との契約等において、派遣元事業主が派遣労働者から誓約書等の提出を受けるなどして派遣元事業主が機関に対して誓約するかたちにするなど適切に対応することが望ましいと考えます。

Q206
構成員に提出を求める誓約書等は一度提出されれば、誓約書等の内容が同じであれば、再度提出を求める必要はありませんか?

A206
意識付けの観点から、ルールやコンプライアンス教育の内容等を見直した際、また、昇格や配置転換等による業務の変更時など特定の機会に、改めて提出を求めることが望ましいと考えます。

Q207
調査対象とすべき告発の要件として、どのような要件が考えられますか?

A207
1.悪意に基づく告発を防止するため、また、必要に応じて調査への協力を求めるため、原則として顕名による告発であること、2.不正に関与した者(研究者、業者等)、不正が行われた時期(会計年度等)、不正が行われた研究資金名など調査対象が特定できること、3.不正とする合理的な根拠が示されていることなどが考えられますが、匿名による告発など、これらの要件を全て満たさない告発であっても、可能な限り調査対象とするなど、国民の貴重な税金を原資とする競争的資金等を管理する機関として誠実に対応することが求められます。なお、会計書類の保存年限を超える過年度の不正に関する告発については、適正な調査の実施が困難な場合も考えられますが、上記と同様に可能な範囲で調査を行うことが望まれます。
これらの取扱いについては、調査規程等において明確に定め、機関の内外に周知しておくことも必要です。そのほか、他機関への異動者や退職者など既に機関に所属していない者からも調査への協力が得られるよう事前に備えておくことも必要です。

Q208
告発等を受け付けた場合は、告発等の受付から30日以内に配分機関に報告することが求められていますが、起算日はいつですか?また、30日目が土日祝日等で配分機関の執務が行われていない日に当たる場合、報告期日はいつになりますか?

A208
告発等を受け付けた日を起算日としてください。また、30日目が、報告先の配分機関において執務が行われていない日に当たる場合は、その翌日以降最初の執務が行われている日が報告期日になります。最終報告書あるいは中間報告書の提出期限である210日以内についても同様に考えてください。

Q209
告発が寄せられた場合の手続として、単に事務的に受け付けることを「受付」、受け付けた告発が調査すべき内容であると判断した後に正式に受け付けることを「受理」として区別しているのですが、この場合、ガイドラインの「受付」はどちらに当たると考えればよいですか?

A209
前者の「受付」が、ガイドラインの「受付」に当たります。

Q210
告発等の受付から配分機関への調査の要否の判断結果の報告までの期限及び最終報告書の提出までの期限がそれぞれ定められていますが、大変厳しい期限設定であると考えます。また、不正に関与した者の多寡等によりこれらに要する日数は変わってくると考えますが、一律に期限を定めたのはどうしてです

A210
競争的資金等は国民の貴重な税金を原資としています。競争的資金等の不正事案が発覚した場合、国民の信頼をいち早く回復させるためには早期の全容解明が必要であることから、調査がいたずらに長期化しないよう一律の期限を設定しています。また、合理的な理由がある場合は、報告が遅延することも認められます。報告遅延に係る合理的な理由としては、第8節の(実施上の留意事項)の④のとおりです。
不正に関与した者(研究者や業者等)が多数に上るなど不正の規模が大きい場合も合理的な理由と認められ得るものと考えますが、機関において管理体制が適切に整備、運用されていれば不正の発生は一定規模に抑制できると考えられること、また、構成員や業者等の協力が得られる体制を構築し、会計書類を適切に保管しておくなど十分な準備をしておくことにより、所定の期限内での対応は十分可能であると考えられることから、合理的な理由として積極的に認めるべきものではないとも考えます。
なお、各期限の設定に当たっては、「研究活動の不正行為への対応のガイドライン」(平成18年8月8日科学技術・学術審議会 研究活動の不正行為に関する特別委員会)等を参考にしています。

Q211
報道による場合に、告発等の受付の場合と同様の取扱いを求めているのはどうしてですか?

