施策目標(1)環境分野の研究開発の重点的推進

 

主管局

研究開発局

関係局

研究振興局

基本目標

地球環境問題に関する現象を科学的に解明し、適切な対応を図るための研究開発を推進する。

 

1 衛星による地球観測及び海洋観測の推進

 達成目標

 温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)(平成21年1月打上げ)、水循環変動観測衛星「しずく」(GCOM-W)(平成24年5月打上げ)、全球降水観測/二周波降水レーダ(GPM/DPR)(平成26年2月打上げ)、陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)(平成26年5月打上げ)、気候変動観測衛星(GCOM-C)(平成28年度打上げ予定)、雲エアロゾル放射ミッション/雲プロファイリングレーダ(EarthCARE/CPR)(平成29年度打上げ予定)、GOSAT-2(平成29年度打上げ予定)等の地球観測衛星により、地球環境変動予測に不可欠な観測データを取得・提供する。 また、第3回地球観測サミット(平成17年2月)で承認された全球地球観測システム(GEOSS)10年実施計画に貢献するため、地球環境変動に関する科学的理解の向上に向けて、全球地球観測システム(GEOSS)を構築する上で優先度が高いとされる領域に関し、我が国が先導すべき技術革新、我が国がリーダーシップを発揮すべき国際観測ネットワークの形成にターゲットを絞って技術開発及び観測研究を推進する。 

 達成目標の達成度合い

 「だいち2号」を打上げ、運用を開始するとともに、TRMM/PR、「いぶき」、「しずく」、GPM/DPRの運用を継続し、気候変動等の研究に資するデータを提供した。また、南極調査船「しらせ」の昭和基地沖接岸にあたり、「しずく」の観測画像に加えて全天候で高分解能観測可能な「だいち2号」の観測画像を提供し有効活用された。さらに、GCOM-C、EarthCARE/CPR、GOSAT-2等の地球観測衛星の研究開発を継続した。 また、世界29カ国やEU等の協力の下に、国際アルゴ計画に参画し、地球環境変動予測に不可欠な海洋データを全地球規模で収集している。平成24年度は、前年度に引き続き、水温・塩分だけでなく、生物・化学データも取得できる多機能なセンサーを搭載したフロートを集中展開し、栄養塩などの物質輸送や植物プランクトンなどの生態系変動と海洋環境変動との関係を明らかにするための観測を実施している。 加えて、地球環境変動予測においてキーとなる、太平洋熱帯域やインド洋等においても、係留ブイや船舶、レーダー等を用いた観測を実施したほか、最大で水深4,000mまで観測可能な深海用プロファイリングフロートを用いた南極底層水の長期観測を世界に先駆けて開始した。 一方、近年温暖化の影響が予測を上回る速さで現れ、重要性が増している北極海域においては、大学発グリーンイノベーション創出事業「グリーン・ネットワーク・オブ・エクセレンス(GRENE)」事業の北極気候変動分野として、北極研究のコンソーシアムを形成し、北極域における温暖化増幅メカニズムの解明など4つの戦略目標のもとで研究を推進した。海洋地球研究船「みらい」を用いた観測を実施したほか、これまで観測データの空白域であった北極海上のデータを取得し、取得したデータを用いたシミュレーションによって、北極海上の環境の変化と日本を含む中緯度の大気循環シミュレーションの再現性を向上させることが明らかになった。 さらに、船舶による観測や海洋観測ブイシステム等による観測データは、品質管理を行った上で公開し、研究者、現業機関の利用に供している。

 今後の課題

 「いぶき」、「しずく」、GPM/DPR、「だいち2号」の運用及びデータ提供を継続するとともに、GCOM-C、EarthCARE/CPR、GOSAT-2等の地球観測衛星の研究開発を着実に継続する。 加えて、国際アルゴ計画(平成25年3月現在約3,600基のフロートによる全球海洋観測網)を維持し、アルゴフロート観測網を用いた気候変動に関する観測研究を継続させるとともに、生態系変動観測を可能とするため、生物・化学センサーを搭載した多機能フロートによる観測網拡張の検討を進める必要がある。 アルゴ計画や観測網拡張に貢献するため、様々な分野と連携し、フロート観測網の展開とそれらを用いた環境に関する観測研究を引き続き進めることが重要である。 また、データの公開を行うにあたり、引き続きデータの精度を向上させる。太平洋熱帯域やインド洋等において実施した集中観測の解析研究を進めるとともに、関係機関と調整しつつデータ収集・精度検証を実施し、補正済みデータを公開する。 海洋地球研究船「みらい」の北極海航海や国際連携による砕氷船航海、漂流ブイ、中層係留系などを用いた観測などにより、海洋・海氷・気象観測を実施する。国内外の研究機関と連携して、急激に進行する北極海環境の変化を調べ、その成果を公表する。

