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1.趣旨、2.フォローアップの実施、3.分析結果

平成21年5月

文部科学省
調査調整課
競争的資金調整室

1.趣旨

 平成19年2月15日付文部科学大臣決定「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)」(以下、「ガイドライン」という。)第7節に基づいて、ガイドラインを踏まえた各研究機関における体制整備等の実施状況報告書(以下、「実施状況報告書」という。)の提出を求めた(平成20年9月10日付科学技術・学術政策局長通知)。

なお、平成20年11月に実施状況報告書の提出を求めた対象機関は次のとおりである。

1.平成20年度において文部科学省又は文部科学省が所管する独立行政法人から競争的資金等を受けて、その管理を行っている機関のうち、平成21年度も継続して資金配分を受けて、その管理を行うこととなる機関。

2.平成21年度の科学研究費補助金に応募する研究者の所属機関

 研究機関から提出された実施状況報告書(平成20年11月までに約1,600機関から提出)について、その記載内容の分析を行うとともに、別途実施した現地調査結果の分析を併せて行い、各研究機関におけるガイドラインへの対応状況を整理した結果をここに報告するものである。各研究機関におかれては、今回で2回目になるこの分析結果報告書を参考にして、必要に応じた検討や体制整備等に取り組まれたい。

 2.フォローアップの実施

 フォローアップは、実施状況報告書の記載内容を分析するとともに、特に実施状況報告書では確認が難しい公的研究費の管理に対する意識(取組の考え方や方針)などについては、サンプリングによる現地調査で補完する形で行った。

 なお、フォローアップに当たっては、1ガイドラインは大綱的な性格を有しており具体的な制度構築は、個々の研究機関の判断に委ねられていること、2各研究機関の規模や特性だけではなく個別事情も考慮する必要があること、また、3ガイドライン自体も、今後の運用を通じて、研究機関の実態に即した、より現実的かつ実効性のあるものになるよう見直しを行っていくものであることに留意し、以下を基本的な観点とした。

◆ガイドラインへの対応は、組織の長の責任とリーダーシップの下、構成員である研究者と事務職員が自律的に関与して行うことが重要であり、また、不正防止の観点からは、研究費の管理、使用に関する実態を踏まえたものであることが極めて重要である。このため、研究者及び事務職員の問題意識や意見・要望を反映できるような形で検討がなされているか、実態の把握はなされているかという視点で確認し、必要に応じて、そのような機会が確保されるように促す。

◆全機関に実施を要請している各事項に各機関はどこまで対応していれば十分なのかについては、機関の規模や特性だけでなく、各機関の個別事情を考慮する必要がある。このため、機関において効果的と思われた取組事例や、現時点で、問題があり指導・助言した方が良いと思われる事項を抽出するという観点で確認する。

 (1) 実施状況報告書の分析

 実施状況報告書の分析は、ガイドラインで全機関に対して実施を要請する事項のうち「必須事項」(注)に関してガイドラインが策定されて2回目の報告となることから昨年に増して着実に実施されているかを確認し、実施状況に問題があると考えられるものについて抽出した。また、「その他の事項」(注)については、取組の進捗状況の把握を基本としつつ、現時点で検討の要請などが必要と考えられるものについて昨年と同様に抽出した。

 (注)ガイドラインで実施を求めている事項の中には、実態把握や研究者及び事務職員の問題意識の把握を要するものなど、短期間での対応が困難であると考えられる事項がある。一方、1責任体系の明確化や発注・検収業務について当事者以外によるチェックが有効に機能するシステムの構築・運営など、報告時点において対応が必要と考えられる事項や、2各種窓口の設置など、運用面では時間を要するものの形式面が優先する事項がある。後者(1及び2に該当する事項)については、「必須事項」として報告時点において最低限実施を求めている。これに対し、前者を「その他の事項」として位置付ける。

 (2) 現地調査の実施

       現地調査は、以下の事項を基本方針として行った。

1.各研究機関における体制整備等の現状、実態の把握を行うとともに、ガイドラインに関する理解の深化を図ることを目的として行う。

2.機関の選定に当たっては、資金配分額の多い機関を中心に国・公・私立大学、独立行政法人の研究所等の研究機関の種類別バランス、過去において研究費不正使用問題を契機に不正防止に関する意識向上や取組に努力した機関などを考慮。