A211
機関が管理する競争的資金等の使用に関して疑義があるなどの報道がなされた場合、機関は国民や配分機関に対し、その内容の真偽について説明する責任があると考えるからです。

Q212
調査の要否を配分機関に報告すること、また、調査の実施に際し、調査方針、調査対象及び方法等について配分機関に報告して協議することを求めているのは、どうしてですか?また、配分機関と協議することで調査の迅速性が損なわれるおそれはないですか?

A212
調査の要否や調査方針等について機関単独で判断するよりも、配分機関と協議することで、より適正な調査が実施できると考えられるからです。また、機関独自の判断で調査を実施した後、配分機関の判断と齟齬が生じ、再調査を求めざるを得なくなり、結果として調査の迅速性が損なわれるおそれもあることから、配分機関との協議を求めています。なお、配分機関は、機関が実施する調査の迅速性が損なわれないよう配慮する必要があります。

Q213
不正の調査は配分機関が実施すべきではないですか?

A213
競争的資金等は、機関がその責任において適正に管理することを前提に配分されるものであり、不正の疑義が生じた場合の対応についても、その管理の一環であると考えます。

Q214
調査中における一時的執行停止について、必要に応じて、被告発者等の調査対象となっている者に対し、調査対象制度の研究費の使用停止を命じることが求められていますが、必要がある場合とはどのような場合ですか?また、調査対象以外の制度の研究費については使用停止を命じる必要はないですか?

A214
調査を進めていく過程で、被告発者等の調査対象となっている者が不正に関与している可能性が極めて高いと判断される事実が明らかとなった場合などが考えられます。また、一時的執行停止の対象を調査対象制度に限定しているのは最低限として要請しているものであり、調査対象以外の制度の研究費であっても機関として使用停止を命じるべき状況であると判断した場合、また、調査対象以外の制度の研究費の配分機関から指示があった場合は、調査対象制度の研究費と同様に使用停止を命じることも考えられます。調査中における一時的執行停止については、機関の規程を踏まえるとともに、配分機関と十分に協議して対応するようにしてください。

Q215
調査の過程であっても、不正の事実が一部でも確認された場合には、速やかに認定し、配分機関に報告することが求められていますが、どうしてですか?

A215
不正の事実が一部でも確認、認定された場合に、配分機関が必要に応じ、採択又は交付決定の保留、交付停止、機関に対する執行停止の指示等、必要な措置を講じることができるようにするためです。なお、機関に対して、一部の認定をもって懲戒処分を実施することを求めているわけではありません。

Q216
競争的資金等の不正の調査が終了した場合に配分機関に対して報告すべき事項としては、調査報告書ひな形(付属資料1)で示されている事項が含まれていれば十分であると考えてよいですか?

A216
調査報告書ひな形(付属資料1)は、調査結果の報告に当たって共通して求めるべきと考えられる事項を示しているものであり、配分機関によっては別途追加の情報が必要となる場合もありますので、報告書の作成に当たっては、配分機関と十分に協議してください。なお、このひな形は、今後、必要に応じて見直すことを考えています。

<第3節 不正を発生させる要因の把握と不正防止計画の策定・実施>

Q301
「不正防止計画」、最高管理責任者が策定する「基本方針」、統括管理責任者が策定する「機関全体の具体的な対策」及び防止計画推進部署が策定する「機関全体の具体的な対策」は相互にどのような関係にあるのですか?

A301
ガイドラインが想定する責任体系として、統括管理責任者がその役割を果たす上での実働部門に相当する機関として防止計画推進部署を位置付けています。そのため、統括管理責任者が策定する「機関全体の具体的な対策」と防止計画推進部署が策定する「機関全体の具体的な対策」は同一のものです。また、「不正防止計画」は、統括管理責任者が「基本方針」に基づき策定する「機関全体の具体的な対策」のうち最上位のものとして位置付けています。

Q302
不正を発生させる要因に対応する具体的な不正防止策を策定することが求められていますが、不正防止策として、不正を行う動機をなくすための取組も必要であると考えます。競争的資金等の使い勝手が向上すれば、不正を行う動機の一部はなくすことができるのではないですか?