 

2 南極地域観測第8期計画に基づく南極地域観測事業の推進

 達成目標

 南極地域観測第8期6か年計画(22~27年度)に基づき、地球環境変動の解明を推進するため、「南極域から探る地球温暖化」をメインテーマに据え、分野横断的な研究観測を推進。

 達成目標の達成度合い

 大型大気レーダー「PANSY」は、55群全ての整備を完了し、フルシステムで観測を開始する準備が整い、電離圏までに及ぶ観測が可能となった。また、気球分離型無人航空機観測を実施し、世界最高高度記録となる高度22kmのエアロゾルサンプルの回収や高度23kmのエアロゾル濃度測定に成功した。加えて、観測隊ヘリコプター2機を用いた沿岸域での生物観測や地圏・測地観測等及び別働隊による南極海での酸性化の影響を探る船上観測を実施した。更には、ヘリコプターによる海氷厚観測を初めて導入し、昭和基地周辺で海氷観測を実施した。

 今後の課題

 本事業により取得されるデータは、地球環境変動に関する研究において貴重なものであり、国際的にニーズが高く、これを継続的に取得していくことが必要である。また、南極地域の海氷状況は、向こう2~3年間、厳しいものになることが予想されており、物資の輸送体制の強化に向けた具体的な方策の検討が必要である。

 

3 地球シミュレータ及びスーパーコンピュータ「京」の活用による地球環境変動予測研究の推進

 達成目標

 大学等における日本の気候変動研究の英知を結集し、気候変動予測に関する研究基盤を確立するとともに、気候変動リスクの特定や生起確率を評価する技術、気候変動リスクの影響を精密に評価する技術を確立し、適応策策定を視野に気候変動リスク管理に必要となる基盤的情報の創出を目指す。

 達成目標の達成度合い

 平成24年度より開始した気候変動リスク情報創生プログラムにおいては、気候変動予測データ等の信頼性評価や、気候変動の影響を評価するために必要な予備実験等を平成26年度中に概ね完了した。また、気候変動予測分野と影響評価分野の連携体制の下、気候変動予測の確率情報の精度向上及び気候変動リスク情報の創出・提供に向けた研究開発を継続し、気候変動予測及び影響評価技術の高度化を図った。  また、地球温暖化時の台風の動向のより高精度な全球的予測という課題解決に向け、昨年度に引き続き、スーパーコンピュータ「京」を用いて、台風の再現に重要な役割を果たす積雲集団を解像できる全球雲解像モデル「NICAM」の計算効率および気候再現性の向上に取り組み、温暖化気候時を想定した台風と現在の台風を比較する本格実験を完了した。 本実験の結果、過去の台風について発生数、位置、最大風速等が概ねよく再現されていることを確認した。また、過去と将来温暖化気候時の結果を比較し、温暖化気候時の方が台風の発生数が減少すること、強い台風数が増加すること、台風周辺の降水量が増加すること等の知見を得た。

 今後の課題

 気候変動リスク情報創生プログラムにおいては、これまでの研究成果を利用して気候変動に関する高精度確率情報を効率的に創出するとともに、それを活用した精密な影響評価等を実施し、平成28年度の事業終了までに気候変動リスク情報として取りまとめる必要がある。 

 

4 地球観測・地球環境変動予測データの統合の推進

 達成目標

 地球観測データ、気候変動予測データ、社会・経済データ等を統合解析することによって創出される成果の国際的・国内的な利活用を促進するため、地球環境情報の世界的なハブ(中核拠点)となるデータ統合・解析システム(DIAS)を整備し、DIASの高度化・拡張と利用促進を図る。

 達成目標の達成度合い

 DIASの高度化・拡張と利用促進のために平成23年度より実施している、「地球環境情報統融合プログラム」では、引き続き、地球観測データ、気候変動予測データ等の増加等に対応するためのDIASの高度化・拡張や、国際的・国内的な利活用の促進、長期運用体制の検討、気候変動予測結果を地域で利用できるようにするための技術開発を推進した。

 今後の課題

 当初予定されていたDIASの高度化・拡張のための研究開発等を平成27年度までに完了させると共に、平成28年度以降の本格運用に備え、体制の整備と利活用の促進等を実施する。

お問合せ先

大臣官房政策課

-- 登録:平成27年10月 --