平成20年度の現地調査は、平成20年5月~平成21年3月に95機関について実施した。

 現地では、1研究者及び事務職員の問題意識や意見・要望を反映できるような形で検討がなされているか、機関で実態の把握や研究現場の課題把握はなされているかという視点、2機関における研究費の適切な管理と円滑な研究遂行の両立という面での検討がなされているかという視点を重視して、最高管理責任者、統括管理責任者等からのヒアリング等により実態把握を行った。

(現地調査実施機関)

 国立大学(36機関)、公立大学(8機関)、私立大学(43機関)、独立行政法人・民間企業等(8機関)

(現地調査日程の例)

 1.最高管理責任者又は統括管理責任者からのヒアリング

ヒアリング事項:ガイドラインへの取組状況全般、体制整備に当たっての問題点や課題と今後の取組予定、実施状況報告書の特記事項など

 2.発注・検収、防止計画推進部署の担当者からのヒアリング

ヒアリング事項:研究費の管理に関する事務手続きの現状、不正発生要因の把握及び不正防止計画の検討の状況と取組予定、検収業務の現状 など

 3.内部監査部門の担当者等からのヒアリング及び経理関係書類の確認

ヒアリング事項:内部監査の現状と今後の取組予定、支払いの証拠書類の確認

3.分析結果

 (1) 各研究機関における取組状況

 各研究機関から提出された「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドラインに基づく体制整備等の取組状況整理票」(P48~P66参照。以下、「取組状況整理票」という。)を基に、体制整備等の実施状況について整理すると以下のような状況である。(各データは「4.ガイドラインの各節ごとの状況」を参照。)

 【「必須事項」への取組状況】

   主な事項ごとの取組は以下のような状況である。

◆機関内の責任体系については、概ねすべての研究機関で明確にされている。ただし、責任体系を公開できている研究機関は64%(51%)(注)となっている。

 (注)( )内は昨年の数値で、1561機関に占める割合である。以下、同様。        

◆事務処理手続きに関する相談受付窓口などの相談受付窓口や通報(告発)受付窓口は、平均して約90%(約85%)の研究機関で設置されており、概ね各研究機関で取り組まれている。

◆防止計画推進部署を設置している研究機関は74%(67%)、内部監査体制を整備している研究機関は57%(50%)であり、取組が遅れている。

◆発注・検収業務における当事者以外によるチェック機能が有効に機能するシステムの構築・運営に関して、発注業務をすべて事務職員が行っている研究機関が39%、一定条件下で研究者が発注を行っている研究機関が50%、全て研究者が発注を行っている研究機関が11%であり、昨年とほぼ同じ状況である。また、検収業務を事務職員が行っている研究機関が72%、当事者以外の研究者等が検収している研究機関が24%で合わせて96%と昨年とほぼ同じ状況で、概ねすべての研究機関で当事者以外の者による検収が行われている。ただし、4%の研究機関では当事者による検収が行われている。

 概観すると形式的な取組が求められる事項は概ね実施されていると考えられる。しかしながら、「必須事項」に対応できていないと回答している研究機関も一部あり、改善が求められるところである。なお、「必須事項」に対応できていないと回答している研究機関のうち、平成20年9月末時点で科学研究費補助金などの公的研究費を受けていない研究機関、あるいは受けてはいるが「5件以下かつ1000万円以下」と、比較的公的研究費の受給規模が小さい研究機関が平均で約80%(約70%)と多く見られた。

 

 【「その他の事項」への取組状況】

  「その他の事項」は、実態を把握することが重要な事項や、体制の整備等まで時間を要すると考えられた事項であるが、主な事項ごとの取組は以下のような状況である。

◆関係者の意識向上に向けた取組は、72%(60%)の研究機関でなされており、その内の45%(20%)にあたる537機関で、行動規範を作成し、研修会等で周知している。なお、当該機関のうち、現場での具体的な課題を踏まえて作成したり、研究者と事務職員が一緒に検討し作成している研究機関が35%(41%)、他の機関のものを参考に作成している研究機関が44%(37%)、ガイドライン策定以前から定められている機関等21%(22%)となっている。

◆機関の定めている行動規範や競争的資金等のルールをどの程度理解しているかの確認については、35%(29%)の研究機関で理解度を確認しており、検討中を含め確認されていない機関が65%(71%)となっている。