A302
不正は、動機、機会、正当化の3つの要素が全てそろったときに発生すると言われているように、動機をなくすための取組が重要であること、そのために各制度の使用ルール等の統一化及び簡素化・合理化など、競争的資金等の使い勝手を向上させることが必要であることについては認識しており、検討や改善を進めているところです。しかしながら、競争的資金等を適切に配分するためになくすことができない手続もあるなど、機関や研究者からの要望に対応することができないこともあります。そのため、機関が対応できることについては積極的に取り組んでいただきたいと考えます。例えば、競争的資金等に採択され、研究を開始することが認められたが、実際に競争的資金等が配分されるまでには一定期間を要する場合、その間の研究活動に支障が出ないよう、機関として財源を措置して一時的に立て替えるということは、不正の動機をなくすために取り組んでいただきたいことの一つです。

Q303
同一の研究室における、同一業者、同一品目の多頻度取引、特定の研究室のみでしか取引実績のない業者や特定の研究室との取引を新規に開始した業者への発注の偏りがある場合は注意が必要であるとしていますが、どうしてですか?

A303
過去の不正事案において、不正が行われていたときの取引の傾向として、このような状況が確認できたことから、不正のリスクが高い例として挙げています。なお、このような取引を認めないとしているわけではなく、機関の所在地による地理的条件から業者の選択肢が限られている、同じ物品を多量に使用する研究計画であるなど合理的な理由が確認できれば認められるものであると考えます。

Q304
個人依存度が高い、あるいは閉鎖的な職場環境(特定個人に会計業務等が集中、特定部署に長い在籍年数、上司の意向に逆らえないなど)や、牽制が効きづらい研究環境(発注・検収業務などを研究室内で処理、孤立した研究室など)については注意が必要であるとしていますが、どうしてですか?

A304
過去の不正事案において、不正を行った人が置かれていた環境として、このような状況が確認できたことから、不正のリスクが高い例として挙げています。

<第4節 研究費の適正な運営・管理活動>

Q401
予算執行が当初計画に比較して著しく遅れているか否かを確認するためには、当初計画を事前に把握しておく必要があると考えられますが、どの程度の内容を把握しておくとよいですか?

A401
例えば、月ごとあるいは四半期ごとなどの一定期間ごとに、物品費などの費目別の執行予定額をあらかじめ把握しておき、財務会計システム等を利用して発注段階の執行実績と照合するだけでも計画的な執行の確認に有用であると考えられます。

Q402
業者から誓約書等の提出を求めるに当たっては、一定の取引実績(回数、金額等)や機関におけるリスク要因・実効性等を考慮することとしていますが、どのような対応が考えられますか?

A402
例として、以下のような対応が考えられます。このほか、機関の実情を踏まえて適切に対応してください。
○取引実績の少ない業者まで対象とすると、業者数が膨大となり、事務コストに見合うだけの効果が期待できないことが想定される場合、過去の取引実績を分析し、一定の取引実績(回数、金額等)がある業者に限定して提出を求める。その際、機関全体の取引実績のみでなく、研究室単位の取引実績にも着目する。
○特定の物品や技術について独占(寡占)状態にある業者に対して提出を求める。
○事務部門が見積書を徴するなど業者選定・発注に研究者が一切関与しない(研究者と業者が一切接触しない)場合、また、電子商取引の形態を採用している業者など業者との接触自体が困難な場合は、研究者と業者が癒着するリスクは極めて低いと考えられることから、そのような業者については対象から除外する。

Q403
業者から誓約書等の提出を断られた場合、どのように対応すればよいですか?

