ここからサイトの主なメニューです

第2章 現地調査の分析結果

1.現地調査の結果

(1) 把握できた事項

1. 不正使用発覚の端緒

内部監査の手法としても活用が可能となる「預け金」等不正使用が発覚する端緒としては、以下の事例に大別される。なお、中には業者から内部統制の仕組みが構築されたことに伴い預け金に関与できなくなったと申し出られた事例も見られた。

  • 通報窓口への不正使用に関する通報
  • 業者の保有する原伝票と機関で保有する支出関係書類の照査結果(内部監査や、会計検査院等外部機関からの要請等を受けて行った調査過程)
  • 所属する研究者や取引業者への研究費執行に関するアンケート調査

2. 架空取引の状況

架空取引は、機関として資産管理・物品管理を要しない消耗品を対象とし、年度末に特定の業者と繰り返し行われていた。消耗品は備品に比べて単価が低く、かつ、1回の発注量は少ないが、部局(分野)によっては頻繁な発注が行われ、当該部局(分野)の総発注件数の大半を占めるケースもあった。また、これらの大半は研究者発注によるものであった。

架空取引で使用された消耗品は、高額な試薬、ビーカー類などの実験用消耗品等、研究活動に通常使用するものが多く見られた。また、実際に納品された物品も架空取引で使用されたものと同種の消耗品が多く、中にはパソコン等の備品も見られたが、極めて特殊なものが納品されている事例は見られなかった。帳簿等から特定の業者との取引が当該研究者の研究費の大部分を占めていることも確認出来たが、事務部門はこのような状況を把握していなかった。

この様な状況から、物品の調達において消耗品の割合が非常に高く、大量に使用されている部局はリスクが大きいと考えられる。

3. 当時の機関管理の状況

架空取引に用いられる消耗品の購入に係る事務処理には、以下のような状況が見られた。

  • 発注・納品検収は研究者が行っていた。事務部門は、支払い段階において研究者から提出される見積書・納品書・請求書の確認を行うのみであった。
  • 機関の職務権限上、事務職員が発注・検収を行うことになっているにも拘わらず、実態は研究者が自由に取引業者を選定・発注し、自らが検収を行っており、事務職員は証拠書類の後追い確認を行っていた。

また、事務職員から研究者に対して計画的な執行を求めていない状況にあって、年度末までに使い切るような指導等が行われ、年度末の不要な使い切り等を誘発を招く要因の一つとなっていた。

(2) 把握されたリスクと対応例

各機関に共通したリスクとして、以下の事項が把握された。

  1. 特定の業者と研究者が癒着しやすい環境とそれを牽制していない管理状況
  2. 納品事実が確認できていない状況
  3. 予算執行状況の検証が出来ていない状況。

各事項に対する対応策としては、以下の通りである。

1. 特定の業者と研究者が癒着しやすい環境とそれを牽制していない管理状況

「預け金」は、研究者が取引業者を選定できる状況にあって、機関が取引の実態を把握できていない環境において発生しやすい。研究者側の、融通の利く、使い勝手が良い業者を選定したいという意識と業者側の長期にわたって注文を受けたいという意識が結びつくことによって、両者の関係が濃密になり共謀・架空取引の温床となる。この様な両者の関係が癒着しやすい環境を把握せず、また、それを牽制していない管理状況はリスクが高いと考えられる。

対応策としては、モニタリング等により研究者の業者選定の状況を把握するとともに、サプライヤー管理の仕組みの導入等に効果があると考えられる。

サプライヤー管理:発注先はあらかじめ調達部署で評価した業者に制限されている。業者に原伝票の提出を求め、機関内の支出関係書類と照査する等。

2. 納品事実が確認できていない状況

不正使用事例のあった研究機関では、検収センターの設置等の対策を行い、事務職員が納品事実の確認を行うことで再発防止に取り組んでいる。その他の研究機関においても、研究者相互によるチェックを行う等、当事者以外による検収に取り組んでいるところが多い。

検収センター等での確実な検収の実施は、納品事実を装うことを困難とし、預け金に加担しようとする業者への牽制効果も高いと考えられる。また、日付入りの検収印が押印されることで、日付の改ざんによる期ずれ防止の効果も認められる。

しかしながら、その運用において検収対象外となる一定金額未満の発注を行うことで、当事者による検収を可能にする事例や、検収後に業者に持ち帰らせ「預け金」化する事例も見受けられた。

対応策としては、検収機能の強化に加え、機関の納品書と業者の原伝票等との突合を行う、特定の業者や物品の調達に偏りがないかのモニタリングを行う等複数の牽制機能を組み合わせることが効果的であると考えられる。

3. 予算執行状況の検証ができていない状況

研究者の予算であるという意識があり、機関としての予算執行状況の把握が十分になされておらず、結果的に研究費の執行が1~3月頃に偏り、年度末の使い切りを理由とした「預け金」が発生しやすい状況を招いている。

対応策としては、予算執行状況に係るモニタリングを適切に行い、年度末における無理な使い切りの原因となる不要な残額執行を生じさせないために、研究の早期着手、計画的な執行を促すことや、年度末に執行が集中している研究者に繰越・返還手続きなどの情報提供や助言・支援等適切な対応をとることが重要であると考えられる。

(3) 分析結果

各機関においては、今一度、自機関における公的研究費の管理、執行状況をしっかりと検証することが求められる。「購入依頼 ⇒ 発注 ⇒ 納品検収 ⇒ 支払い」という一連の流れの中で、検収機能の強化のみに傾注する機関が多く見られるが、最低限の取組であり十分ではない。また、整備した仕組みを運用していく過程で、業務が形骸化している実態も見られた。

不正発生リスクを下げるためには、一連の流れの中で実態を把握しつつ複数の牽制機能を組み合わせることが効果的と考える。また、当該機能が正しく運用されているか適切にモニタリングしていくことが重要と考える。

お問合せ先

科学技術・学術政策局調査調整課

-- 登録:平成22年10月 --