◆不正防止計画の策定状況は、不正発生要因を把握し、不正防止計画を策定している研究機関が31%(17%)と昨年より取組は進んではいるが、策定していない研究機関は検討中を含め69%(83%)となっている。また、不正発生要因の把握ができている研究機関は、既に不正防止計画を策定していると回答した31%の研究機関と、計画は策定していないが把握はしていると回答した33%の研究機関と併せて64%(50%)であり、残り30%強の研究機関は不正発生要因の把握方法について検討している状況である。

◆ガイドラインでは、最高管理責任者が率先して不正防止計画に対応することを機関内外に表明する、競争的資金等の不正への取組に関する機関の方針及び意志決定手続きを外部に公表することを求めているが、いずれも約40%(約20%)の研究機関で公表されている状況で、昨年より取組は進んでいるものの、約60%の研究機関で公表されていない状況である。

 概観すると多くの事項で「対応できている」と回答している研究機関が半数以下で、「検討中」と回答している研究機関が概ね半数を占めており、体制整備等に時間を要すると考えられた事項ではあるが、2回目の報告になる研究機関には一層の取組が望まれる。 

 

 【昨年度の分析結果報告書で提言した事項の状況】

 昨年の分析結果報告書において、不正防止計画と行動規範への取組、機関の管理・監査体制の機関内外への積極的な情報発信、複数の取組を合わせた総合的な取組による効果的な牽制方策の検討、Web購入システムなど経費管理のIT化の検討などを提言している。各提言への取組は以下のような状況である。なお不正防止計画と行動規範への取組、機関の管理・監査体制の機関内外への積極的な情報発信(ガイドラインに基づく体制等の公開)については、前述のとおり。

◆「預け金」等の不正使用への対応に当たって、複数の取組を組み合わせた効果的な牽制方策のひとつとして、当事者による検収が行われている機関(一定の条件下で行われている機関を含む)4%の内、54%の機関において事後の納品確認などによる牽制措置が講じられている状況である。

◆「経費管理のIT化」については、実施状況報告書を見るとWeb購入システムの導入を検討している研究機関も見受けられるが、財務会計システムなどにより予算執行の管理を行っている機関が54%(52%)という状況である。既存の財務会計システムに物品請求機能を付加した機関や、それら既存のシステム間の連携を図り総合的執行支援システムの構築を図った機関や新たにシステム導入を図った機関など取組が進んでいる。

 概観すると昨年よりも取組はなされており、今後も検討が行われることを期待する。なお、当事者以外による検収が行われることが要請事項であり、当事者による検収と事後チェックによる牽制体制の構築を求めている訳ではない。あくまで複数の取組を組み合わせた事例として示しているものである。

 (2) 全体的な傾向と今後の取組に対する提言

【全体的な傾向】

 前述のとおり「必須事項」への取組はほぼなされており、適切な管理・監査のための最低限の形は整っていると考えられる。しかしながら、責任体系の公表や不正な取引に関与した業者への処分方針の決定、さらには「その他の事項」への取組は、昨年に比較して取組はなされているものの、依然として「検討中」あるいは「対応できていない」とする研究機関が多い。

 なお、「必須事項」に対応できていないと回答している研究機関のうち、比較的公的研究費の受給規模が小さな機関が平均して約80%を占めており、配分機関側による対応の検討も必要と考える。

 

【検討が必要と考えられる事由】

◆ガイドライン対応のすべてを統括管理責任者や部局責任者に任せていて、最高管理責任者が自機関の抱える課題を把握できていないと思われるケースが見受けられる。

◆不正防止計画や行動規範は他機関のものを参考に検討・策定している機関が多い。不正発生要因の把握に当たってルールと実態の乖離の有無や取引に対するチェックの不十分さに留意している機関は多いが、競争的資金等が集中している部局・研究室の管理体制や研究現場の課題把握に留意しているとする機関は少ない。

◆責任体系の公開を含め、ガイドラインに基づく体制整備状況を分かりやすくHP等で外部に情報発信している機関は少ない。

◆関係者の意識向上に向けて研修会や説明会を開催している機関は多いが、参加状況が良い機関は少ない。また、研究者及び事務職員がどの程度理解しているかの把握に努めている機関は少ない。

◆ガイドラインを踏まえて整備した体制や仕組みについてのモニタリング・内部監査を通じた不備の検証を実施している機関は少ない。

 