A403
リスク評価等の結果に基づき提出を求めるべき対象と判断した業者からは可能な限り誓約書等の提出について協力を求めるようにしていただきたいと考えます。しかしながら、誓約書等の提出を断られた場合、また、誓約書等に盛り込まれた事項の修正を求められた場合であっても、そのことのみをもって業者に何らかの処分を行うことを推奨するものではありません。なお、誓約書等が提出されない場合には、機関の管理責任が果たされているかという観点から、少なくともルールの周知徹底を行った記録などは整理しておくことが必要です。

Q404
「誓約書等に盛り込むべき事項」にある内容が担保されていれば、誓約書等の提出を求める以外の方法を採用することはできますか?

A404
できます。代替的な措置が講じられていれば結構です。取組例として、業者から誓約書等の提出を求める代わりに、業者と取引基本契約を締結している機関もあります。

Q405
業者に提出を求める誓約書等は一度提出されれば、誓約書等の内容が同じであれば、再度提出を求める必要はありませんか?

A405
不正対策に関する方針やルール等を見直した際には、改めて提出を求めることが望ましいと考えます。

Q406
上下関係を有する同一研究室・グループ内での検収の実施などは避けることが求められていますが、どうしてですか?

A406
過去の不正事案によれば、研究室ぐるみで不正が行われることがあること、また、上下関係を有している場合、たとえ不正と分かっていても上からの指示があれば従わざるを得ない状況があることから、同一研究室や同一グループ内のチェックは実効性が極めて低いと考えられるためです。

Q407
一部の物品等について検収業務を省略する例外的な取扱いとする場合は、定期的に抽出による事後確認を実施することが求められていますが、事後確認の対象として、どのような物品を想定していますか?

A407
遠隔地で取得して使用するなど当事者以外の検収が困難と考えられる物品等を想定しています。なお、例外的な取扱いとする場合でも、その取扱いが一般化することがないよう、やむを得ないケースに限定するなど取扱いのルールを厳格に定めて運用してください。

Q408
過去に業者による納品物品の持ち帰りや納品検収時における納品物品の反復使用などによる不正が認められた機関においては、それらを防止するための具体的な対策を講じることが求められており、その対策例として、納品物品へのマーキング、シリアル番号の付記が挙げられていますが、全ての物品を対象とすることは多大な事務コストがかかることから現実的ではないと考えます。どのように対応すればよいですか?

A408
過去の不正事案において持ち帰り等の対象とされた物品や持ち帰り等を行った業者が納品する物品に限定するなど不正のリスクを考慮して対象を決めることが考えられます。

Q409
役務の検収については、改正前のガイドラインには明示されていませんが、今回の改正に伴い、新たに検収の対象となったのですか?

A409
役務の検収については、改正前のガイドラインにおいても、物品と同様、検収対象として想定していました。今回の改正に伴い、明確化するとともに、さらにプログラムやデジタルコンテンツの作成など、役務が完了して成果物を確認したとしても、専門的な知識がなければ、成果物の適否を判断することが困難な場合に、必要に応じ、発注者以外の専門的な知識を有する者がチェックすることを求めています。

Q410
特殊な役務に関する検収について、必要に応じ、発注者以外の専門的な知識を有する者がチェックすることが求められていますが、必要がある場合とはどのような場合ですか?また、発注者以外の専門的な知識を有する者については、発注者と同一研究室・グループ内の者を充ててもよいですか?

A410
受注業者が特定の研究室のみとしか取引実績がない、受注業者と発注者の間に特別な利害関係がある、受注業者の選定理由が弱いなど受注業者の選定に疑義がある場合が考えられます。また、発注者以外の専門的な知識を有する者の選定に当たっては、発注者と上下関係を有する同一研究室・グループ内の者は避けてください。

Q411
面談や勤務条件の説明、出勤簿・勤務内容の確認の方法として、どのような方法が考えられますか?

A411
面談や勤務条件の説明については、非常勤雇用者の採用時に、勤務内容や賃金の支払方法等を説明し、支払に当たっては事実に基づき適正に賃金を算定することが必要であり、そのためには事実に基づく勤務報告が求められることについての理解を促すとともに、不正の事例や相談窓口等を紹介して、不正の誘いを受けたり、不正が疑われる事態に遭遇した場合は相談窓口等に連絡するよう伝えておくことなどが考えられます。
また、出勤簿・勤務内容の確認については、非常勤雇用者の勤務場所に近い学部事務室等に出勤簿を備え置き、非常勤雇用者に、出退勤の際に学部等事務室を訪れて出勤簿にサインしてもらうなど事務部門が勤務事実の確認を行うこと、また、事務部門があらかじめ非常勤雇用者の勤務日時・場所等を把握した上で、一定割合の抽出による勤務場所の巡回を行うなどして勤務事実の確認を行うことなどが考えられます。

Q412
適切に管理すべき換金性の高い物品については、パソコンを除き例示がないことから、機関の判断で対象物品を定めるべきと考えられますが、既に取り組んでいる機関があれば、どのような物品を対象と定めているか教えてください。

A412
既に取り組んでいる機関の例としては、パソコン、タブレット型コンピュータ、デジタルカメラ、ビデオカメラ、テレビ、録画機器、金券類が挙げられます。

Q413
物品管理規程等で管理対象の物品を一定金額以上の物品に限定している場合、換金性の高い物品であっても、一定金額未満の物品については管理する必要はないと考えてよいですか?

A413
コストやリソース等を考慮しつつ、一定金額未満であっても、転売や私的使用などのリスクが高いと考えられる物品については、可能な限り管理してください。

Q414
換金性の高い物品の管理について、毎年度、過去に取得した全ての物品を現物確認することは多大な事務コストがかかることから現実的な方法ではないと考えますが、適切な管理方法として、どのような方法が考えられますか?

A414
物品を取得した際に、「品名・型番など物品が特定できる情報」及び「取得日・耐用年数・管理者・管理場所・支出経費などその他管理に必要な情報」をデータ管理しておき(物品には管理番号を印字したシール等を貼付)、そのデータを基に、内部監査等のモニタリングの一環として、耐用年数等を考慮の上、定期的に一定割合を抽出して現物確認を行うことなどが考えられます。

Q415
研究者の出張計画の実行状況等の把握・確認について、必要に応じて宿泊先等への照会など出張事実を確認することが求められていますが、宿泊先等への照会は個人情報保護の観点から対応することが難しいと考えます。どのように対応すればよいですか?

A415
宿泊先等への照会については、出張した当事者を通じて宿泊証明書を徴するなど当事者の協力を得て行うことにより対応可能であると考えます。

<第5節 情報発信・共有化の推進>

Q501
競争的資金等について広く国民の理解と支援を得るためには、競争的資金等を管理する機関が、ガイドラインの要請する実施事項等の対応状況について積極的に情報発信を行う必要があると考えますが、どのように公表するのがよいですか?

A501
ガイドラインの要請する実施事項等の対応状況については、機関独自で工夫して分かりやすい形で公表することを想定していますが、第7節の機関が提出する「書面による報告」についても機関のホームページ等に掲載することが望まれます。

Q502
企業等において、その活動上、社内規程等を外部に公表することが困難な場合は、配分機関への報告をもって公表に代えることができるとありますが、報告先をモニタリング主体である文部科学省でなく配分機関としているのはどうしてですか?

A502
配分機関は、競争的資金等を配分するに当たり、配分先の機関においてガイドラインに基づく管理体制の整備・運用が適切に実施されていることを確認する必要があると考えることから、配分機関に対して報告することとしています。なお、文部科学省による機関に対するモニタリングの具体的な進め方は第7節の(2)のとおりですが、「書面による報告」を基にしつつ、履行状況調査等の対象機関に対しては、必要に応じて関係資料の提出を求める予定です。

<第6節 モニタリングの在り方>

Q601
内部監査部門は最高管理責任者の直轄的な組織として位置付けることとされていますが、統括管理責任者の職務の執行についても内部監査の対象ですか?