【今後の取組に対する提言】

 研究機関において公的研究費の管理・監査を適正に行うためには、ガイドラインを踏まえて整備された仕組みに沿って適切に運用されていることの検証が求められる。また、その過程で運用上の課題が生じている場合は、常に対応を検討し、必要に応じて見直しをすることが各機関に求められる。即ち、今後は、各研究機関でのモニタリング(内部監査)を経た、PDCAサイクルの運用が重要となる。

 今回の分析を通じて、特に提言が必要と考えられた事項を以下のようにとりまとめたので、昨年度の提言内容と併せて、これらを踏まえた検討や検証が行われることが望まれる。

◆最高管理責任者の適切なリーダシップの発揮

 最高管理責任者は、組織の運営・管理について最終的に責任を負うこととなるトップとして、不正を防止するための取組の中でも、責任体系及び機関の取組方針の公表、行動規範の策定等意識向上への取組、不正防止計画の進捗管理、モニタリングを通じた機関の課題の把握・解消において取組が円滑に進められるよう、適切なリーダーシップの発揮が望まれる。

◆不正防止計画及び行動規範の策定

 不正防止計画や行動規範は実効性のあるものとなるよう、研究現場における課題や実態を把握した上で自己規律の精神に沿って策定されることが重要である。不正防止計画は、不正発生要因に対応する具体的な計画であるが、なぜ不正使用が行われるのか、その要因と動機を不正発生要因のひとつとしてとらえ、それを誘発する要因を除去することの検討が望まれる。

◆積極的な情報の公開

 不正な取引に関与した業者への処分方針を定めていても、業者に周知されていなければ牽制効果が期待できないように、不正への取組方針を含む機関の管理・監査体制については、分かりやすい形で機関内外に積極的に情報を発信することが望まれる。

◆関係者の意識向上と理解の把握

 公的研究費の機関管理を適正に行う上で、関係者の意識は極めて重要である。研修会等を通じた意識向上の取組は、関係者の参加があってはじめて効果が期待できるものであり、参加状況を踏まえた対応の検討が望まれる。また、その効果は研究者や事務職員の理解の程度を確認することではじめて検証できるものである。意識向上の取組が形式的なものとならないようにすることが重要である。

  (3) 今後のガイドライン運用全般についての検討課題等

 ○ 昨年度の分析結果報告書において、ガイドラインの趣旨の周知徹底がまだ十分ではなく、文部科学省や資金配分機関がこれに取り組むこと、研究機関においても幹部職員、研究者、事務担当職員等様々なレベルでの集中的な研修が必要であることを取り上げている。研究機関においても様々な形で説明会や研修会が開催されており、文部科学省としても、現地調査を通じた取組のほか、3回の研修会を開催し、関係者の理解の深化を図るとともに実効性のある取組の促進に努めているが、引き続き実施することが必要である。

 ○ 「必須事項」に対応できていないとする機関は、公的研究費の受給規模の小さな機関がその多くを占めており、極めて少人数規模の機関である場合が多い。中には物品等の発注・検収等の事務管理から不正防止計画、監査部門の内部統制まで同一の者が兼務せざるを得ない機関もある。ガイドラインではすべての項目を実施することが困難な団体については資金配分機関においてチェックを強化するなどの措置により代替することが記述されており、配分機関による額の確定調査や経理状況調査で代替する必要がある。

 ○ 文部科学省では、これまで「各研究機関における体制整備等の現状、実態の把握を行うとともに、ガイドラインに関する理解の深化を図ること」を目的として現地調査を実施している。ガイドラインが策定され2年が経過したこと、また、各機関には、モニタリング(内部監査)を経たPDCAサイクルの運用を提言していることを踏まえ、研究機関において整備された仕組みが適切に運用されているかという観点から現地調査を行うこととし、具体的な実施方法について検討する必要がある。

 ○ 昨年、研究資金の配分機関と大学等受入機関の継続的意見交換を行う恒常的な協議の場を設け、制度改善を行っていく必要があることを取り上げており、内閣府主催により関係府省をはじめとする配分機関と幾つかの国立大学、私立大学等の関係者が集まり、課題の共有や意見交換を行う場が設けられた。そこでは、配分機関と研究機関のルールや制度に関する理解共有(意思疎通)の問題から、研究費の使い勝手に係る課題は、制度上の問題だけでなく、機関で定めるルールの問題もあることが認識されたり、直接経費での光熱水料の扱いに関する標準モデルを作成し、配分機関における検討を促すなどの取組がなされており、この様な場を継続していくことが必要である。

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