A601
対象です。ガイドラインが想定する責任体系としては、内部監査部門は最高管理責任者を除く全ての構成員の職務の執行について監査する機関として位置付けています。そのため、内部監査部門には、被監査部門からの独立性が確保されていること、監査に必要な強い権限が付与されていること、監査に必要な高い専門性を備えていることが求められています。最高管理責任者は、統括管理責任者等からの報告とそれらのチェック機関である内部監査部門からの報告を受け、双方の報告内容を点検・評価することにより、統括管理責任者等の職務の執行の適否を判断できると考えます。

Q602
内部監査部門は最高管理責任者の直轄的な組織として位置付けることとされていますが、多くの私立大学においては、最高管理責任者は学長としているが、内部監査部門は「私立大学を設置、運営している学校法人の理事長」の直轄的な組織として位置付けています。この責任体系を見直す必要はありますか?

A602
ガイドラインが想定する責任体系としては、統括管理責任者や内部監査部門からの報告が集約される最上位の機関として最高管理責任者を位置付けていますが、内部監査部門を最高管理責任者よりも更に上位の機関(この質問の場合の理事長)の直轄的な組織として位置付けたとしても、内部監査部門の独立性等が阻害されるおそれはないと考えられることから、内部監査部門の独立性等が担保され、かつ、内部監査部門の報告内容が最高管理責任者に正確に伝わる仕組みが構築されていれば、見直す必要はありません。

Q603
リスクアプローチ監査の具体的な方法として、「取引業者の帳簿との突合」が挙げられていますが、業者に協力を求めたところ、帳簿自体の提出については協力できないが、帳簿にある情報と同種の情報が記載された資料の提出については協力できると言われました。帳簿自体でなければいけないですか?

A603
「取引業者の帳簿との突合」の目的は、機関が保有、把握する取引情報(物品の納品日など)と業者が保有、把握する取引情報(物品の売上計上日など)の間に齟齬がないかを確認することです。その目的に適うのであれば、必ずしも帳簿自体でなくて結構です。
また、内部監査を実施する段階になってから業者に協力を依頼するよりも、第4節の「業者から提出を求める誓約書等」に、内部監査や不正調査等の際に帳簿等の提出に協力する旨の事項を盛り込むことで、あらかじめ業者の同意を取り付けておくのがよいと考えます。

Q604
内部監査について、不正が発生するリスクに対して重点的にサンプルを抽出することが求められていますが、抽出するサンプルの数・割合をどのように考えたらよいですか?

A604
抽出すべきサンプルの数・割合については、機関の規模や競争的資金等の受給状況等によって変わるものであることから、一律に定めることは難しいと考えます。そのため、抽出に当たっての基本的な考え方について説明させていただきます。内部監査その他のモニタリングについては、構成員に対して、自身が内部監査等の対象になる可能性が確かにあることを十分に認識してもらうことが重要です。内部監査等の対象となる可能性が極めて小さいと認識されてしまえば、内部監査等の不正に対する牽制効果は極めて小さいものになると考えられるからです。
また、ガイドラインでは、リスクアプローチ監査としてリスクの高い状況に対し重点的に監査を行うことを求めていますが、一見リスクが低いと考えられる状況であっても、絶対に不正がないと断定することはできないことから、いつでも誰でも内部監査等の対象になりうるという意味で無作為抽出の観点も補完的に考慮すべきであると考えます。そのほか、研究室ぐるみで不正が行われることもあることから、研究室単位で内部監査等の対象を選定し、一定周期で機関の全ての研究室の内部監査等が実施できるように監査計画を立てることも有用であると考えます。

<第7節 文部科学省による研究機関に対するモニタリング等及び文部科学省、配分機関による体制整備の不備がある機関に対する措置の在り方>
<第8節 文部科学省、配分機関による競争的資金制度における不正への対応>

Q701
「書面による報告」を文部科学省に提出することが求められていますが、この報告の詳細については別途お知らせがあるのですか?

A701
「書面による報告」の様式や時期等の詳細については別途お知らせします。ガイドラインの改正を踏まえ、平成26度の第1四半期中を目途に、現行の「体制整備等自己評価チェックリスト」を見直す予定です。

Q702
履行状況調査と機動調査について、対象機関の選定方法や実施時期等の定めはあるのですか?

A702
履行状況調査の実施方針等については、毎年度、定めることとしています。対象機関の選定に当たっては、配分機関において不正が確認された機関のほか、競争的資金等の受給状況等を基に、一定数を抽出して実施することを考えています。実施時期については、調査対象となった機関の準備期間等を考慮して適切に定める予定です。履行状況調査では、ガイドラインの「機関に実施を要請する事項」及び「実施上の留意事項」の全ての事項についての実施状況が調査対象となります。
また、機動調査は、定例調査でなく、緊急・臨時の案件の発生状況に応じて実施するものであり、緊急・臨時の案件に応じて実施方針等を定めます。
なお、配分機関が実施する額の確定調査等とは別に実施される調査です。

Q703
「管理条件の付与」等の措置を講じるに当たっては、その妥当性等について慎重な検討が必要であると考えますが、この点についてどのように考えていますか?

A703
措置を講じるに当たっては、不備の内容等を踏まえた慎重な検討が必要であると考えます。そのため、措置の検討に当たり、有識者による検討を踏まえること、機関に対して弁明の機会を付与することとしています。

Q704
「間接経費の削減」措置について、間接経費は競争的資金の管理に必要な経費にも充当されていることから、間接経費を削除することは機関の管理体制を弱体化させことにつながるので適切な措置でないと考えます。この措置を定めたのはどうしてですか?

A704
競争的資金は国民の貴重な税金を原資としていることから、その配分先である機関において適切に使用・管理されることが確認できない場合は、当該機関に競争的資金を配分するべきではないと考えます。
しかしながら、機関において体制整備上の不備が確認された場合であっても、直ちに配分を停止するのではなく、猶予措置を設けて改善に向けた指導をすることが適切な対応であると考え、「配分の停止」措置の前段階の措置として「管理条件の付与」と「間接経費の削減」の措置を定めました。
間接経費がガイドラインに基づく体制整備等のために使用されていること、間接経費が削減されることで削減対象となった機関がより厳しい状況に置かれるおそれがあることは理解しています。その意味では、猶予措置である「管理条件の付与」の次の措置は「配分の停止」を位置付けるべきという考え方もできますが、両者の間にもう一つ猶予措置を設けることとし、改正前のガイドラインで既に定められていた「間接経費の削減」措置を採用しました。

Q705
機関の体制整備等の状況に不備がある場合に講じられる間接経費の削減措置と、報告遅延の場合に講じられる間接経費の削減措置について、削減する対象に違いはありますか?

A705
機関の体制整備等の状況に不備がある場合の間接経費の削減措置は、「全ての競争的資金制度」の間接経費に対して講じられることになります。一方、報告遅延の場合の間接経費の削減措置は、「不正の調査対象とされている競争的資金制度」の間接経費に対して講じられることになります。

Q706
間接経費の削減措置が講じられている期間中(年度途中)に管理条件を着実に履行又は履行に進展があると判断された場合、当該年度の間接経費の削減措置はどうなりますか?また、間接経費の削減割合が年度途中に変わることはありますか?

A706
間接経費の削減措置は年度を通して行うものなので、年度途中に措置が解除されることや削減割合が変わることはありません。

お問合せ先

科学技術・学術政策局研究環境課競争的研究費調整室

電話番号:03-5253-4111(内線:3827、3862、3826)
メールアドレス:kenkyuhi@mext.go.jp  ※お問合せは、可能な限りE-mailでお願いします。また、氏名・所属・連絡先を明記してください。

(科学技術・学術政策局研究環境課競争的研究費調整室)

-- 登録:平成26年02月 --